「共鳴」についての疑問あれこれ

※注意事項※

・本記事は「モンスターハンターライズ」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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モンスターハンターライズの物語の大きな鍵となった「共鳴」。作中では竜人族の双子の姉妹であるヒノエ・ミノトがこの能力を有していて(ミノトはストーリー中で発現する)、古龍イブシマキヒコ・ナルハタタヒメの思念を読み取ることができる、という不思議な力として登場しました。

 

作中においては、少なくともイブシマキヒコとナルハタタヒメに対しては本人の意思と関わりなく勝手に共鳴が起こってしまったようで、さらに共鳴した本人は苦痛に見舞われてしまうという性質が判明しています。つがいの古龍が百竜夜行の原因だと判明するまでは、イブシマキヒコと共鳴してしまったヒノエを共鳴から解放する、というのが目下の目的でした。しかしそうした副作用の一方で、共鳴した古龍に関してはその居場所を探ることができるという特徴もあり、最終的にはそれによって百竜夜行の原因たる古龍たちの捜索・討伐に大きく貢献した能力でもあります。

 

ストーリーとしても非常に綺麗であり、かつ竜人族(必ずしも全員が有するとは限りませんが)についての新たな設定の追加ということで、モンハンの世界観を増々広げてくれる能力ですが、一方で本作で初登場ということもあり、その詳しい設定については未だよくわかっていないところも多くあります。サンブレイクで更に設定の深堀りがあるやもしれませんが、本記事ではそれに先駆けて、筆者が作中で疑問に思った主な点(細かい話をしてるとマジでキリがないので)を取りあげ、考察していきたいと思います。

 

ーーーもくじーーーー

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1.作中で判明している情報、物語のあらすじの整理

考察に入る前にひとまず、共鳴について作中で判明している内容を整理しておきましょう。と言っても、ストーリーを1から詳しく振り返ると記事の字数が膨大になってしまいますし、このサイトをわざわざ見に来て下さっている方であれば大体のストーリーは把握しているかと思いますから、特筆すべき内容をかいつまんで取りあげるという形でやっていきます。本音を言えばそこまでやるのがめんどくさいからです。

 

まず、集会所☆4の緊急クエストの百竜夜行の後、ヒノエがイブシマキヒコと共鳴してしまう、というのが本編で最初に登場する共鳴の描写になります。

 

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ヒノエは共鳴したイブシマキヒコ(この時点ではその名前がついているわけではありませんが)から、「対はいずこ」という思念、そして孤独と焦燥を感じたと言っており、共鳴した古龍からはその思念(言語化できる思考内容?)と感情とを受け取ることができる模様。少し先の話ですが、イブシマキヒコを撃退した際には「どこか遠くへ立ち去った」ともヒノエは行っているため、距離の遠近も把握できるようです。

 

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ところで、ストーリー中で初めて登場するのはこのヒノエとイブシマキヒコの共鳴なのですが、実はこれよりもずっと前から、ヒノエは共鳴の能力を持っていたという話を聞くことができます。

 

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フゲン:あのモンスターは、おそらく古龍…。なぜ百竜夜行の終わりに突如現れたのか…。早急に調べねばならん。

それにしても… ヒノエがあやつを見たときの様子…。あれは、まるで…。

ゴコク:「共鳴」…でゲコな。

ヒノエは昔から、妹であるミノトの感情をどれだけ離れていても読み取れたでゲコ。それを「共鳴」と呼んどったでゲコが…。

どういうわけか、かの龍とその共鳴が起きてしまったようでゲコ。

……○○よ。あのモンスターについては、ハンターズギルドで調査を勧めとくでゲコ。

おぬしの方は、☆4のクエストが受注できるようになっとるゆえ、そちらを進めておくでゲコ。

フゲン:あと、ミノトを元気づけてくれ。戻ってからというもの、ヒノエの身を案じてずっと泣いていたらしいのでな…。

(集会所☆4 肩書略)

 

ゴコクの話によれば、ヒノエは昔からミノトとの共鳴は何度も経験しているようで、それによってヒノエは共鳴相手のミノトの感情を、どれだけ離れていても読み取ることができたといいます。この「どれだけ離れていても」というのが文字通り無限の距離を意味しているのかは定かではないものの、後述するようにヒノエは古龍のイブシマキヒコに対しても距離が近いか遠いか程度は察知できるようですから、双子の妹相手であれば相当距離が空いていても読み取れるということは確かでしょう。

 

ヒノエとしても、ミノトとの共鳴は随分と慣れているようで、イブシマキヒコとの共鳴は偶発的、受動的なものだったのに対して、ミノトとの共鳴については、ヒノエがある程度自分でコントロールできるものであるらしいということが分かるセリフがあります。

 

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ミノトの様子がおかしいですね…。共鳴して状態を読み取ろうとしても、どういうわけかうまくいきません…。

○○さん。どうにも悪い予感がします。くれぐれもお気を付けて…。

(集会所☆7緊急前 ヒノエ)

 

何らかの理由で体調に異変が生じている(緊急クエスト後にこれはナルハタタヒメとミノトが共鳴しようとしていたからであることが判明する)ミノトに対して、ヒノエは「共鳴して状態を読み取ろうとして」みたと言っています。この話を聞く限りでは、マキヒコとの突然の共鳴の時とは異なり、すでに共鳴し慣れた相手に対しては能動的に共鳴をコントロールすることができるようです。この能動的なコントロールは相手が古龍なのか、同じ竜人族で双子の妹なのかでそのし易さも変わってくる、という部分もあるかもしれません。

 

さて、一方でナルハタタヒメと共鳴することになるミノトの方は、ヒノエとは異なり、ゲーム開始時点では共鳴能力を発現してはいませんでした。マキヒコ出現後の時期のミノト自身の台詞からそのことが確認できます。

 

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ヒノエ姉さまが苦しんでいるのに、オロオロするばかりで…。 ただ、そばにいることしかできない…。

せめてわたくしに、姉さまと同じ共鳴の力があれば、代わってあげることができたかもしれません…。

姉妹なのに、双子なのに…。どうしてわたくしは、ヒノエ姉さまと違ってこうも無力なのでしょう…。

(集会所☆4 ミノト)

 

ミノトはここで「自分には共鳴の力がない」と割と明確に言っていますから、昔から発生していたヒノエとミノトとの共鳴というのは、あくまでも「ヒノエが」「ミノトの」感情をわかるという一方的な関係であり、その逆は無かったということになります。相互に感情がわかるというのであれば先ほどのゴコクの台詞も「ヒノエとミノトは離れていても互いの感情がわかる」という説明になるはずですから、ミノトにはこの時点で共鳴の力がなく、したがってミノト→ヒノエの共鳴も発生したことはないというのはひとまず確定事項としてよいでしょう。

 

一応、自分がヒノエに共鳴することはできなくともヒノエの共鳴の対象になるという時点で、恐らくミノトにも同様の力が(未だ発現してはいなくても)眠っているのではないか、というのは、この段階でも推測することはできなくもありません。

 

そんなミノトの共鳴が発現するのは、イブシマキヒコを百竜夜行で撃退したのち、その対であるナルハタタヒメが動き出した時になります。緊急ヤツカダキのクエストに挑む前のタイミングで既に、ミノトの体調にはナルハタタヒメの影響を原因とする異変が起きていました。

 

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……。

あ、○○さん、緊急クエストが入っています…。

えっと…。

……え? 「わたくしの様子がおかしい」?

…やはり、そう見えますか。

なんと申し上げればよいのか… 自分が自分でない感覚がして…。少々、疲れているのかもしれません。

しばし休めば回復すると思います。どうぞお気になさらず、緊急クエストへ行ってください。

[後略]

(集会所☆7緊急前 ミノト)

 

イブシマキヒコが目視で確認できる位置まで近づいてから急に共鳴したヒノエと比べて、ミノトの場合はまだナルハタタヒメ(この時点ではまだこの名前もついていませんが)の存在を確認していない段階から、徐々に共鳴が発生して行っているという段階。これは、ナルハタタヒメの影響でミノトの共鳴が少しずつ目覚めて行っているからこそ緩やかに影響が出ているという面もあるでしょうし、後述するように、ナルハタタヒメもまた少しずつカムラの里の方に接近してきているからだという面も考えられます。

 

そして緊急ヤツカダキクリア後、ナルハタタヒメとミノトが共鳴したことをフゲン達から知らされます。

 

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[前略]

ゴコク:「対はいずこ、対はいずこ」

ヒノエが、イブシマキヒコと共鳴したときに流れてきた思念だ。ハンターズギルドはこの「対」についての調査を進めていた。

しばらく前… 不意に「対」と共鳴した、ミノトの協力を得て…ね。

フゲン:…うむ。幸か不幸か、ここにきて発現したのだ。ミノトに秘められていた共鳴の力が…。

そして、ハンターズギルドは「対」の存在を確認するに至った。その古龍、名付けて…

イブシマキヒコの「つがい」… 雷神龍ナルハタタヒメ。

我らはこれを討伐せねばならぬ。さもなくば、百竜夜行の闇が晴れることはない。

現在、里の衆とギルドで、ナルハタタヒメの居場所を探っている。そう遠からず見つかるであろう。

○○よ。決戦は近いぞ。

まずは☆7のクエストをミノトより受注し、そのときを待つのだ。

(集会所☆7 肩書略)

 

ミノト本人からも、共鳴したナルハタタヒメからどのようなことを感じ取ったのかについて教えてもらうことができます。

 

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ナルハタタヒメから流れ込んでくる思念は非常に強いものです。ゆえに、居場所はおおよそ掴んでおります。

「対はいずこ、対はいずこ」 思念は、イブシマキヒコと同じようなことを繰り返しているのですが…

…イブシマキヒコが孤独と焦燥に駆られていたのと違い、ナルハタタヒメは強い怒りに満ちあふれています…。

その力は、イブシマキヒコを大きく上回ると予想されます。慎重に探さなければいけませんね。

(集会所☆7 ミノト)

 

ここで、すでに古龍との共鳴を果たしているヒノエではなく、なぜよりによってミノトの方が、これまで発現してこなかった共鳴の力を発現してまでナルハタタヒメと共鳴したのか、という点については、いささか説明を必要とするところのように思います。ここでナルハタタヒメがヒノエと共鳴する可能性がないこと、少なくともそれがミノトが共鳴する可能性よりも低いことを示せなければ、「ヒノエとミノト、マキヒコとナルハタが相方同士共鳴したら物語的にキレイだから」という、ある種のご都合主義になってしまいます。

 

マキヒコとヒノエが共鳴した後のストーリーでは、「青い龍と百竜夜行の関係は何か、青い龍の思念の中にあった"対"とは何なのか」という疑問と、「ヒノエ姉さまにある共鳴能力が双子の妹である自分にはない」というミノトの姉へのコンプレックスとが、物語の軸になっていました。

 

ミノトとナルハタタヒメの共鳴は、その両方に対して的確な進展を与えるものであるものの、その共鳴のいきさつについてはあまり作中で理由の説明がありませんでした。「ナルハタタヒメがどういう行動を起こした結果としてミノトと共鳴する結果になったのか」という点が、偶然だったのなら偶然だったということも含めて明確にならなければ、ミノトの共鳴は「ナルハタタヒメを登場させるという物語の展開上の都合」の域を超えず、私としてはやや得心がいかない部分なのです。

 

まず、☆6マキヒコ百竜夜行から☆7昇格時点までに、イブシマキヒコとナルハタタヒメがどのような行動を取っていたかを考えてみましょう。

 

作中でナルハタタヒメが動き出すのは、☆6イブシマキヒコ百竜夜行の撃退後になるわけですが、ちょうどその頃のイブシマキヒコは、自分に対して抵抗してくる主人公ハンターたちを排除しようとするも逆に瀕死に追い込まれ、遠くに逃げている、という行動を取っています。

 

イブシマキヒコはカムラの里にこれまで幾度となく百竜夜行という災禍をもたらしてきた存在である以上、彼がつがいと繁殖を行う場所として選んでおり、また繁殖期の彼がその周辺を活動範囲とするところの龍宮砦跡は、カムラの里と同じ地方にあり、カムラの里とも物理的距離でそこまで離れているわけではない(もちろんイブシマキヒコ基準での話ですが)ということになります。そんなイブシマキヒコが、砦でカムラの里のハンターと里守たちとの戦いで撃退され、龍宮砦跡を目指すorつがいを探すのを中断せざるをえなくなり、ヒノエとの共鳴もほぼ途切れてしまうほど遠くまで逃げ去ったということは、これはおそらく同時にナルハタタヒメからも大きく離れてしまっているとみてよいでしょう。

 

一方のナルハタタヒメは、彼女もまた産卵の場所である龍宮砦跡を目指して移動しているか、もしくは既に辿り着いており(これによってミノトに干渉できる距離まで縮まっているということは、おそらくこの移動は同時にカムラの里に接近することにもなっていると思われます)、そして彼女から見てカムラの里の方角に、マキヒコの威風と思われるもの、あるいはその思念が感じられていた。

 

ナルハタタヒメは龍宮砦跡でじっとしていればそのままイブシマキヒコとめぐり合えるはず……だったのが、マキヒコは敗走してまた遠くに行ってしまいました。これはナルハタタヒメの側からすると「マキヒコが近くに来てたはずなのにあいつどっか行っちゃったんだけど。キレそう~~。」的な状態になっていたと言えるでしょう。そんなに軽いノリかどうかは分かりませんが。

 

ミノトが「強い怒り」と言っていたように、来そうでなかなか来てくれないマキヒコに苛立っているナルハタタヒメは、カムラの里の至近までは移動せずとも里の方面に更に少しばかり近寄ってマキヒコを探そうとしたのか、あるいはナルハタの怒りの思念が、マキヒコがさっきまでいたカムラの里の方角に強く流れてきていたのでしょう。

 

マキヒコの方でも「焦燥と孤独」という感情を抱いていましたが、そこで「焦る」という感情が入ってくるあたり、ひょっとすると今回のつがいの古龍はもうそろそろ繁殖期を過ぎてしまうかもしれない(溶岩洞の骨は、イブシマキヒコにめぐり合えなかった別個体のナルハタタヒメの死骸だそうですから、つがいの古龍が出会えずに死んでしまうことは前例があるようです)のにまだ相手の居場所を発見できていないという事情があったのかもしれません。いずれにしても、つがいがなかなか来てくれないナルハタタヒメの怒りの思念の烈しさがミノトに反応を起こし、彼女をして眠っていた共鳴の力を発現させるまでに至ったと考えられます。

 

この説で考えてみると、ヒノエの時と比べてミノトが比較的元気そうであることにも納得がいきます。もちろん、「ヒノエ姉さまと同じ能力を持ててうれしい」というミノトの喜びが大きすぎて相対的に共鳴の苦痛が軽減されている、という部分は否定できませんが、そもそもナルハタタヒメがカムラの里にそれほど近付いてはおらず、その場に倒れ込むほどのつらさには至らなかった(それでも大変ではあると思いますが)ためであると言えることになります。

 

調査員たちも、フゲンの話によれば先にミノトの共鳴を確認してから、(おそらくミノトの協力を得て)ナルハタタヒメの存在の発見に漕ぎつけているようですから、カムラの里から確認できるほど近い範囲にまではナルハタタヒメも接近しておらず、ミノトへの干渉もそれなりに遠距離からのものであった、という可能性は高いと考えられます。

 

そして、そこでなぜヒノエとの共鳴にはならないのか、というのが気になるところ。そもそもイブシマキヒコの共鳴相手がなぜヒノエだったのかという話から始めると、ひょっとすると共鳴の相性のようなものも明かされていない設定としてあるのかもしれませんが、作中の事実のみを基にして考えるのであれば、ヒノエとミノトが同じ場にいて、既に共鳴を発現している方とまだしていない方のどちらがよりイブシマキヒコの思念に反応しやすいと考えられるか、といえば、やはり既に共鳴の力があるヒノエと考えるのが自然となります。

 

で、そうなった時に、ヒノエは共鳴を発現して久しいばかりか、既に古龍との共鳴まで経験しているのだから、ナルハタタヒメの思念がカムラの里まで伝わってきたときにも、ヒノエが反応して共鳴する……という方が、ミノトが共鳴を発現するよりもむしろ自然に思えなくもありません。

 

これは作中にあまり証拠がないので推測になりますが、もしミノトがナルハタタヒメと共鳴したことに合理性を持たせるとすれば、いちど古龍と共鳴するとその古龍との結びつきが強くなり、他の古龍との共鳴は発生しづらくなる―—ざっくり言うと、古龍と共鳴したらそのペアはある程度固定になる、というような性質があるというのが一つの仮説となります。

 

ヒノエはイブシマキヒコを撃退後に共鳴から解放され、ミノトも雷神を倒した直後には同じく共鳴から解放された状態になっていると思いますが、そこから再び共鳴が発生した際にも、マキヒコ-ヒノエ、ナルハタ-ミノトというペア自体が変わることはありませんでした。ミノトが心身に異変を感じ出したタイミングではヒノエはマキヒコとの共鳴は無く(あるいはごく微弱程度しかなく)、ミノトに共鳴をしようと試みることができるということで、マキヒコと共鳴していた(いる)せいで他との共鳴が出来なくなっているという訳でもないようですが、それでも後になって再び共鳴が発生する以上はマキヒコの影響が残っているわけですから、そのせいでナルハタタヒメの干渉の影響をヒノエは受けなかった(なのでミノトの方が反応することになった)というのは十分にあり得る話です。

 

いずれにしても、ミノトがナルハタタヒメとの共鳴を起こしたことで百竜夜行のもう1つの元凶の尻尾を掴むことができ、主人公ハンターは無事にナルハタタヒメを撃破して一件落着……となるはずが、実は両方とも生きていて、どこかでめぐり合おうとしているらしい、というのが集会所Ver.1.0(第1)エンディング以降のお話。その最初の契機となるのが、そのVer.1.0エンディングでヒノエとミノトが再び共鳴をしてしまうシーンなのですが、そこにも個人的には得心がいかない点がありまして。次の項ではそれについて考えていきましょう。

 

 

2.Ver.1.0エンディングのシーンの考察

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先述の通り、こちらのスクショはVer.1.0最終クエストの「雷神」をクリアした後のムービー、あるいは集会所第一エンディングと言ってもよいでしょうか。大まかな内容としては次の通り。

 

ウツシからフゲンに「龍宮砦跡の穴の中から雷神龍の姿が消えていた」という報告のシーンの直後に、宴会の会場を離れた水辺で向かい合って両手を合わせているヒノエ・ミノト姉妹を主人公ハンターは発見します。2人の瞳はイブシマキヒコ・ナルハタタヒメの色に変色している―—つまりは再び古龍と共鳴しており、「対よ対よ、今こそめぐり合わん」的な言葉を発したのち、つがいの古龍の思念はいずこかへ飛び去ってしまい、共鳴が解除された姉妹ははっとした表情であたりを見回す……というのが大筋です。

 

「つがいの古龍はまだどちらも生きており、いずれ邂逅を果そうとしている」ということが分かるシーンなのですが、ここで注目するべきは、イブシマキヒコとナルハタタヒメがヒノエとミノトの身体と意識を通じて意思疎通を図ろうとしているように見える点です。共鳴した2人が両手を合わせて向かい合う、というこのシーンは、単に「ヒノエとミノトが再び共鳴した」というだけではなく、イブシマキヒコとナルハタタヒメは、ヒノエ・ミノトを間に挟んで明らかにお互いの存在を認識している様子があります。

 

イブシマキヒコは自身の共鳴相手であるヒノエの目の前にいるミノトの奥にナルハタタヒメの存在を、ナルハタタヒメは自身の共鳴相手であるミノトの目の前にいるヒノエの奥にイブシマキヒコを感じている。そうでなければ、「対よ対よ、今こそめぐり合わん」などという、相互の呼びかけのようなやりとりへの説明がつきません。

 

で、このシーンの解釈が仮にそれで合っているとすると、次の疑問が浮かび上がります。すなわち、イブシマキヒコはどうしてミノトの共鳴相手がナルハタタヒメであることを認識できているのか、同様にナルハタタヒメはどうしてヒノエの共鳴相手がイブシマキヒコであることを認識できているのか、ということです。イブシマキヒコもナルハタタヒメもこの時点では時間差をつけて各々個別に登場していますから、マキヒコはミノトとナルハタタヒメの共鳴を直接確認はしていませんし、逆も然りです。

 

こういう事象を、古龍特有の「気」みたいなものを仮定した説明で、つまりイブシマキヒコ側からも共鳴相手のヒノエのことがある程度分かり、それによるとヒノエの隣にいるミノトからどうも自分の対の気配がすると感じたからだ(逆も同様)……みたいな理由をつけて説明をすることはできるのですが、そうではない可能性として、私は次のような仮説を考えています。それは、自分と共鳴した竜人族に対しては古龍側から能動的に働きかけることができるという性質があり、このシーンではヒノエーミノト間の共鳴を利用して、間接的にイブシマキヒコとナルハタタヒメの共鳴状態をつくっていたのではないか、つまり、

 

「イブシマキヒコ ヒノエ ミノト ナルハタタヒメ」

 

という図式の共鳴関係を発生させることで、イブシマキヒコとナルハタタヒメが互いに意思疎通をとっていたのではないか、ということです。

 

そう考えられる理由としては、主に次の2つが挙げられます。1つは、イブシマキヒコとナルハタタヒメは、竜人族や人間のコミュニティで使われている言語で会話をするわけではないであろうからです。ヒノエやミノトが口にした言葉は、共鳴相手の古龍から感受した思念を半ば無意識に言語化したものにすぎず、マキヒコはミノトが喋った音声を聞いてナルハタの思念を受け取っているわけではないでしょうし、ナルハタはヒノエが喋った音声を聞いてマキヒコの思念を受け取っているわけでもないでしょう。あのシーンにおけるマキヒコとナルハタの意思疎通は、ヒノエとミノトの身体を通じた言語による会話ではなく、あくまでも思念を通じて行われていると考えられるからです。

 

もう1つは、イブシマキヒコの視点から「ミノトが共鳴している相手はナルハタタヒメである」ということを知る経路を、古龍同士の「気」みたいなものを一旦考慮せずに説明しようとすれば、それは「ナルハタタヒメ→ヒノエ→ミノト→イブシマキヒコ」という共鳴の経路を通じてイブシマキヒコがナルハタタヒメの思念を感受している、というのが一つの大きな可能性としてあり得るからです。ナルハタタヒメがイブシマキヒコを知る場合も同様です。

 

もし共鳴の力が、共鳴相手の「知識」「記憶」のようなものまでも受け取ることができるというのであれば、イブシマキヒコはミノト・ナルハタタヒメ間の共鳴の情報をヒノエの記憶から入手すればいい(逆も同様)ということにもなるため、この考察が外れている可能性は高くなりますが、作中では共鳴の性質としてそのような描写はないため、判明している情報の範囲内ではやはり、ヒノエ・ミノト間の共鳴が間に挟みこまれたことで、そこから思念を受け取り合って互いを認識するに至ったのではないか、という辺りが妥当であるように私には思われます。

 

そして、ヒノエとミノトの共鳴を利用して、その姉妹同士とそれぞれ共鳴している古龍同士が意思疎通を可能にしている、いわば疑似的な共鳴状態を作り出しているというのは、マキヒコたちの最終的な目的とも合致しています。

 

イブシマキヒコとナルハタタヒメの最終的な目的は、龍宮砦跡で逢着して子孫を残すこと。イブシマキヒコは集会所☆6百竜夜行で深手を負って遠くへ逃げていましたし、一方のナルハタタヒメも龍宮砦跡でマキヒコを待つはずだったのが、やはり主人公ハンターとの戦いで傷を負い、どこかへ去ってしまっています。

 

おそらくこの時点でのイブシマキヒコとナルハタタヒメは、互いの居場所を掴めている状態ではなかったのでしょう。元々の話として、つがいとなるこの2体が繁殖期に入った際、最初から対の居場所を把握しているわけではないということは、ヒノエがイブシマキヒコから読み取った感情が「孤独と焦燥(=対がどこにいるか分からない)」だったということや、溶岩洞の骨は対とめぐり合うことなく死んだ別の個体のナルハタタヒメのものであるという情報からも分かります。

 

イブシマキヒコはカムラの里の砦に来た時点でもなお「対はいずこ…」という思念を発していたことから、少なくともカムラの里の位置からではナルハタタヒメを捕捉することはできていません。そして集会所☆6でイブシマキヒコが里の砦に直接攻撃をかけ、マキヒコが激しく暴れまわった痕跡を感じたナルハタタヒメが龍宮砦跡から里の近くまで動いてきたときには、既にイブシマキヒコは逃げ去ってしまっていますから、ナルハタタヒメ側からもマキヒコの消息を掴むチャンスはなかったと言えるでしょう。

 

しかしながら、「雷神」クリア時点において、イブシマキヒコとナルハタタヒメたち自身は、主人公ハンターに撃退されて逃げだしていたために互いに随分離れた距離にいるとしても、それぞれが身を潜めている場所はカムラの里のヒノエ・ミノト姉妹とは共鳴できる位置にはいることが分かります。

 

そして、この姉妹の間では幼少の頃からヒノエが既に何度もミノトに共鳴をしており、かつその共鳴は「どんなに離れたところからでも相手の感情が分かる」ほどの深い意思疎通が可能というもの。さらに、古龍相手ですらある程度の場所を把握できる訳ですから、同じ能力を持つ姉妹の間であれば相手からの感情の流れを追うことで、相手の居場所もかなり絞り込める程のものであるはずです。加えて、ミノトもここにきて共鳴を発現した以上、作中でそれが起こったという描写こそないものの、原理上はヒノエに共鳴することもこの時点で可能となっているはずです。

 

そして、宴会上から少し離れた水辺にいるシーンでは、共に古龍と共鳴した状態のヒノエとミノトが両手を合わせて向かい合い、じっと見つめ合っている……。姉妹が相互に口にしている思念の内容のやりとり以上に、何か非常に強力な非言語的コミュニケーションが起こっているという雰囲気があります。

 

これらの状況から、「イブシマキヒコ ー ヒノエ ー ミノト ー ナルハタタヒメ」という図式で互いの思考や感情が相手に流れていく経路を作ることで、マキヒコたちは互いの意思疎通のために姉妹の共鳴を媒介にし、相手の思念の流れから相手の居場所の情報を多かれ少なかれ手に入れることで、遠く離れた位置にいる自分たちがこれからめぐり合うのに役立てようとしていたのではないか、という仮説が成り立ちそうであると私は考えています。

 

互いが出会えないことにマキヒコは「焦燥と孤独」、ナルハタは「強い怒り」をそれぞれ感じていたという話ですから、彼らとしてもどうやら切羽詰まっていた状況である以上、対の居場所を探るためにあらゆるものを活用しようと画策していても、決しておかしな話ではありません。

 

むろん、この仮説に対して解釈次第では反証となりうるようなものも作中の情報にはありまして、先ほど紹介したヒノエの台詞で、「異変が起きているミノトに共鳴して状態を調べようとしたけど、何故かうまくいかなかった」と彼女が言っていたものがそれに当たります。

 

これが「ミノトが共鳴に目覚めている真っ最中のため、一時的に不安定になっておりヒノエからの共鳴も通らなくなっている」という程度のことであればまだしも、「誰か(古龍も含めて)との共鳴中にさらに別の誰かと共鳴することはできない」という性質が共鳴にあるという解釈になるのだとすると、先ほどの仮説の可能性は低いということになります。むろん、今回のケースではマキヒコとナルハタが姉妹の身体と意識とを半分乗っ取るような形なので、例外ということになり得るかもしれませんが、いずれにしてもこの辺りの解釈にはまだまだ論拠となる材料がなく、今後の作品でさらに設定が追加されることを期待したいものです。

 

3.共鳴した相手の感情や思考をどこまで読み取れるのか

ここまでの話で挙げられた、共鳴によってその相手から知ったり感受したりすることができる事柄をまとめてみると、大まかには次のようになります。

 

・感情

・思念(言葉として表せるその時々の思考内容、という感じでしょうか)

・相手のおおよその居場所(相手から伝わってくる感情や思念の流れを辿ることによって)

・体調(作中ではヒノエが読み取ろうとしたが失敗した、という描写のみ)

 

共鳴した相手が何なのかによっても感受できること、できないことは変わってくるでしょうが、未知の古龍に対してですら距離の近い遠いが分かり、相手から伝わってくる感情や思念が激しいものであれば相手の居場所をある程度掴むことができるという精度の高さには驚かされます。そして古龍相手でそれなのですから、ヒノエが同じ竜人族の双子の妹であるミノトに対して起こす共鳴は、「どんなに離れていてもミノトの感情がわかる」という話もあったように、共鳴が起きている時は基本的には、ヒノエはミノトの考えていること、感じていることを把握することができると言ってよく、洞察の度合いは一層高いと言えるでしょう。

 

が、そうした共鳴の精度の高さという描写とは裏腹に、当のヒノエ本人は、しばしばミノトの気持ちに鈍いところがあるんですよね。ミノトの個人記事の方で詳しく考察していますが、ミノトは自己肯定感が低く、自分が他人に褒められても―—それも大好きな姉のヒノエに高く評価されても、それを素直に受け取ることができないという精神的な課題があります。

 

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ミノトが、ずいぶんと落ち込んでいます。私が龍と共鳴した時、何もできなかったと自分を責め続けているようで…。

○○さん。私はね…。いつもミノトに伝えるんですよ。

「ミノトは、私の何よりの誇り」「まじめで優しいあなたが大好きよ」って。そう言っても、あの子は信じてくれません。

「わたくしなんか、何もできない」「姉さまに迷惑をかけてばかり」そういって表情を曇らせて…。

……最近、ミノトの笑顔を見ることが減ってきたような気がします。どうすればいいのか、悩んでしまいますね。

(集会所☆4 ヒノエ)

 

その背景には、真面目で優しすぎる性格が災いして、どう考えても彼女ひとりでは背負い切れないことすらも「自分が何とか力にならなければいけないことだ」と一人で背負い込んでしまい、結果として自分自身に高すぎるハードルを課しておきながら一方でそれに届かない自分の無力さを嘆くという、必要以上の自罰的な考え方に陥ってしまっていることや、ミノトから見て「天才」である姉のヒノエ(ミノトの姉に対する尊敬の強さのあまり、ヒノエはミノトの主観においてはかなり美化されている)と自分自身とを比較し、「どうして双子の姉妹なのにこうも差があるのか」という劣等感を抱いている面があるというのが、ミノトの記事で考察した内容のおおまかな概要となります。

 

で、当然ヒノエとしてもミノトの自己肯定感の低さは非常に気がかりなことのようで、ヒノエはミノトにいつも「真面目で優しいあなたが好き」と言葉をかけているのですが、ミノトはやはりそれを信じてくれず、ヒノエもどうしたらいいものか……と手詰まりの様子。

 

イブシマキヒコと共鳴して苦しんでいたヒノエをその場で助けられなかったこと、姉と違って自分には共鳴の力がなく、もしかしたら自分が代わってマキヒコとの共鳴を引き受けられるかもしれないという可能性すら存在しないことを深く悔やんでいて、それから随分の間「自分は無力な人間だ…」とネガティブな気持ちを引きずっていたミノト。

 

ちなみに当然ながら、突然現れた古龍との共鳴など即座に打てる手が何もないのは当たり前のことで、ミノトがひとりで責任を感じるべきものではありませんし、共鳴を代われる可能性に関しても、そもそも共鳴自体が断続的・偶発的な性質のある不安定な能力であり、かつ作中の物語では最終的にマキヒコたちが事切れるまでマキヒコ-ヒノエ・ナルハタ-ミノトの共鳴関係は変わりませんでしたから、恐らく一度共鳴を果たした古龍との共鳴関係にはある程度の継続性があると思われるため、共鳴をコントロールして自発的に共鳴相手を変更する……という可能性はあまり考え難いように思われます。

 

で、そんな彼女の落ち込んだ気持ちは、マキヒコの対のナルハタタヒメが動き出したことよって自らもまた共鳴の能力を発現し、彼女にとっては「姉と同じもの」を持つことができたことがきっかけで少しずつ前向きに変化していくのですが、その時のヒノエの反応がまた非常に興味深いのです。

 

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「対はいずこ、対はいずこ」 …やはり、イブシマキヒコには 向かい合わせとなる存在がいたのですね。

つがい…雷神龍ナルハタタヒメ。それが、ミノトと共鳴してしまっている…。

不幸中の幸いは、共鳴しているミノトが意外とケロッととしていることですね。

私はそれなりに苦しかったんですが、なにゆえあの子は、むしろ幸せそうな顔をしているのでしょう…?

(集会所☆7 ヒノエ)

 

ナルハタタヒメとミノトが共鳴したという話が里内に共有されて以降、多くの里の住民が心配して集会所のミノトの元に駆け付けているのですが、そこでミノトの様子を知ったほぼ全員が、共鳴してさぞ苦しそうにしているかと思いきや、むしろ共鳴を発現したことをすごく嬉しそうにしている様子を見て「なぜ……?」と驚いているんですよね。ヒノエの時はすごく苦しそうだったという前例を考えれば、ミノトがどうしてルンルンしているのか謎であるというのは至極まっとうな反応です。

 

が、他の里の住民たちはともかくとして、姉のヒノエまでもが「ミノトはどうして嬉しそうなんでしょう……?」となっているのが個人的には引っかかるんですよね。ヒノエの口ぶりにしても、何かを察した上であえて口には出さまいとしている様子も特になく、ミノトが嬉しそうにしてることについては本心から意外そうにしているのです。

 

これを姉妹の人間関係という点から説明すれば、ミノトの記事でも述べたように「ヒノエはミノトの良いところを他の誰よりも知っていて、かつ自分自身にも欠点があり、ミノトには出来て自分には出来ないことが沢山あることも知っているからこそ、「ミノトが自分に劣等感を抱いている」ということに却って想像がつきにくいからなのではないか」ということになります。

 

それはそれでよいとしても、そこに「ヒノエは共鳴によってミノトの気持ちを感受することができる」という要素が加わると、事情はさらに複雑なものになります。つまり、「ミノトが喜んでいる理由をヒノエが分かっていない」という事象を共鳴という観点から説明すると、ヒノエは「ミノトが自分に対して劣等感を抱いている」ということを共鳴で知り得ていたわけではなかったということになるのです。

 

前提として、ミノトの視点からすれば、眩しすぎる姉のヒノエの存在が自分の劣等感の大きな要因である、ということを面と向かってヒノエに言うのはかなり憚られることですから、ミノトが直接ヒノエにそのことを話したことがあるという可能性は基本的には低いとみてよいでしょう。その上で、どうもヒノエの側からも、共鳴でミノトのそうした気持ちを汲み取ることはできていなかったらしい、という話になるんですよね。

 

もちろん、この「ミノトが共鳴を発現してなぜか嬉しそうにしている」という状況に限って言えば、先のヒノエの台詞で「ミノトへの共鳴がうまくいかない」というものがあったように、ナルハタタヒメの影響で共鳴に目覚めたミノトの状態は未だ不安定であり共鳴が通らない、もしくはナルハタタヒメとの共鳴中は他からの共鳴を受け付けなくなっているなどの理由でヒノエは共鳴できておらず、ミノトの気持ちも掴めていないということなのかもしれません。

 

しかしながら、そもそもミノトの姉に対するコンプレックスは今に始まったものではなく、ずっと以前から継続してきた彼女の精神面の課題でした。となれば、ヒノエが共鳴でそうしたミノトの心理を知り得る機会はこれまでに幾度となくあったはずですし、もしどこかのタイミングで「ミノトは自分との差に悩んでいるらしい」という彼女の悩みの種をヒノエが把握していれば、今回の件についても「もしかしてミノトは自分と同じ能力を持てたから嬉しそうにしているのではないか」と、元々勘の鋭いヒノエなら推測することも十分できそうではあります。

 

また、もしミノトが自己否定に陥ってしまうときの気持ちを共鳴を通じて汲み取れているのであれば、ヒノエは心理の専門家ではないにしても、「ミノトに色々言葉をかけているんだけど信じてくれない、どうしたらよいか途方に暮れている……」という平行線の状態よりは、もう少し進展しているのではないかとも考えられます(まあ、これは悩みの種を知ったからと言ってすぐに解決策が生まれるような類のものでもないのですが)。

 

上記のことから推測されるに、共鳴は、少なくとも現時点のヒノエがミノトに対して発生する共鳴に関して言えば、「個人の思考や感情の裏に潜んでいる、コンプレックス、ものの見方や考え方の歪み、悩みの根源……そういうものを解きほぐして知ることができるほどの高い精度を有しているわけではない」と思わざるを得ないところがあるのです。

 

具体的には、ミノトが心底嬉しい気持ちであることは分かってもなぜ嬉しそうにしているのかまでは分からないし、ミノトが深い自己否定で落ち込んでいるときも、悩んでいる気持ち自体は把握できても、その悩みの根っことなるようなミノトの中の自己像、ヒノエ像、彼女の性格に基づいた物事の考え方や価値観といったところまで共鳴が洞察できるわけではない、ということです。

 

もちろん、ヒノエやミノトは人間の年齢換算すれば結構高齢ではあるものの、竜人族の基準で言えば若い世代にあたりますから、これから更に年数を重ねていくごとに共鳴の能力も成熟していく、という可能性はありますし、そもそも竜人族内でも共鳴を行える者と行えない者、早く発現する者と遅く発現する者とがいるように、共鳴を行える竜人族内でも、誰を相手にして何をどこまで共鳴で汲み取れるのかということには相応の個人差がある、という可能性も無視できないでしょう。

 

あるいは、そうした深い心理の共有が出来るのはヒノエ→ミノトへの一方的な共鳴によってではなく、姉妹が双方向的に共鳴するようになって初めて可能になるのではないか……つまりミノトがナルハタタヒメの影響で共鳴を発現し、今後いずれ日頃からミノト→ヒノエへの共鳴も発生するようになっていくにつれて、初めて姉妹の間で一層濃い共鳴が可能となり、ヒノエはミノトが抱いている姉へのコンプレックスや、他人や自分のことで思い詰めすぎてしまう彼女の悩みの根底にも触れられるようになっていくのではないか―—つまり、ミノトの悩みはまさにこれから少しずつ解決されていく段階にようやく入ったということになるのではないか、という可能性もあり得るでしょう。

 

共鳴についてはまだ設定もあまり定まっていない以上、共鳴の性質に関して考察できるのは大まかにはこのくらいになるでしょうか。聞くところによれば、過去作で登場した「白いドレスの少女」なる人物も、これまでは彼女自身が祖龍(ミラルーツ)の化身なのではないかという、それこそおとぎ話のようなものが一つの定説となっていたところを、モンハンライズにて新たに「共鳴」という設定が加わったことで、白いドレスの少女と祖龍は共鳴関係にあり(この場合白いドレスの少女は竜人族ということになります)、ミラルーツのクエストの案内文は、ヒノエがイブシマキヒコの、ミノトがナルハタタヒメの思念をそれぞれ代弁したのと同様に、少女が祖龍の思念を代弁したものではないかという考察もあるようですね。

 

より正確に言えば、モンハンライズの作中においては、イブシマキヒコやナルハタタヒメが「自分たちは対を探している」ということを、彼らと共鳴したヒノエやミノトが代弁していますが、これは古龍の思念から(どちらかといえば一方的に)感じ取ったものをヒノエ達が言語化したということであり、「マキヒコたちの側がヒノエ達の口を通して、自らの思念を人間に伝えようとしていた」わけではありません。マキヒコたちにとって、わざわざそのようなことをする必要性がないからです。

 

集会所第一エンディングで姉妹が向かい合わせになって共に共鳴し、それぞれの古龍の思念を口にしていたのも、私自身の仮説によれば、これはマキヒコとナルハタがヒノエとミノトを媒介に意思疎通を図ったことの結果だという風に考えられます。

 

ところが白いドレスの少女と祖龍の場合は、ハンターに自分の元まで来てほしいという依頼分が祖龍の意思なのだとすれば、少女が祖龍の意思を「人間に向かって」代弁している、あるいは祖龍の側が少女にそうさせているということになるため、ライズのつがいの古龍と受付嬢姉妹との関係よりも少女と祖龍の間に築かれた関係は深く、共鳴の使い方もより高度なものであることになります(赤衣の男など、他の人物についても同様)。

 

ちなみに、共鳴を通じて祖龍が少女に自分の思念を伝えさせたと仮定すると、ライズ第一エンディングのシーンは「イブシマキヒコがヒノエの口を通じて自分の思念を代弁させナルハタタヒメに伝えていた(逆も同様)」と解釈することもできなくはないのですが……。先述したように、古龍が意思疎通を図るためにわざわざ間に人類の言語を挟むとも考え難く、私個人の感覚としては、古龍同士はあくまでも思念をそのまま受け取り合うことで互いを認識していたと考える方が自然だと考えています。

 

いずれにしても、今後の作品でも古龍と深く関係する人物、古龍の意思を代弁するような存在というのも登場してくるでしょうし、白いドレスの少女も含め、過去作の謎について考えるヒントも少しずつ明らかになってくるでしょう。記事の最初の方のゴコクの会話にあったように、「共鳴」という名称自体、元々はヒノエがミノトに対して行っていたものを周囲の人間がそう呼んでいただけであり、他の作品においても違う名称で、実はこの共鳴が登場する、なんてこともあるかもしれません。

 

共鳴という設定が今後どのように発展していくのかは見どころではありますが、私個人としては、ヒノエやミノトよりも古龍との共鳴に長けた人物が登場したところで、古龍の意思を一部読み取ることはできたとしても、100%完全に読み取れるようなことにはならないだろう(というか、個人的な願望としてそうなっては欲しくない)と考えています。これまでで確認されている「共鳴で分かる相手の情報」を見ても、共鳴相手の頭のなかを悉く覗き込めるような万能スキルではなさそうではあります。

 

竜人族と古龍との共鳴は、古龍の意思を読み取り人類との橋渡しとなり得るものである一方で、人類にとって古龍を、ひいては自然を、絶対的な他者ではなくしてしまうという可能性を秘めています。古龍は自然の脅威、自然の偉大さそのものであり、もしもその意思を人類が把握することができるということになれば、それは人間が自然をある程度手中に収め、コントロールできてしまうという結果に行き着きかねません。

 

モンハン世界はあくまでもモンスターや古龍が圧倒的であり、自然は人類の恵みでありつつ同時に畏れるべき存在でもあり、人間の智をつねに超絶していくものでもある。そして人類は人類社会を築きつつも全体としては自然の大きな円環の一部分であり、つねに自然の力の中で揉まれながらも、自然を利用し自然と共存して生きていく存在である―—という世界観を壊してほしくはない、というのが私の願望であり、その根幹の世界観こそが私がモンハンという作品を好きになった所以の一つでもあります。

 

自然は人類にとって、あくまでも絶対的な他者性として存在してほしいと思うからこそ、共鳴は古龍の意思を全て読み取れる万能スキルのような扱いはされてほしくないし、そうなることは無いであろう……というのが私の見立てです。

 

まあ、一応さらに付け加えておくと、ここでは人類と十把一絡げに言っていますが、竜人族と人間族(という表現でいいのかは分かりませんが)とは、積極的な交流や共生がある社会もあれば無い社会もあるようですし、竜人族においては特に自然との一体化を重んじるという価値観が主流とされています。そんな感じで、上記の共鳴関連の話ひとつ取っても、人類/自然という二項対立には多くの複雑なもの、どちらにも回収され得ないものが含まれていることは明白であり、そしてその繊細さの扱い方をカプコンが誤るということはまずあり得ないと思っていて、その点は基本的に私は安心しています。

 

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そんなわけで、本記事の考察はここまでとしておきたいと思います。ミノトの性格話については以前にやたら熱の入った記事(?)を投稿している他、ヒノエの記事についてもセカンドデータ完走後に投稿したいと思っておりますので、本記事の補足として参考にして頂ければ幸いです。

 

今回は軽い記事にするはずが結局長くなってしまい、しかも記事を書いている中で自分の考えも二転三転していくため、全体的に支離滅裂さが出てしまった記事だなぁ…と我ながら思っております。ま、そういう錯綜する感じもブログを書くひとつの醍醐味ですし、今後も筆者の文章作成能力の向上を生暖かい目で見守って頂けると嬉しいです。

 

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!