たたら場前ひろばの朗らかで平和な日常

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』および2023年9月29日発売『HAUNTING OF THE SUN モンスターハンターライズ:サンブレイク 公式設定資料集』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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本記事ではカムラの里の詩人イカ、米穀屋のスズカリ・センナリ、傘屋のヒナミ、魚屋のカジカ、お医者のゼンチの、サンブレイクでの会話を取りあげていきたいと思います。カムラの里の中でも特に賑やかで生活感あふれる雰囲気の、たたら場前エリアの仲間たち。そんな彼らの日常の風景を見てまいりましょう。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.シイカさんの芸術の進化は加速するッ…!

 

あら○○。王国の拠点へ行くそうじゃない。

里の外へ旅立つあなたへ、はなむけの詩を作ろうかしら。

「空浄く麗らかなるは 雄途を祝し 郷里の花や灼灼と 渡つ背送り河を流る 新風よ炎を扇げ 猛炎や天へ昇らん」

…なにこれ。全然ダメね。

(エルガド出発前 シイカ

 

やっぱりダメなのか……。これまでのシイカの自作の詩に対する評価の傾向としては、上の台詞のような「いかにも本場の詩らしい、格調高く語彙の豊かな詩」に対しては基本的になぜか酷評、「素直な言葉で紡がれた温かみのある詩」に対しては70点くらいとまずまずの評価、「常人には何が何だかわからないぶっとんだ内容の詩」に対してはこれでもかというほど自画自賛するという感じになっており、上の詩は筆者のような素人目線ではすごそうに見えるんですが、シイカ的には出来が悪いというジャッジになるようです。

 

「全然ダメ」という割にこういう詩を即吟で作れてしまうというのは、恐らくシイカとしては、この手の格調高い詩は「理屈で作っている詩」ないし、守破離の「守」の部分で作っている詩、という感じなんだろうなぁと思います。むしろ彼女自身はそういう詩の理論よりも、創作意欲を掻き立てられた際に自分の心の奥底から湧き出てくるソウル、理性では処理しきれないパッションの奔流をこそ大切にして詩を作っているのでしょうね。

 

ということで以下、いつものシイカさんの作品を順にご紹介。

 

ねえ、エルガドってどんなところ? どんな人たちがいるのかしら。王国の人が多いのよね?

王国の拠点、エルガド…いいわね。創作意欲が刺激されてきたわ。

「経験得るがど、エルガド。出会いあるかと、エルガド。海もあるかと、エルガド」

王国の文化に触れるあなたの心の高鳴りを想像して作ってみたわ。ぜひ、エルガドの人たちにも聞かせてあげてちょうだい。

(マスター★2 シイカ

 

そうそうこれだよこれ。イカと出会った当初こそは「どういうことなんだ…」としか思わなかったこの手の作品も、今となってはこれがないと生きていけない体になってしまいました(大げさ)。先ほどの出発前の詩の堅牢な言葉の組み立てはどこへやら、こちらの詩は「エルガド」という単語と韻を踏むことに全力を注いだ豪快な作品となっています。

 

「~がど」というモンハンの世界観をガン無視した九州っぽさのある方言と、「~かと」という絶妙に他人事っぽい言い回しが、エルガドに着任したばかりでまだまだ緊張のある主人公に脱力感を与えてくれる詩です。胸の高鳴りという割に詩の調べはゆるっとしていますが、むしろそれによって主人公に肩の力を抜いてもらおう、という彼女なりの粋な(?)気遣いなのかもしれませんね。

 

フィオレーネさんもロンディーネさんも とっても美人よね。王国の人だからかしら、やっぱりどこか垢抜けてるっていうか。

そんな彼女たちのことを詩にしてみたわ。

「王国の騎士は、キラキラ騎士。ふたりあわせて、キラキラキラキラ騎士。いつだって輝く、キラキラキラキラ騎士」

「もし四姉妹だったら キラキラキラキラキラキラキラキラ騎士。でも二人だから、キラキラキラキラ騎士」

彼女たちのまばゆさが伝わる素晴らしい詩になったわね。ああ、やっぱり私って、天っ才…!

(マスター★3 シイカ

 

続いても王国を題材にした作品。王国騎士のフィオレーネとロンディーネのことを詠った詩ですが、シイカも都会への憧れがあるのか(?)、とにかくキラキラしてます。後半の「四姉妹だったら」とかいう謎の仮定、意味内容としては蛇足もいいところで、どう考えてもキラキラキラキラキラキラキラキラ騎士って言いたいだけだと思うんですよね。

 

しかしながら別の見方をすると、「二人姉妹って分かってるのにわざわざ四姉妹だったらとか言わんでええやん」という "意味" の呪縛、「詩として発せられる言葉には何かしらの意味がなくてはならない」という固定観念から「言葉」を解放してあげている、というのが詩人シイカの持ち味でもあるんですよ。ただ言いたいから、語感がいいから……言葉を発する動機というのはそれだけでよいのだという、シイカの達観した哲学が味わえる詩なのです。そういうことにしておきましょう。

 

かつて王国を窮地に追い込んだ 恐ろしいモンスターが出たってきいたわ。大変なことが起きているのね…。

ここは、私の詩で あなたの心に喝を入れてあげるわ。とくと聞きなさい。

「メル・ゼナ、いるってな。メル・ゼナ、出るってな。メル・ゼナ、討つってな」

これは…あなたのやるべきことが 明確に表現されたすばらしい詩ね。この詩を胸に、狩猟に行くといいわ。

(マスター★4 シイカ

 

続いてはエルガドの調査隊の目標である、古龍メル・ゼナを題材にした詩。構文の関係上、どことなく『霧島、部活やめるってよ』感が漂っているのは否めませんが、「○○、△△。×3」という、間に切れがある対句法の三段構成という点で、最初のエルガドの詩と共通の響きを持つようにしているのがさりげない工夫ですね。まぁ対句法といっても前半が全部メル・ゼナなんですけれども…。

 

それからこの詩は地味ながら、「メル・ゼナ」の "" の部分にある間を大切にしているんですよね。各節の後半の「いるってな」などの "っ" の促音により発生する刹那の無音部分が、メル・ゼナの "・" の無音部分に対応しておりまして、そこでこの詩にリズムが生まれているわけです。これぞベテランの技だ……。

 

あら、○○。帰ってたのね。おかえり。

…あなたを見ていると、なんだか詩興が湧いてくるわ。よし、あなたのために詩を作ってあげる。

「里の外でもえらいぞ○○。お前は強いなすごいぞ○○。ところでお土産は? ○○」

別に催促してるわけじゃないわ。ないのかなーって思ってだけよ。

(マスター★5 シイカ

 

続いてはそのメル・ゼナを討伐して帰った主人公への歓迎の(?)詩。運動会の応援風の快活なリズムですが、なんかすごい催促されているような……。主人公を見て詩興が湧いて来たのも、無事に戻って来たことへの感動というよりはお土産への期待が主たる動機になっていそうです。まあそれはそれで、主人公の実力が信頼を置かれているということとして受け取っていいのかも…?

 

この辺りからシイカ自身の定型も崩れ始め、彼女の詩は自由律の傾向を持つようになっていきます。

 

雑貨屋のカゲロウさんって 不思議な人よね。

…そんな、カゲロウさんについての詩を作ってみたの。ぜひ、聞いてちょうだい。

「ねぇ、ユー、どこからきたの? 茶屋の君とはどういうカンケイ? でもそんなことより顔見せて顔」

里の人の多くが思っているであろうことを ズバリ表現してみたわ。うん、とても共感を呼ぶ詩になってるわね。

(マスター★6 シイカ

 

カゲロウのプロフィールは確かにカムラの里の関心ですから、共感を呼んでいるのは事実だと思いますが、この詩はどういうリズムで詠めばよいのでしょう……? 詩の探究者であり破壊者、シイカとはかくある人物なのです。それにしても、共感を呼ぶとは言っているものの、ヨモギとの関係より顔の方が気になるというのはなんかこう、それはそれでどうなんでしょう? 

 

まぁ、カゲロウがイケメンと噂されているから云々というよりも、同じ里で暮らす家族の顔がずっと隠れたままというのは距離を感じるからという気持ちもあるでしょうし、ヨモギとの仲については彼の過去のことを話すことをあまり無理強いしたくないという、シイカなりの気遣いなのかもしれません。たぶん。でも、あんまりカゲロウに無茶を言わないであげてね……?

 

 

2.いつもラブラブなスズカリ&センナリ夫婦

 

続いては、カムラの里の米穀屋を営むセンナリ・スズカリ夫婦。カムラの食事を支えるふたりは里のみんなのお父さんとお母さんというような雰囲気で、主人公の旅立ちを温かく見守ってくれます。

 

よう、○○じゃないか。もう出発準備はできてるのか?

そうだ、米持って行くか。船で行くんなら 多少荷が重くなっても大丈夫だろう?

向こうでもしっかり米食ってがんばれよ。足りなくなったらいつでも送るからな。もちろん、取りに帰って来てもいいぞ。

(エルガド出発前 センナリ)

 

あら、○○さん。王国の拠点へ行くんですって?

そう…○○さんはこれから 知らない土地で知らない人たちと狩りをすることになるのね。

でも、心配しなくても大丈夫。おいしいご飯を一緒に食べれば どんな人とでも、すぐに仲良くなれるわ。

そう、大事なのは「おいしいご飯」。さ、うちのお米、持っていってね。

(エルガド出発前 スズカリ)

 

「おいしいご飯を一緒に食べればどんな人とでも、すぐに仲良くなれる」。格言ですね。生まれやルーツ、立場がどれだけ違う人であっても、「お腹が空く」という感覚、「美味しいご飯を食べれば幸せな気持ちになる」という感覚は共有することができる。共に食事のテーブルを囲むということが、その場にいる人たちの心を結んでくれるのです。

 

エルガドの港のタンコやピンガルの近くにある、輸送船からの貨物が置かれているエリアには、しばしばカムラの里からの荷物が届いていて、米穀屋さんの美味しいお米もしっかりエルガドに運ばれています。そのお米はエルガドの茶屋のうさ団子や料理に大いに使われているものですから、エルガドでも引き続きカムラのお米に助けられていることになりますね。

 

ちなみに、カムラの里でもお米をたくさん食べるのに、他の地域の茶屋にも送っていてお米の量は足りているの……? という疑問に関しては、どうかご安心(?)を。

 

うさ団子の店は、里の外にもいくつかあるが ほとんど、ウチの米を使ってるんだ。

びっくりしたか? そう、なかなかの量なんだよ。

もちろん、エルガドにも大量に送ってるんだぞ。まあ、カムラの里で使うほど多いわけじゃないけどな。

里ではさ、毎日食う米に、うさ団子に、おにぎりに、って 特に使用頻度が高いからな。

それに… 里には、里長とヒノエがいる。…どれだけ用意しても、足りないんだ。

(マスター★3 センナリ)

 

カムラの里の食糧庫、もしかして毎年やりくりが火の車だったりするのでしょうか…? お米(イネ)だけに限った話でいうと、一年間で2回イネの栽培を行う二期作というものはあるのですが、これは全体的に気温の高い熱帯地域(日本だと沖縄県)に限られる話で、カムラの里は気候的にも熱帯ではなさそうですから、二期作で収穫量を補っている、ということはなさそう。

 

次に考えられるのはイネとムギなどの二毛作で、うさ団子は作中ではもち米が使われているとされているものの、実際には時期によっては小麦粉(および他の穀物の粉)なども使われているという説。ありえなくはない話ですが、それにしてもカムラの里の主食は圧倒的にお米がメインですから、麦が「米不足を補う」というような位置づけになっているかどうかと言われると微妙なところです。

 

そうなるとやはり、カムラの里のお米の収穫&備蓄事情には大きな謎が残ります。カムラの里は農作に使える敷地面積に対して里の人口はそれほど多いというわけでもなく、その年に獲れたお米が次の年の収穫までに足りなくなる、ということは収穫量と人口の比率だけで見れば起こり得ないのかもしれませんが、フゲンやヒノエはそれぞれが一人で数人分、下手すると十数人分の消費量になる人物ですし、そんな中で他の地域にある茶屋の支店にもお米を送っているとなると、もう何がどうなっているのか不思議すぎるというところ。

 

センナリの言うところを整理するに、「エルガドに発送する分もあるけど、そもそもカムラの里での消費量が群を抜いているから割合的にはそんなでもない」ということになるようですが……うーん、本当にカムラの里の食糧難は心配しなくていいのかなぁ……?

 

エルガドの茶屋事情については、ぜひ以下の記事もどうぞ。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

 

さて話を戻しまして、主人公がエルガドに拠点を移した後も、主人公が王国でどうしているか……という話題はカムラの里では尽きないようで、スズカリはヒナミ等ほかの里の仲間とよくガールズトークをしていることがありますが、そこでの世間話でも主人公のことはしばしば話されているようです。

 

あら、○○さん。おかえりなさい。

ついさっき、ワカナさんとヒナミちゃんとで ○○さんどうしてるかしらって 話をしていたところなのよ。

元気そうでよかったわ。顔を見せてくれてありがとう。

体に気をつけて、がんばってね。せっかく帰ってきたんだから、お米もお野菜もいっぱい食べていって。

(マスター★2 スズカリ)

 

あったけぇ……。エルガドでの調査の合間に久しぶりに里に帰ったとき、みんなが主人公を帰りを待っていてくれるの、やっぱり嬉しいんですよね。特にスズカリはカムラの里の中でも屈指の包容力の持ち主ですから、なおのことこうした言葉が身に沁みてくるのです。

 

さて、センナリ・スズカリ夫婦といえば、他に類を見ないほどのおしどり夫婦であり、お互いへの深い愛情を人前でもまったく恥ずかしがることなく堂々と言葉にするため、聞いているこちらの方が若干顔が赤くなってしまうことでよく知られています。ライズ時代から引き続きサンブレイクでも、パートナーへのノロケ台詞はエンジン全開。

 

オマエももう一流のハンターなんだから、一流の体作りを心掛けるんだぞ。

体作りの基本は、食! そして、食の基本は米! だからな! ハンターの体は米が作るってことだ!

俺の嫁さんを見ればわかるだろ? ただでさえ美しい俺の嫁さんが ウチの米を摂ることで、さらに輝いている。

つまり、一流のハンターのオマエがもっとウチの米を摂れば、さらに力が発揮できるってことだ! わかりやすいだろ?

(マスター★4 センナリ)

 

ここまで胸を張って自分の奥さんを自慢できるというのは、ノロケを通り越してもはやカッコよさすら感じさせるものがあります。その部分のインパクトが強すぎて前後の行のハンターがどうこうの話がまったく入ってこないのですが、何にせよ奥さんを大切にしているのは本当に良いことですよ。

 

そしてセンナリの奥さんLOVEはこれに留まらず、サンブレイクで彼はさらに進化を遂げておりまして、スズカリに自分の愛を伝えるため、それにふさわしい詩をシイカに依頼し、その作品をスズカリの前で自ら読み上げるという大胆な行動に出ます。

 

この前、夫が額に入ったそれはそれは立派な書を持って帰ってきたのよ。

ゴコク様の書だそうなんだけど、あまりにも達筆だったものだから、私には読めなくて。夫が読んで聞かせてくれたのだけど…。

それはもう愛のこもった とってもステキな詩だったわ。ほんのちょっぴり、照れちゃうくらい。

夫に頼まれたシイカちゃんが 詠んでくれたらしいの。もう私、感動しちゃった。

まあ、あんなに立派な詩じゃなくっても 夫が毎日伝えてくれる言葉は全部嬉しいんだけどね。

(マスター★5 スズカリ)

 

イカの詩をわざわざ清書してあげるゴコクもノリが良いなぁ。ゴコクはシイカの詩を天才と常々評価していましたからね。で、シイカといえばこれまで数々の迷作……もとい名作を生み出してきた詩人であり、詩の良し悪しに対する感覚が常人の遥か先を行ってしまっている芸術家ですから、そんな彼女に依頼したらとんでもない作品が出来上がるのではないか……と心配していたのですが、スズカリの反応を見る限り、こういう時に限ってはシイカガチの本気で創作に取り組んだようです。やはり本職の詩人、こういう場面でのプロ意識は確かなものがあります。少なくとも「ヘイ、ユー」みたいな雰囲気のやつではなかったっぽいのはよかった。

 

イカの詩は、なんていうか… 芸術とやらにうとい、俺みたいなのにはよくわからない詩なんだけどさ。

俺から嫁さんへの気持ちを詠んでくれたものは、本当に、本当にいい詩だった!

あんまりよかったんで ゴコク様に頼んで清書してもらって 額縁に入れて部屋に飾ってるんだ。

いやあ、さすが本職は違うな! 恐れ入ったよ!

(マスター★5 センナリ)

 

センナリ・スズカリ夫婦もまたシイカに近い感性を持っているのではないか、とも思いましたが、センナリはシイカの普段の作品に対しては首を傾げている様子なのを見るに、シイカがセンナリ・スズカリ夫婦のことを詠んだ詩は真に傑作だったみたいです。その作品の内容は作中では明らかにされることがないため、シイカが丹精込めて紡ぎ上げた詩をぜひとも私も見てみたかった……とも思うのですが、この作品は皆に大っぴらにするようなものではなく、2人の胸のなかに仕舞われておくべきものでしょうね。

 

そしてこの話で特筆すべきは、スズカリの反応が「ほんのちょっぴり、照れちゃう」であるということ。いくら詩という芸術の存在が身近であるとはいえども、愛を綴った詩を創ってもらってそれをパートナーの前で読み上げるという、傍から見れば結構大胆なアクションに対しても「ちょっぴり照れる」くらいのリアクションというか心理的ハードルなわけですから、スズカリ自身も言っているように、二人がいかに普段から自分たちの愛情をきちんと言葉にして伝えているか、ということがよく分かります。

 

常日頃から愛する気持ちや尊敬、感謝の気持ちを相手に届けるということと、ときどきこうして特別な時間をつくるということ。彼ら夫婦の円満の秘訣は、そのどちらをも大切にしている、というところにあるのかもしれませんね。

 

この一件以来、ふたりの会話は今までよりもいっそう幸福感に溢れています。

 

今日も米がうまい。そして嫁さんがまぶしい。

知ってるか、○○。これを幸せっていうんだぞ。

(マスター★6 センナリ)

 

今日もご飯がおいしいわ。そして夫がステキ。

知ってるかしら、○○さん。これを幸せっていうのよ。

(マスター★6 スズカリ)

 

……ご両人とも、幸せそうで何よりです。

 

さて話は変わりまして、スズカリさんといえば、カムラの里の中でも屈指の名言メーカーとして知られている人物。サンブレイクでもその豊かな含蓄は健在で、エルガドのストーリーにおいて非常に重要な考え方を主人公に話してくれます。

 

あら、○○さん。おかえりなさい。最近どう? なにか困ったことはないかしら?

もし困ったときは、周りの人に相談してね。エルガドの人でも、もちろん里のみんなでもいいのよ。

愛する夫も、悩みがあるときは里のみんなに相談しているわ。もちろん私にも、ね。

自分だけで問題を解決できる人も カッコいいけど、自分の弱みを人に見せられる人も魅力的だと思わない?

私だって、そんな夫の悩みを聞いて 助けてあげられたら嬉しいもの。ほら、どっちも幸せ。ステキでしょ?

(マスター★4 スズカリ)

 

エルガドのフィオレーネの事情を知ってか知らずか、彼女の王国騎士としての危うさの核心的な部分にも関係することについてずばり言及するスズカリ。マスター★2のウツシ教官の台詞もそうですが、エルガドで何か壁にぶつかったとき、その答えを故郷のカムラの里で発見することができる、という形でサンブレイクでもカムラの里の存在感があるっていう構成が良いよなぁ。

 

スズカリの言い方もこれまた気遣いに富んでいますよね。「一人で抱え込まず周りに相談した方が良い」という所謂「べき論」の論調ではなく、「弱みを見せられる人も魅力的だ」という形で、フィオレーネのようになかなか周りを頼れない性格を責めることなく、「頼ってもらえることは迷惑ではなくむしろ嬉しい」という周囲の人の気持ちも踏まえつつ、そっと背中を押して勇気づけてあげるような温かさがあります。

 

それに、「自分だけで問題を解決できる人もカッコいい」と、自分の背負うものに対する責任感や真面目さも否定せず、その人の長所だと言ってくれるのも優しい。大きなものを抱えている人の心境に寄り添いつつも、ふっと肩の力を抜いて視野を広げてくれる、理想的な言葉だと思います。登場人物一人ひとりに信念や表情、考え方があり、その言葉に魅力があるのがライズシリーズの素晴らしいところですよね。

 

 

3.サンブレイクでも「極秘任務」続投中のヒナミさん

 

王国の拠点かー。アタシもちょっと興味あるけど…

アタシには、この里の門を閉めるっていう極秘任務があるからね。ここを離れるわけにはいかないわけ。

アタシの分も、いろんなもの見てきてよ。みやげ話、楽しみにしてるね。

あ、話だけじゃなくて 普通のおみやげも、よろしく!

(エルガド出発前 ヒナミ)

 

続いては傘屋のヒナミさん。ヒナミと言えば、ライズ時代には百竜夜行が里に迫ったときに正面の門を閉めるという任務をゴコクから言い渡されていた人物で、彼女はその里の防衛に関わる重要なミッションを任されたことについて、「極秘任務」という響きに弱いのか非常に張り切っていて、その仕事をとても誇りに思っていました。サンブレイクでも、百竜夜行の元凶こそ絶ったもののその余波は未だにいくらか残っているということもあり、そして新たに王域生物が本来の生息地を離れて移動するという異変も起きていますから、ヒナミの門番の極秘任務は継続しています。

 

百竜夜行発生当時の護りの要であった主人公は今はエルガドを主な活動拠点としていますから、主人公がいない間のとっさの防衛は、里守たちを中心に里の住民皆で行う必要があります。しかしながら、最後の砦として門閉め担当のヒナミがいるということ、里守たちもこれまで多くの百竜夜行を乗り越えてきた猛者揃いであるということから、「里のことはバッチリ任せといて!」という安心ムード。

 

や、○○。おかえり。最近はどんな感じ?

里のことなら心配いらないよ。なんだかんだで里のみんな、強いから。たいていのことはなんとかなるって!

それに、なんてったってこのアタシがここでばっちり極秘任務に備えてるからね! いつでも閉めちゃうわよ、門!

ほら、安心でしょ? だから全力でがんばっておいで!

(マスター★4 ヒナミ)

 

じっさい、モンスターが里の間近まで迫ってきているという緊急事態に備えて門の守りを預かるというのは、必要な際には必ず里の周辺を警戒している偵察部隊からの連絡があるとはいえども緊張感がある任務ですし、それをすすんで引き受けてくれているヒナミには頭が下がるばかりです。こういう故郷の仲間の頼もしい姿を見ると、50年前の百竜夜行以来、現里長のフゲンを中心に作り上げてきた「里の守りをハンターだけに依存しない防衛体制」というものがきちんと実を結んでいることがよく感じられますね。

 

里守制度の導入とその育成により、ハンター資格を持たない住民もモンスターの群れの撃退に参加できるようになったことや、砦まで遠征する者と里の留守を預かる者との役割分担による連携は、今回の百竜夜行の防衛に多大な貢献をしたのみならず、その後の段階――百竜夜行の収束と共に、防衛の中核を担っていた里のハンターが外の拠点に赴き、里を旅立つという新章――においても、里の住民だけで一定水準の生活の安全を成り立たせることができるという点で、これからのカムラの里を続けていく上で非常に有益なものとなっています。50年前のフゲンの構想は今回の百竜夜行のみならず、その先の未来まで見据えていたものだったのかもしれないと思うと、里を率いる大将としてのその思慮の遠大さには敬意を抱くばかりです。

 

ちなみに、ヒナミは「ピンチの時には門を閉める」という動きが身体に染みついてしまっているようで、百竜夜行やモンスターがまったく関係ないときにも、脊髄反射的に門を閉めにいってしまう変なクセがついてしまっています。

 

カジカはよくここに来るね。ずっと橋から下を眺めてるんだけど、魚の影が見えたらすぐ飛び込むのよ。

そりゃ最初は慌てたわよ。だって、この高さよ!? 慌てて里中の人を呼んだよね。

なんなら門閉めようとしちゃったわ。里長に、関係ないからやめろって止められたけど、それくらい慌てたのよ。

でも、何食わぬ顔で魚捕まえて帰ってきたわ カジカ。それ以降心配するのやめたの。今となってはもう、いつもの光景って感じ。

(マスター★5 ヒナミ)

 

ヒナミのいる橋、確かにその下を流れている川の水面からの高さはかなりのものですから、カジカが生身で急に飛び込んだのを見て焦る気持ちも分からないでもありませんが、それで門を閉めようとするってどういうこと……? 

 

ヒナミは以前、「門を実際に閉めてみたらどういう感じなのかを知りたい」という純粋な好奇心で特に有事でもない時に門を閉めた(そして里の皆を驚かせた)、というエピソードがありますから、今回のカジカの件にしても、なんかこうどさくさに紛れて門を閉めたいという内なる欲求に駆られてしまたのではないか、と正直思わないでもありません。まぁ、危険を感じたら無意識に門を閉めようとしてしまうというのは、それはそれで仕事熱心と言えなくもないのかな……?

 

さて話は変わりまして、ヒナミといえば、彼女には店で売っている傘を手作りしている職人の弟がいます。最近王国との交易も増えて以来、王国製の傘もカムラの里に入ってくるようになったことで、彼は職人魂に火が点いているようです。

 

最近、弟が見慣れない傘を触っててね。聞いたら、王国のものだって言うの。

アンタが王国の拠点に行ってから 王国のモノにも興味出てきたみたいでさ。それですぐ傘調べるところが弟らしいけど。

アタシも見たけど、おもしろいね。同じような形はしてるんだけど、ちょっと丸みがあるって言うかさ。素材も違うし。

ほかの細かい違いについても弟が説明してくれたんだけど…1割もわかんなかった。ま、楽しそうで何よりだよ。

(マスター★2 ヒナミ)

 

傘以外にも王国の珍しい物はたくさんあるところを、一目散に傘を調べ始めるところはさすが生粋の職人、といったところ。ハモンさんにも劣らぬ勉強熱心さを感じさせます。モンハン世界の王国の傘はいわゆる「洋傘」なのでしょうか。カムラの里の和傘と比べると、洋傘は素材の違いはもちろんのこと、骨の数が少ないのも特徴ですよね。骨と骨の間が広いぶん、布の部分に丸みが出るのが洋傘、という印象です。

 

そしてヒナミさん、ライズ時代は「家では弟とぶつかり合ってケンカすることも多い」と言っていましたが、弟さんが自分の好きなものを好きなだけ語れるほど心を許している相手はやっぱり姉のヒナミさんなのを見ると、やはりこの姉弟はお互いのことを大切に思っているんだなぁ、とほんわかしますね。ヒナミさんも、好きなことに熱中している弟のことがなんだかんだ好きみたいです。

 

ちなみに、弟と二人暮らしのヒナミ家では家事のうち料理を担当しているのはヒナミなのですが、「今日の夕飯の献立が思いつかない!」という、親近感のあるお悩みを聞くことができるシーンもあります。

 

アタシね、今日のごはんを何にしようか迷ったときは ミノトかコジリに聞くことにしてるんだ。

2人ともすっごい料理上手だし、献立を聞くだけでおいしそうなんだもん。作り方教えてもらって、真似しちゃう。

ミノトのごはんはいつも完璧。栄養もバッチリだし、あの姉妹のキレイの秘密はこれかー! って感じ。

コジリの方は、もうとにかくおいしそう! 今日も1日がんばったから、好きなものいっぱい食べて元気を補給! って感じ。

あー、アタシも2人のごはんが食べたい! 何日かに1回でいいから、アタシたちの分も作ってくれたりしないかなぁ!?

(マスター★3 ヒナミ)

 

他の人のメニューを取り入れながら日々の夕飯づくりを頑張っているヒナミも十分すぎるほど偉いと思いますが、彼女はその日のご飯に迷った時は、カムラの里の中でも屈指の料理上手であるミノトやコジリを頼りにしているようです。家事は毎日欠かすことのできない労働であるだけに、「たまには誰かに代わってもらいたい!」という本音にはとても共感できるところがあります。

 

愛しのヒノエ姉さまの美容と健康を支えることを何よりの信条とするミノトと、鍛冶以外の身の回りのことに関しては生活無能力者も同然のナカゴを支えて一緒に暮らすコジリとでは、それぞれの作る料理にも個性があります。いいなぁ、どっちも美味しそう。

 

たまには何もしなくてもゆっくり美味しいご飯を食べたいというのは多くの人が夢見る(?)ことでして、「家族」をテーマとして色々な話を展開してきたモンハンライズにおいて、「たまには家事を休みたい」という素朴かつ重要な欲求もこうして会話の題材になっているというのは、家庭を営むということへの解像度が高くて個人的にはとても好きだったりします。ことサンブレイクにおいては、エルガドは騎士や調査隊の仲間たちが王国本土から赴任してきて寝泊まりしているガチガチの調査拠点ですから、こういう妙に生活感のある会話ができるのはカムラの里の特色でもあるんですよね~。

 

それから、シイカの項でも話題になったカゲロウのプロフィールについてですが、ヒナミの方も彼の来歴や正体については興味津々だったりします。特にヒナミに関しては、カゲロウの愛用している傘がアケノシルムの素材を使った珍しい物であるということもあり、傘つながりでライズ時代からカゲロウの事を話題にしていましたね。

 

ねえ、○○ってさ… カゲロウさんの顔、見たことある?

いやもう、前からずっと気になってて! あんなの、気になるに決まってるじゃん! みんな気にならない? 気になるでしょ!?

思い切って聞いたこともあるのよ? そしたら「気にされるほどの顔では…」とか言われてさ!

いやいや、それなら見せてよ! 見せてくれればそれで終わりなのに! ねえ!?

家でずっとその話してたら、弟にも呆れられたわ。隠されれば隠されるだけ気になるんだもん、しかたないでしょ!

(マスター★6 ヒナミ)

 

見ないでほしいと言われると見たくなってしまうというのは、いわゆるカリギュラ効果というやつでしょうか。カゲロウの知られざる素顔や来歴に関して、「別に本人がプロフィールを公開したくないならこっちから深追いしなくてもいいじゃん」とでも言いたげな、良い意味で他人のプライベートにあまり関心がない弟と、社交的で里の仲間のことをもっと知りたいと思うヒナミ。姉弟で性格が正反対なところが、彼女らの場合は逆にいい感じに噛み合っているんですよね。

 

傘を作るのが得意な弟と、傘を売るのが得意なヒナミ。お互いに考えたり感じたりすることは違っていてソリが合わないこともあっても、それでもなんだかんだ自分たちは互いの存在に助けられている……という距離感が、彼女らの姉弟関係の推せるところだったりします。これからも姉弟で助け合って、おもしろい凹凸なやりとりをたくさん聞かせてほしいところです。

 

4.素潜り漁師の熱き魂・カジカ

 

よっ、○○! これから、王国の拠点で狩りをするのニャ?

王国の拠点はどこにあるのかニャ? えっ、海のそばニャ!? ニャ~! とってもうらやましいニャ!!

川の魚もいいニャけど、海の魚もとってもいいニャ! 見た目も派手なものが多くて、目を引くのニャよ~。

味は…どっちもおいしいニャ! 魚はなんでもウマいニャ!

○○、王国の拠点に行っても 毎日魚を食べてがんばるニャよ!

(エルガド出発前 カジカ)

 

続いては先ほどヒナミを驚かせていた潜水漁……もとい、飛び込み漁の名手・カジカ。彼は主人公が海のそばにある港町の拠点に行くと知って、「うらやましい!」とさっそく大興奮。カジカは川の魚のみならず、海の魚についても非常に詳しいようです。あっさりした川魚と脂の乗った海魚、どっちも美味しいんですよね~。

 

彼は自らの足で寒冷群島などへも出向くほど普段からアクティブな人物ですから、カムラ地域の沿岸まで行って海で潜水漁をしたこともあるのかも(さすがに寒冷群島では寒すぎて潜れないと思いますが)。カジカの魚屋の中心にデデーンと置いてある大きい魚も、彼が海で獲ったものであると思われます。

 

カジカは王国の拠点にも行ってみたいと言っていますが、その理由は当然ながら、ダイビングして魚を獲るため。

 

オイラも王国の拠点へ行ってみたいニャ。そんで、海に潜って魚を捕るニャ。

海の流れは川の流れとはまた違うニャ。1歩進むと急に足を取られたりするニャ。気をつけないといけないニャ。

もちろん、この身ひとつで海に飛び込むニャ。服なんて着てちゃダメニャ。水を吸って重くなるニャ。

○○、もしオイラが 王国の拠点へ行けたら 一緒に魚捕りするニャ! 約束ニャよ!

(マスター★3 カジカ)

 

やはり海での漁の経験者は、潮目を読み複雑な水の流れを捉える術を知っています。……で、漁のときの彼のスタイルといえば、服を着ずに身体ひとつで海に飛び込み魚を捕まえること。着衣のまま水に潜ると危険だからというのはまぁその通りなのですが、カジカは店の仕事をしている時にも川面に魚影が見えたら即座に飛び込めるように、彼は普段から服を着ないのがポリシーとなっています。

 

このスタイル、本人がそれを気に入っているのであれば良いと思うのですが、王国では少しびっくりされそうですよね。海での漁業といえば基本的には漁船を使ったものでしょうし、ハンターの水中戦という文化もありませんから、自分から海に飛び込んでいく、というのはかなり珍しがられるような気がします。ことエルガドの桟橋でいつも海釣りをしているルアンなどは、釣り竿を使わず己の手で魚を鷲掴みにするカジカの姿に腰を抜かしそうな気がします。

 

また、王国の文化において気になるのは、アイルーの住民が服を着ないというのはどう受け止められるのかという点。モンハン世界の全体的な話でいえば、着衣した方がよい(服を着ていないと恥ずかしい)という観念が強いのは人間や竜人族だけで、アイルーに関してはあまりそういう考え方はないような気がするのですが、作業の安全や防寒、職業や所属の表現、個性や人格の表現等々といった意味合いで服を着るというのは一般的になっているようですからね(ゲーム的にも、服で外見を区別しないと誰が誰だかプレイヤーが判別できないという事情もあるかも)。

 

カムラの里では常にありのままの姿を貫くカジカの存在は身近になっていますから、特に違和感はなく日常風景となっていますが、果たして王国ではどうなのか。文化やら風習云々以前にそもそも自ら海にダイビングして漁をすることがないから服を脱ぐ必要がないと言われそうですが……まぁ、いずれにしても、エルガドの仲間も皆優しい人ですから、潜水漁を得意とするカジカのスタイルということで受け入れられそうな気がします。

 

ちなみに、カジカ的にはやはり服を着こんでいる里の仲間は気になるようで、何かにつけて「服を着るのはやめたほうがいい」と自らの世界観に引き込もうとしてきます。

 

カゲロウさんはあんなにしっかり服を着こんで、暑くないのかニャ?

第一、あれじゃ魚が獲れないニャ。だって川に飛び込めないニャ。不便だニャ。

○○も、わりと着こんでることが多いニャね? オイラ、やめたほうがいいと思うニャ。

(マスター★6 カジカ)

 

服を着ていると不自由だ、という気持ちはわかるけど、みんながみんな身一つで川や海に潜るわけじゃないから……。しかも、よりによってカゲロウさんというのはやめてあげてください。いやまあ大体誰でもダメなんですけど、カゲロウさんは特に淑やかで落ち着いた男性(そしてイケメン)という人物ですから、特にイメージダウンが芳しいのです。頼むからやめたげて……(カゲロウファンの切なる願い)。

 

さて、カジカの商売と言えば、特徴的なのはやはり売り文句の押しの強さ。サンブレイクでもそのパワフルなセールスは健在で、主人公に魚を買ってもらおうとしてきます。

 

ロンディーネさんはいつも姿勢がよくて、なんだかとってもピンッとしてるニャ。カッコいいニャ。

これはきっと、白身魚のおかげだニャ! 栄養たっぷりなのに体に優しい、とっても健康的な魚だニャ!

ほらほら! ○○も 騙されたと思って買っていくニャ! 悪いようにはしないニャ!

(マスター★2 カジカ)

 

ロンディーネの姿勢が良いのは元からというか、女王陛下側近の王国騎士としての鍛錬の賜物というような気がしないでもありませんが、彼女もカムラの里に赴任してきて長いですし、今や里で皆と共に多くの時間を過ごす家族の一員ですから、この近辺で獲れた川魚を料理で食べているという事実は確かにそうかも。王国との交流が始まって以来、王国騎士という存在はカムラの里でトレンドなのか、きちんと流行(?)を読んだセールスを行っています。

 

○○~! おかえりニャ! 王国の拠点でも元気でやってるかニャ? ちゃんと魚は食べてるかニャ?

魚不足はよくないニャ。いい狩りは、いい食事から始まるニャ。いい食事とは、ズバリ魚だニャ。

○○は今や里の外でも大活躍のすっごいハンターニャんだから 食事は大事にしなきゃダメニャ。

ほら、魚買ってくニャ! ほらほら! ほらほらほら!

(マスター★5 カジカ)

 

調査をひと段落させて里帰りした主人公にも、このような手厚い歓迎。カジカは押しの強さというクセこそあれど、彼の魚屋で売っているお魚たちは実際にその売り文句を裏切らない美味しさや質の良さを備えていますから、なんだかんだで買いたくなっちゃうんですよね。

 

「ほらほら! ほらほらほら!」の今までにない圧倒的なこの引き込みの強さ、一見すると強引に買わせようとしているように見えて、カジカも彼なりにエルガドで大忙しの主人公の食事を心配して、バッチリ栄養を摂ってほしいと気を遣ってくれているわけです。……が、それと同時に、カジカもしっかりしている人ですから、里と外の地域との往来も増えた今、「王国でも大活躍の里の英雄はここの魚を食べて育った!」的な感じで次なる売り文句にできるのではないか、という狙いもひょっとするとあったりするかも? いずれにしても、彼のたくましい商人魂はサンブレイクでも健在で、これはこれでなんだか安心してしまいますね。

 

5.実はサンブレイクでけっこう重要人物だったお医者のゼンチ

 

…ふぁ~ふ。……おお、○○かニャ。

お前さん、里の外へ行くのかニャ。ウムウム、若いモンが見聞を深めるのはとてもええことだニャ。

この里は長いこと 外と交流を持てなかったからニャ。これを機に行き来が増えるとええニャ。

ワシ? ワシは里の外よりも いつも通りこの場所で昼寝をしておるのが一番だニャ。

(エルガド到着直後 ゼンチ)

 

最後はお医者のゼンチ。彼はサンブレイクのストーリーでは、主要キャラの一人であるカゲロウの命の恩人、そして薬師タドリのことを知っている一人であるなど、実はかなりの重要キャラでもありました。カムラの里の住民の中でもかなりベテラン勢である彼は、今まで百竜夜行に苦しめられてきたカムラの里が今は心置きなく外との交流を持てるようになったことをとても喜んでいます。

 

モンハン世界のアイルーはどうも人間並みに寿命が長いようですから、ひょっとするとゼンチも、50年前の百竜夜行を直接経験している当事者なのかも。それに加えて、カムラの里の百竜夜行は数十年周期なのでその間は外と交流を持っても大丈夫、というわけではなく、百竜夜行がそろそろ発生するのではないかという事前の警戒時期や、大きな波が去った後の余波も完全に落ち着くまでの時期などもカムラの里への出入りは多少なりとも減少するでしょうし、そもそもそういう災禍があるというわけで、里に近づきたがらない者もいたことでしょう。

 

ましてや、50年前の百竜夜行ではマガイマガドの登場もあって里の建造物などは軒並み壊滅させられており、その大惨事から長い時間と大きな労力をかけて今のカムラの里まで復興し、どうにか拠点や観光地としての機能を取り戻せているわけですから、そういう当時の状況を知っている内のひとりであるゼンチにとっては、「百竜夜行のないカムラの里」というものへの感慨は一入です。……まぁ、そんな本人は里の外へ旅立つ主人公を見送りつつ、いつもの場所でお昼寝タイムが気に入っているようですが。

 

お前さんがあっちに行って、ワシの仕事が少しばかり減ったニャ。お前さんは老猫に優しい若人だニャ。感心だニャ。

その調子で、あっちでケガしたときはあっちでしっかり治すニャよ。

まあ、もし何か不安なことがあるなら いつでも聞いてやるニャ。安心するニャ。

ワシほどの名医は、王国にもなかなかおらんじゃろうしニャ。にょほほ。

(マスター★2 ゼンチ)

 

カムラの里は元々、住民が揃いも揃って健康体すぎるゆえに医者の出番が少ない、とゼンチは以前言っていましたが、その中でも医者のお世話になりやすいであろうハンターの主人公がエルガドに赴任することになり、ゼンチはますますお昼寝の時間を確保できそうな予感です。

 

のんびり屋のゼンチは「仕事が減って助かるわ~」と口では言っている反面(もちろん本音でもあるでしょうが)、一方で「不安なことがあればいつでも聞く」と主人公のサポートを厭わないあたり、名医としての自分を頼ってもらえることも、それはそれで嬉しく思う気持ちもあるんだろうな。

 

サンブレイクでもゼンチはなんだかんだ医者の仕事をマジメにやっている(時もある)ようで、交易で入ってきた王国の医学書を読み込んでいるようです。

 

お前さんがあっちへ行くようになってから 王国との交易も増えたみたいでニャ。あっちの医学書とやらを手に入れたのニャ。

…ニャンとまあ、驚いたニャ。ワシらの知っとる医学とは、ずいぶん違った考え方をしとるようニャ。

かと思えば、ワシらにとっては常識のようなことが、向こうでは知られておらんようじゃったり…。

お互いの知識をうまく持ち寄れば どちらの医学も進歩するんじゃないかニャ。まじめに考えてみるかニャ…。

……ふぁ~ふ。考え事をすると眠くなるニャ。そろそろ昼寝をするかニャ…。

(マスター★3 ゼンチ)

 

ゼンチの言う医学の違いとは、私たちの世界でいうところの西洋医学東洋医学の違い、みたいなところなんでしょうか。ゼンチはライズ時代の台詞で、「病気になってから医者のところに来るのではなく病気にならない方法を医者に相談せよ」という旨のアドバイスをしてくれたことがありますが、これは病気に対する集中的なアプローチを行い治療する西洋医学よりも、体質改善など健康な身体作りを主軸に置く東洋医学の考え方を反映したものであった、と考えることもできます。

 

この両者はどちらが優れているというわけではなく、それぞれ相異なる得意分野を持っている医学ですから、互いの長所と短所を補い合うようにこれらを組み合わせれば、モンハン世界の医学に大きなブレイクスルーが起こるのでは……!? という予感がします。ゼンチのような豊富な知識と経験を持った名医であればこそ可能な偉業でしょうから、ぜひここは本気を出してもらいたいところ…!

 

ところで名医と言えば、サンブレイクには同じく医学のスペシャリストである薬師のタドリが登場します。ゼンチはタドリには直接会ったことはないものの、ツキトの都からカムラの里に流れ着いた瀕死のカゲロウを治療した縁から、タドリの事をカゲロウから聞いているようなんですね。

 

竜人の薬屋を探してるニャ? …ああ、カゲロウの友人のあやつかニャ。話だけならよく聞いとるニャよ。

あちこち放浪しておるはぐれ者の薬屋らしいが、腕はたしかだニャ。あやつの作る薬は非常に出来がええニャ。

たとえ名医のワシであっても、薬作りの腕においては あやつにはおくれをとるじゃろニャ。

しかしニャア…ワシはあやつに会ったこともないし、顔も知らんニャ。カゲロウも長いこと会ってはおらんようじゃが…。

ま、とりあえずカゲロウに聞いてみるニャ。少し前に薬を分けてもらったところじゃし なんか知っとるかもしれんニャ。

(マスター★4ライゼクス前 ゼンチ)

 

現職は行商であるカゲロウを通じてゼンチはタドリの作った薬を分けてもらうことがあるようで、その製薬の手腕は、カゲロウをして「秘術」と言わしめるほどの医術を使いこなすゼンチですらも舌を巻くほどのもの。タドリはモンハン世界全体の中でも、彼に比肩する者はいないかごく僅かというレベルの薬師なのでしょう。

 

もちろん、その製薬技術の高さを理解できるというのもゼンチが名医である証左ですし、タドリもタドリで「致命傷を負ったと聞くカゲロウの命を救ってくれるとは…」と、ゼンチのことを並々ならぬ医者として認識していそうな気がしますが。自分の薬をお裾分けするということ自体、その相手が自分の薬を理解して役立ててくれるだろうという信頼がなければしないようなものですからね。タドリは作中ではカムラの里を直接訪れる描写はありませんが、医学のスペシャリスト同士の邂逅を見てみたかったものです。

 

ふぁ~あ。だいたいのモンは歳をとると 朝の目覚めが早うなるニャ。

しかして、この里では老人でもない者も皆早起きだニャ。なんと恐ろしい習慣だニャ。

ま、だいたい皆寝るのも早いようだから 健康的な生活とはいえるがニャ。

ワシは毎日、早うに寝て早うに起きて ここで寝なおすのニャ。ここも、寝床とは違った良さがあるニャよ。

○○も、向こうの騒動は だいぶ落ち着いたんじゃろ? 久しぶりに一緒するかニャ? ふぁ~あ.

(マスター★6 ゼンチ)

 

「而して」なんていう表現は久しぶりに聞きました。正直日常会話で使ってる人ほぼ見たことないレベルです。それはさておき、ここではまた一つカムラの里の人たちがスーパーカムラ人たる所以が明らかになっています。医者のゼンチをして「恐ろしい習慣」と言わしめる、老若男女みなが実践するこの生活リズムの健康さ。若者たちなどは特に「夜更かしして趣味に没頭」みたいな時期もあるのかと思いきや、カムラの里に関してはあまりそういうこともないみたいです。筆者も見習わなくては……。

 

ゼンチが昼寝をしている屋根には、「よく食べてよく寝る健康なづくり」というウツシの教えを信条とするハンター見習いのタイシくんも、最近はよく訪れているらしいですね。ゼンチ先生と里の先輩後輩ハンター2人で、川の字になって屋根の上でお昼寝するのもたまにはいいかもしれません(落ちそうで危ないという問題以外は)、タイシくんも喜んでくれそうだし。カムラの里が、今日も平和そのもので何よりです。

 

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ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!