海の男は身体が資本!
・本記事は「モンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』および2023年9月29日発売『HAUNTING OF THE SUN モンスターハンターライズ:サンブレイク 公式設定資料集』を未読の状態で執筆しております。
現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。
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本記事では船酔いの……じゃなかった船乗りのルッソと、同じく船乗りのフィーノについて取り上げていきます。船乗りと言えばとくに身体が資本の体力仕事でありますが、ルッソは極度の船酔い体質、フィーノは日頃ふとした時に訪れる腰痛と、船乗りとしての能力は確かながらも共に自らの体調が気になっている2人です。今回はそんな彼らの人となりと体調について掘り下げていきましょう。
ーーーー目次ーーーー
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1.船酔い体質と闘う実力派航海士・ルッソ
う…。うぇ……。…あ、ハンターさん……。
さすが、フィオレーネさんが見込んだ方…。…船酔いにも、つ…強いんです、ね…
もしかして、僕も…ハンターになれば船酔いに強く…? いや、でも…。僕は…立派な船乗り……にーー
……う! ……っぷ! ………。…ふう、あ…危なかったぁ……。
(エルガド到着直後 ルッソ)
だ、大丈夫……? 初対面からいきなり様子が不穏なルッソさん。冒頭でもお話ししたように、彼は航海士でありながら極端に船酔いに弱いという致命的な体質を抱えており、拠点ではいつも気分が悪そうにゆらゆらと立っています。船酔いもだけどそのままうっかり海に落ちないかも心配……。よりによって船乗りなのにという点もさることながら、体質に関してはルッソ自身には何の責任もないことですから、一層難儀なことです。
プレイヤーはこの状態を見慣れてしまっているせいで彼はこれがデフォなのではないかとも思ってしまいますが、一応フォローしておくと、彼は四六時中体調不良というわけではなく、当然ながらその日の航海に出る前であればまだ船酔いにはならないわけですから、彼の出航前に話しかけた時には、普通のテンションでお話しすることができます。
こんにちは、ハンターさん。この前は船酔いがひどくて、ちゃんとお話しできませんでした。ごめんなさい。
…え? ああ、今日はまだ船に乗っていないので、ほら、結構調子がいいんですよ。
あれ? そうは見えませんか? う~ん、あれ? …い、言われてみるとなんだか…気持ち悪くなってきたような…。
(エルガド到着直後 ルッソ)
うん……なんかごめん……。主人公が「今日は大丈夫なのか」と余計なこと(?)を聞いてしまったせいで、ルッソも暗示にかかったように船酔いの兆候が出始めてしまいました。ルッソが立っている桟橋も波で少しは揺れているでしょうから、船酔いに弱い彼であれば既にかすかに振動の影響を受けていた可能性もありますが、それを差し引いても彼は普段が普段ですから、「船酔いをしている自分を少しでも想像しただけで船酔いになってしまう」ところまで深刻化してしまっている様子。船酔いの時は主人公とまともに話せないことを申し訳なく思っているとても律儀な性格だからこそ、彼の体質が呪いのように感じられてきます。
そんなに船酔い体質なのに船乗りになったのか、という疑問に関しては、これはむしろ順序が逆というもので、ルッソの場合は船乗りに憧れていざ自分が船乗りになってみたら、仕事をする中で自分が乗り物の揺れに弱い体質であることが自覚的になってきた(あるいは体調や体質の変化等で後天的にそうなった)……という感じなのだと思います。
しかしながら、そんな体調面に不安のある彼が、王国の船乗りの中でも最重要となる最前線の調査隊の船乗りとしてギルドに選ばれた、というのは名誉なことであると同時に不思議なことでもありまして、彼自身、調査隊に参加することは船乗りとして、王国の一員として自分で志願したことではあったにせよ、いざそのポジションに就いてみると、やはり本当に自分が選ばれてよいのかと気になってしまうところがあり、胸を張れずにいるようです。
僕…、き…気持ち悪くなりながら いつも考えちゃうんです、よ…。
ギルドはどうして、こんな僕をちょ、調査隊に入れてくれたのか…って、…う、……うぷっ。
ぼ、僕にとっては…大穴の謎よりも… …その方がよっぽど気になります…です。……っぷ。
(マスター★1ヨツミワドウ前 ルッソ)
しかしながら、この点に関してはギルドは基本的に実力主義を一貫しているようで、彼の航海士としての能力の高さを見込んでのことのようです。じっさい、身も蓋もないことを言えば、ルッソは勤務地がエルガドでなかったとしてもどのみち船酔いは避けて通れないものですし、そしてルッソはいざ航海士として船に乗れば抜群のクオリティの仕事をするデキる男ですから、それならば実力のあるルッソをエルガドの航海士として採用したい、ということなのでしょうね。
ルッソのやつ、どうせまた船酔いでへばってるだろうが、大目に見てやってくれよ。
あれでも、航海士としての腕は若いモンの中でピカイチなんだ。
あいつに必要なのは、自信と自覚さ。そうすりゃ船酔いなんて、一発で吹っ飛ぶと思うけどね、俺は。
(マスター★1 フィーノ)
ルッソの航海士としての実力は、同じエルガドで働く船乗りの仲間も大いに認めるところとなっています。フィーノの言うように、ルッソはその自分の腕に自信を持てるようになれば船酔いを克服できる……かどうかは体質のこともありますからそれだけとは言えませんが、精神的な不安なども自律神経を乱して船酔いの原因となるのは事実ですから、「自分は大丈夫だ」と前向きな気持ちになれることには少なからずメリットがあるというのはフィーノの言う通りです。また、ルッソは性格が素直なのか暗示にかかりやすそうな雰囲気もありますから、それをプラスの方向に利用できれば軽減くらいはできるのではないか、という可能性もなくはありません。
ちなみに、ルッソが航海士として優秀である理由には、次のようなものが考えられます。
ぼ…僕、これでも一応、無駄のない…航路の、せ…設定には、ちょっとだけ…自信がありまして…。
…う、うぷ……。きっと、船の上にいる時間を、す…少しでも、短くしたいからかもしれません…ね。
(エルガド到着直後 ルッソ)
航海士は事前の航海計画の設定と海上での海の様子を見ながらの司令塔の役割を果たし、安全かつ効率的に物資等を輸送するのが仕事ですから、波が穏やかで揺れが少ない進路を選択しつつなるべく早く港に着く、というのは自身の船酔いを抑えるという目的にも適っていることになり、そうなれば一層頭も回ります。海から逃げるような気持ちになってしまうのも難儀ではありますが、船酔いという自身の弱点を、彼なりに職務上の武器に転化させているとも言えるんですよね。
い…いい加減、この…船酔い体質を何とか克服…しし、しよう…と、決意…しまして……。
迷信やら、土地に伝わる…ほ、方法やら… とにかく…なんでも、……ウップ! た…試して、みようと思いま…す。
(マスター★2 ルッソ)
……とはいえ、船酔いをするかしないかでいえばしないほうが遥かによいのは事実で、どうにかこの体質を治す方法はないものか、とルッソも色々と試行錯誤しているようです。……まぁ、ちゃんとした薬や訓練、健康食品等ならともかく、暗示だけで船酔いしてしまうほど素直な性格で受容体の塊のような彼が迷信や怪しげな民間療法(一応お断りしておくと、民間療法がすべて医学的に誤っているとは限らず実際に有効なものもあるのですが、根拠なく信頼を置くのはリスクがあるという話です)にすがりつくのはなんかこう危険な予感しかしませんが、以下、彼の努力の軌跡を見ていきましょう。
ああ…どうも、ハンターさん。さっき…仲間に、あの…教えて、もらったんですけどね…。
揺れる船を見ながら、一緒に身体をゆらゆらすると…よ、酔いにくいって、聞い…たん、ですよ。
……うぅ、でもこれって、逆効果なんじゃ…ない、ですかね…。…う、……うえぇ。
(マスター★1 ルッソ)
さっそくダメそうなのが来たな……。船酔いの原因の一つには視覚から感じる刺激と身体で感じる刺激の情報のズレというものがありますから、これを発明した船乗りの仲間はおそらく、「揺れる船を見ながら自分も揺れることによって、船が揺れていないと思い込むことができる!」的なことを想像したものと思われますが、実際にはどう考えても自分が揺れた程度で船が揺れていないように見えるわけもなく、むしろゆらゆらしている船を凝視し続ける視覚刺激と、船酔いした身体を揺らして追い打ちをかける身体刺激とで二重に内耳にダメージが入っているようにしか思えません。
さすがにこんなことで身体に良いわけがない……と薄々悟ったルッソが次に目をつけたのは、カムラの里発祥の超健康食品、栄養満点のうさ団子。
…うぅ~。ハンターさん…、そういえば… …ふ、船酔いを…スッキリと、治しちゃう… そんな…うさ団子って…ありませんかね?
あったら…絶対、毎日三食……食べると、思う…んです、けど……。
ああ…でも、船酔いのせいで、食べても……すぐに、戻しちゃう…かもしれない…で、す……。……うぷっ。
(マスター★3 ルッソ)
なんかダメそうかも……。一応、うさ団子を作っているヨモギちゃんを始めカムラのお団子職人は薬膳の心得がありますから、漢方や生薬に使われるような食事を使ったお団子というのもあるでしょうし、うさ団子はハンターの体力や状態異常の回復に関わるような効果すら発揮できるのですから船酔いに効くものも1つくらいはありそうな気がしますが、彼には消化する前に戻してしまうという最大の壁が立ちはだかります。昼食はどうしようもないとしても、朝食を早めて夕食は遅くすれば1日2回は船酔いで気持ち悪い時間帯を避けて食事ができるかも……?
とはいえ、彼は「戻してしまったらどうしよう」という不安にも弱めなところがありますから、なかなか一筋縄ではいきません。うさ団子は健康効果の確実性で言えば、先の船を見ながら揺れる作戦やこの後紹介する数々の不審な療法とは比べ物にならないほど優れているため、これまた惜しいところ。……ということで、続いてはこちら。
この前…、親切そうな… 旅の…行商人から聞いた、は…話…なんです、けど……
船酔いには、モンスターの… 濃汁が、…よく、効くらしい……って
ちょっと…試してみたい…気も……するんですが…、うぇっぷ…。もしかして、僕…だまされて、ます…?
(マスター★3イソネミクニ亜種前 ルッソ)
いや待て待て待て。「モンスターの濃汁」というのは甲虫種から採取することができる、甲虫種自身の体液とその甲虫種が他の生物から吸い取った体液がミックスされたものですから、モンスターの体液なら何でもよいというわけでもなければ、ましてやその体液に薬用効果があると認められている特定のモンスターの体液、というわけでもありません。ルッソにこれを教えた行商人がその謎の濃汁治療法を迷信していたか、ルッソを困らせようと悪意を持ってだましているか……そのどちらかである可能性が非常に高そうです。
ルッソも後で冷静になればそのことには気が付けますが、この手のデマというのは「どうしても困っていて何でもいいからヨスガになるものが欲しい」という気持ちでいると一時は信じてしまうものですし、或いはそこに付け込んで誰かが嘘を吹き込むということも往々にして起こり得るもの。いずれにしても、ルッソがモンスターの濃汁をゴクゴクいく羽目にならずに済んで一安心です。
さて、ルッソの船酔い克服の旅はまだまだ続きます。
最近は…、うぷっ。い、いろんな……揺れに、慣れて…いこうと、思いまして…。
作業用の…クレーンに吊り上げて、もらって……ゆ~らゆら、ゆ~らん、ゆ~らん……と、うぷ。
特訓…の、成果は……うっぷ。い…い、言わなくても… 分かります…よ、ね? …うぅ。
(マスター★5シャガルマガラ前 ルッソ)
船酔いを改善するために創意工夫をして色々試してみよう、という心意気自体はとても素晴らしいと思うのですが、それでうまくいかなかった場合に犠牲になるのが彼の体調ですから、なかなか大手を振って応援もしづらいところ。ましてやルッソは今回の「揺れに慣れるためにクレーンに乗ろう!」など割と物理に訴える傾向があるため、どうしても心配する方が勝ってしまいます。ここにきてそんなシンプルな無茶をしなくても……。
なかなか良い方法が思いつかず苦悩するルッソは、あろうことか主人公に解決策を依頼しようと考えることも。
あ…あの、ハンター……さん。うっぷ…。ひとつ、大事な… 質問…が、あるんです…けど………。
もし、「船酔いしない方法を教えて!」…なんて、クエストが…あったら…うぷ。う、受けて…くれ、ます……か?
(マスター★5 ルッソ)
この時の主人公はちょうどメル・ゼナを討伐した直後ですから、「王国の悲願の相手であった強敵メル・ゼナを下せるほどの主人公ならもはや何のクエストでもクリアできるのではないか?」的なノリで奇跡を信じている可能性がワンチャンあるかも(そうか?)。藁にも縋る想いを叶えて上げたい気持ちはやまやまですが、モンスターの狩猟ならともかく船酔いとなるとさすがに主人公も専門外。まぁ、先の行商人の話をルッソがもし信じ込んでしまっていたら、この無理難題の代わりに「モンスターの濃汁をとってきて!」という一見何の変哲もないクエストを彼から依頼されてしまっていた未来もあったわけですから、いっそ冗談で済ませられただけマシというものかもしれません……。
ちなみに、これの少し前の時期に話を聴ける、とても冗談では済ませられないルッソの体当たり治療法のアイデアがこちら。
ぼ、僕も…モンスター…みたいに、キュリアに…噛まれ、たら…。う…うぷっ。
何かの…ショックで……、船酔いを、克服…できたり…、しませんか…ね?
でも…あんなのに、噛まれるのは…、やっぱり……う、ぅうぷ! …はぁ~。……ふぅ。
(マスター★4 ルッソ)
キュリアに噛まれるのだけはヤバイだろ……。疫病と同じ症状に罹ってしまうのでは船酔いがどうという以前に命に関わることですから、「毒を以て毒を制す」とはこの際はいきません。しかも、グロテスクな見た目のキュリアに噛まれることを想像して余計に気持ち悪くなっちゃってるし……。
で、そのキュリアの毒をメル・ゼナから受けてしまい病床にあるフィオレーネに対しては、いつも体調不良に苦しく身として彼は共感する部分も多いようです。
メル・ゼナに…そんな、に…ひどい、ど、毒があったん…で、すか…。意識も…戻らない、ほど…だなんて…。
うぇ……。うぷ…。それ、なら… ぼ…僕のほうが、まだ元気…かも、しれ…ません、ね……。あ、はは、は。
(マスター★4ライゼクス前 ルッソ)
フィオレーネと比して自分の体調の悪さを軽視してほしくはないところですが、船酔いとはいえ身体を動かせる身として、エルガドを支え万全の状態で彼女の容態の快復を待てるよう、彼も職務に精励しています。そしてフィオレーネが復帰した暁には、病を克服する姿に勇気をもらえた、とのこと。
フィ…フィオレーネさんが、みごとに…復帰、された…そうで… 僕もすごく、勇気を…もらい、まし…た!
そして、…さっき、思い切って 船に乗ってみて…分かった、こと…が、あります。
…うぷ。船酔いって…勇気だけじゃ、どうにも…ならない、です…ね。
(マスター★5緊急前 ルッソ)
さすがにフィオレーネから貰ったパワーでも船酔いの克服はムリだったか……残念。でも彼女の復活劇がくれた勇気は、今後の治療法探しの大きな原動力になるはずです。その勇気の結果が先述のクレーン訓練だったのかというのは言わないであげてください。
……さて、こんな感じで数々の荒療治を試したり試さなかったりしているルッソですが、そうした迷信やデマや怪しげな民間療法等々が世の中には溢れている一方で、エルガドにはバハリを始めとして、きちんと学術的な研究を行う専門家も存在しています。ルッソも彼のことは非常に頼りにしているようなのですが、なかなか治療薬の完成には至らないようで……?
よ…よかったぁ~。…あ、ありがとう、ハンター…さん。あの、バハリ…さんは、エルガドに、必要な…人材…なんです。
い、いつか…、うぷ…っ。ぼぼ…僕、の…船酔いの治療法も…研究、してもらう約束…なんですから。うぅ…。
(マスター★2アンジャナフ後 ルッソ)
バハリは観測拠点の研究員として目下のモンスターの調査に勤しんでおりそれだけで徹夜を繰り返すほどやるべきことが山積みの状態ですし、ルッソとしてもそこに個人的な要件で仕事を増やすのは申し訳ない、ということで船酔いの治療薬の研究はまだ着手していない段階のようです。
うぅ~。そ、そろそろ…バハリさん…に この…ひどい、ふ、ふな…船酔い…対策を、相談…したいんですけど…。
やっぱり…あの、モンスターの…研究が、忙しくて…なかなか、時間が…。だから、ハンターさん、調査…応援して…、ます。
うっぷ…! バ…バハリさんの、仕事が、進めば…船酔い、対策に使う…、じ、時間も出来る、はず…ですから……。
(マスター★4 ルッソ)
バハリとルッソとの約束が果たされるためには、まずは王域生物の件をひと段落させるのが先決ということで、ルッソの船酔い治療の命運は主人公の狩猟の腕にも委ねられることになりました。とはいえ目下の課題が片付いたとしても、そこからまた次なる疑問が生まれ、再び調査が始まることになりますから、ルッソの薬の件は当分先の話―――と思われたところに現れた救世主が、薬師のタドリです。
え…疫病と、……同じ症状…を? それが……治る薬、なら…ついでに… 船酔い…にも、効くかも…しれません…ね。
ああ…でも、最初から… 酔い止めを調合、する…ほうが、きっと簡単…です、よね………うぷっ。
(マスター★4ライゼクス後 ルッソ)
「疫病の薬が船酔いに効くかどうかを考える」という、なんかこう薬は強ければ強いほど良いみたいな若干危ない発想の香りがしないでもありませんが、とにもかくにも医学・薬学の専門家であるタドリならばきっと、ルッソの船酔いに効く薬も知っているはずです。
そして運命の瞬間は遠からずやって参ります。主人公とフィオレーネが深淵の悪魔ことガイアデルムを討伐成功するのと時を同じくして、ルッソの中の深淵の悪魔こと船酔いも、タドリの手によってついに解決の日の目を見ることに。
見よ、生まれ変わった海の男の姿を――――!
こんにちは、ハンターさん! これからクエストへ出発ですか?
…え? もう船酔いは大丈夫なのかって? もちろん、この通りです! 今の僕なら、どんな荒波でも負ける気がしませんよ!
それもこれも、薬師のタドリさんが僕に合う 調合薬を見つけてくれたおかげです。
さあ、船を出すならお任せを! 僕の航海士としての腕前、ハンターさんに見せてあげますよ!
(マスター★6 ルッソ)
もはや神々しさすら感じさせるこの圧倒的仁王立ち。いつも桟橋でオェ~…としていた人と同一人物とは思えない、爽やかで精悍な仕事姿です。エルガドの研究所での仕事がひと段落したタドリが彼のために薬を調合してくれたようで、船酔いとはすっかりオサラバとなりました。とはいえ、タドリもいつまでも王国に滞在するわけではありませんから、彼がまた旅に出た後は薬の方は大丈夫なの? と心配ではあります……が、その点についてもご安心を。
波と風に揺られるのって、本当はすがすがしい経験なんですよね。ずいぶん長い間、忘れていましたよ。
タドリさんが言うには、このまま揺れに慣れてさえしまえば、いずれ薬がなくても酔わないようになるんですって。
それがもう、本当に待ち遠しくて…! だから僕、これからは少しでも多く航海に出るつもりなんです。
今まで楽しめていなかった分もまとめて、この海とたっぷり向き合おうと思います。
(マスター★6 ルッソ)
タドリの調合薬は、彼自身が自然環境の現地調査のなかで入手した薬効成分のある植物、いわゆる生薬を主に材料として使用しているでしょうから、薬の種類としては漢方薬と言えるものなのだと思います。漢方薬は頓服薬としての機能もさることながら、長期的に服用することで体質そのものを改善する効果が見込めますし、今の健康な状態が続くことによる「自分はもう船酔いは大丈夫だ」という精神的な安定感も船酔い改善にはプラスに働きますから、これでいよいよ半永久的に船酔いを克服できたということになります。
海が好きで船乗りになったにも関わらず、船酔い体質に苦しめられる日々が続き長い間船乗りとしての矛盾に悩まされてきたルッソ。船酔いを克服したことで、ようやっと航海の楽しみや仕事のやりがいを再び感じられるようになり、本来の自分を取り戻したような雰囲気があります。エルガドはこれからも港町として大いに発展していきますから、ルッソの今後の大大大活躍にぜひ期待したいところ……!
2.腰痛と闘うベテラン船乗り・フィーノ
どうした? あんたの荷物なら もう部屋に運んであるぜ。
さすがに自分の家と同じってワケにはいかねえだろうが、ここでやっていくのに不足はねえはずだ。
船乗りもハンターも、この体ひとつが何よりの宝モンだからなあ。たまには部屋に帰って、ゆっくり休むといいさ。
(エルガド到着直後 フィーノ)
フィーノは荷物の積み降ろしのみならず、エルガドに届けられる荷の中身の検査という重要な仕事も受け持っています。
エルガドに運び込む荷のほとんどは、一旦ここに下ろされるんだ。
荷下ろしに抜けがあっちゃ困るし、何か王国領に持ち込んじゃあマズイものが混じってるかもしれねえからな。
そんなワケで、俺たち船乗りや作業員も 騎士団らと一緒さ。この拠点を守るために働いてる仲間ってことだな。
(マスター★2 フィーノ)
エルガドも王都から海を隔てているとはいえ王国領ですから、危険な凶器や薬物、爆発物等々が持ち込まれないよう、これを検査する役目が必要。出入国についての管理という描写は他の作品ではあまりお目にかかれませんから、このような治安維持や法整備という点において、王国がモンハン世界の中ではかなり先進的であることが窺えます。ことモンハン世界においては、エルガドの人々の安全のみならず生態系の保全という面でも「生物の密輸」等もかなり警戒すべきものですから、エルガドに不審なモノが持ち込まれないよう、フィーノは常に目を光らせている……はずだったのですが、この手の危なっかしいことをする人物はむしろ身内にいたようです。
へぇ~、俺にはよく分からねえ話だが、危ねえ生き物を持ち込むのだけは勘弁してくれよな。
いや、待てよ…。バハリの旦那ならやりかねんな。気をつけろって念押ししとくか…。
(マスター★3イソネミクニ亜種前 フィーノ)
バハリがエルガドに持ち込む生物とは、もちろん例の小型動物キュリア。フィーノの気持ちを知ってか知らずか、小さいながらも後に特級の危険生物として認められるほどの脅威です。まぁ、バハリの場合は密輸とかではなく王域生物の調査のために捕獲をしていますから、ギルドの規則に則った正式なものではあるのですが、なにぶんバハリ本人が自由人として名高い人物ですから、彼の行動の安全性には絶妙に信頼がないというのも事実。
とはいえ、フィーノ本人はそういう変わり者なところも含めてバハリのことは気に入っているようで、彼が水没林の調査中にポカした件では、救出後に「バハリに一杯おごってもらおうぜ!」と陽気に主人公を誘ってくれます。
お疲れさん! バハリの旦那のこと、よくやってくれたぜ。これでまた うまい酒が飲めるってモンだ。
そうだ。ヤツに一杯おごってもらおうぜ? 皆を心配させた本人には、ちゃーんと責任取ってもらわねえとなぁ!
(マスター★2アンジャナフ後 フィーノ)
ヒヤヒヤさせられる出来事があっても、「一杯おごり」で水に流して円満解決という雰囲気が好きなんですよね~。「チームの皆に迷惑をかけてはダメ」ではなく、お互いに到らないところを許し合いフォローし合いながら持ちつ持たれつの関係でいこう、という考え方が、このフィーノの台詞や研究員のカルゴなど、特に年長組の会話から聴けるのが良いんですよ。……そして、何かとお酒が大好きなのもエルガドの年長組です。
また、これは直接フィーノの仕事ではないにしても、彼は他の地域から船でエルガドにやってくる人たち(特にハンターが多いでしょうか)をそのつど出迎える人でもありますから、彼らがどんな人となりか、どんな表情をしている人物か……ということについても目が肥えているようです。
よう、調子はどうだい? …とは言っても、まずはここに慣れるところからだよな。
なあに、大丈夫だよ。俺が見るに、あんたなら心配はなさそうだ。
そう、デキるハンターってのは、船から降りるときの仕草ひとつで分かるモンさ。
…本当だぜ?
(エルガド到着直後 フィーノ)
フィーノの第一印象では主人公は「デキるハンター」に見えたようで、新天地のエルガドで色々と不安も多く、まだ確固たる自信を持てていない主人公を彼は早くから評価し、背中を押してくれる存在でもありました。主人公の立ち振る舞いのどこかにそう確信させるものがあったのか、あるいはまだどんな人か分からないにしても主人公を安心させるためなのか、いずれにしても主人公にとっては心を救われたような心境にさせてくれる言葉です。嗚呼、ベテラン組の優しさが身に沁みる~~……。
さて、話を戻しまして、先述の通りフィーノはエルガドへ届けられる積み荷の管理を担当していますが、その過程で、ここにどのような荷物が多く運ばれてくるのか、という観点からエルガドの情勢に詳しい人物でもあります。以下、エルガドに届けられる荷物の数々を見ていきましょう。
ここで積み荷のチェックをしてるとよ、それだけで案外、皆の生活ぶりってのが 見えてくるモンなんだ。
例えば最近目立つのは、アレだな。カムラの里から…うさ団子の材料がめっちゃくちゃ大量に届きやがる!
たしかにありゃあ うまい食いモンだけどよ…。みんな、食いすぎじゃねえか!?
(マスター★4 フィーノ)
エルガドでも人気を博しているカムラの里のうさ団子。茶屋のアズキさんが心を込めて提供するお団子の魅力に憑りつかれる人々は日ごとに数を増しているようでして、うさ団子の美味しさを支えているカムラの里のお米やお野菜のエルガドへの輸送量も、それに比例してどんどん増えているようです。
うさ団子の売れ行きが好調なのは良いことですが、それ以上に気になるのは「カムラの里での材料の生産は果たして追いついているのか?」ということ。アズキの茶屋にもカムラの里から材料が届けられている、というのは前々からの体勢ではあるものの、ただでさえうさ団子はカムラの里内でも大人気の食べ物ですし、里の限られた敷地面積では収穫量にも限度があるでしょうから、エルガド側でもうさ団子の消費量が増えていくとなると(エルガドの人口もそこまで多くはないとはいえ)、材料が枯渇しないものかと流石に心配になります。それでも食糧不足に陥っているという話はカムラの里の誰からも聞かないのですから、謎は深まるばかり……。
続いて、船で運ばれてくるものの中にはそうした大切な食糧以上に、エルガドの皆が心待ちにしているものがあります。
王国からは定期的に物資が届くんだが、その中でも、一番に船から降ろしてやりたいモンがあるんだ。
ハンターさん、なんだと思う? 食料やら薬はもちろん大事だが そういうのとは、ちょいと違うんだ。
やっぱ一番は…離れて暮らす家族や、大切な人たちからの手紙や荷物さ。みんなこいつを待ってるからな。
(マスター★5 フィーノ)
エルガドは王国領内の中でも王都や他の都市からは離れた場所にあり、モンスターの襲撃を受ける危険も大きい最前線の拠点。そこで働く家族や友人、恋人を労わり、励まし、無事に帰ってくる日を願う想いを込めて、他の地域からさまざまな手紙や贈り物がここに届けられるのです。モンハン世界には当然ながら電子メール等の高度な通信技術はありませんから、そうした手紙や荷物を運ぶのも、船乗りの大切な仕事の一つ。
それから、エルガドは拠点であると同時に港町でもありますから、海運を通じてたくさんの交易品が流通している場所でもあります。こちらについては、エルガドの船乗りの中で交易を中心に担当しているジレッタの項で扱うとしましょう。
さて、これまで見てきたように、エルガドでの貨物の積み下ろしを担当しているフィーノは、普段の仕事でも特に力仕事が中心ということになります。フィーノはエルガドの船乗りの中でもベテランの年長組であるわけですが、そんな彼だからこその仕事上の悩みがこちら。
フィーノのお悩みは「腰の痛み」。そう、物を持ち上げたとき、床に下ろしたとき、何気なく屈んだとき、伸びをしたとき―――思いがけぬタイミングでどこからともなく現れては痛烈な奇襲を見舞ってくる、あの「腰の痛み」です。デスクワークでもしばしば悩まされやすいというのに、力仕事で全身の関節をよく動かす彼にとってはなおさら腰の不安は大敵。
別のタイミングで話しかけると、フィーノがちょうど少し腰をやってしまっている現場を目撃することとなります。
あいててて…! ふぅ…。 …おっと! こりゃあ、ちょいと情けないところを見られちまったかな?
はっはっは! 年なんかは取りたくねえモンでよ。近ごろ、力仕事が腰にきやがる。
ハンターさんも気をつけなよ? こういうのは、油断してるとき急に来るモンだからなぁ。
(マスター★2 フィーノ)
先の台詞でフィーノも話していたように、年齢的な話でいえば身体の動く若手の船員たちに今の仕事を回したいところではありますが、エルガドは今回の異変調査においては王国の優秀な人材を招集して少数精鋭的な感じで回しているところもあり、フィーノもその実務能力を期待されているでしょうから、彼が今の持ち場を離れられるのは少し先のことになりそうです。
また、主人公が彼の突然の腰痛の間接的な原因(?)になってしまうケースも。
あのメル・ゼナを仕留めたって? 見事なモンだぜ! おい! ほんっとすごいなぁ、あんたは!
…あ、あいててて…っ! ふぅ。つい力んだら…腰にきちまったぜ。だがこいつは、嬉しい痛みってヤツだな。
それに、あんたが受けてきた傷に比べたら、なんてことはねえさ! だっはっは! ……あっ! いてててて…! は、はは…。
(マスター★5 フィーノ)
なんかゴメンナサイ……。先の項でルッソに何気ない質問をした結果、まだ船に乗っていないのに船酔いさせてしまった件もそうですが、主人公との会話が間接的に彼らの対象を悪化させる引き金になってしまっているのが何とも心苦しい限りです。フィーノもルッソと同様、主人公の大変さに比べればどうってことないから、とフォローをしてくれますが、船乗りの仕事も大変ですから、どうか無理をなさらぬよう……。
フィーノの仕事は港での搬入・搬出の統括と実務のみならず、船員として貨物船に同行し、運搬中の荷物の安全と品質を管理するというタスクもあります。そして当然ながらこの業務は「その日の波がどれだけ激しいか=荷崩れが起きやすいか」によって仕事量が変わりますから、彼はある意味ではハンターと同様に、まさに大自然との闘いに身を投じているのです。
近頃は波も落ち着いててくれて ほんと助かるぜ。船が揺れなきゃあ、荷崩れもほとんどねえからな。
余計な仕事が増えるのも面倒だし、なんっつっても、腰に無理がかからねえのが最高よ!
……まだピンとこねえだろ? 腰の大切さってヤツ。いやでも分かるぜ、そのうちな。
(マスター★3 フィーノ)
フィーノが仲間の航海士のルッソの能力をとりわけ高く評価しているのは、先輩として後進の育成にも精励しているから、優秀な後輩の実力を誇りに思っているからという理由のほかに、航海士の航海計画や海上の現場での判断が優秀であればあるほど、より波が穏やかな進路を選択しつつスピーディに目的地の港に到着することができ、結果として自分の腰に負担がかかる仕事が減るため助かるから、という個人的な理由もあったりするのかもしれません。
ことエルガドに関しては、拠点として再興されてから日が浅いゆえに、その機能においてはまだ粗削りな部分があるのは否めず、王都などの都市部に比べれば医療設備や薬がまだまだ充実していない場所ですから、個々人の体調管理の努力の重要性は相対的に高くなります。
騎士団の姉ちゃん、危なかったって? とにかく、大ごとにならなくてホッとしたぜ。
当たり前のことだが、王国に比べたら ここにある薬やら施設ってのも、まだまだじゅうぶんじゃねえからな。
だからよ、よく聞く「体が資本」って言葉も…このエルガドじゃあ、めっぽう重みのある一言になっちまうのさ。
(マスター★4 フィーノ)
個人的にはこういう「何もかもが足りないところから皆で力を合わせてエルガドを作っていく」みたいな雰囲気が好きだったりもするのですが、フィーノをはじめ実際にここで働く人間としては、やはり医療設備の拡充は現実的な課題でもあります。特に最前線で危険なモンスターと渡り合う王国騎士やハンターたちなどは、無論彼らもその道のプロであるとは言えども、それを間近で送り出す立場であるフィーノからすれば、「大きなケガなく帰ってきてくれるだろうか」という身の安全への気がかりは尽きないというもの。
みんなそろって、急ぎの出発かい? また、ただごとじゃあないんだろうが… ちゃんと無事に帰ってくるんだぜ。
クエストに出るハンターなんざいちいち心配してたらキリがねえけどよ、いまだに慣れねえぜ。こういうのは。
(マスター★4緊急前 フィーノ)
調査隊の仲間はいずれも実力者揃いですが、日頃くり返し調査任務に赴き、毎度のこと無事に拠点に帰還してくる……という光景がたとえ彼らにとっては通常運転であったとしても、不確定な自然を相手にする以上それは決して常に100%保証されている当たり前の結果ではないわけで、いくら仲間の実力を信頼していても、彼らを見送る際の漠然とした不安を割り切れる訳ではない……というフィーノの心境はもっともなものです。こと作中においては、実際にイレギュラーな緊急事態において、フィオレーネが仲間を庇って負傷をしてしまうこともありました。
本編では薬師のタドリがエルガドの調査隊に協力してくれたおかげで、フィオレーネや同じくキュリアの被害に遭っている町村の人々の救命において大きな助けを得ることができましたが、今後のエルガドは万が一の事態にも幅広く対応できるような、人々の生活面や医療衛生面の向上も中長期的な目標となりそうです。
さて、薬師のタドリといえば、その調薬の腕前を以てルッソの船酔いを見事改善してくれた人物でもあります。フィーノもそんなルッソの話を聞きつけ、次のようなコメント。
ハンターさん、知ってるかい? あのルッソが、ついに船酔いを克服したらしいぜ!
なんでも、さすがにあいつの様子を見かねた薬師の旦那が、いいモンを調合してくれたそうだ。
よかったぜ。これで皆があいつの腕前を分かってくれるからな。大した航海士なんだぜ? ルッソのヤツ。
…にしても、そんなにいい薬が作れるってんなら、俺の腰にも効くやつを頼んでみなきゃあな…。
(マスター★6 フィーノ)
仲間の本来の実力を皆が知ってくれることをこんなに嬉しそうに話してくれるのは、やっぱり良い上司だなぁフィーノは。そしてあの船酔いのひどかったルッソが見事にその体質を克服したことから、自分もタドリに腰痛の薬を頼めないか……と密かに考えている様子。エルガドの調査隊の皆や船乗りの仲間たちを文字通り縁の下の力持ちとしてどっしり支えてくれるフィーノにも、ぜひ大切な身体を労わってほしいものです。
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ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!