エルガドの凸凹名コンビ①

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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お久しぶりです。およそ2か月ぶりのブログ更新となりました。本記事ではエルガドの調査隊員のガトリンと、その教育係であるスーの2人をご紹介。調査隊の中でも、共に機材整備や砦の改築等を担当する技術者としてエルガドで活躍する2人ですが、明るくマイペースな若手のガトリンと、苦労人ながらとても後輩想いな先輩のスーのやりとりは、噛み合っているようで噛み合っていないようでやっぱりなんか噛み合っており、エルガド屈指の凸凹コンビとして、くすっと笑える楽しい掛け合いを見せてくれます。本記事ではそんな2人の人となりに迫っていきましょう。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.ガトリンとスー、調査隊の凸凹師弟コンビ

 

気づかなくて、すみませんッス! あたし…書かないとイマイチ覚えられないんスよね。

あ…! もしかして ○○さんッスか? あたし、ガトリンっていうッス!

まだまだ新人扱いされてるんスけど、いや、実際のとこ新人なんスけど…。

でも、いっそ期待の新人ってことで どうぞよろしくお願いしますッス!

(エルガド到着直後 ガトリン)

 

ガトリンは調査隊員の整備士のひとりで、調査隊の中ではかなり若手のメンバーとなっています。とてもポジティブな性格である彼女は、自分のことを「期待の新人」と豪語していますが、これはまったく謎の自信というわけでもないようで、彼女の技術者としての才覚は、自他共に認めるところとなっています。

 

あたし、今はまだ頼もしい先輩たちに頼ってばっかりッスけど、すぐに追いついてみせるッスよ!

これでも、整備の腕にはキラリと光るものがあるッス!

教育係のスーさんだって、いつもそう言ってくれてるんスから! …そう、言ってくれてた気がするッスから!

(エルガド到着直後 ガトリン)

 

あれ……急に今までの自信が……? 一応、ガトリンの整備のセンスがよいという評価は彼女の記憶違いとかではなく、同じくエルガドの整備技師にしてガトリンの教育係でもある、スーも認めているというのは事実です。事実……なのですが……。

 

お初にお目にかかるニャ、ハンター殿。私は調査隊の設備担当ニャ。よければ、「スー」と呼んで欲しいニャ。

ついでに、同じく設備班で新人の「ガトリン」のこともよろしく頼むのニャ。じつは私、あの子の教育係でもあるのニャ。

まだ仕事の出来にムラはあるけど、整備のセンスはいい子なのニャ。…きっと、……そのはずなのニャ。

(エルガド到着直後 スー)

 

あれれ……ガトリンの才能を見込んだはずの師匠のスーさんまで自信が揺らいできている……? ……というのも、なぜスーが「ガトリンは優秀な技術者」だと断言しかねているのかといいますと、ガトリンは整備のセンスについてはピカイチなのですが、所々のミスが絶えないようで、「仕事を終始カンペキにこなす」という域にまでは、まだ到達していないようなんですよね。

 

あ、○○さん。ちょうどよかったッス。さっきやっとスーさんのお説教が終わったところッス。

スーさんってば、何回も同じことであたしを叱るんスよね~。それを繰り返し聞かされる方も、あんま楽じゃないッス。

……あれ? それってもしかして、あたしが同じミスしてるってことなんスかね…? …まっさかぁ~。

(エルガド到着後 ガトリン)

 

確認不足で同じミスを繰り返してしまうという課題について、ガトリン本人は自覚症状があるようなないような…。元々のセンスが優れているだけに、「大体なんとなくオッケーの仕事」ができるまでのカンを掴むのが早かったぶん、そこから「ミスやムラのないパーフェクトの仕事」のレベルまで引き上げるのに却って苦労してしまうという感じなのかな~。学校や資格の試験とかでも、成績を50点から90点に上げるよりも、90点を100点に上げるほうが難しかったりしますよね。ある意味では、天才型のガトリンならではのムズカシイ悩みという感じ。

 

私だって本当は、ほめて育てるほうがよっぽど得意なのニャ。

でも、ガトリンは調子に乗ると 作業が雑になる悪いクセがあるのニャ。教育係も、なかなか難しいものニャね…。

(エルガド到着直後 スー)

 

彼女の指導をするスーも、ガトリンがどうしたら仕事でのミスを減らせるようになるか、というのは中々思案のしどころです。勢い任せに作業をしてしまうのを自分でコントロールできるようにする、というのは確かに肝要ではあれど、必要以上に厳しく指導をしてしまうと、それが却って彼女の長所であるセンスとポジティブさを削いでしまうことにもなり、それはスーにとっても本意ではありません。

 

一応、ガトリンの名誉のためにフォローしておくと、技術者としてはまだまだ未完成な彼女ではあれど、その感覚の鋭さについては本当に非凡なものを持っていて、自分が関わるエルガドの機材に対してすごく愛情を注いでいるんですよ。その一端が垣間見えるのが次の会話。

 

う~ん…、煙突から吹き出す蒸気の音に、クレーンのアームがきしむ音…。いいッスよね~。

いつも同じに聞こえるかもッスけど、調子が悪いときは、ちょっとだけ違うんス。ほら…今日もッス。

音の違い、やっぱり気になるッスか? あれ? 全然? ま…気にならなくっても今度、あたしが教えてあげるッスよ!

(マスター★4 ガトリン)

 

蒸気やクレーンの音…? 筆者は自分の身の回りでこの手の重機の音を注意深く聞こうと思ったことはありませんから、あまり断定はできませんが、音を聞いてクレーンのコンディションを知るという芸当、おそらく常人には無理ですよね……? なんというかこう、ナカゴが砂鉄を見てその産地を当てられるというのと同じような香りがします。

 

エルガドの設備の作動する音をしみじみと堪能している辺り、ガトリンは自分の仕事相手である砦の機材のことが本当に好き! という感じです。彼女にとってはそれらは機材の「音」というよりも、むしろその「声」であるという感覚なのかもしれません。好きこそものの上手なれとよく言いますが、師匠のスーにも一目置かれる彼女のセンスは、何よりもまずそこに起因しているのでしょう。……で、このほとばしるセンスを安定して仕事の成果に結びつけるために、ガトリンには次のようなことが必要であるとスーは分析しています。

 

ガトリン…整備のセンスはいいのに、仕上げがイマイチ安定しないのニャ。理由はひとつ、感覚に頼りすぎなのニャ。

あとはセンスを裏付ける知識と理論が備わってくれれば…あの子は将来、一流の技術者になってくれると思うのニャ。

[後略]

(マスター★3 スー)

 

整備を細部まで漏れなく完遂するために必要なことは、業務の基礎の徹底。その基礎であるところの理屈の部分を土台として固めることで、ガトリンのセンスが正しく仕事に活きてくるのだとスーは考えているようです。一方でガトリン自身は、今の自分の実力についてどのように考えているかといいますと……。

 

職人は勘が大事、って聞いたッス。あたしも自分の感覚を大事にして、何かいい感じに整備するのは得意ッスよ!

たしかに、たま~にちょっとマズイときもあるかもしれないッスけど、失敗もまた経験のうちッスよね!

それに、そういうときのために教育係がいるんだと思うんスよね。だからあたしの失敗は、スーさんの失敗ってことで!

(マスター★3 ガトリン)

 

彼女自身も、自分が「職人としての勘」に基づいて作業をすることは得意である一方で、たま~にやらかしてしまうこともあるという自己分析は持っているようです(彼女の言うところの「たま~に」というのがどれほど客観的な評価なのかは分かりませんが)。後者の課題について本人がいたってポジティブな様子で、あまり深刻そうに捉えていないのは幸か不幸かという感じですが、「そういうときのためにスーさんがいるんで!」と謎に開き直っているのを推測を交えていま一つ深堀りするならば、ガトリン自身も自分がセンスやカンの部分に少なからず依存していることや、体系的な知識や理論といった難しい部分に触れることを無意識に苦手に感じて避けていたことを薄々自覚していて、そんな自分に厳しくも懇切丁寧に指導してくれるスーに対しての、ガトリンなりのリスペクトでもあるのかな~と思ったりもします。

 

何はともあれ、ガトリンが整備の実力を伸ばすために今いちばん必要なものは、整備作業の全体像を把握して、それぞれの業務の要点や留意すべき点を頭の中で整理すること。……で、それでいうと、ガトリンがいつも手に持っているノートのようなもの、恐らく作業日誌的なヤツだと思われますが、彼女は主人公との初対面時にもこのノートに熱心に色々と記入していましたから、そうした彼女の習慣的な取り組みが、今後の成長にかなり役に立ちそうなのでは……と、思っていたらですよ。

 

…またまたガトリンの集中力が切れているニャ。分からないかニャ? ハンター殿。

いつも通りに作業記録をつけているように見えて…あの子は今、エルガドのうさ団子人気ランキングをしたためているニャ。

まったく、油断ならないニャ。この前ノートをのぞいたときには、特命騎士の観察日記をつけていたのニャ。

(マスター★1 スー)

 

これなんです、ええ。スーがガトリンに何かと手を焼いているもう一つの理由は、このような自由人すぎる彼女の行動なのです。ガトリンの日誌の内容にやたらと詳しいのは、以前もガトリンが趣味に興じているのを目撃して、窘めたことがあるんでしょうね。…まぁ、うさ団子ランキングにしても特命騎士の動向調査にしても、先の機材の調子を音で聞き分けられるという話と同様、何か大きな関心を持った物事をかじりつくように調べる彼女の熱心さを示すものではあるのは確かですが、それにしてもその熱意がもうちょっと本業の方に集中的に向けられるといいなぁ……うーん……。

 

とはいえスーの方も、ガトリンが日誌に業務とまったく関係のないことを書き連ねているからといって、それを逐一注意することはあるとしても、日誌を無理やり没収して強引にでも仕事をさせる、というような指導はしていないようです。本人がそういう高圧的すぎる教育方針を苦手としているからというのもありますが、スーはあくまでも共に職務にあたる中で、ガトリンが自ら意識を高めるのを促し、成長を待つというスタイルが基本のようですね。……まぁ実際のところ、逆説的な話ではありますが、サボっているガトリンを見て短気に怒鳴ったりしないような、器の大きいスーが先輩だからこそ、ガトリンがのびのびマイペースに行動してしまっているという面も否めなくはありませんが……。

 

スーたちの作業場の後ろの会議場で、フィオレーネがガレアスに叱られている一幕を目撃したときには、スーはこんな一言をこぼしています。

 

ガトリンの場合、フィオレーネ殿くらい一生懸命になってくれたほうがいいと思うのニャ。

それでやっと、私の仕事が少しは楽になると思うのニャ。…ニャ~。いつになるのやらニャ。

(マスター★2緊急前 スー)

 

騎士の使命に文字通り身命を賭して臨もうとするがゆえに、ガレアスに宥められるフィオレーネ。そのオーバーすぎるやる気をガトリンに分けてあげれば、確かに双方ちょいどいい感じになるかも……。

 

ガトリンの仕事に対する集中力が散漫であるということと、彼女が砦の設備が好きだということとは一見すると矛盾することのように思えますが、ガトリンの行動の動機は「興味」にベースが置かれていると考えると、技術者としての仕事が好きという芯は確固たるものとしてあるのだけれど、座学的に身につけなければならない体系的な基礎がおろそかになってしまったり、短期的に強く関心を引くような物事が身近に起こると、ついそちらに目移りしてしまったりする……という感じなのかな~と思います。

 

エルガドの各人が調査隊への参加を志願した理由というのは銘々あるでしょうが、ガトリンの場合は王国の異変が云々であるとか、技術者として早く成功したいという野心というよりは、機材や設備に触れるのが好きだから、というシンプルな動機が最も優位なのではないかな。もちろんそれ自体については、とても素敵な理由なんですけどね。

 

ちなみに、ガトリンの「明るくポジティブで才能バッチリ、でも仕事中にちょっと気が抜けてしまうことがある」という点について、彼女と波長が合う人物がエルガドに1人います。

 

この奥に調査隊員のガトリンって子がいるの 知っていますか?

あの子、テンションというか… オレとノリが似てて、話し出すとすごい盛り上がっちゃうんですよ。

話し込みすぎてると、ルーチカさんが鋭い視線を向けてくるので、そこで解散するまでがセットです。

(マスター★4 ジェイ)

 

ガトリンもジェイも共に調査隊の中では新人で年齢も近く、雰囲気も似ていますから、仲良くなるのもわかるなぁ~。しかしながら、その二人がたまたま持ち場が近かったゆえに、仕事中にもついつい雑談で話し込んでしまうという状態に。ジェイの背後にはルーチカ、ガトリンの背後にはスーの視線がそれぞれ光っており、2人の先輩の監視に挟まれているわけですが、そんな中でもへこたれない(?)2人の肝の据わり方は大したものです……。

 

……と、話を戻しまして、このようにセンスは抜群でも今一つ精彩を欠くところのある仕事ぶりや、お世辞にも勤勉とはいえないマイペースなところを見て、スーは今のガトリンに決定的に不足しているものを見出します。

 

ガトリンの仕事ぶりを見ていて、だんだん足りないものが見えてきた気がするニャ。

それは、"緊張感"ニャ! 大穴の調査は王国の一大事、それにふさわしい態度が必要ニャ!

…でも、まだまだ道のりは遠いのニャ。あの子は本当、お気楽でうらやましいのニャ…。

新人の教育係を引き受けたからには 私がしっかりと責任を持って、一人前にしてみせるのニャ。

だから、くじけずに最後までやり遂げるのニャ! …がんばるのニャ、私!

(エルガド到着直後 スー)

 

ガトリンにはもっと緊張感を持って仕事に臨んでもらえるようにしたい、と教育係としての目標を定めるスー。もっとも、ガトリンがマイペースなふるまいをしてしまうのは、もちろん彼女自身の元来の性格も大きな要因ではあるのですが、それとは別に、以前の王国騎士の記事でエルツが言っていたように、今回の異変は「王国の一大事」であるとは言えども、その中心的な存在であるメル・ゼナは、50年前の王都襲撃や疫病の時に立ち会っていない多くの若い人々にとっては「王国史の一端」にすぎず、王国の危機ということを頭では理解していても、今一つ実感を持ってそれを受けとめることは難しいという一面もあります。

 

スーやエルツのように成熟した人物であれば、そのような事にも当事者意識を持って臨むことができるでしょうが、調査隊の中でも特に年少者であるガトリンにおいても同じ意識を醸成するというのは、すぐには出来ないことかもしれません。そこに彼女自身の自由人な性格も入ってくるとなれば、尚更「言ってすぐにわかる」とはならないもの。

 

そんなわけですから、主人公を迎えてエルガドでの調査が本格化すると同時に、スーも一層気を引き締めて、自分自身の姿を通じて、エルガドの調査隊の責務とは何たるかをガトリンに少しずつ示していこうとします。

 

騎士団やハンターの皆が 一気に色めき立っている様子ニャ。

こういうときこそ…私はドンと構えるニャ。そしてガトリンに、調査隊ギルドの覚悟と姿勢というものを見せてあげるのニャ!

(マスター★2 スー)

 

……しかしながら、親の心子知らずもとい、師匠の心弟子知らずということなのか、そうしたスーの熱い心意気は、どうしてなかなかガトリンには伝わらない様子。

 

スーさん、さっきから妙に真剣な表情してるんスよね。…どうしたんだろ。

ははーん……。なるほど、分かったッス!

…たぶんあれって、おトイレをガマンしてるんスよ。

しょーがないなぁ。…よし、ちょっとだけあたしが持ち場、代わってあげるッス!

(マスター★2 ガトリン)

 

スーが真剣な表情をしていることに気づいてもらえたまでは良かったのですが、それをガトリンには「おトイレをガマンしてる」と思われてしまっています。うーん、作戦失敗………いや、「おトイレ我慢してる先輩の代わりに仕事をしよう」というやる気にはさせているわけですから、結果的には効果があったと言えるのか……? 噛み合っているのやらいないのやら。

 

一般論として、仕事場で自分の先輩の雰囲気が違っていたら、何となくでもそれを感じ取って自分も背筋を伸ばそう、とか思ったりしそうなものではありますが、ガトリンはスーのことを「先輩として敬っている」という様子があまりないんですよね。というのは、誤解のないように先に言っておくと、これはガトリンが明るく人懐っこい性格で、誰の前でも自然体でいられるが故の振る舞いという感じで、彼女は調査隊の先輩たちのことを頼もしく思っていると以前の台詞では話しており、決して先輩を甘く見ているというわけではありません。ガトリンは心の中では先輩としてスーを非常によく慕っているのですが、それが分かりやすい形で表出するわけではない、という感じ。

 

あっれー? バハリさんって まだ帰ってきてないんスか?

さっきクレーンのアームをよさげな感じに調整したんで、意見聞いてみたかったんスけどね…。

う~ん…。しょうがないから、スーさんにでも聞いてみるッス!

(マスター★2アンジャナフ後 ガトリン)

 

こんな感じで、バハリ案件の作業について、スーに意見を求めたりすることもあり、経験豊富な先輩として、スーのことを頼りにしている場面もあります。……なのですが、彼女の会話を色々聴いていくと、彼女の最も身近な存在であるスーのことは、先輩というよりは友達みたいな感覚で接してる雰囲気があり、これがまたフリーダムでとても面白いんですよね(スーさんごめん)。以下、いくつか台詞を見ていこうと思います。

 

う~ん…宿主がいなくなったはずのキュリアが、なぜか元気に動き回ってるみたいッスね。

もしかして、アレじゃないッスかね。おっかない上司がいないから いつもよりも、のびのびしてる的な…?

たとえば、スーさんが非番のときのあたしみたいな…? なーんて、冗談ッスよ、ジョーダン!

(マスター★5シャガルマガラ後 ガトリン)

 

宿主メル・ゼナを失ったのに活き活きしているキュリアの話を聞いて、貫禄の(?)このコメント。キュリアの動向を考察してみせているように見せて、ちゃっかりスーがいない時は気が緩んでいるということを自白してしまっています。というか、ガトリンはスーがいたところで日誌にうさ団子ランキングとかバリバリ書いてたりするんですから、彼女に関しては上司がいてもいなくてものびのびしているような気がするのですが……。

 

あたしも見せてもらったッスよ! あのキュリアってやつ。あれッスね~、単純に…キモいッス。

夢に出てきそうなんで、何かカワイイものでも見て 気をまぎらわせるしかないッスね。

例えば…おっきなあくびを必死に隠しているつもりで、ぜんぜん隠しきれていないスーさんとかッス!

(マスター★3イソネミクニ亜種後 ガトリン)

 

あくびをしている上司を「カワイイ」と評するガトリン。やはり友達みたいな扱い……というよりもはや、本来なら彼女の教育係であるところのスーが、逆にガトリンの観察対象になってしまっています。ガトリン……「眠そうなスーさんのためにあたしが仕事がんばるッス!」みたいな感じでやる気出してくれてもいいんだよ……!

 

それにしても、あの真面目なスーが勤務中に隠そうとしても隠しきれないほどの欠伸をするというのは、相当仕事の疲労が溜まっているご様子。実はこれに関して、スーのお疲れのおそらく原因となっていることが本人の会話から聴けたりします。

 

最近は改修と補修作業ばかりで手一杯なのニャ。こうしている間にも 書類仕事がたまっていく一方なのニャ。

資材の管理に、追加資材の発注書類…。作業予定と、勤務記録に施設のチェック…。ニャニャニャ―…ッ! 忙しいニャー!

まったく、ルアンはどこに行ったのニャ? ハンター殿、どこかで釣りばっかりしてる船員がいたら、捕まえてきて欲しいのニャ。

(マスター★3 スー)

 

ルアン……君も仕事サボってるじゃないか……! ルアンというのはまた別の記事でご紹介する予定ですが、主人公の自室のある船の横の桟橋でいつも釣りをしているアイルーの船員です。

 

(マスター★5 ルアン)

出港の予定がないときはルアンも調査隊ギルドの一員としての業務があるようなのですが、スーの所に顔も出さずに釣りに夢中になってしまっているせいで、本来なら分担して行うべきタスクがすべてスー1人に集中してしまっているという状況に。そりゃ勤務中にあくびも出るわ……。ガトリンにルアンにと、同じ班に同時に2人も自由人を抱えてしまっているとは、スーさんの苦労人ぶりが窺えます。

 

(マスター★3 スー)

とまぁ、以上のような感じで、自分たちはなかなか上司と部下の関係の一般的な理想には遠いことを少し嘆いていたりもするスーですが、色々と手を焼く部分はあれども、それはそれとしてガトリンの事はやはり部下として大切に想っていて、仕事終わりにガトリンを食事に誘って、労わってあげるシーンもあったりします。

 

近ごろは、大変なことが続いてるニャ。たまにはガトリンを誘って、うさ団子でもごちそうしてあげようと思うのニャ。

でもあの子、ぜんぜん遠慮しないのが困りものなのニャ。…もしかして、食べ放題と勘違いしてるんじゃないかニャ?

(マスター★5 スー)

 

そして、先輩のおごりだからということで全く遠慮のないガトリンである。それでもスーは何度もガトリンのことを食事に連れて行ってくれるわけですから、ガトリンは愛されていますね。

 

スーは自分の仕事もある上でガトリンの教育も担当しているのですから、彼女のわるいクセが治らないならもう少し厳しく接してあげてもよいのでは、という選択肢もあるのですが、先の台詞にもあったように、スー本人は教育係としては欠点を指摘するよりも褒めて伸ばす方が性に合っていて、指導については今一つ割り切って厳しくなりきれないところがあるようです。

 

ガトリンにしっかり仕事の話を聞いてもらうには…先輩の威厳を見せつける必要があると思うニャ。

でも、威厳ってどんな感じなのニャ…? 怒ると恐~い感じかニャ?

…フーッ! ニャニャーッ! フギャーッ! …ニャ~、だめニャ。慣れないことをすると疲れるニャ…。

(マスター★4緊急前 スー)

 

「威厳を出すニャ」といって結局フニャフニャな感じで空回りしているスーさん(かわいい)。何かと不安定なところのあるガトリンを辛抱強く見守りながらこれまで育ててきているのを見るに、スーは厳格な上下関係を築くというよりも、部下のことを理解しながら近い距離で指導していく方が本来の気質としては向いている感じがしますよね。もちろん、あまりにも自由すぎる部下を持ってしまうと、その分それをコントロールする加減が難しかったりして色々と苦労することになるわけでもあり、ガトリンの個性を大切にしながらも技術・精神共に一人前の整備士に成長させるのは、ある意味ではなかなかの茨の道でもあります。

 

それでもスーがガトリンの指導に力を尽くしているのは、教育担当としての責任もさることながら、ガトリンが技術者としての得がたい素質と個性を持っていて、スーはそこに大きな魅力を感じているからでもあるんですよね。スーが高く評価しているそのガトリンの能力というのは、先に話したような整備のセンスという以外にも、エルガドでの彼女の人柄に関するものもあり、ある意味ではそれは整備士の勘の良さ以上に、技術者としてのガトリンを特徴づけるものとなっています。

 

2.ガトリン、実はできる子なんです

 

あの~、○○さん。経験豊富なハンターのご意見、聞かせて欲しいッス。

エルガドの設備を改修してるんスけど どこか使いにくい所とか、足りないものとかないッスか?

こういうのって、やっぱり実際に使う人の話を聞いてみないと…細かいところの不満までは、よく分からないんスよね。

(マスター★3 ガトリン)

 

技術者としてのガトリンのキラリと光る長所であるのが、エルガドの皆と気さくに会話を交わして意見を集めるという、このコミュニケーション能力の高さ。彼女らのようないわゆる技術職の仕事というと、製作物を完成させるために黙々と作業に打ち込んでいるというイメージが先行しがちで、コミュニケーション能力はそれほど必要とされないという印象を持たれることもありますが、実際はむしろ逆なんですよね。

 

もちろん、じっくりコツコツと作業に努めるというのも、量的には業務の大部分を占めるものではあるのですが、他の人が利用するための物を作る、或いはこういうものが欲しいという依頼を受けて物を作るという仕事を行う以上、どういう設備や機能があったらよいかというニーズを汲み取り、言語化し、設計に落とし込んでいくというコミュニケーションは非常に重要なもの。更に1人ではなくチームで製作を行う場合は、作業段階において各人の担当部分の間でズレやひずみが生じ、全体として破綻が発生しないように、全員の認識をきちんと擦り合わせて統一しておくということも肝要になります。

 

そうしたコミュニケーションの素養は技術者としての訓練だけで身に付くものではありませんから、ある意味では整備の腕以上に貴重なものであり、誰に対しても自然体で気さくに振る舞えるガトリンの人となりの成せる業といったところ。この点は彼女の先輩のスーも一目置くところとなっており、実際にエルガドの施設改修にも大きく貢献しているようです。

 

みんなの意見を聞き取りながら、それを拠点の改修に反映させていくのも 私たちの大事な仕事のひとつなのニャ。

そんなとき、ガトリンの人なつっこさが とっても助かるニャ。エルガドのみんなも 気軽に話してくれるのニャー。

(マスター★4 スー)

 

前の項で話したように、ガトリンは日ごろの業務に取り組む姿勢にはやや波がある人物ですが、いざこうして「自分の仕事が直接に誰かの力になれる」という明確なヴィジョンがあるときの彼女は、何となくいつもよりも一段と目がキラキラしている感じがするんですよね。整備のセンスと機材オタクチックなところはもちろんなのだけど、それ以上に彼女は整備を通して関わる「人」も好きなのだなぁと思います。他にも、ガトリンの「人の役に立ちたい」という意気込みが伝わるシーンがこちら。

 

集落の近くでモンスターが暴れたなら、設備担当のあたしらで、復旧の手伝いくらいはできるかもしれないッスね。

…もちろん、安全になってからの話ッスけどね。そんなワケで、頼んだッスよ、○○さん!

(マスター★3緊急前 ガトリン)

 

ガランゴルムが王域内の集落を襲いながら縄張りを拡大しているという異変の報を聞いた後の、ガトリンとの会話。先の台詞と順番が前後しましたが、この台詞は作中でガトリンが率先して調査隊としての役目を果たそうと意志表明をする初めてのシーンで、王域三公との初の接触でエルガドでの調査が佳境に入る時期と相俟って、個人的には非常に印象深い台詞の一つです。あるいはここで醸成された「自分の仕事で誰かを助ける」という実感が、後の彼女の大成長を支える起点となったものであるのかもしれません。

 

ガトリンが珍しくいいことを言ってたニャ。でも、その通りなのニャ。私たちの技術は人助けにも貢献できるものなのニャ!

あの子も少しは技術者らしくなってきたようだニャ。きっと、教育担当の教え方がすばらしいんだと思うニャ。

(マスター★3緊急前 スー)

 

エルガドの技術者はいかにあるべきかということを徐々に掴みつつあるガトリンに、教育係のスーも喜びの表情。最初は「おトイレをガマンしている」などという言われようだったスーの真剣な姿勢が、こうして少しずつガトリンにも伝わっていき、彼女の自発的な気付きを促しているのは確かなことであるように思います。苦労人のスーさんはもっと自分のこと評価していい。高圧的な指導が不得手であるからこそ、ガトリンの成長に根気よく付き合うというスーのスタイルが、じわじわと実を結んでいますね。

 

他にも、その後のキュリア捕獲作戦では、ガトリンが自ら動いて主人公やバハリに働きかけるシーンも。

 

モンスターを捕まえなきゃいけないみたいッスけど、もしかして箱とか檻とか…何か必要だったりするッスか?

大きさが分かれば用意くらいできるッスけど……、…え? 小動物くらいかも、って感じッスか?

りょーかいッス! バハリさんにも確認して捕獲に備えておくッス!

(マスター★3イソネミクニ亜種前 ガトリン)

 

こちらもチームで行う作戦において、自分が仲間の役に立てることを見つけた時には非常に積極的で生き生きとした表情を見せてくれるガトリン。その後の捕獲作戦は、彼女が用意してくれた檻のおかげで滞りなく成功していますから、やはり一つの目的のために協力して作業を行うときの彼女の仕事のクオリティはピカイチです。こうして上司のバハリなどにも気軽に話しかけて提案ができるのは、スーも評価していたガトリンの明るさや人懐っこさのおかげですね。

 

ちなみに、当のガトリン本人は、ミステリアスなオトナの女性になることが将来の目標(?)なご様子。

 

薬師のタドリさんって、なんだか独特の雰囲気ッスよね~。バハリさんとはまた違って、落ち着いたプロ感があるッス。

あたしも、あの不思議なオーラをかもし出せるようになれば… デキる女っぽく見えるかもッス!

(マスター★4ライゼクス後 ガトリン)

 

本人の元々の気質的にあまりそういうのは向いているようには思えませんが、逆にガトリンがタドリのような感じを目指したらどうなるのかというのも逆に(?)ちょっと気になるところ。デキる女にも色々なタイプはありますから、自身の長所を大切にして成長して行ってほしいものです。

 

3.ガトリンの成長を見届ける

 

さて、ここまで見て頂いたように、ガトリンとスーは噛み合っているようで噛み合っていないようでやっぱり何か噛み合っている、さながら漫才コンビのような先輩後輩の関係にあります。センスと熱意は抜群ながらマイペース自由人なところのあるガトリンと、そんなガトリンに何かと手を焼かされる苦労人ながらも、それでも後輩の成長を根気よく見守っていく優しい先輩のスーは、一筋縄ではいかないながらも、心の底ではお互いのことをすごく信頼していて大切にしていますよね。

 

サンブレイクの物語での人間模様は、主要人物であるところの「猛き炎とフィオレーネ」の関係を筆頭に、「2人1組」の相棒・バディ・親友etc. といった青春アミーゴ的な構図において(筆者の世代が……)描写されるキャラが多く、同じ所属の先輩後輩であるスーとガトリンの仲も、まさしくその一つに数えられるものとなっています。フィオレーネが猛き炎との共闘の中で騎士として大きな精神的成長を遂げたように、新米調査隊員であるガトリンがスーの元で技術者として一人前に成長していくのを見届けるのが、筆者としてはとても楽しいんですよね。ブログ書くのは遅いけどな。

 

で、スーとガトリンの凸凹な関係も、ストーリーが佳境に入るにつれて、少しずつ進展してゆくことになります。

 

さっきからどうしたのニャ…? あんなに真剣な様子のガトリンは 今まで見たことないニャ…。

ついに分かってくれたのかニャ…! それでこそ調査隊の一員ニャ! それが本来あるべき、仕事への姿勢ニャ!

(マスター★4 スー)

 

調査隊とメル・ゼナとの初邂逅を境に、急に凛々しい表情へと変貌を遂げた様子のガトリン。そんな彼女を見て、スーは「とうとうガトリンに自分の気持ちが伝わったのだ」と、彼女の成長を、そして教育係としての努力が実ったことを喜んでいます。……さて、当のガトリンはどういう心持なのかといいますと……。

 

騎士団の人たち、妙~に真剣ッスね…。なるほどなるほど…ついにあたしも本気を出すときがきたかもッス!

とりあえず、表情だけはめっちゃキリッとシリアスな感じで、周りのみんなに合わせるところから始めるッス…!

………。 …キリッ! やばっ、口に出しちゃったッス。

(マスター★4)

 

ガトリン的には「なんか周りが神妙な面持ちなので、とりあえず自分も表情だけでも真剣になっておこう」ということだったようで、スーが言っていたように「ガトリンがついに調査隊のあるべき姿を理解してくれた」のかというと、うーん、まだまだ道のりは遠そう……と、見せかけてですよ。

 

先述のマスター★2の台詞では、王国騎士団やハンターたちの本格始動で引き締まるエルガドの雰囲気と、それに伴い調査隊として相応しい姿勢を背中で見せようとするスーの様子を見てもいまいちピンと来ていない様子だったガトリンが、ここでは周囲の空気感に対してアンテナを張れるようになっていて、とりあえず表情からでも皆と同じ方向を向こうとしているというのは、彼女からすればとてつもない成長なのです。スーの期待している通りには必ずしもいかなくとも、ガトリンは着実に、王国の異変に立ち向かう調査隊ギルドの一員としての大きな一歩を踏み出しつつあります。

 

そしてこの「形から入る作戦(?)」は功を奏し、ストーリー終盤において、本当にガトリンの本気を開花させることになります。

 

おつかれさまッス、○○さん! あたしもさっき、あの大型船の最終調整を手伝って来たところッス!

あたし以外も、エルガドの設備班がみんな総出で出発準備してるッスから、心細いことなんか全然ないッスよ。

だから、最強に安心していってらっしゃいッス! ○○さん!

(マスター★6緊急前 ガトリン)

 

ガトリン……あんた立派になって……(誰)。のほほんとしたいつもの振る舞いはどこ吹く風、未だかつてないほど懸命に、まっすぐに、調査隊の仕事に取り組むガトリンの姿。「最強に安心してほしいッス」と一抹の不安も感じさせない、彼女らしい明るい応援が、この際は不思議な説得力を以て身に沁みてきます。教育係のスーも、彼女が大型船を真剣に整備する様子をずっと見届けていました。

 

今はみんな、あの古龍を討伐するために 準備で一生懸命なのニャ。でも私は、違うことで胸がいっぱいなのニャ…。

さっき、大型船の整備を手伝うガトリンを… ひたすら真剣なガトリンの仕事ぶりを見て、つい…目に涙が浮かんでしまったのニャ…。

ニャニャ…、こんなときに変なこと言ってごめんなのニャ。でも私、あの子の成長がすごく嬉しかったのニャ…。

それに、ガトリンがあんなに心を込めて整備したのニャ。あの大型船はきっと、みんなを守ってくれると思うのニャ!

(マスター★6緊急前 スー)

 

ガトリンがエルガドで成し遂げた大仕事と、仲間の力になりたいという彼女の想いに、スーがここで限りなく信頼を置いているのが本当に良いんだよなぁ…。エルガドは色々な所属や立場の人々が、新人からベテランまで、銘々の目標や想いを抱えながら王域の異変解決のために集結して仕事をしている場所であるからこそ、こうしてガトリンのように仲間の成長を感じられる瞬間というのが、とても嬉しいんですよね。

 

この狩猟船の整備の仕事を経て、ガトリンは深淵の悪魔討伐後には、スーに一人前の技術者として認められるようになりました。

 

○○さん、朗報ッスよ! あたし、ひとりでいろんな所の作業を任されるようになったッス。

これでもう、新人は卒業ッスかね? あ~でも、あたしが独り立ちしちゃったら、スーさんがさびしがるかもッス。

しょーがないんで、たまにはミスして叱られてあげようと思うッス! ホント先輩想いッスねー…あたしって。

(マスター★6 ガトリン)

 

正念場が過ぎた後は、また相変わらずの様子のガトリンですが、以前と比べてなんとなく、一皮むけたような雰囲気がありますね。自分の今後のことよりも自分が独り立ちした後のスーの方が心配だ、と冗談めかして調子よく話してくれるガトリンですが、彼女もなんだかんだいって、自分に付き合って指導してくれる先輩が居心地がよくて好きなんでしょうね~。

 

ハンター殿のおかげで、ここも大きな危険はなくなったニャ。ありがとうニャ!

これで安心して、施設改修に本腰を入れられるのニャ。…あとは、ガトリンがもっと作業に集中してくれれば最高ニャ。

あの子、まだ仕上げには少しムラがあるのニャ。まったく、まだまだ私がいないとダメみたいだニャ~。

(マスター★6 スー)

 

スーにとってはガトリンは何かと手を焼かせられる後輩でしたが、自由人な彼女に振り回されつつも根気よく成長を見守ってきたこれまでの過程は、スーにとっても充実した日々だったようですね。何となく後輩離れするのが寂しそうな雰囲気なのも、スーがガトリンを大切にしてきたのを思えば頷けます。それでも、「まだまだ私がいないと~」と言いつつ、ガトリンの仕事については「まだ少しムラがある」と評しているというあたり、後輩の仕事が少しずつ丁寧になってきていることを認めている様子。今後のガトリンの更なる成長が楽しみですね。

 

それから、ガトリンがこのエルガドで成し遂げたことは、彼女自身の技術者としての活躍と成長だけに留まりません。

 

この作業日誌なんスけど…気づいたらいつの間にか「エルガドのみんな観察日記」みたいになっちゃってたッス。

その中でも一番ページ数が多いのは、○○さんのとんでもない活躍ぶりッスかね!

これは、後世に残すべき記録かもッス! あ…でも、まじめに作業日誌を書いてないのがバレちゃうッス。どうしよ…。

(マスター★6 ガトリン)

 

ガトリンがかねてから作業日誌に書き溜めてきた、業務とはおよそ全く関係のない、観測拠点の人々の観察記録の数々(ややこしい)。エルガドの皆で深淵の悪魔の禍いに立ち向かってきた軌跡を鮮明に残す、後世の歴史家にとって重要な一次資料になるかもしれません。後に特命騎士のセルバジーナは原初メル・ゼナの一件を経て「皆の活躍を王国史として遺したい」と言っていましたから、そんな彼に見せてあげれば喜んでもらえるかも。……うん、ガトリンの今後の課題は作業日誌をちゃんと書けるようになることだね!

 

4.エルガドの調査隊員の仕事と生活

 

話は変わりまして、ここからはガトリンたちの台詞から、エルガドの調査隊の普段の暮らしやお仕事の話を少し覗いてみましょう。彼女ら調査隊の仕事場であるエルガドは、元は純軍事的な砦として利用されていたところを、メル・ゼナの襲撃によって半壊させられて以来、王国の異変の調査拠点として復旧し利用されてきました。

 

そういえばハンター殿、エルガドの過ごしやすさはいかがかニャ?

増築を繰り返していて見た目はちょっと不思議かもしれないニャ。でも、不便はないと思うのニャ。

(マスター★2 スー)

 

調査研究の必要に応じて設備を増やし、改築を重ねてきた今のエルガドは、王国騎士やハンター、研究員たちにとって非常に使いやすい、機能的な観測拠点となっています。エルガドは元から調査研究の機関を備えていたわけではありませんから、今ガトリンやスーたち、他の調査隊員たちが使っている道具や資材というのは、エルガドを総合的な拠点として復旧する際に、全て王国から持ってきたものということになります。

 

エルガドは王域内にありながらも、地理的には王都からも海を隔てたところにあるわけですから、そこから必要なものを全てこちらに運んでくるというのは、それだけでも大変な船旅、いわば超大規模なお引越しです。主人公こと猛き炎がエルガドに召喚されるのは、既にこの場所が観測拠点として運営されるようになってからだいぶ後のことですが、その前日譚、エルガドの砦が拠点として復興されることになり、志を持つ多くの人々がここに集ってくる時期にも、いくつもの物語が眠っていそうですよね(余談ですが、茶屋のアズキがカムラの里を発ってエルガドに店を構えるようになったのも、エルガドが砦から観測拠点へとリニューアルされた頃のことであると思われます)。

 

そういういきさつを経てエルガドは王域内の要衝の一つとなったわけですが、港町であるこの地は周辺地域との交易や物の輸送、交通などは基本的に海路を通じて行われており、王域内の他の場所とはそれほどアクセスがよいとは言えない土地ですから、調査隊の物資の中にない道具や資材が緊急で必要になることがあったとしても、それを気軽に「取りに行く」というようなことはできません。海運で取り寄せるにしてもある程度の時間がかかってしまいますし、必要なものが必ずしも既製品の中にあるわけでもありません。そのようなトラブルになった際に活躍しているのが、加工の天才としてエルガドで活躍するあの人物。

 

私たち設備担当が使う道具は、ほとんど王国から持ってきたものニャ。

でも、すぐに必要なものがあったり 特別な道具が必要なときには、加工屋のミネーレさんの出番ニャ!

ちょっとしたイメージを伝えるだけで 欲しい道具を完璧に仕上げてくれる、頼もしいお姉さんなのニャ!

(マスター★3イソネミクニ亜種前 スー)

 

ミネーレは器用で腕の立つ加工屋ですが、彼女の能力はそれに留まらず、同僚のビス・コッタとのチームワークや、調査隊員や研究員たちからのリクエスト(特にバハリからのものはだいぶ無茶なものもある)にもバッチリと応えてみせるところを見るに、他人が必要としているものを汲み取って具体化するのがすごく巧いんですよね。これは彼女の人の好さと、各地を旅して多くのものを吸収し、多くの人に出会ってきた経験値に裏打ちされるものなのかもしれませんが、いずれにしてもミネーレは王国騎士団の使う武具の加工の腕前というのみならず、臨機応変にさまざまな物が必要となる観測拠点エルガドのスタートアップと運営の全体を加工によって支えてくれることを見込まれたからこそ、王国からスカウトされたのかなぁ~と思います。騎士やハンターたちのみならず、調査隊員たちにとっても、彼女は欠かせない存在になっていますね。

 

……と、エルガドはそんな感じで王域生物の調査研究の要衝として、皆の尽力によって発展を続けているわけなのですが、その一方で、エルガドは元々の基盤が砦であったところに後付けで色々な役割を増やしたというところや、その際に特に実務上の利便性を優先的に確保してきた様子があるところから、エルガドに務める人々の住環境という点では、まだまだ拡充の余地もあるようなんですね。

 

エルガドって、昔はちゃんとした砦だったらしいッスよ? 古い割に、どうりで基礎がしっかりしてるわけッス。

でもこの砦っぽさのせいか、ここってやけに物々しい感じなんスよね~…。

なーんかみんな固いんスよ、雰囲気が。あと…関係ないかもッスけど、ベッドもめちゃ固くて寝づらいッス…。

(マスター★2 ガトリン)

 

エルガドのマップでは、マーケットの裏にある門の先はプレイヤーの進入不可エリアになっていますが、この階段を上ったところの家々が、調査隊員たちやエルガドに駐留する王国騎士たちの住居なのでしょうか。

 

 

それぞれの家屋にはタオルのようなものが干されており、他の施設と比べても生活感のある建物ですね。いわゆる詰所というよりは、もう少し長期滞在を見据えて充実しているような雰囲気はありそうですし、王国の管轄ですから、少なくとも一般的な住環境の水準に達していないということは決してないと思いますが、そこに+αで「過ごしやすい快適さ」を確保するところまでは、喫緊の調査のこともあり手が回りきっていないという感じです。

 

当面の問題が解決したら、これはぜひとも、調査隊員たちがより住みやすいように設備が改良されていって欲しいところ。彼らの仕事も、王国騎士やハンターたちに負けず劣らずの肉体労働なのですよ。

 

キモーい見た目のキュリアといい、エスピナスの毒まで使う薬といい…、ハンターさん達の仕事って、大変ッスね。

それに比べたら、油まみれの整備とか、ブレーキが壊れて止まらないトロッコにひかれそうになったりとか…。

スーさんに何回も叱られるくらいのこと、ぜーんぜん楽勝って思えるッス。尊敬するッス、○○さん!

(マスター★4エスピナス後 ガトリン)

 

最後の行はともかく、油まみれの機材整備やら、トロッコを用いた輸送やら、とても「楽勝」とは言い難い業務も数多くあります。どの仕事にも価値の軽重というのはないのですから、主人公たちの狩りと調査を支えるガトリンたちの仕事も、相応に評価されるべきもの。ひとまずガレアス提督には、ふかふかのベッドをガトリンたちのお宅に贈ってあげてほしいところです。

 

というか、トロッコってだいぶ危ない乗り物ですよね……。もちろん、安全に配慮して適切な運用をすれば非常に便利な道具ではあり、現にエルガドの砦でも大いに活躍していますが、モンハン世界にはコンピュータ制御というものはありませんから、いざ何かをやらかしてしまった時はタイヘンです。部品の破損やら過積載やらでトロッコが脱線したりしたら、結構怖いよなぁ、と筆者などは思うのですが、日ごろからトロッコが身近にあるガトリンはどう思っているのかといいますと……。

 

そういえば、○○さん… トロッコに乗ってみたいッスか? 案外、そういう要望って多いんスよ。

でも、危ないんで却下してるッス。人が乗れるように改造しようとしても、ギルドの許可なんか出ないッスからね。

…えっと、ここだけの話、あたしはコッソリ乗せてもらったことがあるんスけどね…。あのスリル…やみつきッスよ?

(マスター★5 ガトリン)

 

何してんすかガトリンさん。結果的に無事だったからよかったものの、しっかりと楽しんじゃってます。スリルというくらいですから、ガトリンが乗せてもらったのは砦の外壁を走る方のトロッコでしょうね。エルガドのトロッコは大きく2つの種類がありまして、砦内の資材置き場であると思われる青い旗とクレーンのある塔を中心に、

 

①その塔に港や研究所奥の炭鉱(?)から貨物を運搬する(および途中の茶屋に食材を届けるのにも使用される)ための線路

 

②青い旗の塔から、砦内の復旧や改築に携わる各調査隊員たちの作業場へと資材を運ぶために、砦の外壁をぐるっと一周回るように引かれている線路

 

の2つがあります。前者は平坦な線路ですが、後者はいわばジェットコースターのような構造になっており、青い旗の塔を出て上り坂の線路を登った後、位置エネルギーを利用して外壁の緩やかな下り坂の線路を走り、ブレーキを利用してスピードを制御しながら資材を届けていくという仕組みになっています。

 

こういう遊園地あるよね

砦の内側を通って段差を上り下りしながら足で資材を運ぶよりも、砦外周をトロッコで一回りした方が労力が少なく効率がよい、という素晴らしいアイデアのもと設計されているわけですが、傍から見ればこれは魅惑のアトラクション。アイルーの調査隊員が安全に乗れるようにはできていても、人間の調査隊員用の規格ではないわけですが、ただでさえ娯楽の少ない観測拠点、これでは乗りたくなってしまうのも無理はありません……危ないけど(また別の記事でご紹介しますが、歴史学者のパサパトもこのトロッコに乗ってみたいと言っている会話があります)。

 

プレイヤーである主人公も人間ですから、ゲーム内でトロッコに乗せてもらうということは当然できないわけなのですが、エルガドの調査隊メンバーのアイルーたちからはそれを残念がられる(?)ようなコメントがちらほら。

 

ボクの目の前に、トロッコの線路があるのは気づいてたかニャ? ハンターさん。

とっても重い荷物をあつかうときは それを使って、ガタゴトと運ぶのニャ!

ロッコって、すっごく楽しいのニャ。あれに乗れないハンターさんは、ちょっとかわいそうなのニャー…。

(マスター★5シャガルマガラ前 ジレッタ)

 

物資補給担当と交易担当を兼ねるジレッタは、エルガドの中でも特にトロッコを利用する機会が多そうな仲間です。そんな彼にとっても、トロッコは単なる業務上の設備を超えたワクワクがあるようで、楽しそうにその感想を語ってくれます。いいなぁ……。

 

旦ニャ様、エルガドを走るトロッコは ご覧になられましたかニャ?

重いものを運んだり素早い移動など とても便利で、ここエルガドではなくてはニャらない重要な移動手段ですニャ。

旦ニャ様も乗ってみたいですかニャ? ふふふ、あれはヒトは乗れないのニャ。ぜひ見てみたいですが、残念ニャ。

(マスター★2 ルームサービス)

 

エルガドのルームサービスさん、基本的にとても紳士的な人物なのですが、たまにこうして冗談で主人公をちょっと嗾けてみたりするところもあり、なかなか侮れません。…というか、「旦ニャ様」と言っている辺り、ルームサービスはあのトロッコに乗ったことがあるのでしょうか。

 

服装的にも彼の所属は王国調査隊ギルドでしょうから、いちおう職務上の権限的な意味では問題ないはずですが、ルームサービスの仕事でトロッコに乗ることがあるかというと微妙ですから、彼自身も職務外のところでこっそり乗せてもらったことがあるとか……? ルームサービスは休憩時にはトロッコの模型いじりを趣味にしていますから、この手の乗り物が好きなのかもしれません。あるいは単純に、主人公が狩りに出かけている間に身の回りの世話の仕事を一通り済ませたら、残りの時間は他の調査隊員と同様の職務を行っている、という感じなのかもしれませんね。

 

ちなみに、青い塔で資材を積んで出発した後、高度の確保のためにはまずトロッコに上り坂の線路を登らせる必要があるわけですが、今のモンハン世界には機械はありませんから、電動のモーターやらベルトコンベアやらといったものは当然使われていません。滑車などを使って人力で引いたり、ましてやトロッコに乗っているアイルーが自力で漕いでいるというわけでもありません。

 

どうやってトロッコが人力以外で坂を上ることができているのか、といいますと、坂を上る際にトロッコから白い煙がしきりに噴出されているところを見るに、恐らくエルガドのトロッコには無火機関車のような、蒸気をタンクに溜めて車両の動力として利用するという類の技術が使われているみたいなんですよね(無火機関車は車両内にボイラーを置いて蒸気を生成するのではなく予め蒸気を作って入れておいたタンクを搭載する様式のため、エルガドのような場所でも火災事故の危険がなく安全で小回りが効くという利点があります)。トロッコの始点である青い旗の塔の中では、貨物の積載だけではなく同時にタンクの交換も行われている感じなのかな。

 

ロッコから白煙が出ています。乗ってる2人は意外と暑そう。

エルガドの他の施設にも、蒸気を噴出しながら駆動している設備というのがいくつか見受けられますから、王国の技術レベルは私たちの世界でいうと近代ヨーロッパくらいはあるということになるのでしょうか……。ここの王国はモンハン世界においてはいわゆる先進国に分類される国家であると考えてよいと思いますが、モンハン世界の先進国の技術は既にそのレベルにまで達しているとは……恐るべし。

 

余談ですが、青い塔からトロッコが出てくるところの上り坂の上には、魚の絵が描かれた看板が3つ吊るされています。トロッコの出発口からそれぞれ魚の数が1匹、2匹、3匹と増えており、一定間隔で規則的に並んでいるというところからして、おそらくこれはトロッコギアの表記であると思われます。いきなりギアをフルパワーにすると急発進して脱線してしまいますから、少しずつスピードを上げて安全に運用できるように、ギアを入れる目印があるという感じなんでしょうね(細かいな……)。

 

(写真左下から順に、看板の魚の数が1,2,3と増えています)

 

それにしても、こういうトロッコ等設備の規格についても、ギルドの明確な規定があるというのは興味深い情報ですね。モンハンでギルドというと、各地のハンターを管轄するハンターズギルドがまず思い浮かびますが、それと連関する形で、各地でのモンスターの調査研究や拠点の運営について管轄する調査隊ギルドというのも(少なくとも王国においては)存在しているようです。調査隊員たちの業務上の安全に国家として責任を持つため、設備の拡充においても規定の水準に適合しているかどうかのチェックを逐一通さなければならないというしっかりとした管理体制が構築されているあたり、地味なポイントながら王国の文明レベルの高さが窺えるところですね。

 

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ということで、本記事の考察はこのあたりで〆とさせていただきます。サンブレイクの設定資料集の発売が来月末に決まったということで、とても楽しみですね。資料集にはキャラクター紹介の項もあるということですから、そこを目安に今後はエルガドの主要なNPCから優先的に記事を書いていき、作中情報の整理をしたいと思います。まあとはいえ、さすがに全NPCの全台詞の情報が載っているまではいかないでしょうし、このブログの価値がなくなることもないと思いますから、引き続きブログの完成を目指してじっくり筆を執っていきたいと思います。

 

資料集発売後についてですが、筆者はひととおりブログを書き終えてから資料集を見て自分の考察がどれくらい的を射ていたか確かめるのが好きなので、ライズの時と同様、ひとまず全キャラクターの記事を書き終えるまでは、資料集は見ないという方向でいきたいと思います。それをやりたいならもっと早くブログ書いとけよって? それはまぁ……。

 

ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!