麗しのヒノエ姉さま

※注意事項※

・本記事は「モンスターハンターライズ」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。


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ライズのキャラクターの個別考察記事の最後を飾るのは、みんなのアイドルことヒノエ姉さまでございます。いつもやわらかな笑顔で里を照らしてくれるヒノエさんは、優しくて親しみやすい人柄でありながら、一方でどこか儚げで掴みどころがないというか、近そうでいて遠い不思議な感じというか、そういう印象を受けるキャラでもあるんですよね。

 

今回はそんなヒノエさんの人となりについて、詳しく掘り下げていきたいと思います。なお、ヒノエが双子の妹のミノトについて言及している台詞、およびミノトがヒノエのことについて言及している台詞に関しては、本記事でも一部取りあげますが、大部分はミノトの方の記事で紹介しております。姉妹の関係性についてはそちらの方で色々と深堀りして考察していますので、ぜひ併せてご覧下さい。本記事はあくまで、ヒノエ個人の考察がメインとなります。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.カムラの里の太陽

 

 

ハンターノートやロード画面などで見られるキャラクタープロフィールでもたびたび紹介されているように、彼女は「カムラの里の太陽」のような存在として、里の住民たちからも慕われています。ストーリー序盤の時期から、ヒノエからは特に前向きな台詞を聴くことができるんですよね。

 

○○さんは、カムラの里の名物って何だと思いますか?

目を引くのは、たたら場ですね。それに、美しい景色。食べ物では、お米やお魚、うさ団子に飴…。えっと、あとは…。

…百竜夜行の影響で観光のお客様が減ってしまいましたから、名物を洗い出してお客様を呼び戻す作戦を練っていたんです。

もちろん、百竜夜行が終わったあとの話ですよ? 里の名物はすべて守り抜いて、すぐに観光業を再開しないといけません。

(里☆2 ヒノエ)

 

この台詞は、メタ的なところでいえばプレイヤーが話しかける機会の多いヒノエから、カムラの里という場所の世界観を説明するという意味合いもあるものですが、ひとりの登場人物の会話という点でいえば、ヒノエはこの段階から「百竜夜行が終わった後のこと」、つまり今回の百竜夜行は絶対に乗り切れるという前提で、その更に未来の話をしているんですね。

 

こういう話をしてくれる人がいると、百竜夜行の対処のことで頭が一杯なところから、一歩引いて心の余裕が取り戻せるようになりますし、あるいは「百竜夜行が終わったら」という言葉を口に出すことで、それがことだまのように働いて、今回の百竜夜行の防衛が成功に終わることを現実たらしめてくれるのではないか……そんな希望さえ湧いてきます。いずれにしても、百竜夜行との戦いを見据えて不安な気持ちを抱いているところに背中をそっと押してくれるような言葉で、筆者がヒノエに特に好印象を抱いたのはこの台詞がきっかけだったなぁと思います。

 

初めての百竜夜行に向かう直前にも、こんな一言をかけてくれます。

 

さて、○○さん。いよいよ百竜夜行ですね。私も、砦の周辺を里守として防衛します。

○○さんは、砦の中での防衛ということで…私の弓の腕前が披露できず、まことに残念です。

それでは、百竜夜行の撃退後にお会いしましょうね。

(里☆3百竜前 ヒノエ)

 

「撃退後にお会いしましょう」と、やはりヒノエは「今回の百竜夜行は絶対に撃退できる」という確信に満ちた口ぶりです。正式なハンターとしての経験はまだ浅いながら、ヒノエ達とは離れた場所(砦の中)で防衛の要を務めることになる主人公の不安を汲み取って、こうした言葉をかけてくれているのかもしれません。

 

また、ここでの台詞にあるように、ヒノエの得意武器は弓であり、その腕前は「ハンターになればあっという間に上位になってしまうほど」のものであると言われています。いつもニコニコ穏やかなのに、里守として武器を取るとめっちゃくちゃ強いという二面性も、彼女がみんなに不思議な安心感をあたえる一因なのかもしれません。

 

ヒノエは里の子どもや若者たちからもお姉さん的なポジションとして慕われていて、いつも座っている受付の長椅子のところでコミツ(およびそのコミツについてきたセイハク)と一緒におやつを食べている光景がよく見られますが、それ以外にも、里ストーリーでフゲンから問いを与えられて悩んでいるヨモギやイオリが、ヒノエを頼って彼女のもとを訪れるシーンがあります。

 

イオリくんとヨモギちゃんに、「モンスターを狩る以外で、カムラの里を守る方法って何?」と聞かれました。

答えを言ってしまっては 問いを与えた里長の意に反しますので…

「モンスターが現れても、私が受付をしないと○○さんは狩猟に行けないわよね?」と伝えました。

…すると、ふたりともますますこんがらがってしまった様子…。あまり助言にならなかったようです。うふふ。

(里☆3百竜後 ヒノエ)

 

ここはさすがの大人の対応。フゲンの意図を汲み、答えを直接教えるのではなく、ヒントを出してあげることにしたようです。ヒノエの返事を聞いて「うーん……?」となっている2人がかわいいですね。

百竜夜行が来るという報せが入った直後には、里長のフゲンと一緒に子どもたちのところを回って声をかけ、指示を出すという役回りにもなっていました。

 

百竜夜行が来たって、コミツはへこたれないよ。

だってコミツには、「このりんご飴やさんをまもる」っていうだいじな "にんむ" があるんだから。

この "にんむ" は、里長とヒノエさんから、コミツにあたえたれらんだよ。へへ、すごいでしょ。

でも、「誰かが逃げろって言ったら、とにかくいっしょうけんめい逃げる」…っていうのも、"にんむ" なの。

だからコミツは、いつでも逃げられるように かけっこの練習をがんばってるよ。

(里☆1 コミツ)

 

里の活気の中心にはヒノエがいる、というのは里の外から来た人たちにも認識されているようであり、交易商のロンディーネさんからも次のようなコメントがあります。

 

(集会所☆6百竜後)

ヒノエの明るく社交的とも言えるような性格は、クールでやや内向的な性格である妹のミノトとはちょうど正反対。じつは彼女たちの幼少期においては、激しく人見知りをする正確だったミノトが里のみんなと仲良くなるのを、ヒノエが手助けするという時期があったようです。

 

ミノトは、小さな頃はそれはもうヒノエにベッタリで、他の人とは喋ろうともしなかったでゲコ。

でもまあ、里のみんなも優しいし、ヒノエもいろいろがんばったから、今じゃミノトは誰とでも仲良しでゲコ。

…とはいえ、ヒノエにベッタリなのは 今でもあんまり変わってないかもしれんでゲコな。

(集会所☆2 ゴコク)

 

ゴコク曰く「ヒノエもいろいろがんばった」ということですが、おそらくミノトが里の住民たちとお話しをするときに、ヒノエが間に入って楽しい雰囲気を作ってあげることで、ミノトも心を開いて打ち解けられるようになる……みたいなことを、ヒノエは繰り返し地道にやっていたのでしょうね。

 

それが小さいころの話ということですから、彼女の生来の性格なのか、あるいは従妹をフォローするために意識的にそういうポジションになろうとしていたのかはわかりませんが、ヒノエは昔からそういう感じで、周りの人たちを明るくしようと振る舞うような気質だったようです。その幼少期からの行動の延長線上に、今の「里のみんなを照らす存在」としてのヒノエもあるのかもしれません。

 

2.イブシマキヒコとの共鳴

 

さて、そんなヒノエさんですが、ライズ本編では集会所ストーリー☆4の百竜夜行の際にイブシマキヒコと共鳴して倒れてしまい、一時は食事もとれないほど体調を崩してしまうことになります。ぐったりとしたままミノトに担がれて里まで帰ってきたヒノエを見て、里の住民たちも大きく動揺することになります。

 

ヒノエさん、元気を取り戻したみたいで、ホントによかったよ~。最初はもう、びっくりしちゃったもん。

だってさ、ミノトさんが泣きながらヒノエさんを抱えてきて帰ってきて…。ヒノエさんは顔色が真っ青だし…。

里のみんなも静まりかえっちゃって…。……あんなの、イヤ。二度とイヤ。思い出すのもイヤ。

○○さん! ヒノエさんを苦しめた古龍、絶対にやっつけてね!

(集会所☆4 ヨモギ

 

このシーンがカムラの里の人たちにとって衝撃的である理由は、よくわからん古龍が出た、という驚きもさることながら、今回の百竜夜行でここまでずっと里や住民たちに被害が出ることもなく善戦を重ねてきたカムラの里で、初めて大きな負傷(といってもモンスターの攻撃を受けた外傷というわけではなく、あくまでも共鳴による急激な体調不良ではあるのですが)を受けた人が出てしまったからなんですよね。しかも、ぐったりとしたヒノエをミノトが泣きながらおぶっているという状況だけ見れば、何か生命の危機にかかわるようなことが起きたのではないかと不安になるのも無理はありません。

 

更に、これがヒノエだったということも大きな要因でしょう。いつもカムラの里を温かく照らしてくれる太陽のような存在であるヒノエは、里の住民の精神的支柱といっても過言ではありません。ヒノエが元気に笑ってくれていること、その優しさでみんなを明るくしてくれること、それが自然と周りの人の活力にも繋がって、里全体が前向きな気分になることができる――彼女がそんな存在であるからこそ、マキヒコとの共鳴でヒノエが倒れた、ヒノエの光が弱くなってしまったという出来事がカムラの里の住民に与えた喪失感は、特に深刻なものとなったように思います。

 

この辺りの住民たちの心情は、センナリの次の台詞もそれをよく代弁してくれていると思います。

 

龍と共鳴したヒノエさん、とてもつらそうで、見ているこっちも気が気じゃなかったよ。

いつも俺たちが用意した飯を笑顔でバクバク食べてくれてたのに、のどを通らない状態がしばらく続いて…。

当たり前だった日常が壊れることって こんなにもキツイんだな。

まあ、今はだいぶ回復したみたいで、いつもどおりの大食いに戻ってくれてホッとしてるけど…。

…ちくしょう。あんな思いは、二度とゴメンだよ。

(集会所☆4 センナリ)

 

で、一時はどうなることかという感じだったヒノエは、ひとまずいつも通りの食事ができるまでには快復します。

 

○○さん、すみません。突然あのような姿を見せてしまって… さぞかし驚かれたでしょう?

ミノトとの共鳴は慣れたものでしたが、龍との共鳴など初めてだったものですから 負担に体が耐えかねたようです。

ただ、もうすっかり回復しましたので どうかご心配なく。いつも通り、うさ団子もパクパク食べちゃってますから。うふふ。

(集会所☆4 ヒノエ)

 

「ヒノエが元気になってよかった」と皆が口を揃えて喜んでいるところを見ると、カムラの里あったけぇな……としみじみ思うのですが、一方で「すっかり回復したのでご心配なく」というヒノエの言葉とは裏腹に、やはり体調は万全とはいかない様子。倒れたヒノエの看病をしていたお医者のゼンチは、「ヒノエは本当はしんどいはずだ」と指摘しています。

 

ヒノエの、龍との共鳴は… ワシにはどうすることもできんかったニャ。

できたのは、せいぜい気休め程度の薬を飲ませるくらいだニャ。

本人は、たいしたことないと言ってはおるが、そんなことはないニャ。しんどいはずだニャ。

名医名医と言われてはおるが、どうしようもないことはあるニャ。まったく、医者なんて非力なもんだニャ…。

(集会所☆4 ゼンチ)

 

イブシマキヒコと共鳴した直後の状態に比べればだいぶ体調は良くなっていますから、「回復した」という言葉自体は嘘ではないのですが、ゼンチの言うように本当は大したことあるという話となると、ヒノエ自身が共鳴の辛さを周囲にあまり見せないように強がっているというか我慢しているというか、どこかつとめて明るく振る舞っている部分がある、ということになるんですよね。

 

そのことに気が付いている台詞があるのは、住民の中ではヒノエの主治医であるゼンチのみ。まあ、台詞がないだけでおそらく妹のミノトなどは気づいていないはずがないと思いますが、彼女は彼女でまた別の問題(自分がとっさにヒノエを助けられなかったこと、姉と比べて自分が無力であるという悩み)にすっかり火が付いており、集会所の面々の台詞も半分くらいはミノトの話になっているので、ゲーム内ではそういう旨の話を聞くことはできないという感じ。

 

ゼンチ以外でヒノエの現在の体調に気がついている人がいないのは、本当は今でもちょっとしんどいということをヒノエ自身が笑って隠しているからというのもありますが、一方では「ヒノエにはいつものように元気で笑っていてほしい」という願望を、住民たちが無意識のうちに現在のヒノエに投影してしまっているという側面は否めないのかもしれません。

 

つらいときに自分の本心を隠したがるという彼女の行動はこれだけに留まらず、ストーリーが進んでイブシマキヒコ百竜夜行に挑む前や、最後の決戦前の台詞でも、自分の感じている苦しさや不安をまっすぐに言ってこないところがあります。

 

○○さん、いよいよですね! 風神龍イブシマキヒコとの大勝負!

共鳴によって少々体調が優れませんが、○○さんがイブシマキヒコを退治してくれれば、すぐに治ります。

ですから、どうか負けないで…。このかわいそうなヒノエを助けてくださいね? うふふ。

(集会所☆6百竜前 ヒノエ)

 

イブシマキヒコとナルハタタヒメは邂逅を果たし、この世を子々孫々で埋め尽くそうとしています。

危機的状況ではありますが、里を幾度となく救ったあなた様の実力であれば、難なく討伐できると思います。

……などと言いながら、体の震えが止まらず困っています。あなた様のこととなると、気が小さくなってしまうのです。うふふ。

さあ、○○さん。ヒノエが珍しく怯えていますよ。早く里を救って、私を安心させてくださいね。

(淵源討伐前 ヒノエ)

 

心身が弱っている自分のことを自分で茶化して笑ってみせるという形で、「イブシマキヒコの再接近でまたじわじわと共鳴の苦痛に見舞われているヒノエ」「主人公が無事に帰ってこられるか不安で仕方がないという気持ちのヒノエ」という姿を、彼女は主人公に見せないようにしています。

 

特にマキヒコと戦う直前のヒノエについては、ミノトやロンディーネからもそれぞれ次のようなコメントがあり、ヒノエが自分のつらさを隠しつつ、砦に向かう主人公や里守の皆を後ろ向きな気持ちにさせまいとして、むしろ元気づけようとすらして振る舞っていることが明白となっています。

 

(集会所☆6百竜前 ミノト)

 

私は立場上、母国では常に女王陛下の顔色を見ていてね。体調が良いのか悪いのか、そういったことには敏感なのだ。

その私から見たところ… ヒノエ嬢は明るく振る舞っているが、体調の方はあまりよろしくない。

彼女を救えるか否かは、イブシマキヒコと対峙する貴殿にかかっている。 …どうか、ご無事で。

(集会所☆6百竜前 ロンディーネ)

 

いずれのシーンでも、ヒノエとしては「自分には里のみんなを明るくするというポリシーがあるから、つらそうな姿を見せたりネガティブなことを言ったりして、主人公や里のみんなに逆に心配をかけるような自分を許容することはできない」という心境なのでしょう。先ほどの集会所☆4の時の、マキヒコとの共鳴で体調を崩していた後の台詞も、皆を安心させて早くいつもの穏やかなカムラの里を取り戻すために、体調が万全ではなくても明るく振る舞っていた…ということになるのかな。

 

むしろ、「かわいそうなヒノエを助けてくださいね」と敢えてわかりやすくヒロインぶって、おどけてみせている台詞などは、自分が弱っているところをなかなか他人に見せたがらない彼女が、下手なりに精一杯甘えてみせているつもりなのかもしれません。かわいい…。

 

不安がっている本心を覗いてみたくても、「うふふ」という可憐な笑顔のベールによって拒まれてしまって……でも、それでいて一方では、「不安でひざを抱えている本当のヒノエ」のことを見つけてくださいね?」とも言われているような…。筆者がヒノエに対してぼんやりと感じていた、「近いのにどこか遠くにいる感じ」という印象も、おそらくこういうところに起因するものであるように思います。

 

さらに、イブシマキヒコ百竜夜行でマキヒコが降臨してきたときにも、次のような台詞があります。2ndデータで確認したところ、どうやらこのタイミングの台詞は2種類があるみたいなので、それらをまとめて見ていきましょう。また、この時の彼女たちはテキストの台詞とは別にボイスの台詞もあるので、これも併記しておきます。

 

【ボイス】

ヒノエ:ミノト……!

ミノト:姉さま……!

(集会所☆6百竜夜行「風神」クエスト中 ヒノエ、ミノト パターン1)

※「<<弾丸節約>>が発動しました」は無関係

 

【ボイス】

ヒノエ:早く……終わって……!

ミノト:姉さまを開放しなさい!

(集会所☆6百竜夜行「風神」クエスト中 ヒノエ、ミノト パターン2)

 

マキヒコが近づいてきたことで共鳴により体調がひどく悪化しているヒノエですが、ミノトがそんなヒノエの元に駆け付けると、ヒノエは「自分は大丈夫だから」と、ミノトを引き返させようとするんですね。このシーンがねー、ミノトの記事でも話したような覚えがありますが、ヒノエの気持ちとミノトの気持ちが絶妙に噛み合ってない感じでめっちゃくちゃ良いんですわ。

 

ミノトはその優しくて生真面目な性格のゆえに、マキヒコとヒノエが共鳴してしまった日以来、「自分はいざというときに大好きな姉の役に立てない非力な人間だ」と自分自身を呪っていました。そんなミノトが一番恐れていることは、やはりヒノエに自分の助けを拒絶されることだと思うんですよ。ヒノエ姉さまが共鳴で苦しんでいるまさに今こそ、自分がそばにいて支えたい……というのは、ミノトにとっては自分の存在の底から湧き出るような願いであるはずなんです。

 

で、一方のヒノエも痛切な声で「ミノト……!」と妹の名前を呼んでおりまして。マキヒコが至近距離に来てつらさMAX状態のヒノエの気持ちになって考えてみれば、やはり彼女は本心では共鳴の苦しさが少しでも和らぐように、ミノトにそばにいて欲しいと思っているんじゃないのかな…。それにもかかわらず、自分の元にやってきたミノトを「自分のことはいいから」と前線の方に返そうとしてしまうんですね。

 

ミノトにあまり心配をかけたくなかったのでしょうし、自分がミノトを引き留めるようなことがあれば、「ヒノエが今かなりピンチらしい」と里守の皆にも不安を与えることになってしまいます。ミノトも里守の中では特に実力のあるランス使いですから、自分のせいで前線の戦力低下を招いてしまうわけにもいかない。おそらくヒノエはそう考えて、「そばにいたい」というミノトの懇願を断ったのだと思います(台詞ではそこまでしか描かれていないので、最終的にミノトがヒノエのそばに居続けたのかどうかは不明となっています)。

 

いやーもうね、ミノトの記事で話したことも含めてなんですけど、お互いに相手のことを本当に大切に思っていて大好きなのに、それぞれの気持ちが絶妙に噛み合ってないっていうのがもうめっちゃくちゃ切ないというかもどかしいというか……いや~良い姉妹百合やなぁという感じ(オタクですいません…)。

 

まあ私の趣味の話はさておきこんな感じでヒノエはどうも甘え下手というか、弱みを他人に見せないようにするところがありまして。その理由として考えられるのは、この辺りは筆者の推測にはなりますが、おそらくヒノエ本人も、「自分の使命は里を明るく照らし続けることである」ということを、客観的に理解していてやっている部分はあると思うんですよね。これまで見てきたような前向きな台詞から見てもそうですし、自分の弱さを見せることで里の皆に心配をかけてしまうことを避けている、あるいは何となく恐れているような振る舞いを見てもそう思います。

 

で、仮に彼女にそういう自己認識があるとして、どこがその起点になっているのかという話なのですが、先ほどお話しした幼少期のミノトのことの他には、やはり50年前の百竜夜行のこともありそうなんですよね。ヒノエやミノトは長命な種族である竜人族ですが、以前の百竜夜行の際にもヒノエは活躍していたようでして。

 

活躍といっても彼女がハンターや里守としてモンスターを狩ったという意味ではなく、フゲンの著した百竜夜行の手記にある「里の巫女」と呼ばれている人物が、おそらくヒノエとミノトのことであるように推測される、という話です(単に彼女らの服装が巫女っぽいというだけではなく、手記の文章で言われている「唄」というのが「カムラ祓え歌」「勇まし狩人」などを指しているのではないかという観点からも、その可能性が高いと考えられます)。

 

 

ご存じの通り、その際の百竜夜行においてはカムラの里は壊滅寸前まで追い込まれ、そこから復興への道のりを歩んできました。ヒノエは「里の巫女」という重要な役目を持った存在としてこの百竜夜行の大敗を経験し、そして長命な竜人族として、この悲劇の記憶を、里の世代交代をまたいで次の数十年後の百竜夜行まで持っていくことになる人物でもあります。

 

そんなヒノエだからこそ、里全体が大きな喪失感や悲しみから立ち上がっていくために、そしてまたようやく復興したカムラの里の穏やかで幸せな空気を守っていくために、彼女は「自分が里を明るく照らすこと」という役割を、意識的にせよ無意識的にせよ自分に課し、これを担い続けてきたのではないでしょうか。

 

総括すると、「カムラの里の太陽」としてのヒノエの存在は、彼女の生来の性格の上に、「引っ込み思案なミノトの姉として妹をフォローする」「カムラの里の明るさを守っていく」という、彼女が自分自身に与えてきた役目が積み重なってきたことに由来するものなのではないか、という風に筆者は考えています。

 

また、プロフィールにもあった通り、ヒノエは主人公がハンター修行中の時から献身的に支えてくれていた幼馴染であり、ミノトの台詞にも「ヒノエ姉さまが特別気にかけている」という旨の発言があるように、主人公のハンターとしての道のりをずっと見守り続けてくれていた人物でもあるのですが、そんな主人公は「雷神」の討伐前に、ヒノエからこんなことを言われるんですよね。

 

○○さん、ナルハタタヒメとの大一番、いよいよですね。

あなた様がハンターになった日… 一緒にお買い物をしたことが さきほどのことのように思い出されます。

いつの間にか上位ハンターになって… 里の危機を幾度となく救って… いよいよ、百竜夜行の元凶に挑む。

うふふ。ヒノエは胸がいっぱいです。まこと炎の如く、カムラの里を眩しく照らす存在になられましたね。

どうか、お気を付けて。安寧の焔が護るこの里で、桜舞うこの里で、あなた様のご帰還をお待ちしております。

(雷神討伐前 ヒノエ)

 

この台詞、これまでずっと「カムラの里を照らす存在」であるところヒノエから、主人公が「カムラの里を照らす存在だ」と言われるというところが非常に大事なポイントでして。「カムラの里の太陽」としていつも皆を元気づけてきたヒノエが――というよりはむしろ、そういうポジションを今までずっとすすんで背負い、貫き通してきたヒノエだからこそ、彼女もまた自分自身にとっての太陽、カムラの里の新たな太陽を、心のどこかで待ち望んでいたのではないか……そう思わせるような台詞なんですよね。

 

ヒノエが見習い時代から主人公に特別入れ込んでいたのも、勘の鋭い彼女のことですから、主人公はおそらく次の百竜夜行で重要な役割を背負うことになるであろうことを、なんとなく予感していたからなのかもしれません。主人公のために前々からこっそりお金を溜めて、武具やらアイテムやらを揃えたりもしてくれていたくらいですし(妹のミノトにはバッチリ見抜かれていますが)。

 

いずれにしても、ヒノエさんが心から笑える日が来たことが私は嬉しいよ……うんうん。ヒノエさんの明るさは本人の素のものではあれど、一方で本編では自分が無理をしているところをあまり見せないよう意識的にやっているところもあり、百竜夜行のこと、マキヒコの共鳴のことでかなり精神的に頑張ってきたと思うので、これからも今までのように里の太陽でいて欲しいという思いもありつつ、少しでも彼女の肩の荷が下りていたらいいなーとも思っています。

 

また、ヒノエ・ミノト姉妹は外見こそ若い女性という感じですが、長命の竜人族ゆえ実際はカムラの里にはかなり昔からいる人物だと思いますし、2人が小さい頃の話、本編より以前のカムラの里の話なんかも、そのうちゆっくりと聞けたらいいですね。

 

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そんな感じで、本記事はこの辺りで〆としたいと思います。サンブレイクでは、ヒノエは妹のミノトと共に盟友としての参戦が早くも公式発表されており、これまでは百竜夜行の召喚でしか見ることができなかった、姉妹の息の合った武器さばきをクエストで拝見することができます。筆者個人としては、2人と一緒に狩るというより2人のことを壁になって見守りたいくらいなのですが……まあそれはともかく、2人の弓とランスの腕前や、狩猟中の専用の会話などにも大いに期待したいところですね。

 

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました! また別の記事でお会いしましょう!