なぜか里クエストの進行度でセリフが追加されるアヤメさん

※注意事項※

・本記事は「モンスターハンターライズ」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・本記事は、2021年12月17日発売の「モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録」発売前に執筆されたものです。
 したがって今後公開される公式設定は、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。
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ーーーもくじーーー

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⓪まえおき

まずはこちらの会話クリップをご覧ください。

 

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ああ、○○。マガイマガドを倒したそうじゃん。いやぁ、大したモンだよ。

ケガさえしてなけりゃ、アタシが狩猟できてたのかな…?

ふふ。「体調さえよければ自分が狩れた」…みたいな言い方は、カッコ悪いね。今の発現は取り消しってことで、よろしく。

(里☆5 アヤメ)

 

こちらは、集会所NPCである上位ハンター・アヤメさんの、里進行度☆5の台詞です。…と、このようにただ強調しただけでは、いったいこの会話のどこにそんなに取り立てて話すことがあるのかという説明があまりにも不十分ですね。この台詞の何がすごいのかを解説するために、まずはモンハンライズのカムラの里NPCの会話システムから説明しておきましょう。

 

カムラの里は「たたら場前」「集会所」「オトモ広場&修練場」の大きく3つのエリアに大別されておりまして、ライズのストーリーが進んでいくと里の人たちの会話内容が更新されていきます。

その更新のパターンはおおむねエリアごとに分かれていまして、

 

たたら場前エリア:

里クエ進行度、集会所クエ進行度の両方で会話内容が変化(フカシギのみ、里進行度でのみ更新)。

より詳しく言うと、ほぼ全てのキャラにはいつも会話が2~3種類ほど存在するが、そのうち1~2つは里クエの進行度で内容が更新されていく「里枠」の会話テキスト、残りの1つが集会所クエの進行度で内容が更新されていく「集会所枠」の会話テキストとなっている。

 

私はライズは最初に里クエから進めたのですが、昇格のたびにたたら場前エリアのNPCにちょこちょこ話しかけていると、里のストーリーに合わせて会話は変わっているのに、それらに交じって時々「○○さんも集会所に行くようになったんですね」みたいなやつを繰り返し聞かされて「この会話ずっと言ってくるなぁ。ちょっとしつこいなぁ~」と思っていた時期がありました。

実際のところこれは欠陥でもなんでもなく、集会所クエを進めていないので「集会所枠」の会話が☆1のまま止まっているせいだったんですね。

 

ちなみにその後集会所クエに突入したときは、里マガイマガドよりも明らかにタフネスが高い集会所下位オサイズチに腰を抜かしました。

 

オトモ広場&修練場:

里枠、集会所枠の両方のテキストを持っているNPCと、ほとんど集会所進行度でのみ会話が更新されるNPCとが混在。

 

集会所:

会話パターンがおおむね2種類あり、そのいずれも集会所進行度で更新される「集会所枠」の会話である(自宅と集会所準備エリアの両方で話しかけられるルームサービスは除く)。したがって基本的に、里クエの進行度では会話が更新されることはない。

 

 

その他、説明キャラのイヌカイ、ハネナガ、シルベ辺りは時期にかかわらず聴ける固定の会話があったり、里および集会所の進行度によっては更新がない時期があったりするほか、商店の品ぞろえの追加や加工屋の装飾品の追加などの場合は里・集会所両方のエリアでそれぞれ通知のための会話がある……など、例外を語り出すともう小ネタが尽きないのでこれくらいにしておきますが、とにかくここで重要なのは、集会所NPCは原則として集会所の進行度でしか会話内容が更新されないということ。

 

里マガイマガドを討伐して、ヒノエの美しい歌声が聴けるやたらと太刀推しの里EDを見た後、ゴコク様やウツシ教官、ミノトたちにも褒められに行こうと集会所に足を運んだものの、何度話しかけてもまったくハンターさんのマガイマガド討伐の功績に関して何も言ってくれず、しょんぼりした経験があるのは私だけではないでしょう。

 

「ハァ……集会所エリアの人たちは、ハンターさんのマガド討伐について何も触れてくれないのだろうか……。まあ、集会所の人たちは里クエでの会話テキスト追加フラグがないっていうゲーム上の都合があるし、仕方がないかな……。」

そうやって諦めかけながらも、一応集会所の人たち全員にひととおり話しかけていた私の度肝を抜いてきたのが、最初に紹介したアヤメさんの会話テキストだったということなんですね。

 

このアヤメの会話を聞いてから、もう一度ゴコクやミノトなどにも確認のため話しかけてみたのですが、里マガイマガドの件についての追加会話はやはり無し。万が一、私が奇跡的な不運によって確認漏れしているのでないとしたら、本当に、アヤメだけが里☆5昇格後に新規の会話(お店の商品が増えました等の事務連絡をのぞく)が追加される唯一の集会所NPCということになるわけです。

 

このことについて、さらに裏付けを取るならば、複数の会話パターンを持つNPCに話しかけたとき、そのうちのどれが聴けるのかは基本的に毎回ランダム(体感ですが、やや偏りのあるランダムだと思います)なのですが、ストーリー進行で会話の更新があった場合、その進行度内で最初に話しかけたときは、ほとんどの場合は新規の会話パターンを最初に優先的に聴くことが出来るという仕様になっています。

 

したがって、私が「ほんとうはあるはずの他の集会所NPCの会話テキストを運が悪すぎて見逃している」という可能性は、限りなくゼロに近いと言えるでしょう。

 

そして、アヤメの全会話テキストにおいても、里の進行度で追加される会話はこの里マガイマガドの件の1点のみで、残りは基本的に集会所枠の会話テキストとなっています。基本的に里のことについてはリアクションはしないのに、里マガイマガドの件にだけはリアクションをした、ということになるわけですね。

 

さて、多くの集会所NPCのなかでも、どうしてアヤメだけが里☆5の会話テキストを持っているのでしょう。理由として考えられそうなのは、

①容量とかの問題でNPCの会話テキストをカットしたがアヤメのを消し忘れた

②アヤメのキャラを立たせるための工夫

くらいでしょうか。アヤメの会話のみを意図的に作るくらいなら里マガイマガド討伐後の台詞くらい全員分あってもいいでしょうし、①のような何らかの設定ミスと考えるのが普通なのかなぁという気がしてまいります。

が、キャラ考察記事としてはやはり②の線で考えて、アヤメの台詞の中に物語を読み込んでいくほうが面白いですから、今回はそういう方向で見ていくことにしましょう。

 

①アヤメの経歴と悩み

まず、アヤメがどういうバックグランドを持った人物なのか、ということについて、ご存知の方も多いと思いますが、改めておさらいしておきましょう。

 

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アタシはアヤメ。これでも上位ハンターなんだ。一応、このカムラの里の出身なんだけど…

 小さい頃に別の村に引っ越して、そこでハンターになったから、アンタはアタシのこと知らないよね。

ちなみに、今、ハンターは休業中なんだ。ちょっと狩りで大ケガしちゃってさ…。帰郷して長期治療中ってワケ。

また狩りに行けるかは、運次第みたい。ハンター以外の人生も考えなきゃいけないのかもね…。

(集会所☆1 アヤメ)

 

アヤメは現在ケガで休業中のハンターで、現役の時は上位ハンターとして仕事をしていた人物。「上位」というと、多くのプレイヤーは割とあっさりそこまで昇格してしまうので忘れがちなことですが、モンハンの世界観における「上位ハンター」は相当の実力者とされている存在。したがってアヤメも、主人公に比肩する、あるいはそれ以上の能力があるハンターということになります。

 

自分の生業であり、そして上位に昇格できるほど腕前を上げた狩猟がケガで出来なくなってしまったということですから、本人のショックは相当なものでしょう。ハンターに復帰できるのか、それとも諦めて別の道を探すべきなのか、今がまさにアヤメの人生の分岐点というところ。

上位ハンターとして稼いだ貯えがあるでしょうから、狩りに出られなくても生計を立てるのには当分は困らないものとは思いますが、精神的にはかなり揺れている時期です。

 

アヤメはせめて後輩ハンターであるプレイヤーには自分と同じ目には遭ってほしくないと、主人公を気遣うようなアドバイスを何度もしてくれます。

 

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ああ、○○。ムチャはしてない?

くれぐれも、ケガには気をつけなよ。まあ、ハンターに無傷で狩れっていうのもムチャな話だとは思うけどさ。

ケガさえしてなければ…アタシもモンスターを狩りまくって、このふるさとに恩返ししたかったんだけどね…。

(集会所☆1 アヤメ)

 

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狩りにいくのなら、自分の実力を冷静に分析して、挑戦するクエストを選ぶんだよ。

…じゃなきゃ、アタシみたいに大ケガして、里の危機だってのにくすぶってるような 情けないハンターになっちまうからね。

(集会所☆1 アヤメ)

 

このように、ケガをしないように何度も念押しをするアヤメの言葉の裏にあるのは、自分自身がこの百竜夜行の迫るカムラの里に対して、ハンターとして「狩り」で貢献することができないという悔しさや苛立ち、自責の念に他なりません。

 

アヤメにとって、カムラの里は大切な故郷。先ほども少し話に出ましたが、他の多くのカムラの里出身の人たちとは異なり、里で生まれてからずっと里で育ってきたわけではなく、幼いころに親の仕事の都合で里を離れ、そちらで過ごした時間のほうが長いという経歴の持ち主。

 

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アタシがこの里から引っ越したのは、親の仕事の都合で、まだ3歳だったんだ。
でも、この里のことはよく覚えてて…。ケガしてハンター休業ってなったときに、真っ先に帰ろうって思ったんだ。

引っ越した先が嫌だったってワケじゃないけど、やっぱりこの里の空気がアタシの体に合ってるよ。

(集会所☆1 アヤメ)

 

今までずっと里を離れて生活してきたからこそ、生まれ故郷の空気を恋しく想っていたアヤメ。過ごした時間は違えど、彼女がカムラの里を大切に思う気持ちは、他の里の人たちと何ら変わりはありません。それだけに、自分が何も出来ないやるせなさが一層響いてきます。

 

ストーリー前半~中盤にかけてのアヤメは、なんとなく他の里の人に対して、少しだけ一方的に壁を作っている感じがします。と言っても、別に彼女が里の人から疎まれているとか、里の人と仲が悪いとかそういうことではなく、彼女自身はむしろ、ケガをしている自分を心配して支えてくれる里のみんなを本当にありがたいと思っています。

 

ですが、彼女はケガでハンターとしての仕事が出来ず、里の防衛に赴くこともできません。自分に何ができるのか、何をすべきなのか迷っているアヤメには、百竜夜行やその元凶たる古龍の脅威を目前にして「里のみんなで一致団結して頑張ろう!」というカムラの里の雰囲気に、ちょっとだけ置いていかれてしまっているような、そんな心境をうかがわせるようなものがあるんですよね。次のクリップも見てみましょう。

 

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里守って、ハンターがやるのかと思ったら、里のみんなでやるんだね。ハンターの資格とか関係なしに。

まあ、里の防衛のためだから、ハンターである必要はないか。

それにしたって、受付嬢から茶屋からオトモ広場の雇用窓口まで… みんなして武器をかついで… 感心するよ。

(集会所☆4 アヤメ)

 

アヤメはこの時期はまだ砦での防衛には参加しておらず、カムラの里の里守たちに対してこのような感想を言っています。元々は狩猟を生業とするハンターでありながら現在は休業中の自分とは対照的に、ハンターの資格はなくとも武器を取ってモンスターの群れと戦う里守たち。

 

そんな里守達の姿に「感心する」という言葉の奥には、自分も里のみんなと一緒に戦うことができない寂しさ、「もし自分がケガをしていなければ、故郷の役に立つことができたのに……」という、悔しさや情けなさのようなものもあるような気がします(もちろん里の人たちからすれば、ケガで休業しているアヤメに無理をして悪化させてほしくはない、という気持ちがあってこその待機という判断ではあるのですが)。

 

ウツシ教官から「一緒に若いハンターを育てないか」と誘われたときには、自分も何か里のために協力したいという気持ちと、自分はケガをしたハンターだという自信のなさの間でもどかしい心境を見せるシーンも。

 

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そこにいるウツシ教官から、「一緒に若いハンターを育てないか」って誘われたんだけど…。

アタシみたいな、ケガして動けなくなったハンターが偉そうに育成なんて… どのツラ下げてやるんだって話だよね。

だからって、いつまでもここでボケッとしてるのもいいわけない…。百竜夜行もたいへんだし…。

やれやれ。もどかしいったらないね。

(集会所☆2 アヤメ)

 

同じくハンター経験があるであろうウツシとしては、ハンターが狩猟で怪我をしてしまう可能性はどれだけ本人が注意していてもゼロにはならない、というのは分かっていることで、その上でアヤメの実力を見込んで力を貸してほしい、とお願いしているのだと思います。

 

一方でアヤメは、何らかの仕方で里の力になりたいという気持ちはありつつも、ケガをして休んでいる自分なんかが…… と、なかなか自信が持てない様子。里への恩返しをしたいという希望と、自分にそんなことをする資格があるのか? という疑念との間に板挟みにされている感じです。

 

他にも、ヒノエがイブシマキヒコと共鳴した直後の会話にも、彼女とカムラの里との距離感が分かるものがあります。

 

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「ヒノエさんが青い龍に…」って、みんな大騒ぎでそこしか聞こえなかったから、襲われたのかと思って血の気が引いたよ。

よく聞いてみたら、「共鳴」しちゃって体調を崩したって話だったんだね。まあ、今は大丈夫そうだし心配ないのかな?

ところで、「共鳴」ってのは…何?

いや、アタシ、ずっと里を離れていたからさ、わかんないことも多いのよ。

(集会所☆4 アヤメ)

 

幼いころから里を離れて生活していたアヤメは、里の人ならだいたい知っているようなことでも知らないことがあります。ヒノエの共鳴についても同様で、昔からヒノエがミノトと共鳴するところを見ている里の人たちはヒノエの身に何が起きているのか理解できるのですが、アヤメはそれがどういう状況なのか、「青い龍のせいでヒノエの体調が悪いらしい」ということくらいしかわからない状態。

 

それは彼女の境遇上仕方ないことですが、イブシマキヒコの件をめぐって、ヒノエの共鳴が「既知のことがら」として話が進んでいく中で、そもそも共鳴が何なのか詳しく知らないアヤメの様子は、何となく「周りのみんなについていくことが出来ない…」という感じ。

 

総じてこのアヤメというキャラは、カムラの里の危機においてのハンターとしての活躍という点でも、またカムラの里との距離感という点でも、主人公とちょうど対極的な境遇を生きるハンターとして描かれていると言えます。

 

幼い頃から里の皆に愛されてカムラの里で育ち、ハンターとして認められるとすぐに驚くべき躍進を果し、カムラの里の因縁の相手であるマガイマガドや、百竜夜行の元凶であり、また竜人族のヒノエやミノトを共鳴で苦しめたイブシマキヒコ・ナルハタタヒメを討伐して「カムラの里の英雄」として称えられる主人公。

 

かたや、人生の大半をカムラの外で過ごした経歴があり、主人公の先輩ハンターで相当な実力者でありながらも、狩猟の際のケガでハンターを休業せざるを得なくなったことで自信や将来像に迷いを持ち、またハンターとしてモンスターの災禍に襲われる故郷・カムラの里に貢献できないというもどかしさ、一抹の孤独感をひとり抱え込むアヤメ。

 

モンハンライズのストーリーにおいて、つねに里の危機に立ち向かう「要」として活躍し、カムラの里の団結の中心点として皆に慕われる主人公とちょうど鏡合わせになるように、その境遇上、なかなか里のみんなと同じ気持ちでいることができないという悩みを抱えているハンターとして、アヤメというキャラが描かれていると言えるでしょう。

 

そのことによって、主人公は自分自身が歩むことはない人生、つまり、ハンターは必ずしも活躍を重ねて順風満帆な人間ばかりではなく、ハンター生命を脅かすほどのケガに見舞われて仕事ができなくなるという、ハンターにとって非常に厳しく辛い運命を背負った人間もいる、ということへの想像力が働くわけです(プレイヤーのハンターはゲームシステム上、どれだけやられても3乙帰還にしかならず、大ケガをして休業ということがあり得ないですから)。

 

モンハンライズのストーリーは基本的に主人公の活躍によって百竜夜行の解決が進んでいくので、狩りで里に貢献したいけど出来ない、というアヤメの悩みもまた、主人公は経験し得ないものなんですよね。

 

必ずしも里の全員が「自分は里の役に立てている」と心から思えているわけではなく、里の中心となって活躍する主人公や他のカムラの里の人たちを羨ましく、あるいは少し妬ましく思ったり、周りと自分を見比べて、本人の中で疎外感を抱いてしまう人も中にはいるのかもしれない。これは「自分は活躍出来ている」という自己認識がある人ほど、むしろきちんと持っていなければならない想像力だと思います。

 

戦うべき時に万全の状態で戦えるということ、これがハンターとしてどれだけ恵まれていることか……ということを、アヤメの語りを通じて主人公は痛感することになるのです。

 

そのうえでなお、どんな人にも自分にできること/できないことがある中で互いに支え合っていくのが「団結」のあるべき姿であって、主人公もまた、アヤメのように「戦いたくても戦えない(モンスターに武器で直接戦えない、という意味での)人間」の想いや痛みも背負って狩りに行くわけです。このように「カムラの里の住人」としても、「ハンター」としても、アヤメの存在が主人公に与える想像の余地は非常に大きいものだと思います。

 

②アヤメの現役復帰とハモン

さて、若干脱線してしまいました。アヤメの話に戻りますが、彼女はハンターの道を完全に諦めてしまったのかと言えばそういうわけではなく、ハンターに復帰したい…という気持ちは今でも大きい様子。

 

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(集会所☆3 アヤメ)

頭ではハンターはもう無理だとわかっていても、身体はハンターだったころの生活を記憶している……。そういう自分の無意識の行動に、まだ狩りの道を諦めきれない自分自身を発見するわけです。

 

もし、ハンターがだめでも別の道を選ぶことに前向きになれているのならそれはそれで前向きになれていると言えるのかもしれませんが、アヤメの場合はハンター復帰を諦め切れないところがあるわけですから、中々そういうわけにもいきません。しかしこの時期はアヤメの中でも迷いがあり、「ハンター復帰」の可能性に前向きに取り組んでいるというよりは、気持ちはあるけれど活路を見いだせず「未練」「ぼんやりとした意思」にとどまっているという状態。

 

そんなアヤメを特に心配しているのが、加工屋のハモンさんです。

 

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集会所に、アヤメというハンターがいるだろう。あれは、この里の生まれでな。

若くしてこの里を出て、ハンターになったのはその後のことゆえ、おぬしが知らんのは無理はない。

しかし、狩りの最中にケガをして戻ってきたのだ。ケガの状況は芳しくなく、再び狩りに出られる日が来るかはわからん。

過酷な運命だが、それを受け入れてどう生きていくか、それは彼女自身が見つけ出さねばならん…。

(集会所☆2 ハモン)

 

ハモンは昔のアヤメのことを知っている一人。プレイヤーが自キャラをどの位の年齢の人としてキャラクリするかは各々に委ねられていますが、スタンダードとしておおむね16~20歳程度を想定されているとすれば、主人公と年代が近いor年下の里の住民は、カムラの里で生まれてから里を発つまでのアヤメとは面識がない、という感じになるでしょうか。

 

彼以外にもアヤメのことを以前から知っている人はいるのですが、それではアヤメのことに言及する会話がハモンにあるのはなぜか、というのは個人的には深堀りするべき点だと思っています。

 

彼女のことを幼い頃から知っていて気にかけていたから、同じくハンター経験者として、あるいはハンターの活躍を見守る加工屋として心配しているから、など色々考えられるでしょうし、いずれの理由もあると思いますが、いずれも決定的な要素ではありません。何かもう一押しの深い理由があるのなら…と思っていたところ、次の台詞に注目するべきポイントがありました。

 

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…50年前、ワシは、里を壊滅寸前に追い込んだマガイマガドと相対したものの狩猟することができなかった。
こたび、イオリが危険な目に遭わされ… しかし、老いたこの身では復讐もできず…。

あまりの口惜しさに、血の涙を流す思いだ。悔しくて、悔しくてやりきれぬ。

○○よ。ワシの「からくり」は、マガイマガドへ放った、積年の怒りを込めた一矢…。

この一矢を手掛かりに、おぬしが狩るのだ。任せたぞ。

(里☆5緊急前 ハモン)

 

50年前の百竜夜行の際にマガイマガドをハンターとして撃退したハモンは、今度は主人公にマガイマガドの狩猟を託します。百竜夜行の脅威に際して、今回は加工屋として出来ることに心血を注ぎつつも、本当は自分自身でマガイマガドを仕留めたいという本音もあり、現役のハンターだったときには出来たことが今や出来なくなった、自分の老いた身体を嘆くハモン。それでもなお、主人公の武具や砦の設備、からくりの作製など、加工屋の仕事を以て百竜夜行やマガイマガドの脅威に対抗する、という道に迷いはありません。

 

ハモンがアヤメの人生のことを気にかけているのは、まさにこの点からではないのかと私は思うわけです。アヤメはケガ、ハモンは老いとそれぞれ理由は違いますが、前までは出来ていたこと(狩猟)が出来なくなること、狩りが出来るほどには身体が動かなくなることの喪失感―――つまり、「やりたい」という意志と「できない」身体が分離することの痛みをハモンはよく理解しています(これもまた完全な推測に過ぎませんが、里の仇敵マガイマガドを自分の手で仕留めて里を守りたい……という、彼女の果されざる願いもまたハモンは見抜いていて、深く共感するところがあったりするのかもしれません)。

 

その上で、今回の百竜夜行においてハモンがハンターとしての戦いは諦めて、カムラの里の加工屋としての戦いを決断したように、アヤメもまたハンターに復帰するか、はたまた別の道を選ぶのか、いずれにせよ人生に迷っている彼女が何か決断を出すことができるかどうかを案じ、じっと見守っている…… そういう心境がハモンの中にはあるのではないかと思っています。

 

アヤメはストーリーが進んでいくにつれて、「ハンターに復帰したい」という想いが徐々にはっきりと見えるようになっていきます。彼女がそう思うようになったのは、激化する百竜夜行の脅威を見て自分もモンスターとの戦いに貢献したい、という気持ちが強まっていったのもあると思いますし、冒頭のクリップでもあったように、主人公の活躍に触発されて、という面もあるでしょう。

 

そしてそれに加えて、アヤメが自分自身にハンター復帰の可能性を見い出せるようになったのは、こんな人物の影響もあったりするんです。

 

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受付嬢のミノトさんがさ、アタシにクエストリストを見せに来たの。

ケガして狩りに行けないアタシによ? ケンカを売ってるのかと思ったよ。最初はね。

でもミノトさんは「このクエストであれば、あなた様のハンター復帰の訓練に最適だと思います」って…

そのあとも、いろんなクエストを「アタシの復帰の役に立つ」って勧めてきてくれるんだ。

アタシってヤツは、ホント情けないね。狩りにはもう行けないって…自分が勝手に決めつけてただけだったんだ。

(集会所☆5 アヤメ)

 

先述の通り、アヤメとカムラの里の人の関係については、アヤメはカムラの里を離れていた時期が長く知らないことも多いことや、百竜夜行で戦う里守たちに感心しつつもその戦列に加われない自分を情けなく思っていたりと、何となくカムラの里の人たちのペースについていけていないと自認している部分があると私は見ています。

 

カムラの里の人たちからすれば彼女も里の大切な仲間なのですが、おそらく彼女自身の方からは、カムラの里を居心地がよい故郷だと感じている部分もありつつも、一方で里の防衛という点について言えば、今の自分の力の無さから周りに対して若干距離を置いてしまっている―—そのように感じられる部分があります。

 

今後のハンター人生への迷い、孤独感や無力感をひとりで抱え込んでしまっている感じのアヤメに対して、ハンター復帰のためのクエストを勧めるという大胆なアプローチができるのは、やっぱりミノトならではだなぁと思ったりします。

 

周りの人の視点を考えてみると、アヤメのケガは心配であると同時に「ケガのことには触れてもいいのかな?」とちょっと話題に出すのは避けてしまいがちな所で、せいぜいウツシやハモンのような立場でないとなかなかその話を振れないような事柄でもあると思うんですよね。

 

そういう話題に対してミノトは「このクエストはどうですか」とグイグイ詰め寄っていくわけです(実際アヤメも「ケンカ売ってるのかと思った」と最初は思っているわけですから)。アヤメが本当はもう一度狩りに出たいと思っていることを見抜いた上で、アヤメがその現役復帰の具体的な道を考えられるように受付嬢として出来ることをしたい、という意図からの行為でしょう。

 

他人にとことん深く入れ込んでいく性格のミノトだからこそ、つらい気持ちを抱えこんでモヤモヤしているアヤメの心理的な壁を(若干強引に)こじ開けることができたのかもしれません。そのおかげでアヤメも、「自分で自分の可能性を狭めているだけ」という気づきを得ることができた様子。

 

この集会所☆5の出来事を経て、アヤメが初めて砦に赴くことになる、集会所☆6イブシマキヒコ百竜夜行に繋がっていくわけです。いやほんとよくできてるわモンハンライズ。NPCの会話にもちゃんと流れがあるんですね~。

 

③初めて砦に向かう

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いよいよ、イブシマキヒコだね。今回は、アタシも砦に行くことにしたよ。

もちろん、ケガは治っていないけどさ、何かできることがあるんじゃないかって…。ここで腐ってるよりは、ずっといい。

(集会所☆6百竜夜行前 アヤメ)

 

アヤメにとっては、百竜夜行との戦いでもあると同時に、今の自分にはどんなことが出来るのか、自分の中の可能性を探す戦いということにもなってきます。

そしてこの百竜夜行がきっかけで、アヤメのハンター人生が大きく動き出していくことになります。百竜夜行後の彼女の会話を見てみましょう。

 

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おつかれさん、○○。完全に解決とはいかなかったけど、解決に向けて大きな一歩だよ。

アタシにとっても、大きな一歩になった。ケガでまともに動けないくせしてさ、砦での防衛に役に立てたんだよ。

百竜夜行の最中にさ、ハモンさんがライトボウガンを渡してくれたんだ。「これでモンスターを撃退しろ」ってさ。

アタシは昔から大剣とか振り回してたから戸惑ったけど、ライトボウガンだったらケガしてる箇所に大きな影響なく使えて…。

まだまだ上手じゃないけど、希望が見えた気がするよ。イチからやり直しになるかもしれないけど、挑戦する価値はありそうだ。

(集会所☆6百竜夜行後 アヤメ)

 

このライトボウガンという武器は、ハモンさんがハンターだった時に得意としていた武器です。百竜夜行のときのハモンさんの立ち位置は、作戦指揮や武器・兵器の管理、そしてハンターではないですが里守として戦うこともある、みたいな感じだと思われますが、イブシマキヒコ百竜夜行でハモンさんは自分が砦に持ち込んでいたボウガン(自分の武器を貸したのか、予備のものを与えたのかはわかりませんが)をアヤメに使わせたようです。

 

ライトボウガンは近接武器ほどは激しく動き回らない遠距離武器、しかも比較的軽量な武器で反動が軽く、麻痺弾や睡眠弾やLv3徹甲榴弾など敵の動きを止めて戦うこともできるため、ケガをしているアヤメでも使える余地があります。大型古龍を相手にした激戦で少しでも里守の人手が欲しかった、という事情もあると思いますが、ハモンさんは今回初めて砦に足を運んだアヤメを見て、彼女のハンター復帰への強い意志を汲み取り、かつライトボウガンであれば戦える見込みもあると見て、武器を手に取らせたのかもしれません。

 

これまでアヤメは砦への遠征のときには、里守として戦う里の皆を前に、本当ならハンターとして戦えるはずがケガで共に戦うことができない自分自身に、ひとり心苦しさを感じてきました。ケガをして帰ってきた自分を温かく迎えてくれたカムラの里に、大好きな故郷に、自分は何も恩返しができないのか…と悩んできました。

 

今回の遠征で、ライトボウガンでモンスターを撃退できた、里守としてみんなと戦うことが出来たということは、彼女のハンター人生にとっての大きな変化であるのみならず、そうした悩みを払拭するものでもあったと思います。ふだんはクールなのに、この時ばかりは「アタシなんかでも役に立てたんだよ」と嬉しそうに話すアヤメを見ると、それぞれにとっての大きな戦いであるマキヒコ百竜夜行を共に戦い抜くことができたのだと、なんだかハンターとしても胸が熱くなりますね。

 

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アタシさ、ケガしてハンターを休業する前は、大剣とかハンマーとか、でかい武器ばかり使ってんだ。

だから、ケガのせいでそういう武器が使えないなら、もう狩猟はできないって思ってたんだよね。

でも、この前の百竜夜行で初めてライトボウガンを使ってみて、視界がひらけたよ。「まだこの道があった」って。

自分で自分の可能性を狭めるほどおろかな行為はないね。

練習、始めてみようかな。

(集会所☆7 アヤメ)

 

ライトボウガンのおかげで視野が広がり、自分の可能性を感じることができたアヤメ。一からの練習だ、と彼女は言いますが、よく考えてみるとこれまで触れたこともない武器をいきなり渡されてすぐにモンスターを撃退まで追い込めるというのは、かなりの経験値がなければ成しえないことであり、アヤメのハンターとしての実力の高さを証明するものでもあります。そんなアヤメさんなら、きっとライトボウガンもすぐに使いこなせるようになるはず!

 

さて、新たにライトボウガンの修行を始めるアヤメは、ハモンさんから専用のライトボウガンを新たに造ってもらえることに。

 

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加工屋のハモンさんが、アタシのためにライトボウガンを作ってくれるんだ。嬉しいね。

…で、どんな見た目がいいか聞かれたから「モンスターが逃げ出すくらい怖いヤツ」ってお願いしたんだけど…。

ハモンさん、図面にからくり蛙みたいなの書いてたんだよね。修練場とかオトモ広場にあるヤツ。

「アヤメ用」「口から弾が出る」って書いてたから…間違いなくアタシのだよ。アタシのライトボウガンの設計図だよ。

ハモンさんの怖い基準って、ちょっとアタシとは違うみたいだ。まあもちろん、後生大事に使わせてもらうけどね。

(集会所☆7 アヤメ)

 

カエルの見た目のライトボウガン……ヨツミワドウあたりがモチーフでしょうか。ゲーム中でヨツミワドウ素材のライトボウガンは今のところありませんから(へビィはある)、完全にアヤメ専用、世界に唯一のライトボウガンということになりますね。

ハモンさん、モンスターは大丈夫でもカエルやガルクなどの小~中型動物が怖いというのは、本人が本気で怖いと思っているところちょっと申し訳ないですが、なんだか可愛らしい一面です。

 

そしてハモンさんにとっては、かつて自分の得物だったライトボウガンをアヤメの為に造るということになります。

ハモンさんはアヤメを幼い頃から知る旧知の仲であり、ケガをして帰ってきたアヤメのことをとても心配していました。さらに先の私の考察の通り、彼はハンターを引退した立場として、今後のハンター人生に迷うアヤメの心境をもっともよく理解できる立場でもあります。

 

そんなハモンさんが、現役復帰に希望を見いだした未来あるハンターに、自分がかつてハンターとして活躍していた時の得意武器だったライトボウガンを造って託すということになるわけですから、彼にとっては自分の中のハンターの魂の一部を、アヤメに託すという気持ちでもあると思います。そのように考えると、アヤメの武器がライトボウガンであることも、事の成り行きとか、ケガに負荷がかからないとか以上の特別な意味、ハモンさんとアヤメの間のストーリーが込められた武器であると言えるかもしれません。

 

さてそんなわけで、本記事ではアヤメのハンター人生の再起のお話を追ってまいりました。じつはこの集会所☆7の後、雷神龍ナルハタタヒメや百竜の淵源にそれぞれ挑む前、および勝利して帰ってきた後の会話では、クーデレというかツンデレというか、なんというかこう凄くキュンキュンしてしまうセリフが聴けたりするのですが、それはまた別記事でということにいたしましょう。

 

アヤメの会話を聞いていく中で見えてくるのは、カムラの里を襲う百竜夜行をめぐる、いわばもう一人のハンターの物語。

 

百竜夜行の再来と同時期にハンターとして認められて以来、快進撃を続けカムラの里の英雄となる主人公とは正反対に、ケガをして帰ってきた故郷を襲う災禍との戦いを前に、最初はケガの影響で武器を取って皆と一緒にモンスターに立ち向かうことができなかったアヤメ。

 

カムラの里の仇敵マガイマガドや百竜夜行の原因たるつがいの大型古龍を狩猟し、次々と功績を積み重ねていく後輩は、彼女にとってはハンター再起への活力を貰える存在であり、それと同時に、彼女は心根が優しいのであまりこういうことを表立って口にはしませんが、正直なところ羨ましく、また妬ましくもある存在でもあったと思います。

 

そんな彼女も、ハモンやミノトをはじめとして里の皆に支えられながら、苦難を乗り越えてハンター復帰への活路を見いだし、古龍戦では里守として故郷に恩返しをすることもできて、再び武器を取って戦う人生を前向きに考えられるようになりました。「モンハンの主人公」が経験するのとはまた違った形で、厳しい運命を乗り越えていくハンターの姿を私たちはそこに見いだすわけです。

 

里の仇敵・マガイマガドを討伐し里を脅威から救う、ということは、アヤメにとっては「もしケガをしていなければ」あり得た可能性であり、そして現実には、ケガという障壁のために「存在しなくなってしまった可能性」なのです。

 

故郷を襲うマガイマガドを、本当なら自分の手で狩猟したかった……という、ハンターとしての人一倍大きなアヤメの想い―—最前線で活躍を重ねる主人公の陰にある、傷を背負った「もう一人のハンター」の人生の重みがあるからこそ、「集会所NPCなのに里クエスト進行度で会話が変化する」という、モンハンライズでも稀に見る特例がアヤメの会話に作られていたのかもしれませんね。

 

ライズ発売から半年ほど経とうとしているところ、セカンドキャラを作ってストーリーをもう1周しようかな……と思っている方もいるかと思います。もし、またストーリー上でマガイマガドやナルハタタヒメと対峙することがあれば、本記事のメインだったアヤメや、ハモンのように、戦いたくても戦えない人もいるのだ……ということを頭の片隅に置きながらハンター生活を送ってみると、また違った気持ちで戦えるかもしれませんね。

 

さて、今回も長文に次ぐ長文を重ねる記事となってしまいましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました。先ほど少し話に出しましたが、プレイヤーが雷神龍および百竜の淵源に挑む前後の会話については、ひととおりのキャラクター考察を終えた上で(いつになるのやら)、全キャラ分をまとめて紹介する記事を書く、という感じにしようかなと思っておりますので、期待しない程度に期待して頂けますと幸いです。

 

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!