モンスター関連で気になってること雑記【SB資料集明日発売】

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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サンブレイク資料集がいよいよ明日発売ということで、気になっているモンスター関連のあれこれについて、今のうちに本記事でしたためて行きたいと思います。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.傀異克服シャガルマガラの防具「プラグマ」とは何なのか

 

 

傀異克服シャガルマガラの防具は、タイプ1用のシリーズ名称が「ヴァチス」、タイプ2用の名称が「プラグマ」となっているのですが、この「プラグマ」というのは一体何なんだろうというお話。

 

ひとまずシャガル装備の名称の話を先に整理しておきますと、そもそもシャガルマガラの武具のモチーフはずいぶん複雑でして、武具の名前は聖書的なワードやギリシャ語・ラテン語由来のワードで構成されているかと思えば、防具の説明には「輪廻」という仏教的なワードが入ってくるという非常にカオスなことになっています。メガテンの世界かな。むろん、モンハン世界にそうした私たちの世界にある特定の宗教がそのままの形で存在しているというわけではないでしょうし、設定が作られるに際してそれらの諸要素の宗教・神話・哲学的なエッセンスが良いとこどり的な感じでシャガル武具に盛り込まれた、という形になります。

 

 

 

シャガルマガラの武器の名称、および渾沌ゴア武器のシャガル部分の名称は、特にキリスト教的・聖書的な世界観が概ねその下敷きにあり、「神」「善」「光」というようなイメージの名称で統一されています。

 

シャガルマガラ本人のあまりにもえげつない諸々の生態を考えるとホントにそれでいいのかよともツッコミたくはなりますが、シャガルマガラの白く清らかな翼は神や天使、天女といった存在を想起させるものですし、シャガルの居る山の頂上の「聖域」的なイメージや、他のゴア・マガラとの生存競争を越えて無事に成体のシャガルマガラになることができたというところから「生命への祝福」的なイメージも付随しているのでしょう。

 

それに、シャガルマガラがそれほど広く周囲環境に壊滅的な影響をもたらす恐ろしい存在であるからこそ、それを討伐し、狂竜ウイルスの鱗粉の黒い風に覆われた空に光を取り戻したハンターが身に纏う防具には、「世界を護り慈しむ者」というような神聖なイメージが相応しい、というのもあるでしょうね。

 

防具の方も、通常のシャガル防具はタイプ01は「アーク(箱舟)」、タイプ02は「フィリア(ギリシャ語で『愛、友愛』)」と、武器と同じように、正負でいうところののイメージを持つ名称となっています。そして冒頭でも書きましたが、本題の傀異克服個体の防具。タイプ01は「ヴァチス(徳、および力天使ヴァーチェ)」と通例どおりのワードなのですが、タイプ02の名前が「プラグマ(ギリシャ語で『行為、事実etc.』)」となっており、これは他のシャガルマガラ武具の命名法則からすると、「神」「善」といったニュアンスの言葉ではないという点で少し異質なものとなっています。

 

これは何なんだろう……と頭を抱えた筆者は、ひとまずプラグマ防具の外国語バージョンを一通り調べてみることにしました。その結果が以下の通り。

 

※ロシア語、ポーランド語、韓国語(ハングル)、アラビア語何が書いてあるか全く読めず検索窓に文字を入力する方法も思いつかなかったため、Googleレンズの翻訳カメラで英語翻訳にかけたものを代わりに表示しています。

 

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英語:Prudence

フランス語:Prudence

ドイツ語:Vernunft

イタリア語:Prudenza

スペイン語:Prudencia

ロシア語:Prudence[英]

ポーランド語:Consideration[英]

ブラジルポルトガル語:Prudência

韓国語:pragma[英]

繁体中文:永愛

簡体中文:久愛

アラビア語:Wisdom[英]

ラテンスペイン語:Prudencia

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おかわりいただけただろうか。

 

この中で大半を占めているのは英語の「Prudence」に相当する語で、これは思慮、慎重、自重、分別、先見性といった意味を持っています。ポーランド語版のConsideration、アラビア語版のWisdom、ドイツ語版のVernunftも、語源の違いはともあれ意味内容としてはこの「Prudence」に近いもので、このPrudenceはラテン語のprudentia、ひいてはギリシャ語の「プロネーシス」に繋がるものです。プロネーシスとは古代ギリシャ以来の枢要徳のひとつである知恵、言い換えれば所謂「実践知」であり、実践、つまり行為に関して、物事の善悪や道理を弁え中庸を旨とする徳性のことをいいます(アリストテレス)。

 

ドイツ語版ではVernunftと訳されているように、そうした「知恵」としてのprudentiaは(カント的な理性とまで言い切ることはできないでしょうが)道徳的善に即して自らの行為を統御する実践的・道徳的理性とも言えるものであり(伝統的な西洋哲学における「理性」は、人間が神の似姿として創造されたゆえに特別に所有する、人間を他の動物と分かつところの能力であるとしてしばしば理解される)、プラグマ防具の「Prundence」はタイプ01の「ヴァチス」同様、西洋哲学における「善」「徳」に関する言葉という命名法則から外れたものではないことがわかります。

 

では、そうしたPrudence系統ではない名称がつけられている例外である、日本語版、韓国語版、中国語版はどうなのか(いずれもアジア圏なのは偶々なのでしょうか)。まず中国語版については、これは通常個体シャガルマガラの「フィリア」と同様に、「愛」に関する言葉となっています。「友愛」であるフィリアに対して「永愛」「久愛」という語はそれよりも更に強い愛であるようなイメージで、「永/久」という字の持つ「無限」というニュアンスを考えると、さながらアガペーとも言えるようなものかもしれません(もしかしたら中国語に「永愛」「久愛」という単語がちゃんとあるのかも……筆者が知らないだけだったらすいません)。

 

タイプ02のシャガルマガラ防具の説明はフィリア・プラグマ共に、上述したようなシャガルマガラのイメージに基づいた「この世界の生命の憂いを愛によって救済する乙女(天女?)」という内容の物語が描かれていますから、中国語版のものは防具の名称とその説明に一貫性があると言えます。

 

余談ですが、特にフィリア防具に関しては、頭防具の顔パーツのところをよく見てみると、目からをイメージしたようなラインが描かれているんですよね。これはフィリア頭防具の「命の儚きを憂う清き泪」と呼応するものと考えられます。サンブレイク初期からお世話になった装備なのに今まで全然気づかなかった……。

 

 

で、本題の日本語と韓国語のプラグマpragmaについてですが、先述のPrudenceが「行為についての実践知の徳」という意味内容を持つのであれば、ギリシャ語で「行為、なされたこと」という意味を持つプラグマもまた、Prudenceに関連する語として採用されている、と考えることはできます(ゲームの防具の名前として響きが良い言葉、という制約も少なからずあるでしょうし)。しかしながら、pragmaは「行為についての徳」等というよりは「行為」そのものを指す、これ自体は善悪無記の言葉ですから、シャガル防具の命名法則から考えると、無難なそれっぽい解釈に見えて、少しばかり飛躍を含むものであることは否めません。

 

「日々の行いに誠心誠意を尽くす」的な意味を凝縮して命名されたのであれば善のニュアンスはありますが、逆にカント先生なんかに言わせれば、pragmatischは道徳的じゃねえ! となってしまいますし、なかなか解釈の困るところ。フィリア防具繋がりで「実用上の愛」みたいなことだと考えてみても、これは深い愛情というよりも利害関係の一致した関係という感じですから、シャガルマガラ防具のコンセプトには反するものですし…。

 

ということで、どうせ分からないものは仕方がないということで、開き直って思いっきり飛躍した説を2つほど提示したいと思います。

 

一つは、シャガルマガラの生態と伝承に関する語として「プラグマ」を用いたという説。シャガルマガラの初登場作品であり村ストーリーの最終ボスを務めるMH4では、シャガルマガラが過去にもたらした禍いは「悪しき風が山を蝕んだ」として伝えられ、災厄として恐れられるモンスターでした。しかしながらシナト村の大僧正が言っていたように、シャガルマガラは悪意を持って山々の生命を亡ぼしているのではなく、ただ生きているだけでそうなってしまうものであり、シャガルマガラにとっては普通の生態行動にすぎないものです(むしろそれがシャガルマガラにとっての自然であるがゆえに、シャガルマガラは恐ろしい存在であるとも言える)。

 

こうした、「シャガルマガラには何の悪意もなく、ただこのモンスターの生態行動の結果としての災禍がある」というシャガルマガラの特徴を、「行為、為されたもの、事実」という意味合いを持つ「プラグマ」という言葉に込めたのではないか、というのが一つ目の説。

 

ちなみに、このシャガルマガラのようなモンスターの災禍は、そのモンスター本人に何の悪意がなかったとしても、しばしば伝承というものがそうであるように、人間はこれを神格化して畏怖の対象としたり、何らかの悪意や神の怒り、意図といったものがその背後にあるのだと憶測を飛ばしたりしてしまうもの(かの百竜夜行も、その背後にある風神龍や雷神龍の存在が知られるまでは、モンスターたちが「人里を狙って」いるものだと考えられていました)。

 

これはある意味では、人間が生きるための意味世界の構築の営みとも言えるものであり、科学的根拠がないからといって蔑ろにするべきではないものであると思いますが、こうした神話、伝承、あるいは宗教や信仰といったものについて、科学的かどうかという話に関わらず、それが人々の生活に根付き、意味のあるものとなっている点においてこれらを「真理」として扱う主義思想をプラグマティズムと言ったりします(もちろん、これはギリシャ語のpragmaに由来するものです)。「プラグマ」という語がシャガルマガラという生き物の生態、それが負った宿命と、その災いに対する人間の向き合い方の両方に関するものなのだとすれば、なかなか興味深いネーミングですね。

 

続いて2つ目は、仏教の「カルマkarma」という言葉に掛けているという説。シャガルマガラは「天を廻りて戻り来る」という所から、「輪廻」というイメージがあてられる存在でもあります。そして仏教の輪廻転生には「業(カルマ)」という概念が関わっており、善い行いを積んだ者には善い転生が、悪い行いを積んだ者には悪い転生がある、というのが輪廻転生の思想です。

 

で、この「カルマ」という語、イメージ的には「業が深い」のような感じで「罪」というような印象のある言葉ですが、元々の語義でいえば特に善悪どちらかに偏ったニュアンスはなく、善行も悪行も全てを含めて「行為」「為すこと」「為された結果」等々を意味する語。つまり、意味内容としてはギリシャ語のpragmaと非常に近い語であると言えるんですよね。

 

 

シャガルマガラ自身の世代交代=輪廻の話として考えてもよいですが、シャガル防具の「救世の乙女」の物語のほうがより具体的。プラグマ防具の説明にはフィリア防具と同様、救世の乙女についての物語が描かれていますが、最後のプラグマ脚装備の説明には、天命を迎えた乙女が輪廻の円環に導かれ、次なる転生を迎えようとしているという場面が描かれています。

 

 

フィリア腰防具の説明に登場する「殉教者」の話を考えると、この「救世の乙女」は普通の人間というよりは、いわゆる応身仏のような「超越者が歴史的世界のいち人物として肉体を持って現世にあらわれた姿」のようにも考えられなくはありませんが、いずれにしてもこの乙女は世界を旅する中でさまざまな生命に寄り添い、愛を以てそれらを救うという善行を重ね――おそらくはまた新たな別の時代に、同じくあまたの生命を救済する者として転生するのでしょうね。こうした「救世の乙女の輪廻転生」の物語を象徴する語としての「カルマkarma」を、シャガル防具の命名則である西洋的な概念や言葉に置き換えたものとして、「プラグマpragma」という名前が付けられたのではないかという説。

 

……とまあ、以上2つを挙げてみましたが、これらはいずれも完全に筆者の妄想の範疇ですので、仮にそうだったらおもしろいね的な感じで受け取って頂けると幸いです。

 

ちなみに余談ですが、プラグマ防具の各言語での名称を調べるついでに、フィリア防具の各言語での名称もついでに調べてみました。

 

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英語:Storge

フランス語:Philia

ドイツ語:Philia

イタリア語:Storge

スペイン語:Amor filial

ロシア語:Storzh[英]

ポーランド語:Storge

ブラジルポルトガル語:Storge

韓国語:Philia

繁体中文:友愛

簡体中文:友愛

アラビア語:Storg[英]

ラテンスペイン語:Amor filial

 

※ロシア語、アラビア語は先ほどと同様に、Googleレンズカメラで英語翻訳にかけたものを原文ママ表記。翻訳機能の限界なのかアルファベットが若干変な感じになっているが、おそらく「Storge」的なアレだと思われる。

 

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フィリア防具の表記は「Philia」「Storge」に二分される結果に。このフィリアとストルゲーというのは、こちらもそれぞれ古代ギリシャ以来の愛の分類のうちのひとつであり、フィリアは「友愛」、ストルゲーは「家族愛」を指す言葉です。

 

シャガルマガラの超越的なイメージや、救世の乙女の「世界を包み込む愛憐(あいれん)の波」という描写を考えると、この「愛」はフィリアやストルゲーというよりもむしろ、キリスト教的な意味でのアガペー(神の人間に対する無限の愛、また人間の他の人間に対する普遍的な愛)の方がより相応しいような気もしないでもありませんが(あるいは、そういう概念があるのかどうかは分かりませんが、人間を含むあらゆる存在者や自然をもその対象とする博愛)、アガペーはちょっと宗教色が強すぎるというところもありますし、「家族や同胞の守護者たるハンターの防具」という意味合いで、大切な者への深い愛情であるところのフィリアやストルゲーが選ばれたのかなぁという印象です。

 

本来の意味をやや拡張した言い方にはなりますが、みずからの敵でさえも愛する対象となるのがアガペーですから、モンスターを狩るのが仕事のハンターにはちょっと相応しくない、というのもあるかもしれません(もちろん、モンスターは人類にとって悪しき存在というわけではなく、必要に応じて狩猟対象になるというだけで普遍的な敵というわけでは決してないのですが)。

 

それにしても、よりによってシャガルマガラの防具に「友愛」「家族愛」という名前を付けるというのは、その生態からするとなかなか攻めた発想ですよね。シャガルマガラの鱗粉から産まれた子どもであるゴア・マガラたちは、その地方における唯一のシャガルマガラになることを賭けた同胞同士での生存競争という状況に置かれているわけで、シャガルマガラ目線でいえば、これは優秀な遺伝子を残すためという種としての生存戦略ではあるわけですが、結果的にはそうした過酷な生存競争を自分の子孫たちに課しているということになるわけです。

 

ストルゲーという名称を見ると、生殖に関してそのような特異な生態を持ったシャガルマガラでも、自分の子どもたちに対する親としての愛情を持っているのかもしれない……と、少し考えさせられます。MH4の団長の「シャガルマガラは故郷が恋しくなったのではないか」という話といい、シャガルマガラ関連は心にぐっと来るような話が多いですね。

 

……という感じで、だいぶフワッとした議論ではありますが、たぶんこの語源とか用語の話をガチで詰めようとすると、哲学事典とかを片手に本当にちゃんとやらないといけなくなってしまうため、さすがにそこまでの労力を今はかけられないということで、ひとまずこのくらいに留めておきます……。

 

2.牙獣種と「ヒト」の関係について

 

 

続いては牙獣種について。モンハンライズ-サンブレイクでは、ビシュテンゴ原種/亜種、ゴシャハギ、ガランゴルムと牙獣種に新たに4体ものモンスターが登場し、牙獣種界隈(?)がたぶん大盛り上がりした作品でもあります。

 

で、筆者は以前から「牙獣種」というカテゴリについて気になっていることがありまして。単刀直入に言えば、「牙獣種とヒトはどれくらい近縁なんだろう?」ということなんですよね。モンハン世界の「ヒト」が私たちの世界と同様に「サル」という種の進化の系譜にあるのならば、少なからず今の牙獣種たちの祖先にあたるような何らかの種と接点があるハズ。もちろん、牙獣種といっても一枚岩ではなく、銘々のモンスターのモチーフになっている哺乳類の種類はさまざまですから一概に近い遠いと言えないところがあるものの、少なくとも飛竜種や他の諸々の種と比べれば、ヒトが近いのは明らかにこの牙獣種だと思うんですよね(本作初登場の「ガルク」も、種族上は牙獣種に分類されるらしい)。

 

で、その上で本作で新たに登場した牙獣種であるビシュテンゴ原種亜種ゴシャハギガランゴルムという面々を見てみると、次のような点において、明確に「ヒト(人間)に近い特徴を意識して作られているように思われます。それは、「道具」という概念を有していること、自分の外部にある物体を活用して攻撃を行うことです。

 

ビシュテンゴはお馴染みのとおり、原種は毒性のものを含む柿、亜種は燃焼性の高い松ぼっくりを周囲の森林から収集し、外敵に対して飛び道具として投げるという特徴を持っています。

 

ゴシャハギは周囲の雪を一時的に体内に蓄え、氷属性のブレスとして吐き出すほか、自らの腕に吹き付けて強固な氷の刃として纏わせ、これを武器として利用する特徴を持っています。ゴシャハギの氷ブレスは使用頻度が少ないですが、これはリオレウスの火炎ブレス等々と異なりゴシャハギは自分の体内でブレスのエネルギーを生成できるわけではなく、あくまでも外部に存在する雪を事前に蓄えたものであるため、外敵に対して一度に行使できる量は有限であり、一度吐き出して使い切りになってしまうブレスはあくまでも牽制用で、一度生成すれば耐久力がなくなるまで使い続けることができ、衝撃で劣化しても最終的に飛び道具としての活用が可能な氷の刃としての運用が主体になっている、と考えられます。

 

ガランゴルムは強敵と認識した相手に対して、自分の両腕に地下から掘り起こした保水性の高い苔爆発性の高い溶岩とを纏わせ(これらの自然物は、ガランゴルム自身の体内分泌液によって成長を促すことができるようです)、それぞれの属性の力を乗せた強烈なパンチで攻撃を仕掛けてきます。また、苔の水分と溶岩の熱を組み合わせて蒸気の力を用いることも可能で、これはガランゴルムが温度による水の状態変化について理解していることを示すものでもあります。

 

……と、ライズシリーズ新規登場の牙獣種たちはこのような感じで、自らの外部にあるものを自らの身体の延長として活用し、体格や身体能力の不利を補って外敵に有利に立ち回るという、「道具」の概念を――もちろん、それは人間が行うような高度な加工を施すというようなものではなく、いわゆる「文明」と呼ぶには遠いものであるとしても――少なくともその概念の萌芽というものを有している、というようなデザインになっていると思います。

 

ガランゴルムは本来温和で臆病、非好戦的な性格で、身の回りの小さな動植物に優しい存在であるという話や、ビシュテンゴは餌を確保するためではなく単純にいたずらのために他の動物にちょっかいをかけることがある(そして手痛い返り討ちに遭うこともある)という話も、人間目線からしてとても親しみやすさを感じさせるような特徴ですよね。

 

前作MHWシリーズでの話や、本作でのヒノエ・ミノトの古龍との共鳴など、古龍竜人族が何らかの同根関係にあるのではないかということを推測させるものはこれまでいくつか出てきていますが、これと同じようにヒトも、モンハン世界の他の種とどのような関係にあるのか、牙獣種とされる種族と遠い先祖では繋がっているのかどうか……という話は、個人的には非常に興味深いです。ヒトと竜人族、本来ならば種としては非常に遠い存在である両種族が共同体を築き得る(もちろん、竜人族だけの里など、同一の種族だけの共同体も存在していますが)というのは、よく考えてみるとなかなかに不思議なことです。モンハン世界において異質な進化を遂げているともいえる人類のルーツがどこにあるのか、というのは、今後の作品での深堀りをぜひ期待したいところですね。

 

3.MR★6「蘇る伝説」に登場するゴア・マガラについて

 

 

最後に、非常に細かい話なのですが、原初を刻むメル・ゼナのクエスト「蘇る伝説」にサブモンスターとして登場するゴア・マガラについて。城塞高地のマップで原初を刻むメル・ゼナの討伐を目標とする本クエストですが、このクエスト、サブモンスターにゴア・マガラが確定で登場するんですよね。あまり深い意味はないのかもしれませんが、「なんでゴア・マガラが確定なんだろう」というのがどうしても気になったので、少し考察を書いていきたいと思います。

 

ゲーム的な都合でいうと、本クエストの原初を刻むメル・ゼナは初期位置8番(西側サブキャンプのほぼ真下、雪玉コロガシがいる氷の洞窟の入り口のマップ)の確率がもっとも高く、プレイヤーが狩猟中に操竜を活用しやすいよう、このエリアに1回の移動で直行してくれるモンスターを出現させたいということで、初期位置7番から飛んでくることができるゴア・マガラが選ばれた、というのが大きいと思います。

 

が、そこに世界観上の意味を何か見出そうと考えるならば、思い当たるのはMRストーリーで通常個体(キュリアと共生している方)のメル・ゼナを討伐した後、城塞高地に姿を現したシャガルマガラです。

 

生態的には天空山のような高山地帯を棲み処とするシャガルマガラですから、おそらく城塞高地近辺の高山の主と思われるのが本編緊急クエストの個体で、元々は城塞高地の主である古龍メル・ゼナとかち合わないよう、互いの縄張りを標高でなんかこうイイ感じに区切っていたものと考えられますが、そのメル・ゼナが不在になったことにより状況は一変。

 

おそらくシャガルマガラも、自らの縄張りの近くに迫る何者か――つまり深淵の悪魔の存在を感知していたのでしょう。そこで、本来はメル・ゼナの縄張りであった城塞高地まで進出し、地中より来る正体不明の外敵に対して自らの縄張りを誇示しようとした、というのが、本編で突如として舞い降りた緊急クエストのシャガルマガラの行動だったのでしょう(詳細な事実関係は不明ですが、少なくともこの辺りが無難な解釈であるように思います)。

 

で、そこからずいぶん飛躍した話が本稿の本題なのですが、先述の「蘇る伝説」にサブモンスターとして確定出現するゴア・マガラは、本編緊急クエストのシャガルマガラが城塞高地を訪れた時にばら撒いた鱗粉から産まれた、そのシャガルの子どもなのではないか? というのが筆者の推測です。

 

MR★5緊急クエスト達成後から最終ストーリーの原初を刻むメル・ゼナ出現まで、作中の物語の実時間でどのくらいの期間が経過しているのかは分かりませんが、毎回のアップデートをリアルタイムで全てプレイしているのを所謂正史とした場合、つまりガイアデルムを討伐後、怨嗟マガイマガドまでの面々を狩猟し、傀異化モンスターの調査研究も徐々に進めつつ希少種勢や茶ナスやイヴェルカーナも狩猟し、傀異克服古龍ズとも出会い、アマツマガツチを討伐して里を救い……の後に原初を刻むメル・ゼナの話があると仮定すると、現実的に考えて数か月~1年以上の時間は経過していそう。

 

ゴア・マガラが親のシャガルの鱗粉から個体として覚醒し、ハンターがいつも見るあのサイズの生物に成長するまでどれくらいの時間がかかるのかも不明ですが、筆者の知る限りですと、たとえばペンギンなどは、生後半年~1年未満のうちに親鳥と同じサイズまで体格が成長するらしいですから、「短期間で成体と変わらないサイズになる」動物というのは十分にあり得る模様。まぁ、生態も体格もあまりに異なるゴア・マガラとペンギンを比較するのはどうなのかと言われるとぐうの音も出ないのですが……。

 

いずれにしても、今回の説は何か明確な根拠があってというよりは、「そうだったら熱くね?」という筆者の願望ベースのものですから、確実性は薄いものであることをご了承ください。しかしながらもしこの説が何某か当たっているとすれば、作中でのメル・ゼナ初討伐から原初を刻むメル・ゼナ出現までの城塞高地の時の流れをプレイヤーにしみじみと感じさせるものでもあり、通常個体メル・ゼナ討伐後のシャガルの進出の話と併せて、今回の異変におけるメル・ゼナとシャガルマガラ/ゴア・マガラの動向、および王域内における彼らの生息域やその縄張り関係、そしてシャガルマガラとガイアデルムとの密かな衝突・縄張り争い、ゴア・マガラとキュリアの生存競争について考えるにおいても、「蘇る伝説」のゴア・マガラの存在は外せないものとなるかもしれません。

 

それに、城塞高地はキュリアとガイアデルムの影響で、一度は周辺環境から生命という生命が姿を消し、その後もキュリアの影響に蝕まれつづけてきた、この災禍の中心的な地域でもあります。古龍の幼体であるゴア・マガラもまた、その身に蓄える生命エネルギーが未だ成体のそれには及ばないゆえにキュリアの影響は無視できず、キュリアに一方的に寄生されれば命は長くないという脆い存在。

 

そんな中で、もし「蘇る伝説」のゴア・マガラが以前のシャガルマガラの子どもなのだとすれば、それはキュリアの勢力拡大の限界点の到来や、エルガドのハンター達の活躍、そして原初を刻むメル・ゼナによる王域内のキュリアの排除のおかげで城塞高地の環境が少しずつ再生へと向かい、いのちの萌芽が回復しつつあることの証左であり、生命の循環に立ち会うことのできた感動を、しみじみとプレイヤーに与えてくれるものでもあると思います。もちろんゴア・マガラはもれなく操竜されてますけどね。

 

そう考えると、王域を縄張りとしこれを侵す外敵を排除しようと行動する守護者メル・ゼナは、今回においては結果的に王域内のゴア・マガラの敵であるキュリアを駆逐しようとするという形で、シャガルマガラを護る……というと若干大げさかもしれませんが、その繁殖にも少しばかり(本人は特別意図していないでしょうが)関与したことになるんですね。メル・ゼナはシャガルマガラ本人とは基本的にかち合わないとしても、その子どもであるゴア・マガラは王域内を広く活動していますし、本来は非好戦的な性格であるメル・ゼナならば、王域の生態系の一部であるゴア・マガラを排除の対象とすることはないと思いますから。

 

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ということで、ずいぶん取り留めのない話ばかりでしたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。SB資料集では未だ謎多き王国史のことについて色々と明かされるらしいということで、キュリアとは一体何なのか、ガイアデルムといつから共生しているのか、生殖はどのように行っているのか、古龍との共生や傀異克服とは何なのか、メル・ゼナはどのような古龍なのか、王国史における人々との関係はどのようなものか、キュリアとの共生を獲得した個体とそうでない個体の身体組織の違いは……等々、気になることがてんこもりすぎて夜しか眠れません。楽しみですね。

 

メル・ゼナやキュリア関連についても、少し内容が古いものもありますが以前の記事で考察を書いているので、よろしければそちらもどうぞ。

 

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それでは、また別の記事でお会いしましょう!