エルガドの凸凹名コンビ②

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編および、一部シリーズ他作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』および2023年9月29日発売『HAUNTING OF THE SUN モンスターハンターライズ:サンブレイク 公式設定資料集』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。
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本記事では船乗りのピンガタンコについて取り上げていきます。「凸凹コンビ」シリーズ第2弾となる今回は、以前のスーとガトリンの関係とは逆に、先輩がお気楽で後輩が真面目というコンビ。共にエルガドでのハンターや調査隊の仲間の移動を支えてくれる頼もしい船乗りの仲間ですが、それぞれの仕事への考え方は正反対。噛み合っていないようでどこか噛み合っている、彼らの愉快なやりとりについて見ていきましょう。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.陽気なピンガルと真面目なタンコ

 

フンフフ~ン♪ フーンフ~ン♪ よ~しよし、今日もほどよい波に、気持ちのいい潮風だねえ、うん。

海の機嫌がいい日ってのは、ついついこっちまで嬉しくなっちゃうんだよね。

(エルガド到着直後 ピンガル)

 

エルガドの船着き場でいつも貨物の管理や船の整備をしているピンガルは、海と潮風と歌をこよなく愛するザ・船乗りという感じの陽気な人物です。ゲーム内では彼からのみ貰えるレアアイテムの収集でもお世話になるキャラクターですが、その話しかけた際に聞ける「気楽にいこうよ~」「ほどほどにねぇ」という口癖からも分かる通り、仕事は「適度に肩の力を抜いて、心の余裕をもってのぞむべし」というのが彼の信条。

 

この拠点、僕は結構気に入ってるんだ。今はそんなに忙しくはないしね。

でも、わざわざアンタみたいなハンターを呼んでくるってことは、何か大きな動きでもありそうなのかい? …困ったなぁ。

(エルガド到着直後 ピンガル)

 

意識的にフマジメを気取っているフシは若干あるにしても、忙しない状況の中フルパワーで根詰めて働く、というのはどうも彼の性分に合わないようで、主人公本人の目の前で「困ったなぁ」などと本音をこぼすシーンも。後述するように、彼は仕事に対する要領や持ち前の技術は非常に優れている人物であり、エルガドのことに関心がないというわけでも全くないのですが、いかんせん彼の確固たるポリシーのゆえに、業務への姿勢に関しては「仕事に集中して真摯に取り組む」というタイプではないんですよね。仕事中にも自作と思われる歌をひとりで唄ってたりするし……。

 

そんな彼と対照的な存在であるのが、同じく船乗りのタンコ。

 

…………。えっと…、すみません。

どうしても、ここだけは今のうちに なんとかしておきたいもので。

お話しは、またのちほど。

(エルガド到着直後 タンコ)

 

初対面の時には船の整備に集中するあまり、主人公への挨拶をつい後回しにしてしまうタンコ。この第一印象だけを見ると、仕事以外に関心がなく、愛想が悪くて気難しい人に見えてしまうのですが、実際にはタンコは単に不器用な性格であるというだけで、仕事については誠実かつ丁寧で、エルガドや仲間のことを大切にしている、まっすぐな好青年という人物なのです。

 

ピンガルさんには、もっと力を抜いて仕事しろって言われるんですけど…。どんな整備も、おろそかにはできませんよ。

私だって、立派にエルガドの一員ですからね。ネジ回しの一つだって、皆の命に関わる仕事だと思ってます。

(マスター★1 タンコ)

 

タンコが整備しているエルガドの船は調査隊がモンスターの追跡調査等のために使用しているもので、王域生物の異変の解決のために欠かすことのできない調査隊員の足であり、また彼らが命を預ける乗り物でもあります。エルガドの大きな目標の内の1ピースを自分も担っているのだ、という自覚のもと、真面目に整備の仕事に取り組むタンコ。真剣なあまり疲れすぎてしまう所がある彼をピンガルは心配しているようですが、タンコもまたそれだけの信念を持っている人物……ですし、逆にタンコ的には、ピンガルにはもう少しサボりの割合を減らして仕事に集中して欲しい、と思うところもある様子。

 

ここで少し脱線しますが、せっかくですから彼らの業務やエルガドで利用されている船舶について、タンコの話を色々と聞いてみましょう。

 

これぐらいの小型船の整備こそ、一番気を抜けないんです。

調査隊が行くのは、ここのように 桟橋が整備されてるところばかりではありませんからね。

そんな場所に上陸するとき 頼りになるのは、やっぱりこいつなんですよ。

(エルガド到着直後 タンコ)

 

小回りが効きさまざまな地形に対応できる小型船は、厳しい自然環境にも飛び込んで調査を行う調査隊員の要。そしてこうした小型船はサイズが小さい分1つひとつの部品が全体の構造に与える影響が大きく、整備を少しでも疎かにするとあわや瓦解して水没……ということにもなりかねませんから、仕事に緊張感が出るのも頷けます。主人公がMRのマップ(密林・城塞高地)へ向かう時の移動にも、タンコが整備しているギルドの船が利用されていまして、サンブレイクを遊ぶ全ハンターは、実はクエストの狩猟地への移動を支える船を整備するタンコに頭が上がらなかったりするのです。

 

(エルガドでタンコが整備している船)

(密林)

(城塞高地)

当然、調査隊の主力となる小型船はそれだけ多くエルガドに配備されていますから、その整備にあたるタンコたち船乗りの仕事もタイヘンです。

 

私の仕事って、いつも同じ船に同じことをしているようにしか見えないかもしれませんね。

でも実際は、ギルドの船ってかなりの数あるんですよ。調査から戻った船が、まだほかにも整備待ちしているくらいです。

(マスター★2 タンコ)

 

タンコはいつも同じ船をいじっているように見えて、実際は見た目が規格化されているだけで、たくさんの数があるギルドの船を順番に整備しているんですよね。それだけの数の船舶を毎日のように抜かりなく整備し皆の安全への責任を持つというのは、実直で仕事が丁寧なタンコだからこそ成り立たせられる仕事です。そしてその業務量の凄まじさが同時に伝わってくるからこそ、ピンガルがタンコを心配する気持ちも分かりますし、そしてそれ以上に、タンコがピンガルにもう少しシャキっとした勤務態度でテキパキ仕事してほしいと思う気持ちも分かるような気がします……。

 

(マスター★2 タンコ)

主人公や王国騎士たち、調査隊員たちの活躍によって調査が本格していくにつれて、小型船の出動機会もどんどん増えてタンコも忙しくなっていきますが、彼はそれについては文句ひとつこぼすことなく、やりがいがあると言ってくれます。

 

ある程度の補修や整備の終わった船があれば、すぐに調査へ出すようにと伝達がありました。

ハンターさんの持ち帰った情報で、調査隊のみんなも今まで以上に勢いづいているみたいですね。

忙しくはなりますけど、こちらも働きがいがあるというものですよ。

(マスター★3 タンコ)

 

整備の丁寧さのみならず、回転率も同時に求められる状況。タンコにとっては業務が立て込む状況ですが、同時に前線だからこそ得られる成長のステップでもあります。正念場とはいえ、肩に力が入りすぎて無理することだけはしないでほしいところでありますが、タンコはそのマジメな性格のためか、大事な局面では人一倍緊張してしまうところもあるんですよね。

 

メル・ゼナのこと、話題になってますよ。騎士団や皆の興奮が伝わってきて、私まで緊張してきちゃいました…。

こういうときこそ、平常心です…! 心の乱れは、整備の乱れ…。お、落ち着いて、い…いつも通りに…!

(マスター★5緊急前 タンコ)

 

主人公とフィオレーネがついにメル・ゼナに挑むという報せを聞いた時などはこのテンパりよう。整備担当としての自分の役回りは普段と変わらずとも、ついつい騎士団の皆につられてガチガチに緊張してしまっています。大一番でいつも以上に気が引き締まる気持ちは分かりますが、タンコは冷静にいつも通りの仕事をすれば必ず100点満点の整備ができるハズですから、どうか落ち着いて……。

 

……と、そんな感じでとても仕事熱心なタンコくん。彼自身、自分のそうした堅実さや謹厳さはこの仕事において大きな武器であると自覚しているようですが、そこで自分と正反対の性格である上司のピンガルの生き様(?)から、何か自分の殻を破るヒントを探してみよう、と思い立ったようですが……?

 

最近、ピンガルさんからも何かを学んでみようと思いまして、仕事ぶりを見ているんです。

でも、今のところ感じたのは このひとの人生、楽しそうだなぁ…ってことくらいでしょうか。

(マスター★1ヨツミワドウ前 タンコ)

 

仕事に誠実に向き合うのが信条であるタンコにとって、いつも気楽そうに見えるピンガルの働きぶりはあまり心に響かなかったようです。ピンガルは決して仕事の手を抜いているわけではないのですが、緊張感がなくのんびりとしていたり仕事中に歌を歌っていたりと、お世辞にも普段の勤務態度はしっかり者であるとは言えないフシがあります。タンコの目に映るピンガルの仕事ぶりはどのようなものなのか、いくつか会話を見てみましょう。

 

誰かの面倒まで見なきゃいけないなんて、ハンター稼業っていうのも なかなかに苦労が多いね。

僕なんかはほら、こうやって自分の仕事をこなすだけで精一杯の毎日さ。ラ~♪ ラ、ララァ~♪

(マスター★2アンジャナフ前 ピンガル)

 

「精一杯」と言う割にはどこからどう見ても余裕ありまくりな感じですが、彼自身としては今の仕事に非常に充足を感じているようです。後述するように、ピンガルは根本的に要領のよい人ですから、ダラダラ働いているせいで仕事の手が遅いという感じではなく、むしろ彼としては「根詰めて職務に精励するというよりは、いつも心の余裕を保っていられるくらいが1人の仕事量としてちょうどよいんじゃないか」というような、これはこれで確固たる信念があるようでして。

 

船乗りとして、海と潮風と歌を愛してやまないからこそ、仕事だけに集中するのではなく、それらを愉しむだけのゆとりを日々の生活の中に持たせていたい。彼の振る舞いはエルガドのテキパキとした雰囲気に程よい緩和をもたらしてくれる、調査隊の清涼剤のような存在になっているとも言えます。

 

やあ、おつかれさま。それにしてもハンターっていうのは いつも行ったり来たり、せわしないねぇ。

ときには僕のように、余裕をもった1日を過ごしてみるのも 悪くはないんじゃないかな?

そういう日々が、案外仕事の視野を広げるってものさ。その辺は船乗りだって ハンターだって、同じだと思うけどね。

(マスター★3 ピンガル)

 

心身共にギリギリの状態で仕事をし続けていては、却って視野狭窄に陥ってしまい仕事の生産性やクオリティも低くなる。この話自体はとても真っ当な意見でして、船乗りのベテランである彼なればこその悠然とした態度と言えるわけですが、ここで気になるのはそうした彼のスタイルを、船団の組織内で貫き通すことができている理由です。

 

当然ながらピンガルは自由裁量の個人事業主として働いているわけではなく、エルガドの交易船や調査船をあずかる部署の一員として働いているわけですから、彼のようなのんびりとした勤務態度というのは、その仕事の実際の成果はさておいても、上司の心象としてはあまりよろしくないというのが一般論ではあります。

 

しかしながら、ピンガルはこれまで若手の頃から積み上げてきたさまざまな現場経験から、そうした組織内での処世術に関しては一日の長があるようです。

 

フーン♪ フフ~ン♪ 今日の仕事なら、さっきちょうど スケジュール通りに終わったところさ。

コツを教えてあげようか? 「上司に伝える作業予定は、わざと長めに報告しとく」ってことだね。

その方がのんびり……いや、丁寧な仕事ができるし、もし早く終わったらほめられるだろ? いいことだらけさ。

(マスター★3イソネミクニ亜種前 ピンガル)

 

うーん……なんか聞きたかったような聞きたくなかったような……。一応この作戦(?)の建前は「丁寧に仕事をしたいから」ということのようですから、海路を利用する人の安全に関わる業務である手前、なんやかんや上司を納得させることができるというのがミソなんでしょうかね。確実性重視で作業をしてなお予定より仕事が早く終わったのなら、尚更高く評価もされるというものですし。まぁ、本人はさっそく「のんびり……」と口を滑らせて本音を呟いてしまっていますが。

 

それに加えて、ピンガルは普段はのんびり志向であるとはいえども、どんな状況でも空気を読まずにマイペースに働くというわけではなく、気を引き締めなければならない重要な局面においては、パリッとした空気に切り替えて密度の高い仕事をできる人なんですよね。

 

見てください…! ハンターさん。すべて完璧な状態ですよ。ピンガルさんが いつの間にか仕上げておいてくれたんです。

あの人、いつもあんな感じですけど やっぱり私なんかには真似できない すごい腕を持ってますよ。

…はぁ。普段からこれくらい働いてくれたら、素直に尊敬できるんですけど…。

(マスター★5シャガルマガラ前 タンコ)

 

調査隊が異変の核心に迫ろうという時期には、いつも仕事を頑張っているタンコに代わって、主力となる小型調査船の整備を非の打ちどころなく完璧にこなして見せています。船舶の整備技師としてエルガドの調査に協力する、という意義を彼が決して忘れている訳ではなく、ここぞという時にはそれに最高の形で応えていることが分かりますし、タンコはピンガルの仕事ぶりを自分とは別格のものと評価していますが、ピンガルがこうして爆発的なモチベーションを発揮した背景には、いつも(自分とは違って)誠実に仕事に精励するタンコの姿に触発されたから、というのもあるのではないかな。

 

なんだか調査隊の顔色が変わってきたかな? でも、このどこか緊迫した雰囲気… 僕も案外嫌いじゃあないんだ。

だって、僕にはほとんど関係ないんだもの。こんなに気楽なことはないよね。

おっと…もちろん仕事はこなすさ。必要なら完璧に、ね。ラ~♪ ラ・ラララァ~♪

(マスター★4 ピンガル)

 

……とまぁ、可能な限り縛られたくない本人の性分からか、エルガドの調査においてもマイペースの領分をギリギリまで多く増やそうという謎の胆力が発揮されている様子もありますが、そういう部分も含め、肩に力を入れるときと適度に抜くときとを的確にコントロールして使い分ける要領の良さと対応力が、彼の今の自分らしいスタイルを可能ならしめ、周囲にもそれを認めさせているものなのだと思います。

 

実際、何でもかんでもただ自由で自分勝手というだけでは、それが自分のポリシーであったとしても、その行動は一方的に他人の負担を増大させ、その自由を損なうとして誹りを免れないものとなります。自由な人にも自由な人なりの、周囲とのコミュニケーションや相互調整というものは存在していて、ピンガルはのびのびと働いていることを自負する一方で、そういう組織の中でちゃんとやるべき時というのをきちんと押さえてはいるのです。

 

……で、それはそれとして、そもそも普段の勤務態度も良好なうえで成果も出しているのであれば元より何の波風も立たず(船乗りだけに)、着実に仕事で皆に貢献していくことができるというのも一つの事実ではありまして。したがって後輩のタンコとしてはやはり、ピンガルの暢気なふるまいには素直に首肯しかねる部分はどうしても拭えない様子。

 

私も、ピンガルさんのように 気楽に生きられたら楽しいかもな… なんて思うことがあります。

…とは言え、すぐに我に戻って「ああはなるまい」と、より一層仕事に身が入るというものです。

そう考えると、彼も反面教師としては役に立っている…? …いや、そんな…まさか…ね。

(マスター★2アンジャナフ後 タンコ)

 

タンコは自他ともに認める謹直な人柄の人物ですが、仕事においても何においても、真面目ゆえに不器用であればこそ、自らすすんで茨の道に分け入ることになったり、何かと気苦労を引き受けることになったりして色々と悩むこともあるでしょうから、その意味では楽観的で飄々としていて、世渡り上手なピンガルのことを、ちょっと羨ましく思う部分もあるのかな。自分自身がピンガルのように気散じな振る舞いをするというのはやはり考え難いようですが、とはいえそんな自分を確かめられるのもまたピンガルの存在のお陰であるというのは、タンコにとっては少しばかり皮肉なことでもあります。

 

実際のところ、タンコはピンガルのことを(決して人として嫌っているわけではないにしても)良くない生き方の見本のように扱いつつも、一方ではピンガルの言うことにも聞くべき点があるのではないか、と感じるところもあるようです。

 

ここだけの話…、じつはピンガルさんの言うことも間違ってはいないのかも…。なんて思っちゃうこともあるんです。

自分の実直さにはかなり自信もあったんですが、日々少しずつ毒され始めたのかもしれませんね…。

それとも、今までの私の考え方が間違っていたんでしょうか…? いや、そんなはずは…。

(マスター★3イソネミクニ亜種前 タンコ)

 

う~む………真面目にやることと程よく肩の力を抜くこととは、二者択一というよりはその間のバランスが大切ですからね。その中庸というか、自分に合ったバランスを見つけることこそが難しいという話ではあるのですが、少なくともタンコが自らの進むべき道と信じている「いつも気を抜かずに真剣に仕事をする」という信条は、それ自体は職業人に必要なものであるように思います。しかしながら、彼はこの後ちょっとした噂話に巻き込まれたことがきっかけで、自分の仕事との向き合い方について深く考えていくことになります。

 

2.不穏なウワサ?

 

この前…、ウソかホントか分からない噂…いえ、限りなくウソっぽい話を聞いちゃいまして。

そこのピンガルさん、エルガドに来る前は王都で出世街道まっしぐらだったって…。この話、信じられます?

その噂が本当だとしても、問題を起こして現場作業へ降格なら…お気の毒な話です。直接尋ねるなんて、私にはできませんよ…。

(マスター★4 タンコ)

 

さて、そんなタンコに一つの転機が訪れるのは、ピンガルについての上述の噂話を耳にした時。エルガドの船乗りの仲間にはこの手の噂話が好きそうな人はいなさそうですし、王都の話が入っているところを見るに、普段王都で働いている船乗りの同僚が業務でエルガドに来た際に、タンコにもこの噂が漏れて伝わった、という感じなのかな。

 

この話が真実だと仮定して、同僚として普段のピンガルの仕事への姿勢にため息をつかされることも往々にしてある彼が、いざそれが現場仕事への降格で気落ちしているせいなのではないかという可能性が推測されると、素直に「お気の毒な話だ」と彼の気持ちを汲んで気遣うようなリアクションになるのは、タンコもお人好しな人だなぁ、と思います。で、彼もその噂の真偽は気になってはいるようで、それを直接ピンガルに訊くだけの勇気はなく、疑問がくすぶっている状態のようです。

 

タンコの奴、なんだか最近 僕への態度がよそよそしいんだよね。

こんなに波が穏やかで 潮風も心地いいっていうのに… あの妙~な視線は勘弁して欲しいなぁ。

言いたいことがあるなら、遠慮しないで言えばいいのにねえ。

(マスター★4 ピンガル)

 

当のピンガルの方は、タンコに変な目で見られることについて何の心当たりもないようで、色々勘繰られたり腫れ物に触るように接されるくらいなら直接質問して欲しい、とこちらはこちらでタンコの態度の変化が気になっている様子。そしてこの後に、タンコが耳にしたというピンガルについての噂は虚偽のものであることや、彼がエルガド勤めを選んだ理由について、ピンガル自身の口から真相が語られることとなります。

 

最近、タンコが妙な態度だった理由…やっと分かったよ。どこかで聞いた噂話のせいで、余計な気を遣ってたみたいでさ。

僕が整備班にいるのも、何かの失敗で、いやいや現場作業をさせられてる…とか思ってたらしいね。

本当、くっだらない勘違いだよ。そもそも、僕は王都で書類仕事するだけの毎日なんて、ごめんなのさ。

むしろ、自慢の歌を潮風に乗せて響かせていたいんだよね~。だから、本部での出世なんかお断りだよ。

ほら、こうやっていくつもの港を渡り歩いてこそ、本当の船乗りだろう? 僕の気持ち、アンタになら…分かるかもね。

(マスター★5シャガルマガラ前 ピンガル)

 

なんというか、徹頭徹尾ピンガルらしい確固たる行動原理だなぁ。実力は十分でも昇進を希望せず、自分の望む現場での仕事を優先するというのは、キャリアよりも自由を志向する非常に現代的な働き方にも近い描写ですね。もちろん、王都の事務作業もそれはそれで重要な部署ではあるのですが、自分の肌に合わない業務をすることになってまで昇進することを、ピンガルは選択しなかったようです。

 

件の出所不明の噂については、どうも「ピンガルは何者なのか」という疑問の上に、その話を丁稚上げた誰かしらの、彼に対する個人的な嫉みや反感が上乗せされる形で実体を持ち、まことしやかに囁かれるようになった……というような印象を受けます。

 

ピンガルのフリーダムな勤務態度は人によっては(とりわけ形式主義的な人にとっては)いわば「和を乱す」としてあまり好ましくないものに映ることは理解できなくもありませんし、そしてそんな彼が業務の実質に関しては非常に要領がよく有能であるということを知ることになれば(特に、自分よりも能力が高いということを知ったのであれば)尚更、「自分のやっている仕事は何なのだろう」という嫉妬心を刺激され、やり場のないネガティブな感情に支配されて、それを好ましくない方向に発散してしまうであろうことは想像に難くありません。

 

ピンガルが能力があるにも関わらず現場仕事に留まっているのは、そのフマジメな勤務態度のせいで問題を起こし、昇進の道を取り消されたからだ、きっとそうに違いない……」という都合のよい邪推を、信じたいものを信じるという仕方でいつしか自分自身でも真実だと思い込むようになってしまい、ふと魔が差してそれを他人にも言いふらすようになってしまった結果、巡り巡ってタンコの耳にもその噂が入る形となった。ピンガルにとっては迷惑極まりない事態ですし、そうした噂を捏造したり流布したりした人たちの行動は倫理的に正しいこととはいえませんが、その背景にはとても人間臭い感情があるのだと思うんですよね。

 

むろん、事の真相としてはピンガルにはそうした後ろめたい事情はないわけで、常に蒼い海と潮風と共にある彼の船乗り生活はまさに充実そのもの。同時に、今の現場であるエルガドの仲間への愛着もとても深い人物なんですよ。

 

最近は沈みがちだったここの雰囲気も、少しだけ明るくなってきた…かな?

治療薬の完成を待つ…。その希望を頼りに、みんなが前を向いてる感じがするね、うん。いいねぇ、エルガドはこうでなくっちゃ。

(マスター★4ライゼクス後 ピンガル)

 

ピンガルは先述の台詞では、「調査隊がピリピリしていても自分には直接関係ないから~」というような軽口をたたいている場面もありましたが、これは本心というよりは、周りの雰囲気に影響されて自分もシリアスな気持ちになるのは自分らしくない、という心境から意識的にそう振る舞っていたところもあるように思います。実際には彼はこうしてエルガドの仲間が立ち直っていく様子を「これこそが自分の好きなエルガドだ」とても好ましく思っているようですし、フィオレーネが倒れて以降のエルガドの団結した雰囲気が、後に彼をして本気の仕事をさせる(先述のシャガルマガラ前の台詞)ところに繋がっているのかもしれません。

 

さて、一方のタンコは、この件についてピンガル本人から真相を聞き、なにやら一転して少し自信を失くしている様子。

 

あの…聞きました? ピンガルさんの話…。わざわざギルドの本部勤めを蹴ってまで、エルガドでの調査に参加したっていう…。

もったいないというか、なんというか…。そもそも、仕事ができるって 一体どういうことなんでしょうね…。

私、自分の仕事ぶりと今後のことに、すっかり自信がなくなってきちゃいましたよ…。

(マスター★5シャガルマガラ前 タンコ)

 

タンコは仕事に対する自分の実直さ、誠実さにはとても自負を持っていましたが、これまで「実力のある人だとは思うんだけど普段の仕事ぶりはなぁ……」という印象を抱いてきたピンガルが、実際には思っていたよりも遥か高みにいるべきような能力を持つ人物で、自分の今の実力との間に埋めるのが容易ならざる溝を空けられたような気がすることや、そんな人物が自分の意志でわざわざ本部勤めを蹴ってエルガドに来ているということに、「仕事ができる人はどんどん出世していくもの」という素朴なキャリア観を根柢から覆され、同時にピンガルの内に秘められた信念と器量を間接的に知らされる結果になったことによって、自分の仕事ぶりに姿勢の面で幾ばくか満足していた今までの自分が、ここにきて大きく揺らいでいるようです。

 

とはいえタンコの場合、ピンガルの仕事中のリサイタルにいつも付き合わされて彼の良くも悪くも自由な勤務態度を最もよく知っている立場でありながらも、「いくら仕事ができてもマジメに仕事しないなら仕事できないのと一緒だし……」的な感じで件の噂話と同じベクトルの思考に今の今まで流れることなく、「ピンガルさんってすごい人なんだなぁ……」と真相を素直に受け止められている(大きく溝を空けられたという気持ちは伴ないながらも)というのは、自信を失った様子はありつつも、だからといってその気持ちが他人に毒づく方向に出ることなく、自分を成長させられる思考を持てているのは清廉な人だなぁ、という印象も受けるんですよね。

 

そんなタンコですが、そう遠くない内に新造の大型狩猟船の整備という一大イベントを迎えることとなり、モヤモヤした気持ちも吹き飛ぶと共に自らの目標を見つけることになります。

 

新型船の整備は、私にとってもすごくいい刺激になりましたよ。あの興奮…今でも思い出すくらいです。

なんだか、あの出来事のおかげで 人生の大きな目標ができた気がします。

そのためにも、まずは地道な努力です。日々の仕事をこなしながら もっともっと、腕を磨いていきますよ!

(マスター★6 タンコ)

 

自分の整備の腕で人の役に立つこと、大きな目標を達成するための重要なピースを自分の手で造り上げること……そうした目標を達成するための「地道な努力」というタンコらしい言葉に、一切の迷いがなくなって吹っ切れた感じがいいなぁ。そして上司のピンガルに対しても、以前と比べて少しずつ考え方が変化しています。

 

ピンガルさん、また歌ってばっかり…。でも、さすがに私もこの環境に慣れてきちゃいましたよ。

それに、ぼやいていても無意味ですから。せっかくあの人と働くなら、しっかりと技術を学ばせてもらいますよ。

もちろん、反面教師としても見習わせてもらうつもりです。仕事への姿勢は特に…ですね。

(マスター★6 タンコ)

 

ピンガルの気ままで要領の良い生き方は、良くも悪くもピンガルにしかできないことであって、自分が真似しようとしてもできるものではないし、逆にそうしたピンガルの生き方を、もう少し真面目に仕事してもらえるように変えさせよう、などと過度に干渉する必要もない。彼からは整備の技術を学び取りつつ、自分は自分の愚直な生き方を貫いていくしかない、それでよいのだ、というある種の「前向きな諦め」というべきものが感じられます。性格に関しては反面教師と言いつつも、彼なりのピンガルへのリスペクトがありますよね。

 

一方のピンガルの方も、実はそうしたタンコの生き方には一理あるというかなんというか、彼の人柄の良さを評価しているような一面もあったりします。

 

ちょっと前に比べたら 最近は調査も落ち着いてきてるし、やっといつもの僕に戻れそうだよ。

どうにも、王国の危機を救うために 協力し合うなんてのは荷が重くてね。助かったよ。アンタのおかげだ。

やっぱり僕には、こうやってのんびりと 作業をこなしていくほうが合ってるのさ。タンコに文句の一つでも言われながら、ね。

(マスター★6 ピンガル)

 

ピンガルもピンガルで、タンコに小言を時々言われることを鬱陶しいというよりは、自分の生活の光景の中に必要なものであると思っているあたり、ピンガルもまた同様に、仲間の役に立ちたいと常に誠実に仕事に取り組めるタンコのまっすぐさ、正道と言えるような生き方を、一方では「もう少し肩の力を抜いて生きた方が良い」と心配し、それを解きほぐすような素振りを見せつつも、他方ではつねに真摯な態度で業務に精励するその謹厳な姿勢を、「自分のこの性格では到底出来ないけれど、タンコのように出来たらそれはそれで望ましいことかもしれない」という感じで、少し羨ましく思うところがあるのかもしれません。

 

ふたりは互いに相手にはあって自分にはないものを、時に補い合ったり、時に反発し合ったりしながらも認め合っている、良き同僚、良き上司と部下といえる存在ですね。

 

 

3.ピンガル歌謡作品集

 

さて、話は変わりまして、ここまでの話でもいくらか触れたように、ピンガルは仕事中にしばしば歌を唄うことがあり、そのメロディーをエルガド中に響かせタンコを困らせるのが日課の一つとなっています。本項ではピンガルがそこでどんな内容の歌を口ずさんでいるのか、渚のアーティストとしてのピンガルの顔に迫っていきたいと思います。

 

ア~アァ~♪ ラ~ララ~♪ 白いフクズク~を♪ 知ってるか~い?

月夜にも~青空にも~♪ 美しく映える、白い羽根~♪

つぶら~な瞳も、小さ~なくちばしも~♪ 一目見れ~ば、誰も~がとりこ~♪

ああ、麗しい~♪ 幸運を呼ぶ~♪ 白い~フクズクよ~♪

(マスター★2 ピンガル)

 

こちらはエルガドにいる白いフクズクを題材にした歌。ゲーム内ではこの歌のメロディー等を音声で聞くことができませんから、これがどういう系統の歌なのかは定かではありませんが、エルガドは西洋的な世界観の中でも特に地中海方面の地域をモチーフとした舞台設定でしょうから、ピンガルの歌もオペラ風な感じだったりするのかな。

 

おそらくこの歌はエルガドに来たピンガルが白いフクズクの美しさからインスパイアを得て自分で作詞作曲したものと考えられますから、シンガーソングライター(?)としての才覚はなかなかのもの……かどうかは分かりませんが、少なくとも本人なりに遊び心を満載に、楽しそうに作ってはいるようです。

 

ちなみに、この歌はピンガル自身としても渾身の出来だったのか、一時期はこればかりを口ずさんでいたようで、タンコも思わず苦言を呈しています。

 

いろんな歌が聞こえてくるならまだしも、あの人、さっきからずーっとアレですよ。さすがに飽きるというものです。

いえ…、もちろん歌ってなんかいないで 仕事に集中してくれるのが 一番ではあるんですけどね…。

(マスター★2 タンコ)

 

仕事中に歌うのは勘弁して欲しい、という根本的な問題はもはやどうにもならないとタンコも半ば諦めているためか、「仕事中に歌うならせめて色々な歌を歌ってくれたほうがまだマシ」という斜め上の不満が発生する始末。「違うそうじゃない」とツッコミたくなること請け合いです。

 

一応、ピンガルの歌のレパートリーはこれ以外にも色々あるようでして、白フクズクの歌のような牧歌的なものだけではなく、これぞイタリア的という感じの(というのも少し偏見なのかもしれませんが)ロマンティックなザ・愛の歌もバッチリ聴かせてくれたりします。

 

フゥ~♪ ウ~ララ~♪ 君は言ったね~♪ さみしい夜、夢で逢えたらと~♪

悲しまないで~、愛しい人~♪ 遠い異国の~海にいようとも~♪ 僕は~君のために歌い続けよう~~♪

月影~輝~く♪ 甲板の上で~♪ そう~♪ それは~♪ 夢の中の~リサイタル~♪

(マスター★3 ピンガル)

 

この若干ディズニーミュージカルみのある砂糖たっぷりな歌詞の数々も全て、これまた彼の自作なのでしょうか。この歌の一人称は船乗りの人物のようですし、王国の船乗りに古くから伝わるという感じでもなさそうですから、やはり作詞作曲ピンガルの可能性高し。相変わらず音声は聞けませんが、きっとバラードとか、或いはアリアみたいな感じなのでしょう。たぶん。

 

エルガドは王国領内でありながら王都からは海を隔てた遠い場所であるという都合から、エルガドで仕事をしている人たちの中には、王都に自分の愛する恋人や家族を残してこちらに赴任している、という人も結構多いんですよね。エルガドの船乗りは、エルガドと王都や他の地域とを行き来し海運で手紙を運ぶという大切な役目がその業務の一つにあることもあり、離れた場所にいるそれぞれの人の想いに触れることも多いと思われますから、この歌はそのようなエルガドの土地柄や人間模様を深く反映したものであるように思います。それに作中では語られませんが、ひょっとするとピンガルにも、そういうアモーレ大切な人が王都にいるのかもしれません。

 

ちなみに、この歌の内容とまったく関係ないところで、またもやタンコがこの歌から思わぬ精神的ダメージを受けています。

 

あの人の歌…こうも毎日だと、夢にまで出てくるようになっちゃうんですよ。

昨夜の夢もまた、それはもう盛大な月の輝く甲板で開かれるリサイタルで…。ああ、思い出したくない…。

ハンターさんも、聞きすぎないように用心したほうがいいですよ。夢に見ちゃいますから

(マスター★3 タンコ)

 

お気の毒に……。ピンガルの歌がしっかりとタンコの脳裏に刻まれてしまっています。このリサイタルの歌、舞台は月の綺麗な夜の甲板のようですから、タンコの夢の中にピンガルの歌がそれほどまでに鮮明に出てきてしまった原因は、ひょっとするとピンガルが実際に夜間にこの歌を歌っていたからなのではないか? と思わないでもありません。……いや、さすがに近所迷惑か……。

 

ちなみに、ピンガルが口ずさむ歌の数々はおそらく彼自身が作詞作曲している、という話でしたが、ピンガル本人としては、意識して歌を「作っている」という感覚はないようです。

 

こうして風に吹かれていると… 僕の中から、自然と歌があふれ出てくるんだよね。

そう…きっと、この波と潮風が僕の声を使って、エルガドのみんなに話しかけたいのかもしれないね。

ほーら、だから仕事ばっかりしている場合じゃないだろう? 分かってくれた? ラ~、ラララ~~♪

(マスター★2 ピンガル)

 

そ、そうなんだ……。海や潮風が語りかけてくる……という擬人化の世界観を恥ずかしげもなくさらっと口にするあたり、この人かなりロマンチストだよなぁ……。たぶん花や動物と普通に会話できるタイプの人な気がする。並のモンスターハンターよりもよほど自然と一体化しています。彼はエルガドでは船乗りだけではなく、この青い海の代弁者としての役割もあったわけですから、これは仕事だけに集中できないのも納得……はしないかな……。

 

続いて、これまた違ったテイストの歌。

 

ウォー、ウォ~♪ ニャ~、ニャニャ~♪ そーれゆけ、トローッコ♪ 空の荷台に~、夢を乗っせ~♪

目指すは金鉱、宝の山だ~♪ 帰りはどっさり、お土産乗せて~♪ ヒ~ゲ高々に、凱旋ニャ~♪ ウォ~♪

…ふぅ、どうかな? もちろん、トロッコに乗って労働にいそしむ アイルー達を称える賛歌さ!

(マスター★5 ピンガル)

 

この短い間に牧歌、愛の歌、そして労働歌と色々なレパートリーを見せてくるな……。カタンコトンと小気味よく揺れながらエルガドの線路を走るトロッコをモチーフとしているからか、身体の弾むような楽しげなメロディーになっているのがテキストからも分かります。……で、その耳に残るリズミカルさが仇(?)となったのか、これまでピンガルの日々の潮風リサイタルの中でどうにか自我を保ってきたタンコにも、とうとうピンガルの歌の悪影響が出てしまうことに。

 

ふ~ん…♪ ふ、ふ~ん…♪ …ヒ~ゲ高々に、凱旋ニャ~♪ ウォ~…♪

……はっ! わ、私としたことが、またあの妙な「トロッコの歌」を口ずさんでしまった…!

えっと…今のはどうか、聞かなかったことにしてもらえませんか?

(マスター★5 タンコ)

 

タンコ……とうとう君もそっち側に行ってしまったか……。ピンガルが仕事中に歌うのを少なからず疎ましく思っていたはずの自分が、逆に当のピンガルにいつのまにか毒されてしまっていた事実。彼は必死にそんな自分自身を否定しようとしていますが、もう後には戻れません。せっかくここまで清純派(?)を貫いていたのに…。

 

……で、この台詞で更に気になるのは、ピンガルのトロッコの歌をタンコが「妙な」と評している点。このトロッコの歌、歌詞については「ウォ~♪」という謎の掛け声にさえ目を瞑れば、陽気で愉快な雰囲気で、あまりおかしなところがあるものではありません。それにも関わらずタンコに「妙な歌」と言われているということは、タンコ自身の主観を差し引いたとしても、やはりピンガルの歌い方はかなりクセがあるというか、正直あんまり歌が上手いわけではないのかも……と想像せざるを得ません。

 

拠点でピンガルのすぐ近くにおり、彼の歌を耳にしたらしいさすらいのアイルー・スピ―も、本当になんとも言えない感想を漏らしています。

 

たま~に聞こえてくる変な歌が、最近は妙に気になるのニャ。おいらの心を、ザワザワさせるのニャ…。

イヤな歌ってほどじゃないけど、やっぱり好きにはなれない歌なのニャ。そんな、ギリギリを攻めてる感じニャ!

なぜかクセになる歌っていうのは、案外こんな感じなのかもしれないニャ~…。

(マスター★5シャガルマガラ前 スピ―)

 

ピンガルの歌はスピー曰く「キライになれないギリギリのラインを攻めている」とのこと。やっぱり……。とはいえ、その道のプロではない人間が思いのままに歌うのであればそのぐらいの腕前が中央値でしょうし、シンプルに歌が上手いよりもむしろ「キライじゃないけど、好きになれない/好きじゃないけど、キライになれない」ぐらいの方が、万人受けはせずとも特定の層に刺さるパワーを秘めていることはあるわけですから、ここまでくると彼の絶妙な歌唱力も却って才能と言えるのかもしれません。まぁ、彼の本業は歌手ではないのですから、そもそも歌の拙巧に関わらず楽しく歌っているのならそれが一番ですし、それだけで充分という話ではあるのですが。

 

しかしながら、せっかく要領の良いピンガルですから、もう少しだけザワザワ感を抑えた歌い方ができるようになれば、同僚のタンコも多少は心安らかに仕事ができるようになるかもしれません。それ本末転倒だろとか言ってはいけない

 

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ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!