カムラの里の甘酸っぱいお話 その3

※注意事項※

・本記事は「モンスターハンターライズ」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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カムラの里のオトモ広場に停泊し、交易商として色々協力してくれるロンディーネ一行。すでに多くの方がご存知のように、彼女たちがカムラの里に来ている本当の目的は「カムラの里の加工職人に交渉し、自国に技術を提供してもらうこと」、すなわち我らが加工屋のハモンさんにその交渉を行うことにあります。

 

で、3人の台詞を見ていくと、彼女たちの中でも特にチーニョが加工屋への情報収集を行う役回りのようで、ハモンとの絡みが非常に多いキャラとなっております。そして、ハモンとの交流を重ねていくうちに、チーニョはハモンのことを慕うようになっていくのですが、その過程がめっちゃ胸キュン(死語)な感じになっておりまして、本記事ではその2人のストーリーを追って行きたいと思います。

 

 

ふむ、じつに風光明媚。このカムラの里は、我が国と違って自然が多いですニャ。癒されますニャ。
聞けば、この里はたたら製鉄が有名とのこと…。

どなたか、たたら製鉄には詳しいでしょうかニャ? いろいろと、おはなしをうかがいたいですニャ。

(ハンター登録後 チーニョ)

 

チーニョとハモンの出会いは、ゲームスタート直後、主人公にカムラの里の加工屋について探りを入れてくるこの台詞から始まります。主人公は例によって無言ですが、おそらくここで加工屋の皆のことを聞いたのか、チーニョはこの後カムラの里の技術で精製した鉄をさっそく見せてもらえることになります。

 

このカムラの里で造られた鉄を 見せていただきましたニャ。いやはや、じつに美しいですニャ。

わたくし、ロンディーネ様と共に各地を回ってきましたが、ここまで良質な鉄は初めて見ましたニャ。

この技術こそ、我が国に欲しい技術…。

(集会所☆1 チーニョ)

 

チーニョはまだこの時点では、ハモンと直接会って話してはいないようです。ハモンも百竜夜行の準備で多忙を極めていますから、おそらくチーニョはフクラやミハバあたりから、あるいは加工屋ではなくたたら場の中で仕事をしている人たちから、色々と見せてもらったという感じなのでしょう。

 

「ここまで良質な鉄は今まで行った他の所では見たことがない」と言っているところからして、チーニョたちは他の地方の拠点に出向いた時にも、同様に加工の技術なり人材なりを探していたようですね。ロンディーネ達がそうした任務にあたっているのも、恐らくはエルガドの狩猟や調査の準備の充実が目標でしょうから、カムラの里に限らず、加工技術が有名な他の拠点の製鉄所も色々と見て回っていたのでしょう。後にエルガドで武具の加工を担ってくれることになるミレーネの協力を得たのも、その時の縁だったのかもしれません。

 

で、チーニョが実際にハモン本人に話を聞きにいこうとするのは、集会所☆4のヌシアオアシラ百竜夜行の後になります。

 

カムラの里の、優れた製鉄技術…。それの中心にいるのが、加工屋のハモン殿…ということで。
ちょっとお話しを聞きに行きましたニャ。

しかし…その…。眼光鋭く、スキもなく…。

それなりに鍛えているつもりのわたくしが、震え上がってしまって… 話しかけられませんでしたニャ。

あのお方は… 本当にただの加工屋ですかニャ? こ、怖すぎですニャ。

(集会所☆4 チーニョ)

 

ハモンはロンディーネに対しては以前からその誠実な態度を称賛していましたから、その従者のチーニョやカナリーノに対しても、同様に好印象を抱いているでしょう。したがって、彼の目つきが鋭かったというのはおそらく、仕事に集中していたからか、あるいは単に不器用で人当たりがあまり良くないという彼の元々の性分のせいであり、別にチーニョのことを不愉快に感じて、取り合う気がなかったからとかではないように思われます。

 

が、そう言えるのはあくまでもハモンのことをよく知っている人目線だからであり、彼のことをあまり知らない人にとっては、初対面で委縮してしまうのも無理もない話。

 

しかしながら、ハモンの目つきの鋭さは武具に対する熱意と真摯さの表れであること、そして彼が心からカムラの里を愛していることを彼の行動や生き方から感じ取ってゆく中で、チーニョの心境にも変化が訪れます。

 

この里の製鉄技術について知るべく、日々、加工屋のハモン殿を遠目から観察しておりますニャ。

…あの、武具に向き合う目の鋭さ。経験に裏打ちされた加工の腕前。揺るぎなき信念を感じますニャ…。

ハモン殿は、武具を、ハンターを、そしてこの里を、まことに愛しておられるのですニャ…。

……はて?

わたくしの、この胸のトキメキはどうしたことでしょう。こんな気持ちは、初めてですニャ…。

(集会所☆6 チーニョ)

 

第一印象が割と悪い感じだっただけに意外といえば意外な展開ではありますが、「第一印象が最悪だったのに、時間をかけて人となりを知っていくにつれてどんどん好きになっていってしまう」という、なんというかこれはこれで少女漫画の王道の一つって感じですよね。最初は「何よアイツ……」って思っていたのに、だんだんこう徐々に徐々に惹かれていくようになり、ある時それを急に意識するようになって自分でも困惑してしまう……みたいな。

 

続くマキヒコ百竜夜行の直前では、チーニョは砦に赴くハモンの身を案じています。

 

わたくしは、加工屋のハモン殿の武具に向き合う姿勢に、心の底から感銘を受けましたニャ。

そのハモン殿…。こたびの百竜夜行においても、里守として砦へおもむかれるとのこと。

ああ、ハモン殿…。チーニョは、あなた様のご無事をお祈りしておりますニャ…。

(集会所☆6百竜前 チーニョ)

 

この時、チーニョはハモンに狩猟の助けになるようアイテムを渡していたらしく、遠征から帰ってきた後、ハモンは直接チーニョの元にお礼を言いに行きます。

 

じつは、わたくし…。百竜夜行で砦へ向かわれるハモン殿に、心ばかりのアイテムを渡しましたのニャ。

すると、帰還されたハモン殿がわたくしのところまで訪ねてくださって…。

「そなたがくれたアイテムのおかげで 何度も危機を救われた。礼を言う」…と、おっしゃってくださったのです。

ああ…。ハモン殿はどこまでも優しく、強いお方…!

(集会所☆6百竜後 チーニョ)

 

ハモンのこの行動は、ハモンが実は非常に物腰柔らかで優しい人物であることを示すものであるだけではなく、里ストーリーでマガイマガドを百竜夜行から分断するからくりを作っていた際に、からくりの運搬を手伝ってくれたコミツや、食事を差し入れてくれたスズカリ達にお礼を伝えたのと同じ理由で行ったものでもあると言えるでしょう。

 

すなわち、カムラの里が大事にしている「役割」という考え方――各人が自分に出来ることを為すことで、それが連綿と繋がって大きな実を結ぶということ、つまり個人の成果はその人の独力によるものではなく、それを支える周囲の人たちの協力があってこそなしえるものであるということ―—を、ハモンは「自分を助けてくれた人たちに感謝を言葉にして伝える」という行動において、率先して具現化しているということです。

 

そして、それを里の人たちのみならず、元々里の住民ではなく外からの来訪者であり、遠征前に心ばかりのアイテムを渡しただけの自分にも、わざわざお礼を伝えに足を運んでくれたハモンの心遣いに、チーニョは感激してやまない様子です。

 

その後、ナルハタタヒメの存在が確認されてからは、百竜夜行の解決がハモンの積年の悲願であるということにチーニョは思いを馳せており、ハモンのためにどうか古龍討伐を成し遂げてほしい、と主人公の武運を祈ってくれます。

 

「カムラの民は家族。一心同体だ」

うう、さすがはハモン殿ですニャ。力強く、それでいて愛に満ちたお言葉に、わたくしは涙が止まりませんニャ。

貴殿。ハモン殿の言葉に応えるためにも、みごと討伐を成し遂げてくださいニャ。

(雷神討伐前 チーニョ)

 

……と、こんな感じですっかりハモンに夢中なチーニョではありますが、元々が「カムラの里の職人に技術を提供してもらう」という交渉の為に来ているからには、やはり自らの身分が偽りであることをいつかはハモンに打ち明けなければなりません。雷神討伐後、つまりロンディーネが主人公に本当の事を教えてくれるタイミングと前後して、チーニョもハモンに自分たちの秘密を打ち明けることになります。

 

正体を明かせば「自分たちをだましていたのか」と嫌悪される可能性は大いにあるものの、だからといってハモンにずっと嘘をついたままというのも心苦しい。不安に揺れたままのチーニョの告白に、ハモンはどう応えたかといいますと……。

 

ロンディーネ様から聞いたかもしれニャいですが…じつは、わたくしたちは交易商ではないのですニャ。

カムラの里の鍛冶職人を我が国に呼んで、技術を提供してもらう…。そのために来たのですニャ。

わたくし、ハモン殿を偽り続けることに耐えられなくなり、先日、そのことを打ち明けましたニャ。

嫌われてしまうことも覚悟していましたが、ハモン殿は「よく正直に話してくれた」と うさ団子をごちそうしてくれましたニャ。

とってもおいしかったけど…涙の味でちょっとだけ、しょっぱかったですニャ。エヘヘ…。

(雷神討伐後 チーニョ)

 

……もうね、ハモンさんのイケメンが爆発しています。ハモンとしてみれば、里の技術を提供してもらうために外国から訪れた使者、という相手に対しては、複雑な気持ちといいますか、自分が今まで一所懸命に積み上げてきたものを明け渡すことを自分自身の心が納得するかどうか、あるいはロンディーネ達が自らの技術を提供するに値する相手なのかどうか等、色々と見極めなければならないような心境にあったでしょうし、チーニョ個人に対しては好感を抱いてはいても、それが直ちに全肯定となるわけではなく、少なからず迷いもあったかもしれません。

 

それでも、ハモンがチーニョの告白に対して動じることなく、自らの身分を正直に明かしてくれたことを称賛し、うさ団子をごちそうするという態度でもって受容したのは(いちおう、百竜夜行の方は未だ予断を許さない状況ですから、ハモンはここですぐに技術の提供を正式に許可したわけではないのですが)、彼が以前ロンディーネについて語っていたように、里の職人や技術にしっかりと敬意を払う姿勢や、カムラの里の百竜夜行にも、私利私欲や打算からではなく本心から協力と応援をしてくれたことなど、その辺りの立ち振る舞いに彼が感銘を受けたからなのでしょう。

 

彼自身があまり言葉で多くを語るタイプではないこともあり、チーニョを食事に誘ってご馳走をするという形でハモンが自らの気持ちを示したことは、不安で胸が今にも張り裂けそうだったチーニョの心を深く安堵させてくれたもののように思います。

 

チーニョが本当のことを話すまでは、チーニョとハモンの絡みは百竜夜行の時にアイテムを渡してお礼を言われたエピソード以外には、チーニョが一人でハモンの事を想っているという感じでチーニョからハモンの一方通行という関係だったのですが、この一件以来2人の仲は一層親密になったようで、ハモンの方からチーニョの元へ足を運ぶようになります。

 

近頃、加工屋のハモン殿が、わたくしを訪ねてきてくださるのですニャ。

なんでも、武具の装飾のヒントに、わたくしの描く絵を見たいのだ、と…。

…ああ、幸せですニャ。ハモン殿と過ごすひととき…。何ものにも代えがたい時間ですニャ。

(ドス古龍討伐時 チーニョ)

 

敬愛するハモンとの蜜月。ハモンの方は、チーニョが彼を慕っているのと同じ気持ちを彼がチーニョに抱いているという訳ではないにせよ、チーニョに人として好意を抱き、カムラの里の人たちに時折見せるのと同じような温かな振る舞い、「探求心と創作欲に溢れる加工屋」という、割と彼の素に近いであろう姿をチーニョの前でも見せていることは確かであるように思います。

 

そして、百竜ノ淵源討伐後の宴会では、チーニョはハモンの隣の席で一緒にお酒を飲んでいたみたいです。

 

貴殿、ついに百竜夜行の災禍から 里を解き放ちましたニャ。まさに英雄、おみごとですニャ。

忘れられないのは、貴殿が帰還した日の祝宴…。わたくし、失礼してハモン殿のお隣で少しばかりお酒をいただきました。

ハモン殿の嬉しそうなお顔…。その目の横に、少しだけのうれし涙…。思い出すだけで、胸が熱くなりますニャ…。

(淵源討伐後 チーニョ)

 

この時のハモンは喜びのあまり、いつにもなく深酒をしていたようで、気持ちの糸もすいぶん緩んでいた様子。なんと孫のイオリですら、「おじいちゃんの二日酔いは初めて見た」とびっくりしていました。

 

○○さんのおかげで、百竜夜行から解放される日も近いんだね。本当に…本当にありがとう!
○○さんが帰ってきた日の宴会、すごく盛り上がったね。歌って踊って、楽しかったなぁ。

おじいちゃん、飲み過ぎちゃって二日酔いになっちゃったんだ。おじいちゃんが二日酔いだなんて、ボク初めてみたよ。

フフ、それだけ嬉しかったってことだね。あらためて、○○さん、本当にありがとう。おつかれさま!

(淵源討伐後 イオリ)

 

これほど自分の感情を素直に表に出すハモンというのも中々珍しいもの。隣で座っていたチーニョなどはとくに驚いたことでしょう。

 

チーニョ達も今後エルガドでの調査に本格的に着手するとはいえども、引き続きカムラの里には度々足を運ぶことになるでしょうし、チーニョとハモンの交流も続いてくことになるでしょうが、2人の関係が今後どうなっていくのかは非常に気になるところ。

 

これ以上に進展があればとても喜ばしいことではありますが、チーニョの台詞の感じを見ていると、今の関係性というのもこれはこれで一つ完成されていて、これ以上でも以下でもなく、この距離感がこれからも不変のまま続いていくというのも可能性としてはアリなのではないかと思っています。

 

筆者個人の勝手な想像ではありますが、チーニョはハモンの方からも自分に同じだけの好意を向けてくれること、自分のことだけを見てくれることなどを望んでいるという感じではなく、敬愛するハモンの姿を見ていたい、そして自分が隣にいることをハモンが受け容れてくれるなら、一緒にいるその時間を楽しみたい、という感じの好意であるようにも見えるんですよね。

 

例えとしてどうかは分かりませんが、推しのアイドルに特別なファンとして見られたいという願望を持つのではなく、あくまでも自分がずっと推し続けていきたいという願望ひとつでその姿を追い続け、そして時々握手会やら何やらで少しお話しして元気を貰うことができたら、それ以上も以下も望まない、むしろそれこそが至高の喜びだ……と思うタイプのファンみたいな感じでしょうか。

 

まあ、重ねて申し上げますがこれは単なる比喩であり、チーニョのハモンに対する気持ちが「推し」と重なる部分があるのかどうかは不明ですか、チーニョもハモンの方から特別に好かれたい(いち友人以上の存在として想われたい)というよりは、これからの日々の生活の一部に、ハモンと共に過ごすひと時というのが存在し続けてくれることをこそ幸せと感じるタイプのではないか、という風にも見えるなぁという私の個人的な解釈です。もちろん、この2人の仲が今以上に親密なものに進んでいくというのなら、私は全力で応援しますけどね!

 

それから、ここまでの話に関してさらに一つ申し上げておきますと、これまで胸キュン(死語)だの少女漫画だのと色々言ってはきましたが、実際のところハモンに対するチーニョの感情が恋なのかどうかについては、本人からも周囲からも明言されてはいないんですよね。

 

「甘酸っぱいお話」シリーズの他の面々でいうと、セイハクのコミツへの感情はまあわかりやすく恋心でしょうし、事あるごとにお互いの惚気話をしてくるスズカリ・センナリたちについても、センナリが「昔からスズカリに惚れていた」と言っており、幼馴染から恋仲、そしてカップおしどり夫婦と自然に発展していったという印象ですから、この2組の関係に関しては少なくとも、恋愛が入っていることはまず間違いないと言ってよいと思います。

 

が、チーニョに関しては、自分の気持ちが恋だということを自身ではっきりと口にしてもいませんし、周りの他の人たちがチーニョの気持ちに言及することもありません。唯一、チーニョが自身の気持ちが何であるかを表現しているのは以下の台詞。

 

イブシマキヒコとナルハタタヒメの居場所がわかった…と聞きましたニャ。

2体の龍を討てば百竜夜行の災禍からこの里が解き放たれる…。これは、敬愛するハモン殿の悲願でもありますニャ。

貴殿、どうかハモン殿のためにも、このカムラの里の安寧のためにも、みごと討伐してお戻りくださいニャ。

(淵源討伐前 チーニョ)

 

チーニョはハモンに対する自身の気持ちを「敬愛」だと表現しています。もちろん、本当の気持ちは自分の心の中だけにしまっておきたくて、他人に話す分には自分の気持ちは「敬愛」だということにしておきたい、ということなのかもしれませんが、さしあたりそのような推測に拠らず、チーニョの台詞から読み取れることとしては、ハモンの武具への徹底したこだわりと情熱、カムラの里に対する深い愛情、芯がしっかりとしているぶん気難しそうに見えるけれど、本当はとても優しい人物であるところ……そうしたハモンの人となりに触れたことで、彼の存在を尊いものに思い、敬意や憧れを含めた特別な好意をチーニョは彼に抱いているようです。

 

まあ、台詞の雰囲気や流れ的には「恋なのではないか」と考えても問題なさそうなところを、頑なに「チーニョの気持ちは恋愛とは断定できない」と私が言い張っているのは、「"誰かに対する特別な好意"を全て"恋愛"に回収したくない」という、私自身の勝手なエゴに由る部分もあるんですけどね。

 

チーニョがハモンにどうやら仄かな想いを寄せているらしいとは言っても、チーニョ自身がその気持ちを必ずしも恋愛というカテゴリに無理やり入れ込む必要はないし、そして恋愛ではないからといってその気持ちが恋愛よりも下であるということでもありません。

 

チーニョにとって「敬愛」という言葉が、自分自身の中でさしあたり一番しっくりきそうだということなのであれば、周りがそれを恋愛だと断定するのは乱暴な話です。恋愛的に好き、友人として好き、人として、師として尊敬している……自分と相手の関係性や、自分が相手をどう好きなのかといったことを無闇に限定しない、どの概念ともつかず離れずの距離にある独特の淡さこそが、ハモンに対する今現在のチーニョの特別な気持ちの輪郭なのではないか? と思ったりしています。それが今後更に変わるのか、変わらないのかも分かりませんし。

 

それに、チーニョのみならず、たとえより明確に恋愛らしい台詞の多いセイハクやスズカリ・センナリたちについても、彼らの関係には恋愛的なものだけではなく、「幼馴染として、友だちとして、人として、人生のパートナーとして…etc. この人が好きだ」という気持ちも絡んでいるはずで、それらを含めて相手への特別な好意というものが成り立っていると思いますから、やはり恋愛のみに全てを回収することはできないと感じています。それから、セイハクに片想いされているコミツにしても、友だちとしては好きだけど恋愛感情はまだよくわかっておらず、セイハクの行動の真意を掴みかねている……という状態ですし、彼女もなかなか複雑な気持ちなのです。

 

実はこの記事シリーズを「甘酸っぱいお話」にしたのも、元々はチーニョの台詞を見ていたところから始まったんですよ。チーニョの気持ちは傍から見れば恋愛っぽいんだけど、本人からの明言もないし、恋愛という枠に押し込めればチーニョの感情の機微をかえって損なうことになってしまうのではないか……ということで、恋愛的な雰囲気は出しつつも、必ずしも記事で取り上げるキャラクターたちの気持ちを「恋愛」一色で塗りつぶさない言葉として「甘酸っぱい」をチョイスしたという経緯があります(まあ、この言葉を選んだ私のセンスがどうなのかは分かりませんが)。

 

いずれにしても、これまでの「甘酸っぱいお話」シリーズの人たちとは少し雰囲気の違う、大人の青春という感じのストーリーが今回の見どころでしたね。ちなみに、ここまでチーニョの台詞ばかり紹介してきましたが、ハモンの方の台詞でチーニョのことについて何か言っていないのか? というと、これが特にないんですよね。私が探せていないだけかもしれませんが、セリフ収集は結構念入りにやったつもりなので、おそらく本当にないのだと思います。

 

まあそれは、ハモンがチーニョのことを特に何とも思っていないというわけではなく、わざわざ主人公に話すようなことではないからというだけだと思いますし、自分の人間関係のことをむやみに他言しない、チーニョのことをどう思っているかをあえて言葉にせず彼の行動のみで描写するという形にしたほうが、彼なりにチーニョとの交流を大切に思っていることをよりよく表せるから、という面もあるのだと思います。

 

が、ライズのストーリーでチーニョの心情をここまで丁寧に描写しているからには、ハモンから一言もチーニョ絡みの台詞がないというのも寂しい話ではありますし、拠点がエルガドに移行したあとでも、里の人たちの会話も更新されていくということなのであれば、一度くらいはチーニョの話をしてほしいというのが人情(?)というもの。その辺りも含めて、サンブレイクでの今後の展開にもぜひ注目したいところです。

 

それでは、ここまでお読み頂きありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!