カムラとエルガド、交易商と王国騎士

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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本記事では交易商/王国騎士のロンディーネと、彼女の従者であるチーニョカナリーノの3人について、サンブレイクでのお話を取りあげていきます。ライズ終盤~サンブレイクの物語の始まりにおいて、ついに狩りの身分であった交易商から、王国騎士としての本来の任務を正式に打ち明け、今回の異変調査において共に闘う仲間となったロンディーネ達。彼女らはサンブレイクでも王国の調査隊のカムラ方面支部を担当し、引き続きカムラの里に滞在することとなりました。今回はそんなマルチに活躍する3人のエピソードを見て行きたいと思います。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.王国とカムラの里を繋いだ立役者・王国騎士ロンディーネ

 

過日、ハモン殿の鍛冶技術が エルガドの加工屋に伝授されたのだ。

チーニョが特にがんばってくれてね。すでに、王国の他の加工屋へも 里の技術はしかと広まったはずだ。

その際ようやく、私の本来の任務についても皆に話すことができ… 少し、肩の荷が下りた気分だよ。

我が身を偽って里へ潜り込み、里の技術を持ち帰ろうとした私などに 優しくしていただくばかりではなく…

あまつさえ、これまで秘されてきた 里の技術を伝授していただけるなど、本来なら考えられぬことだ。

私は、たとえこの身が果てたとてこの恩を忘れはしない。王国騎士…いや、王国を代表して、感謝を。

(エルガド出発前 ロンディーネ)

 

まずは交易商、もとい王国騎士のロンディーネさん。百竜夜行収束の後、ようやく自分の本来の職務や王国のことについてカムラの里に打ち明けることができた彼女は、サンブレイクでは本格的に王国騎士としての活躍を見せてくれます。彼女自身、これまで身分を偽って里に来ていたにも関わらず(実際は割とすぐバレていましたが)、カムラの里からの手厚い対応に与ることができたことへの恩義、謝辞など色々な気持ちで心がおさまらない様子ですが、里と王国とがそうした友好関係に進み得たのはロンディーネ達の人柄もあってのことですし(後述)、何よりロンディーネたちとも腹を割って話せる仲間として共闘できるようになったのが、一番嬉しいことだったりします。

 

さて、そういうわけでエルガドでの調査を本格始動することとなった王国ですが、ロンディーネは引き続き、王国騎士の任務としてカムラの里に滞在することが決まりました。

 

私もエルガドで姉上とともに、騎士として働きたかったのだが…またしても 女王陛下に止められてしまった。

しかし、今回こそはしっかり別の任務を拝命したよ。里と協力して 周辺の調査をする、という任務をね。

今回の件、発端は我が国だ。里の客人としてではなく、協力を依頼する側として私も精一杯、尽力すると誓う。

貴殿には世話をかけ心苦しい限りだが… どうか、よろしく頼む。

(マスター★2 ロンディーネ)

 

王域生物の異変がカムラの里地域にまで拡大し、技術の提供のみならず調査の上でも連携を行うこととなった現在、ロンディーネ達が初めから王国騎士としてカムラの里に申し入れに来たのではなく、交易商としてカムラの里を訪れ、里の皆と交流を深めたり、百竜夜行を共に乗り越えたりしたこれまでの時間が、結果的に現在の協力体制の精神的な土台を作っているような気がします。いやホント、カムラの里に来たのがロンディーネさんだったからこそ今のこの絆があると言っても過言ではないんだよな……。

 

それにしても、ロンディーネの「発端は我が国だ~」という話を聞いていると、モンハン世界における「国家」というものの難しさを感じさせられます。というのは、モンスターの脅威という大自然のうねりは、国境や領土といった人間側の枠組みとは関係なく偶発的に発生し拡大していくものですから、今回の一件も「王域内の異変がたまたまカムラ地域まで波及した」だけに過ぎないとも言えるのですが、王国側からすれば「自国から始まった問題にカムラの里を巻き込んでしまっている」という意識をどうしても抱かざるを得ない面があるということが、ロンディーネやその姉のフィオレーネの(特にストーリー初頭の)会話から感じられるんですよね。

 

自国の領土内の出来事に責任を持つからこそという理屈はその通りなのですが、協力を依頼される里側としては互いにモンスターの災禍と長く闘ってきた歴史を持つ国/里同士ですから、そこまで申し訳なさそうにしなくてもいいのにな……と、心情としては思ったりもします。むろん、彼女らにも立場があってのことですし、そうした振る舞いは王国の中枢としての彼女らの使命感の強さを示すものでもあるのですが、フィオレーネなどはそれが必要以上に行き過ぎて色々と抱え込んでしまうあまりバランスを崩してしまうところもありますから……なかなか難しいところですよね~。

 

さてロンディーネといえば、今まで里の外に出た経験がない主人公に、いつか外の世界を見に行ってみて欲しいということをライズ時代からお勧めしてくれていました。仮の仕事とはいえ、交易商の仕事を通じてさまざまな地域の文化や風習に触れることの楽しさを知った体験から、それを主人公にもぜひ味わってほしい、という想いもあるでしょうし、有望なハンターである主人公が外の世界を知ったとき、どんなハンターに成長していくのかを、一人のハンターとして楽しみにしている部分もあるのかもしれません。

 

やあ。しばらくぶりだね、貴殿。エルガドはどうだい?

貴殿にとっては、初めての「外」だろう。もし、なにか不自由があるならば なんなりと、姉上に伝えるといい。

本来ならば、里の英雄である貴殿を王国へと招待し、ぜひともゆるりと観光などしてもらいたかったのだがな。

緊急の依頼、という形になってしまったのは心苦しいが…貴殿が外の世界を臨む一歩となれたなら、よかったのかもしれない。

我が国事で、貴殿には面倒をかけるが、もし、貴殿にも得るものがあれば非常に嬉しく思う。

(マスター★2 ロンディーネ)

 

王国の異変調査という名目で主人公が王国に招かれることについて、ロンディーネは危急の要件となってしまったことを少し申し訳なく思っているようですが、むしろこういう偶然のきっかけが、新たな世界に踏み出す好機でもあるというもの。王国騎士としての仕事を明かしてくれたロンディーネやその仲間の騎士たちと共に新天地で狩りに行くというのも、ハンターとしては良い刺激をもらえる機会です。

 

それから、ロンディーネは主人公のみならず、里で親しくなったヒノエ・ミノト姉妹にも、里の外への旅についてお誘いをしていました。当初は彼女らのライフスタイルの関係で交渉(?)は難航していたのですが、サンブレイク編ではついに、2人がエルガドに観光で来てくれることになります。

 

私は、今までも何度かヒノエ嬢らを里の外へとお誘いしていたんだが…

そのたびに、ヒノエ嬢には「うさ団子がない場所には行けません」と断られていたのだ。

しかし、それなら「うさ団子とともに参りましょう!」と説得すればよかったのだな。

ヒノエ嬢が行かれるなら、ミノト嬢もともに出てくださっただろうし…うーむ、その発想がなかった自分が不甲斐ない。

…まあ、何にしても 彼女たちが里の外へ行く機会ができたのは すばらしいことだね。

(マスター★3 ロンディーネ)

 

ロンディーネはサンブレイク以前からヒノエ達を里の外への旅行に誘っていたようなのですが、その時は悉く結果が実らなかった様子。彼女の提案を「でもうさ団子がないし…」と固辞していたうさ団子LOVEのヒノエが今回エルガドまで足を運んでいるのは、ロンディーネのプレゼンテーションが功を奏したというよりは「主人公の赴任先であるエルガドにはアズキの茶屋があり旅先でもうさ団子に困ることがないから」という理由の方がどうも大きいようでして。

 

それを見たロンディーネは結果オーライと前向きに捉える一方で、「うさ団子を保存が効かせられるようにして旅先でも食べられるようにする」という解決策を提示することができれば、ヒノエがネックに思っている点を解消し、もっと早くから乗り気にさせることができていたのではないか……と、自分の交渉術(?)の未熟さを感じているようです。

 

ミノトに関しては、ロンディーネからも「ヒノエ嬢が行くなら一緒に来てくれるだろう」とそのシスコンぶりを認知されているのはちょっと面白いですが。とはいえ、ロンディーネも「姉を敬愛する気持ち」はミノトに共感するところが多々あるでしょうから、ミノトの心境がよく理解できるがゆえの、という感じかな~。

 

ヒノエ嬢がエルガドを楽しんでくれているようで、私も嬉しく思う。

ミノト嬢はまだ戸惑っておられるようだが、「まだ慣れぬだけで、嫌というわけでは…」と言ってもらえたので、少し安心したよ。

しかし、エルガドはあくまで観測拠点。いずれは王都など、観光に向いた場所へもお招きしたいものだ。

そのときは、もちろん貴殿も。我々王国騎士が、その名に懸けて盛大にもてなそう。

(マスター★4 ロンディーネ)

 

ヒノエやミノトはその後も度々エルガドを訪れており、主人公の話などをきっかけに交流を深めているようで、旅を楽しんでいる(ミノトが人見知りモード全開になったりしながらも)様子にロンディーネは安堵している様子。カムラの皆で王都に行く機会もぜひ楽しみにしたいところですが、王都にうさ団子屋さんって、あるのかな……?

 

まぁそれにしても、誠実で嘘がつけず、他人に対して丁寧な反面「巧みなトークで相手に前向きに検討してもらえるよう促す」という種類の交渉事を徹底的に苦手とするロンディーネを、「身分を偽って交易商として里に潜入し加工技術を持ち替える」という考え得る限り最も不向きな役職に任命しているあたり、それを指示した女王陛下は、「元々カムラの里からの技術提供を秘密裏に行うつもりではなかった」というのが本心であったと考えざるを得ないところ。

 

アナザーストーリーでの描写や、原初を刻むメル・ゼナの一件を解決した主人公に大長編の感謝状をしたためて送り付けようとしていたところを見るに、女王陛下もまた心根が純粋かつ善良で優しい人物だと思うんですよね(それに加えて、フィオレーネ・ロンディーネ姉妹とはとても親しく、恐らく2人の気質や性格のことも知り尽くしていると思われる)。

 

おそらく女王陛下の計画としては、カムラの里には最終的には王国の事情をきちんと説明し、正式に技術提供の許可を貰う予定だったのだと思います。しかしながら、突然遠方から来た異国の人間からいきなりそんな話をされても里側としては対応に苦慮するでしょうし、これまで外部に漏らさないよう徹底的な配慮を以て里に秘してきた技術を公開してもよいと思えるだけの信頼関係も築けていませんから、まずは交易商という形で里と交流を深め、交易の面で貢献しつつ王国のことを打ち明けるタイミングを窺う……というのが、王国側が当初から考えていたシナリオだった。

 

ロンディーネの性格上「あの人は本当は交易商ではなく何らかの別の事情で里に来ているのではないか」ということを察されてしまうことも、ひょっとすると織り込み済みだったのかもしれません。実際ハモンなどは早い段階でそのことを見抜き、その上でロンディーネの人柄に信用を置いていましたから、実際にそのシナリオは概ね成功しているんですよね。

 

まぁそう考えると、実際に任務にあたるロンディーネ側の話が「秘密裏に里の技術を入手せよ」という指示を受けていたようにも解釈できる点が上記の話と矛盾してしまうような気はしないでもありません。が、ここで大胆な推測を一つ提示してみるならば、その指示はロンディーネの性格を考慮した最善手だったのではないか、という説が考えられます。

 

大前提の話として、最終的に技術提供の協力を申し入れることを考えた場合、カムラの里に敬意を表する意味として、王国騎士の中でも特に地位と実力のある女王陛下側近の騎士を遣わせたいと王国側としては考えるでしょうし、女王陛下個人としても、カムラの里側にもこれまでの里の方針を覆すような一つの重大な決断を下してもらうことになるのならば、自分自身の代理としてその許可を頂く懇請を行うのは、自らの最も信頼する側近の騎士の誰かに任せたい、と思うハズ。その意味では、失礼なく丁寧に誠実に関係を築いてくれる保証が持てるロンディーネはこれ以上ない人選であると言えます。

 

しかしながらロンディーネの正直者すぎる性格を考えると、「最初は交易商として友好関係を持ち、機を測って王国のことを伝えてほしい」というような直球の指示を与えた場合、王国騎士としての立場や王国のことを打ち明けるのが時期尚早になってしまう可能性がある。

 

そこで、敢えてロンディーネ本人には「最後まで身分を明かさずに技術を手に入れてくる」ということを指示しておき、彼女は最初こそその指令には従えども、里の人々と親しい関係になる中で徐々に身分を偽ることへの良心の呵責に耐えられなくなり、彼女自身の想いを起点に「頃合いを見て真実を打ち明ける」という方針に途中から変更していくようになれば、結果として適切なペースでの段取りで事が進められる……というのが、女王陛下の遠大な計略だったのではないか、という話になります。

 

実際にロンディーネは、カムラの里や職人たちに対してつねに篤く敬意を払い、いつしか任務に関わりなくカムラの里の魅力の虜となって大きな愛情を持つようになり、そして百竜夜行のことを知った際には、交易商としての物資提供のみならず、王国の資料に風神龍らの情報がないかをわざわざ調べに戻ってくれたり、自らも防衛に参加して共にカムラの里を護りたいという身分を隠すもへったくれもない申し出まで行ったりなど(むろん、その申し出は諸々の事情で通らなかったのですが)、カムラの里の人々にもその正体や目的を推察されているにも関わらず、その上でなおそうした振る舞いから里の皆からは好感を持たれ、チーニョ達共々歓待を受けていました。

 

フゲンやハモンらが元々身分を偽っていたロンディーネに最終的に許可を出したのも、彼女自身も立場があってのことだったからという事情への納得も含め、彼女の人柄への信頼があったことは非常に大きな一因ですから、本来なら性格上不向きなロンディーネを交易商としてカムラの里に遣わせるというこの一連の任務は、結果として最も円満な形で終わることができたわけです。

 

まぁ、この説はあまりにも論理の飛躍があるといいますか、ロンディーネの人格に対する女王陛下の信用がとんでもなく厚く、かつその信頼を前提に敢えて少し迂遠な(しかもロンディーネ自身をもその計画のシナリオに乗せる形になる)プランを考えるというだいぶ手の込んだことをしていることになりますから、あまり確信を持って提示できるものではないといったところ。

 

ライズとサンブレイクとでそもそも話のディテールの解釈が少し変わっている、という裏の事情的な部分もあるでしょうし、或いは本来は女王陛下の指令はもっとマイルドな内容のものであったのに、信義に厚いロンディーネは「カムラの里の人たちを偽る」という点を重く受け止めていたために、主人公に対しても「言い訳をせず自分たちの非を詫びる」というような内容の話が多くなった、という部分もあるでしょうからね。

 

ちなみに当のロンディーネは、自分たちが正体を明かして王国のことを話すまでは、完璧に交易商になり切ることが出来ていたという自負(?)があるようです。

 

(盟勇同行クエスト★3受注時 ロンディーネ)

……ごめん。正直なところ全ッ然交易商になりすませてなかったよ……。里★3くらいでもう完全に王国騎士ロンディーネだったよ……。

この認識の齟齬に関しては、盟勇同行クエストにて姉のフィオレーネからもちょっとしたツッコミ兼フォローが入ることになります。

 

 

妹の人柄を誰よりもよく知るフィオレーネとしても、ロンディーネが主人公やカムラの里の皆にまったく交易商として見られていなかったことは意外でもなんでもなく「やっぱりな」という感想で、かつそれを咎めるというよりは、そんな嘘がつけない性格の妹を誇らしげに思っている感じもします。まぁ、これがもし姉妹の立場が逆で、仮にフィオレーネ自身が交易商に扮してカムラの里に行っていたとしてもたぶん同じことが起きていたと思いますから、彼女ら姉妹は根っこの部分ではとても似た者同士ですよね~。

 

それから、人の流れはカムラの里から王国へのみならず、王国からカムラの里に行きたい、という人々も増えてきているようです。

 

貴殿の働きにより、今回の騒動も無事、終息へ向かおうとしている。本当に、ありがとう。

そして今回、カムラの里と我が国とで生まれた交流を絶やすことなく、今後ともよき関係を続けていければと思う。

エルガドにいる騎士たちはもちろん、王国本土にいる他の騎士たちも カムラの里には興味津々だよ。

そうそう。チッチェ姫も、里には大変興味を持っておられてね。私がこちらへ戻る際にも行ってみたいとおっしゃっていたよ。

私としてもぜひお越しいただきたいが… そう簡単に通る立場ではないからな。難しいものだね。

(マスター★6 ロンディーネ)

 

チッチェ姫に関してはそもそも王都のお城の外に出たことすら、今回の異変に際して受付嬢としてエルガドに来たのが初めてですから、さらに王国領を飛び出して他の地域に行くというのは、彼女にとっては今までにない大冒険になりそうです。彼女のクエスト受付の時のボイスにも「ロンディーネから話を聞いてカムラの里に興味がある」という内容のものがありますから、ぜひとも里まで来て欲しいところではあるのですが……彼女は王族ということもあり、もしものことを想定すると、すんなりと女王陛下の許可が下りるとは限りません。

 

でも、勉強熱心で何事にも興味津々、色々なことを探求したい冒険家気質なところもあるチッチェ姫ですから、カムラの里に来たら絶対楽しんでくれると思うんだよなぁ…。本編EDでは年齢の近いヨモギちゃんとも意気投合していましたし、護衛をつけてお忍びという形でも、いつか海を越えて里まで旅をしに来て欲しいものです。ロンディーネたちが交易船で王国に輸入して来たモノを見るのもよいですが、やはり現地で実物を見聞きするというのは、何物にも代えがたい経験になりますからね。

 

さて、ロンディーネ達の交易商の仕事はもともとカムラの里への潜入の為のものではあったのですが、噓から出た実というのはまさにこのことと言うべきか、ロンディーネはすっかり交易商の醍醐味に魅せられてしまったようでして、王国騎士の身分を隠す必要がなくなり、異変調査のため本格的に騎士の仕事に復帰した後も、それと並行で交易の仕事を継続しています。

 

私にとって交易商の仕事は、あくまで里へ潜入するための仮の仕事だったのだが…。

この仕事も、学べば学ぶほどおもしろい! 交易商というのは、人々の暮らしを豊かにする、すばらしい仕事なのだ!

もちろん私には、王国騎士として女王陛下の任を果たすという役目があるが…

各地ですばらしいと思ったものを広め、持ち帰り、また広める…こうして、金銭のみならず、文化的にも豊かになっていく。

なんとか、両立する方法はないものか…。王国騎士の任務のひとつにできないか 一度、提督に相談してみようか…。

(マスター★6 ロンディーネ)

 

ロンディーネさん、さすがにそれはオーバーワークなのでは……。とはいえ、本人はいたってノリノリで交易の業務を続けており、サンブレイクでもコミツのりんご飴をエルガドに輸入したり、カムラの里の茶屋のうさ団子と思われるものをエルガドにいる姉に渡していたり、逆にカムラの里にはない便利な清掃用品を他から取り寄せてオトモ広場管理人のシルベに提供してみたり……と、交易商としての活躍にも事欠きません。

 

(フィオレーネにりんご飴を渡すロンディーネ。ご丁寧に食べ方までレクチャーしています)

王国騎士と交易商とは一見するとあまり業種の親和性はなさそうに思われますが、騎士はモンスターの脅威から「人々の生活を守る」ことを生業としていると考えると、形は違えど人々の生活に貢献する交易商の仕事にロンディーネが惹かれるのは、なんとなくわかるような気もするんですよね。彼女の人柄も社交的で人から好かれる性格ですし、ウツシ教官の特製モンスターお面に目を輝かせるなどステキな(?)審美眼の持ち主でもありますから、潜在的な資質はかなりあったのかもしれません。

 

ちなみに、そのウツシ教官のお面も、バッチリエルガドに輸入してきています。

 

やあ、貴殿。元気そうでなによりだ。

今日の私は、騎士としてここへ来たのではないんだ。

姉上の様子を見に、というのが半分、交易商としてカムラの里の特産品を運ぶのが半分、といったところだ。

ウツシ教官のお面も預かってきたよ。熱狂的な愛好者が多数いるのでね。

いやあ、その気持ちはよくわかる! とてもすばらしい出来だからね。私も、自分のぶんを確保したいくらいさ!

(マスター★6 ロンディーネ エルガド)

 

「できることなら自分の分も確保したい」というのは、交易商を心底楽しんでいるからこその悩みどころですよね。ウツシ教官のお面を交易で扱っているのは何よりもまず自分自身がそこに確かな魅力や価値を見出したからで、自分好みの品を買って手元に置きたいというコンプ欲をある程度自制しないと、他の人が買う分がそのぶんだけ少なくなってしまいますから(ましてやウツシのお面は本人の手作りですから、容易に量産できるような類のものではありませんし)、皆にもこの品の魅力を伝えたい、もっと広めたいという布教欲(?)と衝突してしまうわけです。

 

しかしながら、そういう矛盾に悩むこと自体が、彼女が交易商に向いていることの証拠でもありますから、ぜひともガレアスや女王陛下には、今後ともロンディーネが交易の仕事を続けられるよう、なんとか体制を整えてあげてほしいところ。そうすれば、今回の調査が終わった後も、ロンディーネ達がカムラの里に来られる機会が多くなるでしょうからね。

 

おお、貴殿。じつは仲間の行商人から、モンスターに遭遇して立ち往生していると連絡が来てね。

連絡をもらった私が代わりに、クエストを発行したところだったのだ。

どうだろう、貴殿さえよければ、このクエストを私と共に受けてはくれないだろうか?

いろいろと世話になった仲間でね。できることなら私も助力したいのだ。

貴殿に甘えてしまってすまないが、よければ協力してくれるとありがたい。

(盟勇同行クエスト受注時 ロンディーネ)

 

実際、彼女の盟勇同行クエストの依頼の中には、知り合いになった仲間の交易商がモンスターに困らされているので共に狩猟に行きたい、という内容のものもあったりするのを見るに、地域間の移動中にモンスターと遭遇する可能性がある交易の仕事において、商人自身がハンターや騎士としてモンスターを狩猟する能力を持っているというのはそれだけで自衛や問題解決の面で大きなメリットになるような気もしますから、交易商兼騎士という新たな人材の誕生がいずれ見られるかもしれません。それにしても、ロンディーネさんの義理堅さがこんなエピソードにもあるとは…。

 

それから、部署の異なるロンディーネとフィオレーネが顔を合わせることができるのは、こうしてエルガドにロンディーネが戻って来たタイミングが主であるようですが、それだけに姉妹揃って狩りに行く機会というのも最近はなかなか取れなかったようで、主人公を交えて3人でクエストに行った後には、フィオレーネから次のような感想を聞くことができます。

 

エストへの同行、感謝する。おかげでよい時間を過ごせたよ。

…その顔は、どうせなら姉妹水入らずで行けばよかったのにとお思いかな?

たしかに、妹と共に狩りへ行くのは久しぶりだったが それゆえに…というやつでね。

まあ…なんだ、少々照れくさかったのだ…。こうして機会をくれた貴殿には とても感謝しているよ。

ロンディーネも、まだしばらくは カムラの里で世話になるだろうからね。今後も姉妹共々よろしく頼むよ。

(盟勇同行クエストクリア後 フィオレーネ)

 

かわいい。この辺りの描写も、基本的に一緒に行動していることが多いヒノエ・ミノト姉妹との対比になっているような感じがありますね。仲良し姉妹なところは彼女らと同じでも、フィオレーネ・ロンディーネ姉妹は共に王国騎士の重役の立場であるぶん今回のように互いに異なる部署を預かることも多いですから、久しぶりに再会できた時の嬉しくもありちょっぴり恥ずかしくもありという心理描写も、これまたステキな姉妹愛を感じられるシーンだなぁと思います。

 

盟勇クエストクリア時にも、この姉妹がお互いのことを尊敬し合っていることがよく分かる掛け合いが見られます。

 

 

お互いがお互いのことを目標として背中を追いかける関係ってすごくいいな……。この姉妹が現在共に王国騎士団の重鎮を務めているのは、彼女らが姉妹揃って王国騎士になろうと決意し、互いのことを見ながら努力を重ねてきた結果ですね。特にロンディーネは上の会話にもあるように、武器の扱いのみならず、フィオレーネの騎士としての思考力や精神性を特に尊敬しています。

 

姉上は、王国でも名うての騎士でね。強者揃いの王国騎士の中でも 目ざましい活躍をしてらっしゃるのだよ。

実績もあるし、女王陛下の信も厚い。妹である私も鼻が高いよ。

私とて、剣の腕だけなら 姉上にも引けを取らないつもりだが…

冷静さ、実行力…「騎士」としてどちらがふさわしいかと問われれば、間違いなく姉上だろう。

しかし、必ず追いついてみせるとも。そのためにも私は、与えられた任をひとつひとつ、確実にこなしていかねばな。

(マスター★4 ロンディーネ)

 

また、姉妹関係の話でいうと、ロンディーネはMRストーリーが始まってからほどなくして、ミノトから食事に誘われていましたね。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

人見知りな性格のミノトが、ヒノエの介在なく自ら誰かを食事に誘うという、彼女の成長を感じられるこちらのシーン。詳しい経緯は上の記事に譲りますが、ロンディーネの「優秀な姉を持つ気持ち」にミノトは共感するところがあり、もっとお話しがしたいということでミノトがロンディーネに自分の手料理を振る舞う機会を設けたのです。この2人の食事会となると、シンプルに互いの姉について話す会というよりは、自分の姉がどれほど素晴らしいかということを両者ともが心行くまで熱弁し合うオタクトークみたいな雰囲気に発展していそうな気がしますが、それはそれで良しというもの。

 

で、ロンディーネは姉を尊敬し自らは謙遜するという点はミノトと同じでも、自分のことを卑下するような素振りはなく、「努力を重ねて必ず姉に追いついてみせる」とむしろそれを活力に変えられるタイプなんですよね。そうしたロンディーネの前向きさが後のサンブレイクを通してのミノトの成長に与えた影響は、決して少なくないものであるように思います。こうしたヒロイン姉妹同士の対比的な描写も、サンブレイクの醍醐味の一つといえますね。

 

2.ハモンへの敬愛を胸に、チーニョは風光るカムラを描く

 

先日、ついにハモン殿にご許可をいただき カムラの里の製鉄技術を、王国の加工屋へ 伝授していただきましたニャ。

ハモン殿が長年培ってこられた技術、半端な者ではいけないと思い、若手の中でも もっとも資質のある者を呼びましたニャ。

本当は、貴殿とともに王国の拠点へ来ていただきたかったのですが…ハモン殿は やはりこの里にいるべきと思い…。

いえ、けしてわたくしが、まだしばらくこの里に留まると決まったから言っているわけではありませんニャ。…まさかニャ!

(エルガド出発前 チーニョ)

 

続いてはそんなロンディーネの従者のひとりであるチーニョさん。先ほどのロンディーネの台詞にもあったように、チーニョは今回の王国の一件において、カムラの里から王国への加工技術の提供の一番の立役者。ロンディーネと共に交易商の身分でカムラの里を訪れて以来、ハモンとの接触を試みていた彼女は、何度もハモンの元へと通う中で彼の職人としての姿勢や、冷厳な振る舞いをするかのように見える彼の内に秘められた温かみのある柔和な人柄に次第に惹かれてゆき、ハモンを篤く慕うようになります。

 

その後も、砦の防衛に向かうハモンにもしもの時のためのアイテムを渡したことがきっかけで距離を縮めたり、チーニョの趣味である絵のことでハモンと話題を作ることができたり、宴の席でチーニョ自らハモンにお酌をしたりなど、彼女は徐々にハモンとの親交を深めていくのですが、それに伴ってチーニョは、心から尊敬するハモンに対して自分の正体を偽ることに良心の呵責を覚え、ある時チーニョの口からハモンへ個人的に、自分たちの秘密が打ち明けられることになります。

 

このことが最終的に、里の技術が王国へともたらされることへの決定打の一つとなったのでしょう。彼女らの手引きでハモンに師事することとなったミネーレは、その実力や意欲の高さにハモンも感心し、ハモンの側も得るところが多かったというほどの素晴らしい加工屋であり、そして彼女もまた初めて訪れたカムラの里をいたく気に入っていましたから、ひいてはその人選を行ったチーニョらがいかにハモンに敬意を払い、技術を提供してもらうことに対して誠実であったかということも伝わってきます。

 

一方のハモンの方も、その本来の目的に関わらず彼女らがカムラの里に対して深く敬意を払っている姿勢には好感を抱いており、強引な仕方で里の技術を持ち帰ろうとするようなことは絶対にしないだろうという信頼を置いていましたから、チーニョに対しても、仲良くなる中でいずれその本来の目的を自分の口から打ち明けてくれるよいタイミングを待っていた、という感じだったのではないかなぁと思います(ライズ時代のいきさつについては以下の記事を併せてご覧下さい)。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

さて、サンブレイクでのチーニョはロンディーネと同様、主にカムラの里側の王域生物の動向を調査し対応するために、王国から正式に里に滞在するよう任務が下っています。エルガドでの武具の加工はミネーレが担当することとなり、ハモンもカムラの里に残ることになりましたから、彼を慕っているチーニョは引き続きハモンと過ごす時間が出来て、なんだか嬉しそう。本人はそんな個人的な理由ではないと照れ隠ししていますが、ハモンはカムラの里で己の道を追究し続ける姿こそ相応しい……というのは、筆者も彼女に大いに同意するところです。

 

フィオレーネ様が倒れたと聞いて、ロンディーネ様はエルガドとカムラの里を行ったり来たりの日々ですニャ。

わたくしもついて行こうとしたのですが、ロンディーネ様に、ここの仕事を続けるよう言われましたニャ。

たしかに、ここでロンディーネ様の留守をお守りできるのは、カナリーノ殿とわたくしだけ…。

わたくし、この任を…全身全霊で果たして見せますニャ!

(マスター★4 チーニョ)

 

ロンディーネが大事な用事でカムラの里を空ける時には、チーニョ達がその代理としてカムラ地域の部署を全面的に預かることになります。王国の中でも精鋭中の精鋭であるロンディーネと共に仕事をするということは、当然ながらチーニョも王国の中ではエリートであるわけですから、ロンディーネがこうした重役を任せるに足る仲間だということ。敬愛するハモンも自分たちの働きぶりを見ているであろうこともあり、これは気が引き締まる仕事です……!

 

さて、仕事の話もよいですが、チーニョと言えばやはり趣味の絵がとても上手なことが特徴。筆者などが見れば彼女の作品棚に飾られている数々の美しい風景画もすでに堂に入っているものだと思うのですが、そんなチーニョ自身はカムラの里に、絵描きとして尊敬している人物がいるんですよね。

 

先日ゴコク殿に、我が国のモンスターは どういった姿をしているのかと聞かれ、簡単にご説明いたしましたニャ。

するとゴコク殿は、そのモンスターをあたかもその目で見てきたかのように鮮烈に、見事に! 描かれましたニャ…。

しかも、ゴコク殿が描かれたと一目でわかるあの筆致…わたくし 改めて、感服いたしました。

わたくしも、もっともっと絵の腕を磨くべく 精進いたす所存ですニャ!

(マスター★2 チーニョ)

 

ゴコク様、相変わらず凄すぎです……。ゴコクもフゲン達とチームを組んで共にハンターをしていた頃は王国領の狩場にも足を踏み入れたことはあるでしょうから、王国のモンスターを全く知らないというわけではないにせよ、チーニョから話を聞いただけでそのモンスターを自分で見ているも同然の絵が描けてしまうというのは、言葉での情報からモンスターの姿かたちを組み立てる卓越した想像力のみならず、「その話なら骨格や体格はこんな感じだろう」「身体の各部位はこうなっているだろう」というような、生物そのものへの深い造詣がなければ不可能な芸当。

 

チーニョの実力を以てしてもなおゴコクが雲の上の存在のように感じられるというのも納得する話で、元は王国の任務で訪れたカムラの里で偶然、自分の趣味においても運命の出会いがあり色々なことを学ぶ機会を得たというのは、チーニョにとってはモチベーションを一層刺激される思わぬ偶然だったことでしょう。

 

これからも研鑽を続けることを改めて誓ったチーニョはその後まもなく、彼女にとってとても大切な作品づくりに取り掛かることを決意します。

 

……ニャニャァ、違うニャッ! あっ、これはこれは。失礼しましたニャ。今とても大事な絵を描いておりましてニャ。

このカムラの里の美しさを、今のわたくしの精一杯の力を込めて 描こうと思いましてニャ。

舞い散る花、澄んだ空気、穏やかな時間、心地よい香り、そしてあふれる笑顔… かならずや、表現してみせますニャ。

そしてニャ…もし、許されるのならば… できあがった絵を、ハモン殿に、受け取っていただきたく…。

ああっ、いけませんニャ! これは雑念ですニャッ! 集中、集中ニャ!

(マスター★3 チーニョ)

 

作品棚にもベルナ村やユクモ村の風景画があるのを見るに、チーニョは任務で色々な拠点を訪れた際に、その街や村の全体を題材とした絵を描く、ということを旅先での一つの集大成としているようですね。しかも今回は、最後に完成した絵を敬愛するハモンに受け取って欲しい、という密かな願望もあるようです。

 

しかしながらチーニョによると、彼女にとっての一つの節目となるであろうこの重要な創作は、現在のところなかなか難航している様子。その理由はおそらく、彼女がカムラの里に抱いている愛情の大きさのゆえであるように思われます。山紫水明の美しい自然、文化と歴史を感じる街並み、そしてここに住む人々の温かさ……なにか一つを丹精込めて緻密に描こうとすれば他の魅力を語るのに十分な余白がなくなってしまい、逆にそれらの諸要素を全て詰め込もうとすると、一つひとつの解像度が落ちてしまう上に絵としての焦点もぼやけたものになってしまう……モチーフに対する思い入れが強ければ強いほど、何をどう描くべきかという思考の迷路に一層深く嵌ってしまうこともあるというのは、およそ創作をする人の宿命なのやもしれません。

 

で、すっかり行き詰まってしまったチーニョは、その悩みをやはりハモンに打ち明けることになります。職人としての経験豊富なハモンであれば、こうした試練の乗り越え方や心の持ちようについても熟知しているのではないか……そんな手掛かりを求めてハモンに相談した彼女は、ハモンから実に意外な言葉を聞くことになります。

 

わたくし、ずっとカムラの里を描こうとしているのですが、まったく思うようにいかず…ハモン殿に相談しましたのニャ。

すると、「誰しも壁にぶつかることはある」と言ってくださり…まさか、ハモン殿にもそのようなことがあるニャんて!?

そう申しましたら「経験で壁の越え方も多少わかってはくるが、まだわからんことも多い。いまだ精進の日々だ」と…。

ハモン殿のような方でもぶつかる壁。わたくしのような若輩者であればもう、当たって砕けて当然ですニャ。

壁はいまだ目の前ですが、わたくし精一杯立ち向かってみますニャ!

(マスター★5 チーニョ)

 

変に元気づけるような言葉を掛けるのではなく、壁の前で立ち往生する苦しい気持ちに実体験を交えて共感するように話すハモンさん、決して自分の力に驕らないところや、口数は少なくても優しいところが好きなんだよなぁ……というのと同時に、ハモンが自身の仕事のことについて何か弱みのようなことを打ち明けるというのも珍しく、彼もチーニョ相手だからこそ、こういう胸中を打ち明けられているという側面もこの話にはあると思うんですよね。

 

長く親しい里の家族の皆だからこそ、逆に「自分が職人として壁に行き詰まる瞬間」という類いの心の奥底に持っているような話題をいざ話すような程よいタイミングが案外ないものだ、或いは改まってそういうことを話すのもなんだか気恥ずかしい、という気持ちもあるでしょうし、ハモンもそうした乗り越えるべき壁を、加工屋として里を支える自分であるために孤独に向き合うべき試練、として引き受けてきた部分もあるような気がします(特にハモン自身は、年長者として里の皆に背中で示す立場であるということもありますから)。

 

そんな中で、カムラの里出身ではないながらもハモンをとても慕っており、物の種類は違えど何かを創ることへの熱意を共有することができ、精神的にも成熟していて穏やかで落ち着いた人柄であるチーニョの存在は、ハモンが一時的にでも自らの立場を忘れて、職人としての意外な素顔や本心を見せる相手として、実はいつの間にか最も理想的な人物になっていたのではないか……なんて思ったりするんですよね(もちろんこれは、ハモンがカムラの里の家族に話しづらいことがあるという意味でその絆を否定するものではなく、あくまでもチーニョの存在によってハモンの新たな一面を見ることが出来た、という話です)。

 

ハモンを敬愛する彼女にとっても、そうして自分自身がハモンにとって一つ特別な存在になることができたというのは、とても喜ばしいことなのではないかな。……で、そんなハモンの話を聞いて、自分の限界を乗り越えるための心構えができてチーニョは、その後ついにカムラの里の絵を見事描き上げることができました。はてさて、これを受け取ったハモンの反応はというと……?

 

わたくし無事、カムラの里の絵を描き上げましたニャ。そして恐れながら、ハモン殿に差し上げたのですニャ。

恥ずかしながら、ハモン殿に受け取っていただけるだろうかという雑念を持ったまま 絵を描いていたわけですがニャ…。

ハモン殿は「誰かのために何かをすることが 雑念であるはずがない」と…。

「その "誰か" が、自分であったことを嬉しく思う」と…! そう言って受け取ってくださいましたニャ…!

ああっ、もう、わたくしは、わたくしは! 今まで絵を描いてきて本当によかったと! 心から! ニャー!

(マスター★6 チーニョ)

 

いやハモンさんイケメンすぎんだろ……。チーニョの控えめな振る舞いの奥にある溢れんばかりの真っ直ぐな親愛の気持ちを、これでもかというほどダイレクトに受けとめるハモン。チーニョも今までに見たことがないくらい狂喜乱舞しています。そりゃあ嬉しいに決まってるよねぇこんな科白を言われたら。

 

残念ながらチーニョの描いたカムラの里の絵を作中でお目にかかることは叶わなかったのですが、ハモンを想って筆を走らせた渾身の作品をこちらが覗き見るというのも野暮な話ですから、それは2人だけの思い出の中…ということで。カムラの里と王国との友好関係はこれからも続いていきますから、ぜひハモンとチーニョにも、今後とも末永く仲を深めていってほしいと思います。

 

3.カナリーノのからくり蛙特訓の道!

 

聞いて驚けニャ。フィオレーネ様とロンディーネ様の姉妹といえば、王国騎士の中でも腕利きとして有名な2人だニャ!

はぁ、やっと貴殿に本当の話ができるようになったニャ。これで、ロンディーネ様のすばらしさを思う存分伝えられるニャ。

ささ、我らがロンディーネ様がいかにして王国騎士の中でその名を轟かせてきたか、一晩かけて語って差し上げるニャ。

(エルガド出発前 カナリーノ)

 

最後は同じくロンディーネの従者のひとりであるカナリーノさん。3人の中では比較的新入りである彼女は、上司であるロンディーネのことをとても慕っておりまして、ライズ時代は主人公にいかにロンディーネが素晴らしい人物であるかということを語ろうとするも、うっかり交易商という建前を忘れて王国騎士としての活躍について口を滑らせてしまい、必死に撤回する……という一幕がありました。

 

自分たちの身分を明かしたサンブレイクでは、ついにその点について気兼ねなく触れることができるようになり、カナリーノも今まで極秘任務のために自重していた分を取り返すべく、思う存分ロンディーネのこれまでの活躍のことを主人公に聴いてもらおうと気合が入っています。「一晩かけて」というその大ボリュームから滲み出る熱量にはなんかこうウツシ教官的なアレを感じなくもありませんが、それほどロンディーネが部下からの人望が厚い、ということの証左でもあります。

 

ということで、ついにリミッター解除(昔のボウガン風)したカナリーノの語りは次の通り。

 

おや、こちらへ戻られていたかニャ。エルガドでの仕事はよいのかニャ?

それとも、美麗なる騎士ロンディーネ様の花の顔(かんばせ)を見たくなったかニャ? うむ、それならやむなしだニャ。

この美しさ、その目にしかと焼き付けるといいニャ。

でも女性の顔をぶしつけにジロジロ見るのは無礼だニャ。そうならない程度に、しかし確実に、その心に刻み付けるといいニャ。

(マスター★2 カナリーノ)

 

顔(かんばせて……またずいぶんと古風な修辞を……。「花の顔、月の眉」というように、この表現は文字通り人間の容貌の美しさを譬えたものであり、落語などにも登場するような格調高い言い回しです。サイズ的にルビが使えないモンハンのテキストウィンドウで、システムや技の説明とかでもなく普通の世間話においてわざわざカッコを使ってまで読み仮名を振って非日常的な単語を入れ込んでくるあたり、熱が入っているなぁと思いますね。世間話に読み仮名用のカッコが入ってくる台詞は、他はヒノエさんの「花篝(はなかがり)」とかほんの僅かしかない、結構レアケースな会話なのです。

 

さて、カナリーノといえば、カムラの里においてはオトモ広場のからくり蛙との因縁(?)があるキャラクター。カナリーノは王国騎士であるロンディーネの従者ですから、本業はオトモアイルーであると思われますが、彼女はモンスターは平気でもからくり蛙の見た目はニガテという、カエルが苦手で知られるハモンと波長が合う人物なのです。

 

実はカナリーノはライズ時代に一度、コガラシやイオリの手引きでからくり蛙の操縦席に乗せてもらったことがきっかけで苦手意識を払拭しかけたことがあるのですが、その後からくり蛙の頭が突然ガクンと落ちて顔が目の前に現れる(これは故障ではなく、からくり蛙の基本モーションパターンの一部)という悲劇を体験してしまったことにより、真の克服はサンブレイク編以降に持ち越しとなりました。そしてエルガドでのある出来事が、カナリーノの勝負魂に再び火を点けることになります。

 

フィオレーネ様が倒れられ、わたくしは決意しましたニャ。

いよいよ、からくり蛙への恐怖心を克服してみせるニャ! と!

わたくしがこの恐怖心に打ち勝ったとき、きっとフィオレーネ様も元気になられると!

こちらでは、こういったおこないを「願掛け」と言うと聞いたニャ。

これから毎日、からくり蛙へ挑むニャ。フィオレーネ様が元気になられるまで、力の限り、がんばるニャ…!

(マスター★4ライゼクス前 カナリーノ)

 

フィオレーネに元気になって欲しいという祈りが届くよう、カナリーノは自らがからくり蛙克服のための修行に励むという仕方で願掛けをすることにしたようです。ロンディーネの留守を預かりカムラの里部署の業務を担当するため、カナリーノはフィオレーネを直接見舞いに行くことはできないのですが、その代わりにからくり蛙克服の闘いという今の自分の目の前にある試練に挑むことで、病のつらさや恐怖と闘っているフィオレーネに伴走したい……というのが彼女の想いなのでしょう。

 

ちなみにこれまた細かい話ですが、神仏に願い事をする行為である「願掛け」というカムラの里の風習をすんなりと受け入れているところを見るに、王国の宗教的文化は「信仰」という仕方で人々に根付くほどはっきりとした輪郭を有するものではないか、或いは存在はしていてカムラの里地域の信仰とも合致する/衝突しないか、概ねどちらかであるということもこの会話から間接的に分かりますね。モンハン世界の信仰や宗教は地域差はあったとしても、全体としてはやはり多神教風味のある自然信仰が生活に溶け込む仕方でうっすらと存在するという感じで、唯一絶対の神が観念上にどーんと存在している、みたいなテイストではなさそうですし。

 

さて、フィオレーネの方は無事に復帰することができましたが、果たしてカナリーノの方は、からくり蛙を克服することができたのでしょうか。

 

からくり蛙への恐怖心を克服すべく、毎夜毎夜、からくり蛙へ挑み続けたニャ。それはもう、失敗の連続だったニャ。

あの日もわたくしは気を失ってしまったニャ。しかし、目を覚ますとそこはロンディーネ様のお膝の上…。

ロンディーネ様は、包み込むような笑顔で「がんばっていたのだな」とねぎらってくださったニャ。

聞けば、わたくしがからくり蛙に相対している間に、フィオレーネ様はすっかり元気になったそうだニャ。

本当によかったニャ。よかったんニャけど… からくり蛙は、まだ怖いままニャ。ぐぬぬ…。

(マスター★5 カナリーノ)

 

残念ながら、今回はからくり蛙に勝利することは叶わなかったようで、カナリーノが気を失っている間に、大切な姉の復帰を見届けたロンディーネはカムラの里に帰ってきていたようです。フィオレーネが元気を取り戻してくれたことは何よりの幸いであるとはいえ、「自分がからくり蛙を克服したら~」という願掛けの通りにはいかなかったことについて、カナリーノは少し気落ちしている様子。

 

しかしながらロンディーネも言うように、毎晩欠かさず苦手なものに挑み続けたという努力自体がすでに素晴らしいものですし、おそらくロンディーネも、カナリーノが鬼の特訓メニューに取り組み始めたのはメル・ゼナの一件でフィオレーネが倒れて自分がエルガドに行くようになってからだということには気が付いているでしょうから、「カナリーノも自分なりの仕方でフィオレーネの無事を祈ってくれていたのだろう」とロンディーネもその裏にある想いをきっと汲み取ってくれているでしょうし、それはロンディーネにとっても、何物にも代えがたい心の支えになるのではないかな。

 

ですから、当初の願掛けの内容を額面通り達成することはできなかったといえど、「自分が頑張ったのを天は見てくれていてフィオレーネに力を与えてくれたのだ」と、カナリーノにはぜひ自分のことを心の中で褒めちぎってあげて、今後の自信にしてほしいと思います。これからも努力家なカナリーノのことを、(彼女が気絶しない範囲で)応援してあげたいですね。

 

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ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!