猛き炎を見守る先達たち/集会所の仲間たちの新たな歩み

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』および2023年9月29日発売『HAUNTING OF THE SUN モンスターハンターライズ:サンブレイク 公式設定資料集』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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本記事では里長のフゲン、ギルドマネージャーのゴコク、雑貨屋のマイド、集会所案内人のハナモリの4名の、サンブレイク編の会話について取り上げていきたいと思います。前半では主人公のエルガドでの活躍を応援してくれる里の重鎮・フゲンとゴコクのお話や、王国の提督ガレアスとの交友関係などを。後半では集会所の仲間であるマイドやハナモリが、それぞれ新たに挑戦していることをお話ししてまいります。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.猛き炎を見守る里長フゲン

 

やはり、いずれの地においても モンスターの存在は脅威だな。

我々が長らく百竜夜行に抗ってきたのと同じように、王国もまた古龍へと立ち向かってきたのだろう。

ならば…カムラの里の救った猛き炎は 必ずや王国の力にもなるに違いない。

○○よ、期待しているぞ。

(マスター★4 フゲン)

 

まずは里長のフゲンさん。フゲンは里の大将として、カムラの里に根深い災禍であった百竜夜行に向き合ってきた立場から、同じく長い歴史の中でたびたび古龍災害に苦しんできた王国の異変解決に向けて両国が協力体制を結ぶということについて、何か特別な共振を感じているようです。

 

MRストーリーの冒頭にもあったように、50年前は互いに自分たちの地域の被害への対応で手いっぱいで、手を取り合うことが叶わなかった王国とカムラの里。それが此度はようやくそれが可能になり、しかも里を救った英雄が王国の調査隊に参加するというまたとない機会ですから、それを送り出すフゲンにも気合が入ります。

 

オマエが里の外へ行くと聞き さびしがる者も多かったが、オマエの力は決して里に留めるべきものではない。

外は広い。目に映るものすべてが、オマエをさらに成長させることだろう。

王国という大国の拠点で 狩りができるのも、またとない好機。

ゆけ、○○よ。魂を燃やし、さらに大きな炎となれ。

(マスター★1 フゲン)

 

主人公がカムラの里を出ることについては、さすが里長らしくどっしりと構えた言葉。王国とカムラにまたがるモンスターの異変の解決には主人公の力が確実に役立つこと、そして主人公のこれからのハンターとしてのキャリアにとっても非常に有意義な機会になることから、主人公の初めての旅立ちを、いつもの覇気を以て力強く背中を押してくれます。

 

むろん、フゲンも主人公のことを幼い頃から知る間柄ですから、寂しく思う気持ちがないわけではないでしょうが、里の大将である自分自身がそれを口にするようでは里の皆をますます暗いムードにしてしまい、主人公も安心して旅立つことができないだろうという所もフゲンは恐らく考えてのこと。それにフゲンはむしろ、主人公が王国での狩りを経てどんなハンターに成長するのかを、とても楽しみにしているんですよね。

 

里の者は皆、百竜夜行に向けて日々武芸の修行に励んでいたため 腕が立つ者が多いと思うが…

ほかの地にもまた、異なる武芸を極めた数多くのツワモノがいることだろう。

オマエはまだ若い。見るものすべてを吸収し、その力をどこまでも伸ばすといい。

オマエの成長を見るのはじつに楽しい。思わず、俺の血までもがたぎるほどにな。ガッハッハッ!

(マスター★3 フゲン)

 

カムラの里が百竜夜行のためにこれまでたくさんの技術を培ってきたように、王国にも長い歴史の中で醸成された狩猟法やスタイルがある―――エルガドでの任務の中でそうした違いを知り、王国の人々の強さの根源に触れ、それを吸収して自らの糧とすると同時に、翻ってカムラの里に帰ってきたときに、今まで共に里を護ってきた仲間の強さをも実感する……というサンブレイクのストーリーの醍醐味の一つが、この台詞に詰まっている感じがしますね。

 

それにしても最後の一行、「思わず、俺の血までもがたぎる」と言っていますが、ひょっとするとこの台詞もフゲンの盟勇参戦の伏線の一つだったりするのでしょうか。フゲンの足腰を心配するヒノエからは常々「里長が狩りに行きたいと言い出したら一緒に制止してほしい」とお願いされていましたが、その主人公の存在こそがフゲンの狩人魂を焚き付けてしまっていたとなると……ヒノエさんには申し訳ない限りです。

 

カムラの里も、エルガドに協力して王域生物の調査をすることになりました。

里長も、大変はりきっておいでです。先日などは、ご自分の荷物をたいそう入念に手入れされていました。

ええと、さすがにみずから狩りへ出られたりはされないと思うのですが…。

…もしそうなったら、止めるのを手伝ってくださいね。

(マスター★3 ヒノエ)

 

ライズ時代のハモンの話によれば、フゲンは主人公の活躍を見て本気で現役復帰を考えているフシがあるようでしたが、百竜夜行のための修行は積んでいたとはいえ流石に現役時代からのブランクはありますから、今の時点ですぐに自分ひとりで狩りに行く、ということはフゲン自身も考えていなかった様子。その点はさすが里を率いる身としての冷静な判断というべきところで、今の時点で現実的に可能な「主人公の盟勇として共に狩場に行く」という形になりましたから、ヒノエもひと安心……なのかな? 

 

さて話を戻しまして、そんな感じで主人公の活躍を応援してくれるフゲンですが、彼自身も言っていたように、カムラの里には必ずしも彼のように主人公を前向きに送り出せる心境にある者ばかりではなく、主人公が里からいなくなるのが寂しい、と感じる者も多くいます。

 

おお、○○。帰っていたか。エルガドでの狩りはどうだ? ウツシがえらく気にしていたぞ。

なに? すでに向こうで会っていたか? ガッハッハッ! それだけオマエのことが気になって仕方がないのだろう!

師の親心とはそういうものだ。たまには顔を見せてやれ。もちろん、他の者にもな。

(マスター★2 フゲン)

 

主人公の師匠であるウツシ教官や、後述するゴコクなどは特に、主人公を昔から大切に育ててきただけに動揺も大きい様子なのですが、フゲンはそういう気持ちも(そしてウツシのちょっとやりすぎなところも)決して否定せず、それもまた絆が深まって良し、という感じでありのままを認めて笑って包み込んでくれるのが温かいんですよね。

 

ハモンなどは逆に、ウツシ教官の昨今の動向(?)に関しては、「主人公の活躍を伝えてくれるのは嬉しいが話が長すぎる」と、愛弟子のこととなると感情が入り過ぎてしまうウツシの師匠としての心境には理解を寄せつつも、もう少し弟子離れして落ち着いた方が良い、というようなことを本人に伝えたりしているのですが、この旧友同士の対照的なリアクションが良いんですよね。豪快で包容力のあるフゲンと、優しくも冷静なハモンとの絶妙なバランスが、里の皆を精神的に支えている感じがするんだよな。

 

かつて王国を窮地に追い込んだモンスターを カムラの里のハンターが狩猟する日が来るとはな。

しかもそれが、幼き頃よりよく知るオマエだというのが、一層感慨深い。

どうやら王国でも、「救国の英雄」としてその名が轟いているようだぞ。

同じ里の者として、オマエを誇りに思っている。里の皆も同じ気持ちだろう。

(マスター★5 フゲン)

 

それからフゲンといえば、MRストーリー当初から王国騎士団の提督であるガレアスと文通をする関係にありました。互いに責任のある立場ですから、彼らが実際に体面で会うことができるのは王国の調査がひと段落した後になるのですが、それでもその手紙の文面から、互いの人柄や実力を2人は認め合っていたんですよね。

 

エルガドとは、こたび正式に協力体制をとることとなった。こちらでも周辺を調査し 異変を見つけしだい、速やかに報告しよう。

ガレアス殿からも丁寧な文書をいただいた。まだお会いできてはおらんが、さすが王国の提督、たいそう立派な方のようだ。

一度直接ご挨拶をしたいところだが お互い、そう持ち場を離れられん立場だからな。

もちろんこちらからも文書は送ったが ぜひ、オマエからもよろしく伝えておいてくれ。

(マスター★2 フゲン)

 

……カムラの里のフゲン殿とは 文書のやりとりのみで、まだ直接会ったことはない。

文書の雰囲気や聞く話によると とても明るく、強さも兼ね備えた出来たお方だと感じる。

……お互いになかなか自由な時間が取れない身なれど いつかはお会いしたいと伝えてくれ。

(マスター★2 ガレアス)

 

カムラの里という少数精鋭の組織の強固な連帯を大切にし、里の民をつねに元気づけて鼓舞しながらまとめ上げてきたフゲンと、王国騎士団という大きな組織に対して責任を持ち、悠然とした態度と冷静で的確な指揮によって彼らを統率してきたガレアスという感じで、互いに優れたリーダーでありながらその性格や気質が相異なるという対比がこのコメントにもよく表れています。

 

それから、フゲンとガレアスとは、ストーリー後半の盟勇同行クエストにおいて、ガレアスの提案で3人で狩りに行く機会があります。クエストから帰ってきた後の、ガレアスの感想が次の通り。

 

……クエストへの同行、感謝する。

フゲン殿はじつに器の大きい御仁であった。さすが、百竜夜行という災禍に立ち向かう里の長たる存在だ。

幾遍の苦難を共に乗り越えて来たという、カムラの里の団結力も頷ける。

…よい故郷だな。

せっかく貴殿が結んでくれた縁だ。双方の問題が解決したあかつきには、ぜひ交流を重ねたいものだな。

(盟勇同行クエストクリア後 ガレアス)

 

「故郷」という言葉は、かつてメル・ゼナの襲撃により故郷を失った苦い想い出を持つガレアス提督にとっては特別なものですよね。「…よい故郷だな」の一言に、主人公のバックボーンに在る、幾度となく滅亡の危機を耐え抜いてきた強かさを持つカムラの里の存在(ある意味では、カムラの里と城塞高地とは互いに互いのあり得た可能性だったかもしれないのですから)を尊いものと思う気持ちや、主人公がそんな故郷に愛されて育ってきたということ、そしてまた主人公が闘う理由のひとつに触れることができた嬉しさ、そして里を率いてきたフゲンの手腕と懐の大きさへの感心と、万感の想いが込められています。

 

ガレアスは王国騎士団のすべてを率いる提督であり、「トップ」という存在はある意味では自分と同じ立場や目線の人間が身近にいないという孤高さを内包したものであるからこそ、カムラの里との交流を通じて、組織全体を率いる人間としての視座を同じく持つフゲンの存在に、刺激を受けたり励まされたりする部分も多くあったのではないかな。

 

……感謝する。これでカムラの里とエルガドで安全に往来ができるようになった。

既に何人か、カムラの里からエルガドへ向かっているようだ。

もう到着しているだろうか? ……貴殿は慕われているのだな。

(マスター★1ヨツミワドウ後 ガレアス)

 

フゲンからの大きな後押しを受けて、密林のヨツミワドウの狩猟の任を主人公が達成した後のガレアスのコメント。彼が主人公に信頼を置くようになったのも、単に主人公が調査隊の任務を達成するに足る実力を備えていることが確認できたからというよりもむしろ、主人公が故郷での百竜夜行との闘いにおいて、里の仲間から非常によく慕われる人物であったこと、ひいては組織の団結の中心点になり得る人物であることを確信したからというのが一番の決め手だったのではないかと思います。里長フゲンの推薦は結果として、主人公の実力のみならずカムラの里の信頼関係をも示すものとなったわけですね。

 

王国とはこれからも末永く友好関係を続けていくということですから、もしフゲンがいずれハンターに現役復帰した暁には、ハモンやゴコク、コガラシとの旧友パーティのみならず、王国のガレアスやアルローたちとも共に狩りに出かける……というような未来もあるかもしれませんね。フゲンの覇気はいつまでも衰えることのないばかりか、むしろ今も日ごとに増してすらありますから、その魂の内にたたえる熱き炎はまさに天晴というものです。

 

 

2.意外とさみしがり屋? なゴコク様

 

おぬしが里を出てから、ウツシがうるさくてたまらんでゲコ。

心配せずとも、うまくやっとるに決まっとると伝えとるでゲコが、どうも落ち着かんようで…。

…で、うまくやっとるでゲコ? なにか、困ったことはないでゲコか?

(マスター★2 ゴコク)

 

続いては同じくカムラの里の重鎮ことゴコク様。色々と感慨深く思うところはあっても主人公の里の外での活躍を力強く応援してくれるフゲンに対して、主人公が幼少の頃から親のように身の回りの面倒を見てきたゴコクは、主人公が里を離れることについては何かと落ち着かない様子。里の心配性No.1のウツシを宥める一方で、自分自身もやはり主人公がちゃんと向こうでやれているかどうかを気にかけています。里の年長者として、自分があまり心配する素振りを露わにしすぎて皆を困惑させてはいけない……と意識しているのでしょうが、やはり本音をガマンするのは難しいことなんですよね~。

 

とはいえ、主人公が里を発った当初は気持ちが落ち着かない様子であったゴコクも、エルガドでの主人公の吉報を聞くごとに段々と安心する気持ちの方が大きくなってはいるようで、カゲロウがその一連の模様を仔細に伝えてくれます。

 

○○殿が里を出られてしばらく 落ち着かない様子で里中を歩かれるゴコク殿の姿が見られました。

最近はどんと構えておられるようですが。里を離れても変わらぬ…いえ、より一層のご活躍に、すっかり安心なされたようです。

より○○殿への信頼が増した、ということなのでしょうな。

一方でウツシ殿は、最近里を空けておられることが多いようですが、えるがどへよく行っておられるのですか?

…なるほど。どちらも素敵な先達でいらっしゃいますな。ふふ。

(マスター★3 カゲロウ)

 

主人公を信頼して託すゴコクと、弟子が心配でエルガドについてくるウツシ、どちらがより相応しい振る舞いかと差をつけることもなく、どちらも素敵な先達だと言ってくれるカゲロウさんの優しさが眩しい…。カゲロウも十数年前まではハンターでしたから、今は里の家族と共に主人公を見守るような気持ちなのかもしれませんし、彼自身もヨモギの成長を親のような立場で今までずっと見届けていますから、ヨモギが大人になっていく嬉しさと感傷とが、ゴコク達の気持ちに共感できる部分があるのかもしれませんね(ついでに言えば、カゲロウはヨモギの母親のことも幼少の頃から父親のように見守ってきたようですから)。

 

ちなみに、落ち着きを取り戻したかのように思われたゴコクですが、後で話を聞いてみると、どうもそういうわけではなさそうで……?

 

お~う、○○。おぬし、なにをこんなところで油を売っとるでゲコ。

おぬしはその力を期待されてエルガドへ招かれとるゲコよ。きちんとその役目を果たさんとダメでゲコ。

王域生物も出とるわけだし、やることはたくさんあるはずでゲコ!

…いや、だからって急いで帰らんでもいいでゲコ。たまには休息も必要ゲコ。一緒にうさ団子でも食べるでゲコ。

(マスター★3 ゴコク)

 

この台詞のゴコクは、主人公が里を旅立ったことについて自分がいつまでも寂しがったりソワソワしたりしているのもいい加減良くないからということで、カゲロウが言っていたところの「どんと構えて主人公の背中を押す」ポジションを意識的に演じている素振りがありますね。遠くエルガドでの主人公の活躍に安心と信頼を持てるようになり、どうにか自分も落ち着きを取り戻したとしても、いざその主人公がカムラの里に帰って顔を見せてくれると、やはり心が揺れるのでしょう。

 

自分の感傷を抑えるために「主人公に信を置いてエルガドに向かわせる立場」としての言葉を徹底しようとしても、やはり最後の方には彼の本音が零れ出てしまっています。まぁ何度も言うように、それだけゴコクが親心(おじいちゃん心?)同然の気持ちで主人公のことを大切にしてくれている、ということでもあるんですけどね。

 

これ以降も、主人公に対して素直なんだか素直じゃないんだかわからない感じのゴコクの台詞が続いていきます。

 

お~う、○○。帰っとったか。

どうしたでゲコ? まさか、もうワシのことが恋しくなったでゲコか?

まったく、しかたないでゲコな~。よいよい。久々に、一緒に散歩でもするでゲコか?

(マスター★4 ゴコク)

 

この手の描写のあるあるとして、「○○が自分に会えなくて寂しがっているのではないか」と心配している時は大抵そう心配している本人の方がその相手に会えないことを寂しがっている、というのはありますよね。ここでのゴコクももれなくそんな感じです。

 

それはさておき、ここで「散歩」っていうチョイスが良いんですよね。カムラの里でゆるやかな時間を過ごすことの良さもさることながら、きっと昔のまだ主人公が小さかった頃には、いつもゴコクが一緒にお散歩してくれたんだろうな……という、主人公とゴコクの昔からの関係性、人と人との間の歴史をも感じさせてくれるのが良いんですよ。

 

……ちなみに、そのこととはあまり関係ない話なのですが、ゴコク様がお散歩するときって、テッカちゃんはどうしているのでしょう。利口そうな子ですから、集会所でおとなしく待っているのかもしれませんが、あるいはテッカちゃんに乗ったままお散歩、なんてことも……? いやさすがにそれはないか……。じわじわと気になってきてしまったものの、残念ながら作中ではテッカちゃんに乗って移動する姿は確認できず。残念。

 

おぬしが里の外で活躍するというのは もちろん嬉しいけど、反面、少し寂しい気持ちもないわけではないでゲコ。

まあ、こういうのは年寄り特有の感傷というものでゲコ。若いモンは気にせず外で見聞を広めてくるといいでゲコ。

…え? いや、おぬしがおらんとさびしいとかそういう意味じゃないでゲコ! べ、別にワシ、さびしくないし!

(マスター★5 ゴコク)

 

主人公の調査がひと段落した頃には、ゴコクも多少気持ちの整理がついてきたのか、「嬉しいけど寂しくもある」という心境を割と素直に打ち明けてくれるようになっています……とはいえ、それでも「割と」でして、「寂しくないわけではない」と、やはりどこかで素直になり切れているわけではないのがゴコクらしいですが。でも、ライズ時代は里の重鎮やギルマネとしての頼もしい姿を多く見せてくれた彼が、こうして孫をハラハラしながら見守るおじいちゃんのような余裕のない表情を見せてくれるのも、これまで以上に親しみが湧いてくるところですよね。

 

それにゴコク自身、彼が主人公を幼少の頃から将来のハンターとして育てていた時から、いつかこういう時が来る、というのは覚悟していたのだと思います。

 

それにしても、オマエの成長速度には目を見張るものがあるな。

いては、ゴコク殿の眼がいかにたしかだったか、ということでもある。

オマエがハンターになるよりずっと前から、才能を見出し、常に親身に、ときに厳しく育ててこられたのはゴコク殿だからな。

ゴコク殿は、いつもオマエを信じて見守ってこられた。それは、オマエが里を出たとしても、ずっと変わらんだろう。

(マスター★5 フゲン 原文ママ

 

少し前の話になりますが、ライズ時代の百竜夜行において、ゴコクは発生当初より「今回の百竜夜行においてこの災禍の原因を突き止め、これを根絶する」という目標を掲げていました。ひょっとするとゴコクは、幼少期より類い稀なる武芸の才のあった主人公が一人前のハンターに成長する頃と、数十年おきに発生する百竜夜行が再び里を襲う時期とが一致することを前々から予期し、主人公の存在こそが、カムラの里を百竜夜行から解放するための最後の1ピースになるのではないか……と見込んで、主人公に大変な宿命を負わせること、そしてなればこそその足を全霊を以て支えていくことを覚悟で、主人公を育ててきたのかもしれません。

 

ゲームスタート直後、百竜夜行襲来の報が入ったその日に主人公の正式なハンター登録が行われた際に、「その登録のための審査はずっと前から既に完了している」と、まるでこの日の出来事がすべて計画されていたかのようなことをゴコクは言っていましたからね。ゴコクが主人公にそのような希望を抱いていたのだとすれば、なおのこと彼にとって主人公の存在は特別なものであるはず。

 

カムラの里を百竜夜行から救い、その後も活躍の場を増やしていく主人公に対して、ゴコクは絶対の信頼を置き、その歩みを見守っています。ある意味では、百竜夜行との対峙というひとつの宿命を果たし(或いは解放されて)、そこで身につけた力を以てより大きく翼を広げられるようになったことを喜ぶ一面もあるかもしれない。そんな気持ちと、主人公が里を離れることを淋しく思う親心のような気持ちとは、ゴコクの中では決して矛盾するものではないのですよね。

 

それに、ゴコクは竜人族の長老として、百竜夜行により里の内外を自由に行き来できなかった里の歴史を体験してきている人ですから、その災禍から解放され、里の皆がどんどん外の世界を見に行けるようになったことについては、喜んでそれを後押ししているように思います。ここまでは主人公の話をしてきましたが、それ以外の話でいうと、彼が同じく幼い頃から知るヒノエミノト姉妹についても、特に人見知りのミノトが里の外に出るようになったことについて次のようにコメントしています。

 

最近、ヒノエとミノトもちょいちょいエルガドへ行くようになったでゲコ。

ミノトは最初ちょっと渋っとったけど ヒノエが乗り気だったし。ヒノエを1人で行かせるミノトではないでゲコ。

まだ人見知りしとるようだけど… まあ、きっとそのうち慣れるでゲコ。

おぬしも、あっちで見かけたら 声をかけてやってくれゲコ。おぬしの顔を見ればきっと安心するでゲコ。

(マスター★2 ゴコク)

 

昔は輪をかけて人見知りで、ずっとヒノエにべったりだったミノト。その性格は今も変わってはいませんが、逆に言えばヒノエと一緒であれば見知らぬ土地への外出もなんとかできるまでに成長したということで、ミノトの挑戦を応援しているようです。…まぁ、ヒノエと離れることと知らない土地へ行くことを天秤にかけて(渋々)後者を取るという感じで、若干荒療治な感じは否めませんが……。

 

さて、最後にゴコクのモチーフについて、ちょっとした小ネタを。

 

ゴコクさんって、見てるとなんだか拝みたくならないかニャ? あれ、アタシだけかニャ。

なんだかとっても神々しいというか… あそこにいてくれるだけで商売が繁盛しそうな気がするニャ。

ありがたニャ、ありがたニャ…。

(マスター★2 マイド)

 

七福神の恵比寿様は、ゴコクのキャラクターデザインのモチーフになっていると思われる神様ですが、ついにカムラの里の仲間からもそのことがツッコまれています。ニコニコと穏やかで温かいほほえみや、鯛ポジションにあたるテッカちゃん、そしてうさ団子をぶら下げている釣り竿なんかは、まさに古くから漁業の神として信仰されている恵比寿様そっくりですね。マイドさんの雑貨屋の売れ行きが好調なのも、ひょっとすると彼女の努力と商才をゴコク様のご利益(?)がさらに後押ししてくれているからかも?

 

 

3.受付嬢資格取得を目指す雑貨屋のマイド

 

最近、ミノトさんもたまにエルガドに行ってるニャ。

その間に受付に人が来たときは、私が伝言を受けたりしてるニャ。

思ったんニャけど…もし私が受付嬢の資格を取ったら、もっともっとミノトさんのお手伝いができるニャ?

なんだかとってもいい考えのような気がしてきたニャ。ちょっとまじめに考えてみようかニャ。

(マスター★3 マイド)

 

ということで、続いてはカムラの里の集会所の雑貨屋のマイドさん。彼女はサンブレイクに入ってから、受付嬢の資格取得に興味を持つようになりました。元々は王国との交流が始まって以来、集会所の受付を担当するミノトが姉のヒノエに付いて時たま一緒に主人公のいるエルガドに行くようになり、ミノトが不在の間に彼女に用件があった際、その伝言を自分が預かるようになったことがきっかけでした。

 

マイドがそれを思いついたのは、ミノトが不在の間の受付代行が可能となれば集会所の事務が一層滞りなく回るようになる、という点もさることながら、彼女はまだミノトが今の何倍も引っ込み思案だったような頃からミノトのことを知っていて(この情報の出典はライズ時代の台詞なのですが、マイドさんって一体おいくつなのでしょう……未だに謎です)その変化を見守ってきた人物であり、すぐ隣の席からいつもミノトが忙しいクエスト受付の仕事を頑張っている(しばしば頑張り過ぎる)姿を見届けてもいますから、自分が一時的にでもミノトの仕事を手伝えるようになれば、もっとミノトが肩の力を抜いて休めるようになるのではないか、という想いもあるのかもしれません。

 

マイドは元々は茶屋の会計を務めていた人でしたが、ライズ時点で集会所の人事で彼女の得意分野を活かせる雑貨屋に転向しており、順調に経験を積んで仕事をこなしています。今後そこからさらに受付嬢資格まで取得するとなれば、彼女のスキルの幅、活躍の場はさらに広がっていくことになりそうですね。

 

しかしながら、受付嬢資格といえばあの王国のチッチェ姫が、本の読みすぎて視力が落ちてしまうほどの猛勉強を経てやっと取得することのできたレベルの資格。もちろんそれは人手不足のエルガドに赴任するために短期間で取得したいからという事情もあったわけですが、その点を抜きにしても受付嬢が難関資格であることには変わりなく、優秀なマイドさんを以てしてもその勉強は一筋縄ではいかない様子。

 

ウニャニャニャ… クエストを受注する場合はこう手続きして… でも、あのクエストの受注資格は……。

あっ○○さん! まいどニャ! 気がつかなかったニャ。ごめんニャ。

今、受付嬢の資格を取るべく 勉強中なのニャ。資格を取って、少しでもミノトさんのお手伝いがしたいニャ。

でも、思ってた以上に難しいニャ。これは、相当がんばらないとダメニャ。根性出してがんばるニャ。

(マスター★4 マイド)

 

雑貨屋の業務中でも、来客がなく手が空いているタイミングにコツコツ勉強をしているマイド。彼女は百竜夜行の少し前くらいの時期に今の雑貨屋の仕事に異動となった際にも、商品知識、仕入れ、接客といった物販のイロハを0から勉強してきているわけですから、自分のできることを増やしていくために、新しいことを身につけていこうと努力する彼女の姿勢には頭が下がります。

 

しかしながら、マイドは受付嬢の資格については、ミノトの手伝いができるということのみならず、今の雑貨屋の仕事にも生きる部分があると考えており、それが大きなモチベーションになっているようです。

 

私が受付嬢の資格を取って クエストにも詳しくなったら、きっと雑貨屋の仕事にも役立つと思うのニャ。

このクエストに行くならこの商品を持って行くと便利だ、とかのオススメもしやすくなるニャ。

そうすると雑貨屋の売り上げもあがるニャ。う~ん、まさしく一石二鳥だニャ。やりがいがあるニャ!

(マスター★5 マイド)

 

実際ゲームの話でいっても、モンハン初心者の人が道具屋に行って「商品が多すぎて何を買えばいいのかわからない」というのは割とあるあるだったりしますよね。そこから状態異常を持つモンスターに苦戦させられるたびに、「このモンスターには解毒薬が必要なのか」「消散剤が」「消臭玉が」という感じで一つずつ治療アイテムを覚えていく……というのがモンハンのゲーム性ではあるものの、当のハンター達自身にとっては命がけの狩りですから、やはり事前に対策をしておくのは肝要というもの。

 

もちろんそれをきちんと自分で下調べしておくかどうかというのもハンターの実力のうちに含まれるわけですが、そこで一度対策を怠ったばかりに大怪我をしてしまった、みたいなこともモンハン世界では現実にあるでしょうから、受付嬢資格の勉強の過程で雑貨屋がモンスターのことをきちんと知っておいて販売に活かす、というのは彼女の店で商品を買うハンターたちにとって非常にありがたいものであると思います。

 

さて、マイドが資格の勉強を開始してからほどなくして、受付嬢の試験が実施されることになります。果たして結果は……?

 

この前、受付嬢の資格試験を受けたんだけど 残念、失敗しちゃったニャ。ちょっと落ち込んだけど、しかたないニャ。

思いつきだったし、勉強量も足りてなかったニャ。思い返せば、ミノトさんも昔いっぱいいっぱい試験勉強してたニャ。

でも、ミノトさんに報告したら「実際の業務を見た方が、流れなども覚えやすいと思います」って言ってくれて…

ミノトさんのお仕事を見せてもらいながら ちょっとずつ覚えていくことにするニャ。次こそは、がんばるニャ~!

(マスター★6 マイド)

 

初回の試験は残念ながら不合格。とはいえ、受付嬢資格を取りたいと思い立って以来、急ピッチで話が進んできてしまったというのもありましたし、ましてやマイドは本業の雑貨屋の仕事があり勉強はそれ以外の時間にしかできませんから、彼女のこれまでの勉強ペースを維持したまま、純粋にもう少し時間が必要といったところでしょうか。今回は本試験のレベル感が知れただけでも大きな収穫だったと思います。

 

マイドは幸いにも……というか、彼女が受付嬢を志すきっかけであるところの本職受付嬢であるミノト自身の業務フローを隣で見て実践的な知識を勉強することができますから、今後の勉強においてはそれが大きな支えになりそうです。孤独にコツコツと積み重ねる勉強もかっこいいですが、躓いた時に誰かに助けてもらいながら勉強することができれば、精神的にはかなり助かりますからね(スズカリさん風)。

 

そして、長年の絆のあるそんな2人のやりとりの中で、ミノトの方もマイドの受付嬢資格の勉強を手伝う中で自分自身の長所を発見することができ、彼女の積年の課題であった自己肯定感の低さを少しずつ克服しつつあります。その様子はぜひ、以下の記事でどうぞ。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

 

4.ハナモリさんのエルガドガーデニング計画

 

やあ、○○さん。おかえり。王国の拠点での暮らしはどうだ? 元気でやってるか?

そういや王国ってさ、あのロンディーネさんの母国なんだよな。

お面、いくつか持って行くか? 向こうの人たちへのおみやげにさ。

ほら、こういう故郷のものをきっかけに 話が弾んで仲良くなれる、とかあるかもしれないし。

あーいや…これがカムラの里の文化だと思われるのは違う気がするな…。これじゃ里の紹介じゃなくて、教官の紹介になる。

(マスター★2 ハナモリ)

 

続いては集会所案内人植木職人ウツシ教官のお面販売員のハナモリさん。サンブレイクでも引き続き、穏やかな人柄と渋滞している役職が特徴的なハナモリですが、彼は相変わらずウツシ教官自作のリアルすぎてクセの強いモンスターのお面をどう手に取ってもらえるか苦心している(?)ようです。

 

王国に行く主人公に「故郷のお土産」という名目でお面を持たせようとするも、「これはウツシのセンスであってカムラの里の文化というわけではない」ということに頭を悩まされることに。……まぁ、これがカムラの里のスタンダードというわけではない、ということはともかくとしても、少なくとも「こういう作品をつくる強烈な個性が育つ里」という印象はやはり鮮烈に伝わってしまうでしょうね。もちろん、そんなウツシ教官のセンスがズバリハマる人も、王国には結構いるかもしれませんが。

 

で、ウツシ教官のお面に現在進行形で夢中になっている人といえば、王国騎士のロンディーネさん。彼のお面を初めて手に取った際に「運命の出会い」とまで言い切るほどその技術と感性に魅了されていたロンディーネは、その一件以来、ウツシ教官のお面を売っているハナモリとも親交があるようで、お面……ではなく彼の本職であるところの植木やガーデニングについて、ある相談を持ち掛けています。

 

カムラの里の桜は、本当に美しいな。

私もこの里へ来てずいぶん経つからね。すっかりこの雰囲気に慣れてしまった。

それゆえ、久々に訪れたエルガドが、なんというか… 少しばかり殺風景に見えてしまってね…。

まあ、エルガドはあくまで拠点。花などなくてよい、と言ってしまえば、その通りなのだ。

しかし、エルガドで長く働く皆も この里の桜のように美しい景色を見て 心癒されてくれれば、と思うのだよ。

…たしか、里の桜は ハナモリ殿が植えているのだったか。一度、相談してみるかな。

(マスター★3 ロンディーネ)

 

王国からの調査任務を受けて正式にカムラの里に滞在するようになった後も、エルガドに勤める皆のことを想うロンディーネ。自国の拠点の機能面のみならず、働きがいや安らぎといったソフト面をも大切に考え、他の地域で良いと思ったものを積極的に輸入しようとする……という姿を見ると、王国が彼女を交易商としてカムラの里に派遣したことが、その当初の主目的(技術提供の交渉)を終えた現在となっても、王国になお良い影響をもたらしていることが窺えます。

 

ロンディーネが話すところのエルガドの特徴は、人々の居住地として長い歴史があり、あまり広くないひとつの里の中に居住地、観光地、拠点等々の機能がすべて集約されているカムラの里と、砦の倒壊後に観測拠点として最近復興されたばかりのエルガドの、明確な違いと言える部分ですね。エルガドは拠点としての骨子はひとまず完成していても、そこに肉付けをして豊かにしていくのは、まだまだこれからたくさんの人のチカラが必要なのです。

 

そんなロンディーネの相談を受けたハナモリも、植物の専門家として腕を振るおうと乗り気な様子。

 

この間ロンディーネさんが「エルガドにも花があればいいのに」って言っててさ。

あっちはあくまで調査用の拠点だし、花みたいなものを育てることはあまりしてないらしくって。

でも、カムラの里の桜が見事だし 花があるのもいいなと思ったんだと。そう言ってもらえると植えたかいがあるな。

まあ、気候のこともあるから桜は難しいかもしれないけど、何がいいか考えてみようと思ってさ。

というわけで、向こうの気候とか土とかいろいろ教えてくれないか? …いや、オレも一度は行ってみた方がいいかな。

(マスター★3 ハナモリ)

 

ハナモリの植樹やガーデニングの技術は、カムラの里の景観や住み心地を支える縁の下の力持ちのような部分もありますから、ロンディーネがそこを称賛してくれたことを、彼も誇りに思っているようです。ロンディーネは加工技術に限らず、カムラの里の技術一つひとつにリスペクトを持っているのがステキですね。

 

そんなわけで王国ガーデニング計画(?)を始動させたハナモリですが、彼自身も言っているように、カムラの里とエルガドとでは気候やら土壌やら、諸々の生育環境が違いますから、カムラの桜の苗木をそのまま持って行って植える、というようなことができるわけではありません。したがって、まずは結果を急がず、王国の植生を調査するところからということになります。

 

ハナモリは勉強をする過程で王国の本土の方の気候にも興味が湧いたようで、船着き場の交易窓口のホバシラに頼んで、王国の植物を取り寄せてみたようです。

 

王国の拠点では花を育てたりはしてないって ロンディーネさんが言ってたけど、王国本土はどうなんだろうな。

気候も違えば土も違うし、このあたりでは見かけない花とか植物とか いろいろあるんだろうなあ。

がぜん興味が湧いてきたな。今度ホバシラさんに頼んでなにか取り寄せてもらおうかな。

(マスター★4 ホバシラ)

 

↓ 

 

ホバシラさんに頼んで、王国本土でよく見られる花を取り寄せてもらったんだ。

こっちではまず見たことないような、鮮やかな色の花が咲くんだってさ。さっそく、家で鉢に植えて育ててみてる。

あーほら、いきなり里の土地に植えるとほかの植物とか虫とか、動物とかにもいろいろ影響が出るかもしれないし。

全部ホバシラさんの受け売りなんだけどな。あの人、あちこちの商人さんと交流してるだけあって、いろんなこと知ってるよな~。

(マスター★5 ハナモリ)

 

カムラ地域ではあまり見ない色鮮やかな花、というと、いわゆる高山植物のような感じでしょうか。かつて王国の要衝の一つであった城塞高地の環境を見るに、王国は全体的に北寄りの気温が低い地域であると考えられますが、ヤフーでググってみた所そうした低温や、空気が澄んでいて紫外線の照射量が多いといった植物にとってストレスとなる条件が多いと、植物内の色素の合成が盛んになり、色鮮やかな花が多くみられるようになるのだそうです。日本でも北海道の花などは、特にハッキリとした色合いの花が綺麗な印象がありますね。

 

加えて、この台詞で特筆すべきは、植物の苗ひとつ取っても「生態系を壊さないように」という配慮が語られているところですね。モンハンの生態系というと、どうしても小型・大型モンスターの生息地、という話が主体になりやすいですが、植物や虫や微生物といった、もっと小さな世界の生き物たちに焦点が当たっているシーンも筆者としてはかなり好みだったりするのです。

 

この話は先ほどの、カムラの里から桜の苗木を持って行くことはできないという話についても同様で、こと桜に関していえば、桜の葉に含まれるクマリンという成分(桜のいい香りの成分)は、土壌に残ることで近くの他の植物の成長を抑制してしまうという効果がありますから、特に迂闊に植えることのできない植物でもあるのです。

 

それにしても、驚くべきはホバシラさんの博識さ。交易窓口でさまざまな種類の商品を扱う上で、他の様々な地域の文化や風習、動植物の生態などの知識が入ってくるのでしょうし、彼自身も適切な取引のために、多方面の勉強を欠かしていないのだと思います。それから、各地の生物分布のデータを蓄積しているギルドにおいては恐らく、いわゆる「在来種」「外来種」のようなカテゴリがあり、生物の地域間の移動についての規定も既に作られているかもしれませんね。

 

エルガドに花を植えるロンディーネとハナモリの計画は、ただ気候に合った植物を持って行って植えればよいというわけではなくそうした様々な事情に気を遣わなければならないものですから、王国の植物を里の自宅の鉢で育ててみたり、逆にカムラ地域の植物をエルガドに持って行って鉢で育ててみたり……といった、地道な作業と実験の積み重ねを経て実現されるものとなりそうです。

 

言うまでもなく大変な仕事ですが、そうして植物と忍耐強く対話して向き合っていくことができるのが、職人としてのハナモリの度量の広さでもあります。エルガドは今回の異変の調査を終えた後も、研究機関および拠点として永く重宝されることになる場所ですから、いつかハナモリの植えた美しい花々が、エルガドに集う人たちに癒しを与えてくれる日が待ち遠しいというものです。

 

さて、最後になりますが、ハナモリはカムラの集会所案内人として主人公の狩りを見守ってきた人物でもありますから、遠くエルガドで次々と実績を残していく主人公の活躍にも興味津々。

 

おっ、おかえり里の英雄。いや、もう王国の英雄か?

○○さんの活躍には 里の子どもたちも興味深々だぞ。

百竜夜行のこともあって、今までこの里でほかの地域…ましてや王国と密に行き来する人なんて、ほとんどいなかったからな。

だから、外の話ってだけでも珍しいのに 里のハンターが王国のモンスターを次々狩っていく冒険譚とは…。

そりゃ子どもたちも夢中になるよ。オレだってワクワクするもんなぁ。

時間があるときにでも、語って聞かせてやってくれよ。みんな喜ぶぞ。そのときは…オレも聞きに行こうっと。

(マスター★6 ハナモリ 原文ママ

 

ハナモリは子どもたちにも慕われているようですから、彼らが主人公の冒険の話をすごく聞きたがっている……ということを話してくれるのですが、それはそれとしてこの台詞、どちらかというとハナモリ自身が一番聞きたがっているように見えなくもないんですよね。誠実な人柄のなかに偶にこうしてお茶目でノリが良い、ちょっと俗っぽいところも見せてくれるのが、ハナモリらしくて筆者はとても好きなのです。

 

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ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!