王国騎士フィオレーネの成長物語

 

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

 

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本作の主要キャラの一人であり、作中では主人公ハンターの相棒、あるいはもう一人の主人公とも言える存在であるのが王国騎士フィオレーネさん。サンブレイクのストーリーの主軸は「王域生物の異変の謎を追う」ではありますが、もう一つの側面として「騎士フィオレーネの成長物語」というものがあるようにも思われます。

 

フィオレーネは真面目で責任感が強く、王国騎士の使命に忠実で、他人に対しても非常に丁寧。エルガドの皆から頼りにされている、精神的支柱の一人と言ってよい人物です。しかしながら、基本的にはとても好感の持てる人柄である一方、その性格が強すぎるあまり、自己犠牲的で危うい面がある人物でもあります。本編ではそんなフィオレーネが、「王国のために自らの全てを投げ打つ」のではない騎士としてのあり方を掴みとっていく様子を私たちは見届けていくことになります。

 

フィオレーネのそうした良くも悪くもある性格については、本人の言葉のなかにもそれを窺わせるものがありますが、彼女の上司であるガレアス、妹のロンディーネを筆頭に、他のさまざまなエルガドの仲間たちからも色々と話を聞くことができます。彼女に関わりのある人たちのそれぞれの人となりにも触れていきつつ、彼らの言葉からフィオレーネの元々の人物像についてまずは考えていきましょう。

 

ーーーー目次ーーーー

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1.フィオレーネを想うエルガドの仲間たち

 

まずは提督のガレアス。MRストーリーの序盤、ビシュテンゴ亜種の緊急クエスト前にて、彼がフィオレーネの言動を叱るシーンがあります。フィオレーネの成長物語の起点となるシーンを挙げるとすれば、やはりビシュテンゴの緊急クエストの場面になるでしょうか。

 

[前略]
ガレアス:

本来、ビシュテンゴ亜種は大社跡を生息域としていない。

だとすれば、王域生物が及ぼす生態系の変化で姿を見せた可能性が高い。

フィオレーネ:

…提督。こたびは私も○○殿と共に出陣したく思います。よろしいでしょうか。

推測が正しければ、責任は王国にあります。騎士の誇りにかけて…たとえこの命に代えても、カムラの里を護り抜きます。

ガレアス:

………フィオレーネ。

フィオレーネ:

私の命は、とうの昔に騎士道へと捧げております。かならずや王国のご期待に応えられるよう…!

ガレアス:

フィオレーネ!

……誇り、正義、忠誠、使命。護るべきもののためにすべてを投げうつ心構えは、騎士として美しきことである。

しかし…その美徳のために己の命を軽く扱うな。おまえの危険なところだ。…わかったか。

フィオレーネ:

し…しかと心得ました!

[後略]

(マスター★2緊急前)

 

普段は冷静なガレアスが珍しく声を荒げるシーンですが、いたずらにフィオレーネを怒鳴りつけるというわけではなく、彼女の騎士としての高潔な姿勢それ自体は認めたうえで、その姿勢が時として過熱してしまう点を的確に指摘しています。ガレアスの総指揮官としての器量の大きさを窺わせるシーンであり、そして彼がフィオレーネを叱るのは、彼が最も信頼する部下に対する愛情のゆえに他なりません。

 

さっき、提督の声がここまで聞こえたよ。あの人が大きな声を出すなんて 相当珍しいことだね。
普段は物静かな人が大きな声を出すときって 誰かのために熱くなっているとき…だと 俺は思うんだよね。

守りたい時、伝えたい時、止めたい時…。普段は静かだからこそ、心に響くよね…。 …ま、そんなことより、買い物はどうだい?

(マスター★2緊急前 オボロ)

 

で、このイベントの直後に改めてガレアスの話を聞きにいくと、今度はいつも通りの穏やかな口調で、主人公の緊急クエストに同行するフィオレーネを心配している旨の台詞を聞くことができます。

 

……貴殿の前で声を荒げてしまい 驚かせたことだろう。すまなかった。

……もし時間があったら フィオレーネの様子を気にしてほしい。……よろしく頼む。

(マスター★2緊急前 ガレアス)

 

ガレアスもなかなか複雑そうな顔をしています。彼が今回ばかりはフィオレーネに強い口調で忠告をしたのは、もちろん彼女のことを思ってのことでもありますが、同時にエルガドの調査を率いる提督としての立場もあるでしょう。王域生物の異変の調査は今や王国内に留まる問題ではなく、エルガドはカムラの里との連携体制を築きつつある。自分たちの調査に巻き込む範囲が大きくなっているからこそ、個人の無闇なスタンドプレーはなるべく避けてほしいという、総指揮官としての思惑もあるのでしょう。

 

しかしながら、いつもは彼女に声を荒げるようなこともない自分が、今回こうして直球の言葉をぶつけてしまった、ということの意味は彼自身もよく理解しているはずで、フィオレーネが落ち込んでいないか、あるいは騎士としての信念を揺さぶられて動揺していないかどうか、その辺りを懸念してのものなのでしょう。エルガドに着任してまだ日の浅い主人公にフィオレーネのことを頼んでいるのは、彼女の上司として何をどう伝えればよいのか、ガレアスも悩んでいるということなのでしょうね。

 

一方のフィオレーネにとっても、自身の欠点についてこれほどガレアスから強く指摘されたのはかなり堪えたようで、再度話しかけたときにはどうにかいつもの冷静さを取り戻しています。

 

……○○殿か。お見苦しいところを…すまない。

以前からたびたび、同じような内容で提督より注意を受けていたが、ここまでハッキリと言われたのは初めてだ。

提督があれほど言ってくださっている意味はしっかり理解している。…大丈夫、心配は無用だ。

(マスター★2緊急前 フィオレーネ)

 

騎士としての美徳に傾倒しすぎてしまう、という欠点は今までも度々ガレアスから指摘されていて、フィオレーネ自身もそのことは少なくとも頭では理解しているようです。後ほど紹介するクランの台詞にもあるように、フィオレーネは落ち着いて思考ができるときにはこうして自分自身を客観視することができるのですが……おそらく彼女の中には、その理性の檻を食い破って外に出てきてしまうほどの信念、使命感、熱情……そうしたものが眠っているのでしょう。

 

実際、この時のフィオレーネが暴走気味になってしまった理由は、王国での異変が王国外のカムラの里にまで影響を強めているということ……フィオレーネ的には「自分たち王国騎士が異変の原因に未だ対処できていないせいで、王国はもとより周辺国にまで迷惑をかけてしまう」という事態を、彼女が人一倍危惧していたからに他なりません。その差し迫った状況が、フィオレーネの信念に火をつけてしまったように思います。

 

もちろん、フゲンも言っていたように、モンスターの異変という予測できない事態など何人に責任があるわけでもないですし、少なくとも、フィオレーネがそれを一人で背負う必要はありません。しかし責任感の強い彼女は、いざとなれば自分の身でその責を受けようとすらしてしまうんですね。

 

フィオレーネ様が無茶をなさるのはいつものことです。ですが、提督がお怒りになるのは珍しいですね。

たしかに、フィオレーネさまのがんばりすぎる姿に、たびたび心配をさせられることはあります。

がんばり以外の他意がないことも存じていますが…自分自身をもっと大切にしていただきたいものです。

(マスター★2緊急前 ルーチカ)

 

ルーチカも言っているように、フィオレーネのそうした行動は、あくまでも王国に貢献したいという一心によるもの。その姿勢自体は評価すべき点ではありますが、一方でその気持ちが純粋そのものであるからこそ、なかなか自分でもその性格を変化させづらく、また周囲にしても「王国を守りたいというフィオレーネの決意自体を否定することになってしまうようで今一歩制止しづらい」と感じる側面もあるのかもしれません。

 

ロンディーネ様もフィオレーネ様も とても職務に忠実で、非常に優れた騎士様だニャ。

ロンディーネ様の、常に冷静沈着な姿。フィオレーネ様の、ときに手段を選ばず任務の遂行を第一とする姿…。

どちらも最高の騎士の名にふさわしいニャ。すばらしいニャ。

しかし、フィオレーネ様のやり方はときに己を顧みないところがあるため、ロンディーネ様も少し心配されているニャ。

まあ、おそらく杞憂だと思いますがニャ。二人きりの姉妹、どうしても気にかかるのでしょうニャ。姉妹愛ですニャ。

(マスター★3 カナリーノ)

 

妹のロンディーネも、姉フィオレーネの騎士としての高潔さをとても尊敬していますが、同時にその任務への姿勢を不安にも思っている様子。カナリーノの「二人きりの姉妹」という表現は少し気になるところですね。「二人きり」というのは単に他にきょうだいがいないという意味なのか、それとも「何らかの理由でお互い以外に血縁の家族がいない」という含みがあるものなのか。もし後者なのであればなおのこと、ロンディーネが姉を心配する理由も良く分かりますし、フィオレーネの責任感の強さもそこに由来する部分がある(姉として…という感じ)、という話にもなるのかもしれません。

 

フィオレーネとロンディーネが姉妹揃って騎士を志した理由、彼女たちのこれまでの来歴などはそれほど明らかにはされていないため、機会があればその辺りも知りたいところ。特にフィオレーネが「自分の命に代えても…」というレベルで王国を守ることに執着しているのは、彼女が生真面目で責任感が強いゆえに騎士の美徳に没頭してしまっているからというのみならず、彼女のバックボーンに由来するものがひょっとすると何かあるのやもしれません。

 

話を戻しまして、ガレアスに叱責を受けた後のフィオレーネは一応「提督のおっしゃることは理解している」と言ってはいるものの、のちの出来事を見るに、ここではまだ自分の信念の中にある危うさを、根本的に改めるには至っていない様子。そんな彼女が最初の気づきを得るのは、水没林で危険を顧みずに調査を行うバハリの一件の時になります。

 

はぁ…まったく……。貴殿の手をわずらわせることになり たいへん申し訳ない。
変わり者の研究員についてだが…。ヤツは、いつもそうなのだ。ひとりで突っ走っては救援を求めてくる。

……しかり、しっかりと結果も出すのだ。変人かもしれないが、救出の手助けをよろしく頼みたい。

(マスター★2 緊急アンジャナフ前 フィオレーネ)

以前、提督におしかりを受けた意味が バハリの身勝手な行動のおかげで深く理解できるとは…くっ…。

しかし、冗談ではなく本当に危険だ。バハリが追っているのは王域三公。王域生物の中でも特別なモンスターだ。

見つけしだい、連絡が来るとは思うが…。…まぁ大丈夫だろう。あんなやつだが、信頼するには値する。

(マスター★2 アンジャナフ緊急後 フィオレーネ) 

 

バハリのお騒がせっぷりを目の当たりにすることで、フィオレーネは間接的に自分自身への気づきを得ることができたようです。ここで、バハリとフィオレーネの関係についても少し掘り下げておきましょうか。登場してさっそくフィオレーネに「やれやれ…」みたいな顔をされているバハリですが、実のところ彼はエルガドにいる人たちの中では、ロンディーネが最も心を許している存在の一人と言えるかもしれません。彼がエルガドに合流した直後から、2人はなんだか漫才のようなやりとりを見せてくれます。

 

バハリ:

いやぁ、おふたりさん! おみごとでした!

…ただね、俺の計算では、あと4秒早く狩猟するつもりだったんだよ、キミたちは!

4秒は大きい。この誤差が生じた理由を把握しておきたい。体調が悪かったのかな? フィオレーネ、昨夜はちゃんと寝た?

フィオレーネ:

○○。改めて紹介しておこう。このうっとうしいのが研究員のバハリだ。

うっとうしいが、モンスターの研究において右に出る者はいない。

また、エルガドにある数々の設備もこの男が造り出した。

…とまあ、仕事はできるので、研究主任の立場にある。

そのため遠ざけられず、私は毎度、今のようにウンザリしているわけだ。

[後略]

(マスター★3 昇格直後)

 

他人に対してはつねに礼節を弁えるフィオレーネが、バハリにはのっけから「うっとうしい」2連発。これは2人が仲が悪いというわけではなく、こうして互いのことを茶化し合えるほどの強い信頼関係があるから。チッチェ姫も、バハリが帰ってきた後のフィオレーネは「非常に楽しそうだ」と言っています。

 

バハリが帰ってきて、フィオレーネがとても楽しそうに見えます。ふふふ。

あら、そうは見えませんか? ですが、わたくしにはわかります。

表面上はどうあれ、ふたりは実力を認め合っている相棒のような関係なんです。そういう関係、とてもあこがれます…!

(マスター★3 チッチェ)

 

先ほどバハリの指摘していた「誤差4秒」というのも、これは単にバハリの観察の細かさや明晰さを示すエピソードに留まるものではなく、その台詞はよくよく考えてみれば「フィオレーネが仮に何らかの理由で本調子でなくても狩猟時間が4秒しか変わらないほどその任務遂行能力には信頼がおける」ということを彼は間接的に言っているに等しい訳ですから、やはりバハリはフィオレーネの実力を(口には出さなくとも)非常に高く評価しているのです。

 

一方のフィオレーネの方も、彼女がいかにバハリを信頼しているかということについて、妹のロンディーネから次のような話を聞くことができます。

 

昔、他の騎士に 姉上はバハリが嫌いなのかと聞かれたことがある。

バハリはともかく、姉上はずいぶん対応が冷たいからね。よく知らぬ者がそう思うのも無理はない。

けれど、考えてみてくれ。あの姉上が最も重要な事項であるキュリアの調査を 提督と共に一任しているのだ。

そして、彼の予測や結論については、異を唱えず受け入れる。それがどんなに常識はずれな話であってもね。

よほどの信頼がないとできないことだ。そこまで姉上に信を置かれているなんて、少しうらやましい気さえするよ。

まあ…多少 うっとうしい、と思っているのは 事実かもしれないがね…。

(マスター★4ライゼクス後 ロンディーネ)

 

同じくフィオレーネから絶大な信頼を置かれているであろう妹のロンディーネをして、フィオレーネのバハリへの信頼は「羨ましい」と言わしめるほどのもの。互いの実力への高い評価をそれぞれがあまり表立って口にしないのは、長い付き合いがある者同士でわざわざそういうことを言葉にして伝えるのが気恥ずかしいから、という感じなのかな(或いは、詳しい背景については後述しますが、フィオレーネはバハリに耳の痛い小言を聞かされたりうっとうしい絡まれ方をされたりするような隙を見せたくないから敢えて少しぞんざいな態度を取っているというフシもあるでしょうし、一方のバハリは、フィオレーネに変なプレッシャーをかけて彼女の強い使命感をいたずらに焚き付けたくないからと、彼なりに気を遣っている部分もあるのかもしれません)。

 

で、そんなバハリはフィオレーネに何かと小言を言うのが趣味(?)らしく、食事と睡眠にこだわりのあるバハリは、しばしばフィオレーネに「食事と睡眠をしっかりとれよ~」と言っているようです。なんかウツシ教官みたいだな……。バハリとウツシに挟み撃ちされているフィオレーネを1回くらい見てみたいような気もする。

 

やぁ、○○! ちゃんと食事はとってる? ちゃんと睡眠はとってる?

食事と睡眠は生命活動の資本なんだ。逆に、そこを減らしてパフォーマンスを出せるはずがないと思わないかい?

フィオレーネにも何度も何度も言っているんだ。大事なことだからね。あ、口うるさいヤツって思わないでよ!

(マスター★3 バハリ)

 

自分自身のことを何かと疎かにしがちなフィオレーネのことを彼なりに気遣って……といいつつも、表面上は漫才コンビである手前、ストレートに深刻な顔で彼女を心配するのもそれはそれで変な感じがするからなのか、「食事と睡眠の重要性をしつこく説いてフィオレーネにウザがられる」というのが彼の日課になっているということでしょうか。これも凸凹コンビ(?)らしい気遣いなのかもしれません。

 

ちなみに、ガランゴルムの討伐が計算より4秒遅かった件については、バハリの推測通り、フィオレーネの調子が万全ではなかったらしいことが原因だったようです。

 

(マスター★3 バハリ)

これについては、ガランゴルムの討伐のフィオレーネの台詞にもちょっとした伏線らしきものがありました。

 

(マスター★3緊急前 フィオレーネ)

王国の重要な目標であるモンスターの狩猟を主人公に任せきりにしてしまうのは王国騎士としての責任の放棄になる、ということで、ガランゴルムの狩猟に同行してくれるフィオレーネ。その心意気は流石なのですが、彼女も彼女でそれとは別にガレアスの副官としての職務がたくさんあるでしょうし、それに加えて王域三公の狩猟も……というのはどう考えてもキャパオーバーもいいところのはず。食事をする時間すら取れない、あるいは食事も億劫になってしまうというのも無理もないことです。こういうのが定期的に繰り返されるわけですから、バハリがしつこく声をかけるのもわかりますね。

 

しかしながら、バハリ自身も研究に没頭するあまり寝食を忘れてしまうことがあり、彼自身もそれについてはいつも自戒をしているようです。フィオレーネにも、「自分だって疎かになっていることがあるクセに私にばかり注意してくる」とツッコミを入れられています。

 

…バハリは相変わらずやかましいな…。食事だの睡眠だのと、私にばかり口うるさい。
食事も睡眠も 最大限の力を発揮するために必要なのは十二分に理解している。

…きっと、モンスターと対峙する騎士は ひとつの不足が命に関わることもあるため言っているのだろう。

それは理解しているが…。…いや、そうだとしてもやかましいな。…まったく、ありがた迷惑だ。

(マスター★3 フィオレーネ)

 

バハリは放っておけばいい。あの状態になったら、数日は寝食を忘れて研究に没頭してしまう。

普段は私に食事だ睡眠だと口うるさく言ってくるくせに、自分はお構いなしだ。まったく説得力がないな…。

(マスター★3 ミクニ亜種後 フィオレーネ)

 

まあ、フィオレーネの気持ちもわからないでもありませんが、バハリとして自分も疎かにしがちだからこそその重要性を痛感している、というのも言い分としてはあるでしょう。それに、バハリ的には自分が寝食を忘れることと、フィオレーネが寝食を疎かにすることとの意味は微妙に違うのかもしれませんね。

 

バハリも色々と無茶な行動が多いという点ではフィオレーネと似ていますが、彼自身の行動原理は「並み外れた好奇心や研究意欲」にあり、フィオレーネのような自己犠牲ではありません。彼が数日間不眠不休で研究に打ち込んだりするのも、「自分の身を犠牲にしてでもエルガドの調査に貢献したい」というよりかは、彼の好奇心の赴くままに研究に没頭してしまった結果、気がついたら数日も経っていた――という状態なのでしょう。バハリは無鉄砲に見えて意外と(?)引き際をわきまえている人物でして(まあ、その引き際がいつもギリギリすぎるためにお騒がせキャラ的なところが否めないのですが)、自分自身をぞんざいに扱うタイプではありません。

 

一方のフィオレーネは、他人のため、王国のために自分が無理をすることをいとわないタイプですからね。彼女が寝食を疎かにする時というのは、まさしく彼女が自分自身に対して優しくできていない時。「自分自身をきちんと気遣うこと」の第一歩として、まずは食事と睡眠を十分に取ることを心掛けてほしい……そういう意味で、バハリは口うるさくフィオレーネに言い聞かせているのでしょう。

 

フィオレーネの方も「私にいつも言ってくるけどそれブーメランだからな(意訳)」と少々不満げではあるものの、彼の小言をハイハイと受け流しつつも決して本心から嫌そうにしているわけではない辺り、自分とバハリとの微妙な違いを彼女もどこかで気がついており、その上で彼の忠告がまっとうなものであることも内心では理解しているのかもしれませんね。

 

フィオレーネ、もうすっかり元気だね。いやぁ本当によかったよ。

食事はとった? 睡眠は? って聞く相手がいないと、どうにも調子が出なくてね。

フィオレーネは優しいから 軽くあしらっているように見えて、ちゃんと俺の相手をしてくれているのさ。

研究で凝り固まった頭と心をほぐすのに 相手してくれるのは感謝してるんだ。あ、フィオレーネには内緒だよ?

(マスター★6 バハリ)

 

まあ、フィオレーネが自分に構ってくれるのをこうして喜んでいるあたり、元々バハリが色々とちょっかいを出したり、軽口を叩いたりしたがる性格であるという部分も否めないかもしれませんが……。しかしながら、真面目すぎるあまり肩が凝ってしまいがちなフィオレーネにとっては、バハリのようにちょっと鬱陶しくてお節介なタイプの友人が近くにいることで、その性格がほどよく解きほぐされている、という部分はあるのかもしれません。

 

バハリにしても、何だかんだ言いつつ自分の相手をしてくれる(うっとうしいとは言いつつ決して無視したりしないのは、他人をぞんざいに扱ったりできないというフィオレーネの性格もあるようですが)彼女のことは欠かせない存在のようですから、彼女が使命や責任に燃えたり利他的な思考に傾きすぎたりする(行き過ぎなければそれらも彼女の美点だとバハリも認めていると思いますが)あまり、彼女自身の健康を害なったり自己犠牲をしたりというのはやっぱり辞めてほしいと思っているんだよね。

 

……と言いつつ、バハリもバハリでフィオレーネに構ってもらおうとしに行っては、他人を無視できない彼女の優しさを浴びて(?)満足しているフシがあるのですから、フィオレーネの長所に対する態度もやっぱりなんかこうちょっと迂遠というか、素直じゃないんだよなっていうトコがあるんですよね。もちろん、この2人はそういう付かず離れずの距離感だからこそ心地よいのですが。

 

それから、ここで続けて紹介しておきますと、バハリとはやや別ベクトルで、同じくフィオレーネのことを作中でとても気にかけている人物がもう1人います。調査隊員のクランです。彼女はフィオレーネ、ロンディーネ双方と親交がある人物であり、フィオレーネが何かと無理をしがちな性格であるということを、作中で最も早く話題にする人物の一人でもあります。

 

向こうに戻るなら、ロンディーネには心配ないって伝えてもらえると嬉しいわ。
フィオレーネが無理しないように、私がしっかり見張ってるから、って。

(里帰り前 クラン)

 

カムラの里に赴任しているロンディーネへの伝言を主人公にお願いしているということは、おそらくロンディーネからも、「姉上のことを気にかけていてくれないか」と頼まれていたのでしょうね。フィオレーネの性格を最もよく分かっているのは妹のロンディーネでしょうが、彼女は姉とは離れた任地にある以上、毎日顔を合わせて話すというわけにもいきません。そこで、双方と面識があり信頼のおけるクランに、自分がエルガドを離れている間の姉のことを頼んでいたのでしょう。

 

で、クラン自身はフィオレーネのことは「良きライバル」だと思っているようで、自信家である彼女は作中でも何かとフィオレーネに張り合って(?)みたり、自分がフィオレーネに信頼されているということを得意げに話したりしています(別の記事で詳しく紹介予定)。

 

その一方で、ライバルとして意識しているからこそフィオレーネの美点も欠点もよく熟知しているということなのか、フィオレーネのことを何かと心配していたり、彼女の悪い癖が出ていると少し苛立ってしまったりと、とにかく彼女のこととなると気が気でなくなる様子。「自分の命に代えても…」という言動をガレアスに叱られたフィオレーネに対して、クランは次のようなコメントをしています。

 

力みすぎなのよ、フィオレーネは。本来の彼女なら、献身と無謀の区別くらいはついてるはずなのに…。
一応言っておくけど、誤解しないでよね。私はフィオレーネが心配で こんなこと言っているんじゃないの。

私のライバルなら、それ相応の力を発揮してもらわないと困るってこと。…分かった? じゃあ…彼女のこと、頼んだわよ。

(マスター★2緊急前 クラン)

 

……とまあ、最後の一文からも滲み出ている通り、彼女はフィオレーネのことをすごく案じているようで、「力みすぎ」という指摘も的確そのものです。しかし「自分はフィオレーネのライバルだ」と言っている手前、フィオレーネに対して素直に優しさを見せるのは何となく違う気がするということなのか、「フィオレーネが心配で言ってるんじゃないの!」という、見方によってはツンデレみたいな様相を呈しています。

 

「本来の彼女なら区別がついているはずだ」という言い方をするのもここのクラン特有の表現ですね。フィオレーネは騎士の使命に熱くなるあまり冷静な判断を失ってしまっているのであって、本来の聡明な彼女ならば安易に自己犠牲に走るべきでないことを必ず理解できるはずだ、と。クランがフィオレーネのことを本当に高く評価していることがよくわかる台詞だと思います。

 

フィオレーネにはしばらくツンデレ(?)なクランですが、ストーリーが進むごとにフィオレーネに対する彼女の台詞も少し毛色が変わるようになりまして、彼女がフィオレーネのことをいつも応援していること、彼女にとってフィオレーネは「張り合う相手」ではなく「憧れの存在」であること……より素直なクランの気持ちがその言動にも表れるようになります。少し先の話のクリップですが、その様子がこんな感じ。

 

治療の道筋が見えて何よりだわ。でも結局…私だけじゃ何もできなかった。
あなたや、あの薬師さんに頼らなければ、フィオレーネを救うこともできない…。

ここに来る前、私は自分に絶対の自信を持っていたの。あとは調査隊で経験さえ積めれば、最高の研究者になれる…って。

でも、そうじゃなかった。実際の現場では自分の知識が通用しないことだらけで…。

結果を出せない自分に、いつも焦ってたの。そんなとき、いつも輝いていたフィオレーネが私の目標になってくれた…。

だから私、彼女には戻って欲しい。また、前のように彼女を追いかけたいの。

お願い、○○…。フィオレーネを助けてあげて!

(マスター★4 ライゼクス後 クラン)

 

クランがこれまで何かと「フィオレーネはライバル」的な発言をしていたのは、憧れの存在に少しでも追いつきたい、自分も実力を認められたいという、彼女の意欲や逸る気持ちの表れだったということだったのかな。

 

先のクリップでクランが「本来のフィオレーネなら区別がつくはず云々」とやきもきしていたのも、たんに友人として心配であるというのみならず、彼女がつねに自らの道しるべとしてきたフィオレーネが、「王国のために自分の命すら捧げる」などという形で大きく足場を踏み外そうとしているのを見ていられず、自分のことのように無性に苛立ってしまう……みたいな気持ちだったのかな。

 

一人の人間の背中を追いかけていればいるほど、次第にその人の欠点や汚点というものも深く理解してしまうもので、そうして自分が憧れてやまない対象、自分にとって輝かしい存在の持つ危うさにふと気がついたときに、「追いかけたい」という気持ちの中に、「見守りたい、支えたい」という一種の保護者的な感情もまた芽生えてきた、というのがクランの心情なのかもしれません。まあ、それも純粋な善意というよりかは、フィオレーネに対するクランの大きな感情の矢印に由る部分が多いのかもしれませんが、むしろクランはそういうところが良いよね~と個人的には思っています。

 

2.フィオレーネに転機が訪れる

 

話を戻しまして、作中でフィオレーネにとっての一番の転機となるのは、やはりメル・ゼナとの初邂逅後、キュリアのウイルスで倒れてしまう事件になるでしょう。狩猟したルナガロンをサンプルとして回収する調査隊員たちを庇ってメル・ゼナと剣を交えた際に、フィオレーネはメル・ゼナに負わされた傷口からキュリアのウイルスを送り込まれてしまい、その遅効性のウイルスは誰も気づかぬうちに彼女の体を蝕んでいました。エルガドの仲間たちも口々に、フィオレーネのことを心配しています(全員分は多すぎるので一部抜粋)。

 

エスピナス…ですか。猛毒が必要なレシピを知っているなんて さすが凄腕の薬師ですね。

日々勉学に励んでいる私でも全く知らない薬のようです…。まだまだ未熟、ということになります。

フィオレーネ様のいないエルガドはさびしすぎます…。早くお元気になっていただきたいものです。

(マスター★4 エスピナス後 ルーチカ)

 

普段はあまり感情の起伏を見せないあのルーチカが、「寂しすぎる」という気持ちをストレートに口にするのは相当珍しいことなのでは? 頑張り屋のフィオレーネの存在が、エルガドの皆にいつも活力を与えるものであったことがよく分かる台詞ですね。

 

……フィオレーネの薬についてはタドリ殿に任せる。
キュリアのせいでモンスターも活発だ。我々はこちらの対処を進めよう。

……フィオレーネのためにも、被害を拡大させるわけにはいかん。

(マスター★4 ライゼクス後 ガレアス)

 

指揮官として、フィオレーネ不在の間になすべきことを冷静に語るガレアスですが、同時に彼女のことをよく思い遣っているのがよく分かります。メル・ゼナの被害がこれ以上広がるようなことがあれば、フィオレーネの性格からして「あの時メル・ゼナを撃退できなかった自分のせいだ」と自罰的になってしまうでしょう。ガレアスは多くを語りませんが、たたでさえ病状の重い彼女にこれ以上つらい思いをさせるわけにはいかない……という、彼なりの愛情が感じられますね。

 

フィオレーネ……! そんな…検査結果では異常ナシだったのに…!

…ごめんなさい。研究を急がなきゃいけない私が、取り乱してる場合じゃないわね…。

…いまの私にできることはメル・ゼナとキュリアの謎を解明するために 彼女の状態を観察、分析すること…。

こんな時だからこそ 研究者は落ち着かなければいけないわ。治療法は、あなたたちに任せたわよ。

(マスター★4 ライゼクス前 クラン)

 

日頃からフィオレーネのことを心配していたこともあり、クランはかなり動揺しています。メル・ゼナとの戦いで負傷したフィオレーネを診たのも恐らくは彼女だったのでしょうね。少し無理をしてしまったけど大事に至らなかった……はずのフィオレーネが倒れてしまったこと、自分自身がそれに気づけなかったことはクランにとっては大きなショックのはず。それでもどうにか平静を取り戻し、フィオレーネの身体の再検査に取り掛かります。

 

それから、フィオレーネが休養中の間は、彼女の任務を代わりに行うためにロンディーネが一時的にエルガドに姿を見せるようになっており、その際の彼女からも、姉の身を案じる胸中を聴くことができます。

 

姉上のことは、タドリ殿にお任せしている。私は任務に集中するよ。

動いていなければ、余計なことばかり考えてしまうのだ。…よくないね。

(マスター★4ライゼクス後 ロンディーネ)

 

……この状況、どう考えてもロンディーネが精神的に一番つらいはずなのですが、彼女は王国騎士の中でも上層部の立場の人間として、自分の気弱な言動や行動で皆を動揺させるようなことがないようにと、固い決意で感情のうねりを押し殺し、今にも溢れそうなギリギリのところで平静を保っています。いつもエルガドの仲間を励まし、皆を率いる拠点の中心人物であった姉の騎士としての精神を心から尊敬しているからこそ、その不在の間の代理を預かる自分もまた、姉の名に恥じない行動を貫き通さなければならない――と、心に誓っていたのかもしれません。

 

主人公がエスピナスを狩猟し、タドリからフィオレーネの快復の目途が立ったことを聞かされたロンディーネは、幾分か緊張の糸が解け、安堵と共に疲労の色が見え隠れします。

 

タドリ殿から「まもなく薬ができます。ご安心ください」と言っていただけた。

もちろんまだ予断を許さないとは思うが… タドリ殿に任せておけば大丈夫だろう。さすが、伝説の薬師と呼ばれるお方だ。

しかし…少し安心したら なんだかどっと疲れが……

…いやいや! まだ気を緩めてはいけないね! 気合いを入れなおそう! さあ任務だ!

(マスター★4エスピナス後 ロンディーネ)

 

フィオレーネが復帰しても、今度は心労が祟ってロンディーネが…となってしまわないか若干心配なところではありますが、姉の代理としての役目を最後まで務めきるというのは、姉がこれまで背負ってきたもの、騎士として胸に秘めてきた覚悟に対して、同じ王国騎士として、また妹として、それに応えてみせるという意味を持つものでもあるのかもしれません。

 

ちなみに、フィオレーネがこの一件で倒れた際に、それをカムラの里に滞在するロンディーネに連絡して彼女をエルガドに呼び寄せたのはヒノエでした。エルガドとしても、フィオレーネのことをすぐにロンディーネに伝えてやりたいが、そのために王国騎士の人員を割いてカムラの里に行ってもらうというのでは、ただでさえ騎士団の重鎮であるフィオレーネの不在でタスクがいっぱいいっぱいのエルガドの業務が回らなくなってしまう――という状況下で、ヒノエがすすんでその役目を申し出てくれたのは救いであったことでしょう。

 

フィオレーネさんが倒れたと聞きまして、里で任務についていたロンディーネさんを こちらにお呼びしました。

任務は他の方でも代わりができますが、フィオレーネさんの妹はロンディーネさんだけですもの。

ロンディーネさんのためにも 早くよくなってくださるとよいのですが…。

(マスター★4ライゼクス前 ヒノエ)

 

大切な家族についての凶報を伝える……という重責を買って出るというのは勇気の必要なことですが、王国との交流が始まって以来、世話になっているフィオレーネ・ロンディーネ姉妹や王国の仲間のためということもあり、またヒノエ自身も、ミノトという最愛の妹がいるからこそ、世界にただ一人のかけがえのない姉妹が窮地にあるというロンディーネの立場に、思いを致すところがあるのでしょう。——特に、がんばり過ぎるがゆえに己の身を削ってしまう家族を案ずる気持ちというものには。

 

そして同様にミノトも、エルガドの皆をいつも元気づけるフィオレーネの存在を姉のヒノエに重ね、かつて風神龍出現の際にヒノエが共鳴で苦しめられるのを間近で見ていた経験から、特にロンディーネの心境をひとごとには思えずにいるようです。

 

フィオレーネさんが倒れたと聞きました…。

あの方は、カムラの里でいうヒノエ姉さま。このエルガドを照らし、人々の心を温める太陽のような存在です。

ヒノエ姉さまが同じようなことになったら、わたくしは冷静ではいられないでしょう。風神龍の一件のときもそうでしたから…。

ゆえに、ロンディーネさんのお気持ちを考えると… ミノトは、胸が張り裂けそうです…。

(マスター★4ライゼクス前 ミノト)

 

自分の最も愛する人が自分の目の前で苦しみ、倒れていて、しかもその運命の主導権が自分の手中に無い――そんな状況が突き付けてくる悔しさや絶望感を、ミノトは風神龍の一件を通じて身に沁みて知っている。それでもロンディーネは他の騎士たちの手前、拠点をいたずらに混乱させないようつとめて冷静を装っており、そして内心ではひとり孤独に、焦りや悲しみ、無力感、最悪の未来を想像してしまうことに必死で耐えながら目の前の業務を行っている……。ミノトはそんな彼女の精神的な強さと心の内に隠した苦悩とを理解し、そこに共振するところがあるようですね。

 

その後、皆の献身的な看病を受けながら、薬師タドリのおかげでどうにか病状が快復したフィオレーネ。任務に復帰してすぐに主人公と共にメル・ゼナとの再戦に臨み、王国の長年の悲願を成就した彼女は、ガレアスから「自分の命を軽んじることがなくなった」とその成長を評価されます。

 

先日、提督に呼び出しをうけてな。なんと、直々にほめていただいたのだ。
騎士としての使命感に酔い、己の命を軽んじることがなくなったな…と。

たしかに、以前は王国のためならば すべてを差し出しても守ることが最も大切なことだと思っていた。

しかし、今はちがう。王国にいる以上、自分自身も守る対象だ。すべてを含め王国を守りたいと思っている。

しかし、悪い気はしない。むしろ大切にしていきたいと思える。…考えが変わることは、不思議な感じだな。

(マスター★5 フィオレーネ)

 

騎士としてのあるべき姿を今一度考えなおしたフィオレーネ。彼女の真面目で誠実なところは私も大好きですから、そういう部分はこれからも彼女らしくいてほしいし、その上であまり気負いすぎることなく、自分自身のことも大事にしてくれたら嬉しいです。自分の信念を貫くことも意志の強さですが、こうして時に自らの信念を改めることができるというのもまた意志の強さであり、彼女の非凡さを示すものであるように思います。

 

フィオレーネが成長した要因について、提督のガレアスは「猛き炎」の存在が大きいと考えているようです。

 

……フィオレーネは だいぶ丸くなったな。

己の騎士道に酔い、命を軽んじることなく任務にあたるようになった。

カムラの里へフィオレーネを派遣したとき、フィオレーネの内にある危うさに、フゲン殿はきっと気づいたのだろう。

気づいたからこそ、貴殿を送り出してくれたのだと思う。

任務中も、貴殿がそばにいることで フィオレーネが簡単に命を投げ出すことはなかったはずだ。……感謝する。

(マスター★5 ガレアス)

 

フゲンが主人公をエルガドの任務へと送り出したのは、新たなる脅威に対処するため、ロンディーネを通じて里の防衛を支援してくれた恩義に報いるためという意味合いもあるでしょうが、ガレアスは「フゲンがフィオレーネの性格の危うさに気がついていたからなのではないか」と考えている様子。

 

フゲンと直接その時のことを話してもいないはずなのにこの洞察力…。互いに人々をまとめる立場だからこそ通じ合うということなのかもしれませんが、ガレアスには何かテレパシーじみたものを感じざるを得ません。そして彼ばかりではなく、カムラの里でフィオレーネとフゲンが話す現場に立ち会っていた妹のロンディーネもまた、姉が倒れたという報せを受けた直後の会話でガレアスと同じ推察に至っていました。

 

姉上は昔から、任務を遂行するためなら手段を選ばないところがあった。我が身を一切かえりみないというか…。
覚えているかい? 「命に代えても」…。カムラの里で、姉上はそう言ったのだ。

フゲン殿が貴殿をここに導いてくれた理由のひとつとして、姉上のこの言葉を危険に思ったからだと私は確信している。

結果、貴殿と提督のおかげで 姉上は我が身を大事にするようになったが、最終的にはこうなってしまった。

身を挺したのは仲間を護るため… 騎士としては尊敬すべき行動かもしれないが、家族としては……。難しい問題だね。

(マスター★4 ライゼクス前 ロンディーネ)

 

主人公が来たことで、フィオレーネは捨て身の行動をしないような性格に少しずつ変わっていった。その理由は、フィオレーネと同等以上の実力を持つハンターが共に前線にあることで、彼女ひとりが無茶をせずとも任務を完遂できるだけの戦力が揃っていたから、ということや、フィオレーネと対等の存在である主人公がバディとして任務に参加していることで、彼女の自制心が働くようになったから、ということもあるかと思います。

 

しかし筆者としてはそれ以上に、(これは作中で具体的に示されていることではありませんが)フィオレーネは主人公と多くの狩りを共にする中で、「主人公が何を大切にして狩りに臨んでいるのか」ということを、彼女が自然と学び取っていたからなのではないか、とも考えています。

 

カムラの里の災禍を絶つための主人公の狩りは、自らの故郷を、家族を守るための狩りであり、主人公は強大なモンスターの狩猟に幾度となく赴いてきましたが、そんな自分の帰りをいつも皆が待ってくれていました。すなわち、「自分が守るべき場所は、自分が帰るべき場所である」というのが、百竜夜行との戦いの中でつねに主人公の信条であったように思われます。

 

そのことを裏付けるような台詞を挙げだしたら(特にライズ時代のものは)キリがないのですが、サンブレイクのストーリー中でも、ウツシ教官がとりわけ正鵠を射た発言をしています。

 

最近、アヤメさんも少しずつ訓練を再開してるよ。もちろん、ケガの調子も見ながらね。
ケガは怖いものだよ。キミも、くれぐれも気をつけるように。

背にあるものを思えば、どうしても逃げられないことはあるし、無理をしなければならないこともある。

けれど、キミに守るべきものがあるように、キミの身も、皆にとって大切な、守るべきものだ。

キミに何かあれば皆、悲しむ。キミを犠牲にした平和なんて 誰も望んでいないからね。

キミの無事を願う人がたくさんいることを決して、忘れないように! 約束だよ!

(マスター★2 ウツシ)

 

ウツシ自身は時期的にも特段フィオレーネのことを意識して言っているわけではなく、単純に彼の愛弟子が今後も無事に任務を終えられるようにと気遣っているのですが、彼の言葉はフィオレーネにも通じるところがあるんですよね。「背負っているものの大きさが……」と、強敵を相手につい無理をしてしまう気持ちを真っ向から否定せず、その背景に一定の理解を示しているのはウツシらしいフォローですが、それでも彼はなお、個人の自己犠牲が結果として全体にもたらすことになる不幸について力説しています。

 

「カムラの里さえ守れれば自分はどうなってもいい」ではなく、自分が無事に帰ることで初めて皆が心の底から笑ってくれるのだということ、自分は決して平和のための使い捨ての駒などではなく、自分の存在を愛してくれる人たち、共に平和の喜びを分かち合いたいと願ってくれる人たちがいつも近くにいるのだということを、主人公は頭ではなく肌感覚のレベルで理解している。それは、かつてのフィオレーネがまさに欠いていたところの感覚であり、フィオレーネは主人公との狩りを通じて、"「任務を果たして無事に帰る」ために戦う" という、騎士としての新たな志を掴みとったのではないかと思います。

 

フィオレーネならきっと大丈夫です! 皆さんがついていますから!

茶屋のアズキさんは 病人でも食べやすい、やわらかいうさ団子を作ってくださっています。

ジェイは汗を拭いたり、バケツに水をくんできてくれたり、そばで看病をしてくれています。

ふふ、フィオレーネは愛されていますね。わたくしをはじめ、皆さんが早く元気になってほしいと願っています。

(マスター★4 エスピナス後 チッチェ) 

 

おかえりなさいませ、旦ニャ様。…フィオレーネ様が心配ですかニャ? ワタクシも、同じ気持ちですニャ…。

フィオレーネ様は、エルガドの皆様の頼れるお姉さまのようなお方ですニャ。エルガドにいる全員が心配していますニャ。

ワタクシも、空いた時間で介抱しに向かいますニャ。それでは旦ニャ様、お気をつけて。

(マスター★4ライゼクス前 ルームサービス)

 

フィオレーネさん、お元気になられて本当によかったですね。

やはり、エルガドの皆さんの表情もパッと明るくなったのがわかります。

[後略]

(マスター★5緊急前 タドリ)

 

それに、主人公の存在だけではなく、彼女が病床に伏している間、エルガドの皆が総出で支えてくれたのも要因だったのではないかな。みんなが自分の回復を心から祈ってくれていること、自分の存在を必要としてくれていること。自分がいつも周りから頼りにされるのと同じように、自分もまた辛いときには何も躊躇うことなく、仲間に寄りかかってよいのだということ。そして、信頼できる仲間は必ずそれを喜んで受けとめて、二人三脚で支えてくれるということ。そうしたエルガドの絆や連帯をメル・ゼナの一件で実感できたことは、フィオレーネに非常に大きな影響をもたらしたように思います。

 

それから、主人公個人というよりはその生まれ育ったカムラの里の話になりますが、カムラの里は里の全員で協力して里を守るということを信条とし、誰か一人に背負わせるのではなく皆で苦労を分かち合うことを貫いてきた集団です。次の内容は筆者が深めに読みこんでいる部分があることをご了承いただきたいのですが、ライズとサンブレイクのそれぞれの「メインモンスターとの初遭遇ムービー」にも、カムラとフィオレーネの対比がよく出ていると思います。

 

 

画像1枚目は里ストーリーでの初めての百竜夜行の後、砦からの撤収の際にマガイマガドと遭遇した主人公、ヨモギ、イオリのシーン。2枚目はルナガロンの狩猟後、主人公、フィオレーネ、調査隊員たちの前にメル・ゼナが姿を現すシーン。

 

前者のシーンでは、マガイマガドが明らかに他のモンスターと一線を画す存在であることを察してすぐに撤退の判断をしており、一方で後者のシーンでは、フィオレーネがメル・ゼナに勢いよく突っ込んで行くものの返り討ちにあってしまいます。王国の守りを背負う騎士としての彼女の勇ましさや責任感と共に、その危うさをも示すような内容になっていますね。

 

(↑ ギャラリーで再生したため既にMR武器を持っているという不思議な光景)

さらに、先ほど名台詞を紹介したウツシ教官も、ダイミョウザザミ狩猟後に主人公と一緒にルナガロンと遭遇した際には、無闇に戦おうとせず閃光玉でルナガロンの動きを止めて避難を進めようとしますね。このムービーも「狩猟したモンスターを荷車で運んでいるところに別のモンスターが強襲してくる(さらに非戦闘要員もその場にいる)」というメル・ゼナの時と同じ描写なので、サンブレイクの物語の中に限定すれば、ここも対比のシーンになるのかな。

 

もちろん、これらのシーンには諸々の状況の違いがありますから、あの場でフィオレーネがメル・ゼナに多少無茶をしてでも挑もうとした気持ちは十分に分かりますが、こうして見るとカムラの里メンバーのムービーシーンでは、モンスターに遭遇して困った時に、無理な個人プレーで状況を解決しようとしない、という考え方が一貫して描写されているという解釈もできると思います(※)。

 

※里守制度を導入した里長のフゲンは、50年前の百竜夜行について「ハモンが命がけでマガイマガドを追い払ってくれた」と語っていましたが、里の防衛が限界に来ている中でハモンひとりに大きな危険を背負わせてしまったことを悔いていたりするのかな……とも思ったりします。

 

百竜夜行の時も、カムラの里は全員が各々の役割の中で協力し合い、里の団結を以て災禍を乗り越えようとしました。そんな里のハンターである主人公はその団結を体現する存在であり、それが何がしかの形で、フィオレーネの心境に良い影響をもたらしたのではないかな。主人公は作中ではひたすら無言(?)なので、その辺のお話は想像になってしまうところもあるんですけどね。

 

で、カムラの里から話を戻しまして、エルガドの中で特にそうしたこれからの協力体制のあり方について考えようとしているのがクランでして、フィオレーネがこれまでの信念を改めるに至ったのと同時期に、彼女を目標として頑張ってきたクランもまた、研究に取り組む志を新たにしたようです。

 

最近の出来事…自分を見つめなおすいい機会になったわ。私はもう、フィオレーネとは張り合わない。
彼女は、危険をかえりみずに仲間を守ってくれた。私の研究もまた…騎士団やあなた達に捧げるものでありたいの。

きっとそれが、調査隊の最高の形よね! ふふ…。こんなこと、考えてみれば当たり前のことかもしれないけど。

でも、気づけてよかったわ。ありがとう…。…これでも、あなたへのお礼はまだまだ言い足りないわ。だから、無事に戻るのよ。

(マスター★5緊急前 クラン)

 

フィオレーネには息災でいてほしいという気持ちは有れど、同時に危険を冒してでもメル・ゼナから調査隊員たちを守ろうとしたフィオレーネの騎士としての誇りと責任感に、彼女は心を打たれたようです。

 

あるいは、フィオレーネをライバル視して追いかけていた自分と比べて、王国やエルガドの皆の安全というとても大きなものを背負って戦ってきたフィオレーネを見て、自分とフィオレーネが見ていた景色の差に「自分はまだまだこの人には遠く及ばない」と感じたのかもしれません。そして、そんな自分がこれからなすべきこととは、以前のフィオレーネがそうしたように、仲間のために自分の責務を全うし、前線でモンスターを狩猟するフィオレーネや主人公、王国の騎士たちを研究者の立場から支援することなのだと決意したのでしょう。

 

フィオレーネばかりが皆を守るのではなく、自分もまた皆を守れるようになることで、互いに支え合えるようになること。それが、騎士フィオレーネを誰よりも尊敬しつつ、一方で「簡単に命を投げ打つ」というこれまでの彼女の危うさをも知り尽くしていたクランが、今回の「フィオレーネがメル・ゼナから仲間を庇って倒れた」という一件を経て考え抜いた、彼女なりの答えなのだと思います。

 

フィオレーネが大切にしている騎士の誇りや美徳、責任感はもちろんとても素晴らしいし、多くの人たちの範となるような存在ではあるけれど、一方で彼女がそういう「騎士」としての自分に縛られすぎて、色々とひとりで気負いすぎることがないような、そういう「チーム・エルガド」にこれからなっていけるといいね。

 

(マスター★6 バハリ)

 

3.ライズ&サンブレイクのヒロイン姉妹

 

ここからはおまけといいますか、本編とはまた違った角度での考察を。モンハンライズとサンブレイクでは、共に「姉妹」のキャラクターが重要なポジションにあります。ライズではヒノエ・ミノト、サンブレイクではフィオレーネ・ロンディーネがそれですね。

 

で、筆者の思うところでは、フィオレーネはフィーリングとしてはミノトに近い部分があり、ロンディーネはヒノエに近い部分がある、つまりライズとサンブレイクで姉妹それぞれの属性が、

 

姉 ヒノエ     フィオレーネ

      \ /

      / \

妹 ミノト     ロンディーネ

 

という形でクロスしているなぁ、と思っています(ヘッタクソな図……)。もちろん、彼女らには四者四様のパーソナリティがありますから、必ずしも性格が完全に一致しているわけでもありませんし、逆に妹同士、姉同士で波長の合う部分もあると思いますが、大まかなフィーリングとしてはそのような印象が受け取れる、という感じ。

 

まあなんというか、筆者が一番思っているのは、元々のフィオレーネってミノトみたいなタイプだよねっていう話なんです。精神的な骨格が真面目そのもので、自分よりも他の何かを優先する傾向があり、何かと大きなものを背負い込むあまり身を滅ぼしかねない性格をしています。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

ミノトの詳しい話は以前書いたこちらの記事に譲りますが、ミノトはヒノエ姉さまのことはもちろん、誰かが困っているのを見かければ放っておけないという感じで、何をするにも自分が苦労する分にはいくらでも構わないという、優しくて真面目なのだけど少し極端なところがあります。「絶対に自分が何とかしなきゃ!」という思考になりがちで、どう考えてもミノト個人のキャパを超えているものすら自分ひとりで背負ってしまう(そして色々と悩んでしまう)ところがありますね。

 

フィオレーネも元々は王国のためなら自分はどうなっても構わないという感じでしたし、彼女が「命に代えても」とまで言い切ってしまっていたのは、自分の目の前で起きている事態に背を向けることを――それがたとえどれほど強大で、自分の力では勝ち目がないかもしれないほどの危険なモンスターだとしても、それに対処して王国を守るという騎士の使命から逃げることを、彼女の責任感が許さなかったからに他なりません。

 

ガレアスの副官としての激務があるにも関わらず、「王国騎士として王域三公の狩猟を押し付けてしまうわけにはいかない」と、食事をとる間すら惜しんでガランゴルムの狩猟に同行してくれたりもしましたからね。「命をかけて守る」というのは、自分は他の誰かを守るけれども自分自身は他の誰かに守られなくてもよいということですから、フィオレーネも「自分が他人に頼られるのは構わないが自分が他人を頼るのは申し訳ない」と、他のもののために自分を擦り減らしていくタイプだなぁっていう印象があるし、彼女が率先して犠牲になろうとする姿を見ると、王国という巨大なものが彼女ひとりの肩に重くのしかかっている感じになってしまうところも否めませんでした。

 

それから、ミノトといえば人見知りをしがちなところがありますが、フィオレーネの方も、人見知りというレベルではないにしても、初対面の相手にどう接してよいか困ってしまうようなシーンがあります。

 

カムラの里からのお客人も エルガドという慣れぬ地で 緊張されてしまうのではなかろうか…。

せっかくなのだ。エルガドを楽しんで いただきたいと考えている。…しかし、どのようにもてなせばよいのだろう…。

うさ団子を共にいただきながら、日々の鍛錬についてや文化の違い、狩猟の立ち回りについて話せばいいのだろうか…?

(マスター★1ヨツミワドウ後 フィオレーネ)

 

お客さんにエルガドを楽しんでもらいたいという彼女の丁寧なもてなしの気持ち自体は賞賛したいところですが、もう少し肩の力を抜いてもいいのに……とも思わないでもありません。マジメというか、完璧主義すぎるというか……。でも、事前にあれこれとカッチリ段取りを考えたくなっちゃうものなんですよね~、わかります(逆にこういう交流のきっかけを作るやりとりはロンディーネの方が得意な気がする)。人付き合いでなかなか気楽さを持てないところは、ミノトもフィオレーネも似ているなぁという印象です。

 

とまあそんな感じで、ミノトとフィオレーネはそういう部分が近いところがあるなぁ……と感じていたところ、メル・ゼナとの戦いでケガをしたフィオレーネに対して、ミノトが次のようなことを言っているのがとても気になったんですよね。

 

○○さん…。ご無事でしたか。メル・ゼナに襲われたと聞いておりましたので…。

古龍の襲撃を受けたにも関わらず被害ゼロとは、おそれ入ります。さすがはツワモノですね。

それにしても…フィオレーネさんはおケガをされたというのに、あいかわらずご多忙の様子。

お休みになった方がいいと思うのですが、そうはいかないのでしょうか?

(マスター★4 ミノト)

 

ミノトが言っていること自体は至極その通りなのですが、うーん……なんというか、妙にあっさりしているというか、ミノトは他人のことはよくわかるのになぁ、という感じなんですよね。もしミノトがフィオレーネの立場だったとしたら、彼女はたぶん「まだ完治していないので仕事は控えめにして休養します」なんて絶対に言わないと思うんですよ。周りが休めと言っても「わたくしがお休みしたら他の皆さまの負担が増えてしまいますから…」とか言って、多少無理をしてでもフィオレーネのように普段通り職務に励もうとするはずです。

 

そういう性格のミノトですから、フィオレーネがケガをしていても決して仕事の手を止めようとしない気持ちには結構共感するところがあったりするのかな、と思ったのですが、当の本人の反応は「お休みになった方がよいのでは…?」と冷静なんですよね。

 

これはミノトが鈍いとかいう話ではなく、そもそも彼女の思考回路にかなり強めのダブルスタンダードがあるからなんでしょうね。ミノトは他人には人一倍優しいわりに自分自身には断固として厳しいという人間なので、他人がお休みをとる分には「どうぞどうぞ」なのに、自分がお休みを取るのは許せないと思ってしまう。なので、2人はわりと精神的な構造が似ていてお互いかなり分かり合える部分があるのはずなのですが、現にミノトはフィオレーネには「なんでお休みしないの?」と首をかしげてしまうということになるんですよね。

 

うーん……ミノトもそういう自分に厳しすぎるところがもう少しマイルドになったらいいなぁというか、何事にも真面目に取り組むということ自体は誰にも真似できない彼女の美点だと思うのですが、同時にもうちょっと肩の力を抜いて生きて欲しいとも私は願っておりまして……。

 

自分と性格が似ている人に出会うことが、ミノトが自分自身を客観視するための足掛かりになるのでは、と思っているのですが、まあ長年の性格を変えるというのはなかなか難しいことですからね。少しずつ、ゆっくりでいいと思います(一応フィオレーネとミノトを盟勇で一緒に連れて行ったのですが、特殊会話は発生しませんでした)。それにしても、この台詞をわざわざミノトに言わせているというのがやはりミソなわけで、やっぱりカプコンはその辺をよく分かってますね(何様やねん)。キャラの解像度が高くて素晴らしいと思います。

 

一方のロンディーネはといいますと、彼女は性格の方はヒノエとはだいぶ違いますが、思い詰めがちな姉(妹)のことを気にかけるというストーリー上のポジションのほか、天才肌でマルチな才能があるところもちょっとヒノエに似てるな~と思います。

 

ろんでいぬ殿は、王国の騎士であらせられたのですな。所作に一切の隙がないのは、そういうわけでしたか。

一方で、今の交易商という仕事に関しては 里にいらっしゃる前に、 ごく基礎的なことを学んだのみ、とのこと…。

いやはや、それだけであれだけの利益をあげておいでとは! 並外れた商いの才を持っておられる。

ぜひ転職をお勧めしたい心持ちなのですが… その場合もしや、それがしが職を失う可能性が…? それは困りますな…。

(旅立ち前 カゲロウ)

 

カゲロウとロンディーネが話しているという時点で既にかなり気になるのですが、それは置いておきまして、カゲロウによれば、ロンディーネは元々が騎士ですから交易商は当然素人であったものの、基本を少し学んだだけであとはどんどん商売上手になったとのこと。それでいて騎士としても王国屈指の実力者ですから、やはり彼女は底知れぬ多彩さを秘めていますね。

 

まあ、商才の方はともかくカムラの里で交易商のフリをするのはチーニョ&カナリーノも含めて壊滅的に下手だったので、その辺はなんとも言えないところではあるのですが……。嘘をつけないというのは演技力というより性格の話ですからね。ロンディーネさんのそういうところも私は好きですよ。

 

ちなみに、ここまでは姉妹のもつ属性がちょうど逆になっているという話をしてまいりましたが、先にも述べたように姉のヒノエ、フィオレーネは共に拠点の精神的支柱として皆から慕われているという共通点もありますし、そしてまたミノト的には同じ妹として、ロンディーネに親近感を覚えるところもあるみたいです。

 

ロンディーネさんにお聞きしましたが、フィオレーネさんは、王国でも名うての騎士様だそうです。

しかし、かく言うロンディーネさんもかなりの実力をお持ちだと思うのですが 私などは、と謙遜されるばかりで…。

一緒にしては失礼かと思いましたが、その…優れた姉を持つ妹の気持ちはとてもよく、わかりますので…。

その旨をお伝えしましたら 少しお近づきになれたといいますか… 今度、お夕飯を一緒に、と約束を…。

わたくしとしたことが、つい勢いで大それたお誘いをしてしまいました…。わたくしの作る料理、お口に合うでしょうか…。

(里帰り時 ミノト)

 

ロンディーネはミノトのように「姉に劣等感を覚える」みたいなタイプではないものの、自分は姉にはまだまだ敵わないと彼女自身は感じているらしく、その辺がミノトと馬が合ったみたいです(※)。

 

※盟勇でフィオレーネとロンディーネを連れて行ったときの台詞によれば、2人はお互いに自分は妹(姉)には敵わないと思っている様子。リスペクトし合える素敵な姉妹ですね。

 

それにしても、あのスーパー人見知りのミノトが自分からヒノエ姉さま以外の誰かをご飯に誘うだなんて……ミノトも少しずつ成長していますね。彼女がロンディーネに手料理を振る舞うということになったようですが、ヒノエ姉さまの健康と美容を守り抜いてきた彼女の料理の腕前ですから、きっとロンディーネも喜んでくれると思います(後に、ミノトとロンディーネが食事をしたことをヨモギから聞くことができます)。

 

続いておまけその2。フィオレーネの密かな趣味について、情報屋のフカシギから聞くことができます。

 

[前略]

王国騎士フィオレーネ殿は…。

じつは…。

かわいいものが大好き!

勇猛果敢で、提督の右腕のお姉さん。絶対に自分では言わないけど、かわいいものに目がないニャ。

フカシギ調べによると、彼女の自室はいろんなモンスターや動物のぬいぐるみであふれているらしいニャ。

このことを知っているのは 妹のロンディーネ殿だけニャ。これは重大なヒミツを握ってしまったニャ。

[後略]

(マスター★2 フカシギ)

 

これは公式のアナザーストーリーでも題材になっていた小ネタですね。その公式小説にもあったように、騎士らしくあろうとするフィオレーネは自分が気を緩める姿を他人に見せたがらないようですが、そんな中でも、同じ騎士でありながら素の自分を見せられる相手である妹のロンディーネはやはりフィオレーネにとって特別な存在で、彼女たち姉妹の絆の深さを感じさせるエピソードです。

 

フィオレーネの普段の感じからすれば、これは意外といえば意外な趣味ではありますが、責任感が強い人であればこそ、それとバランスを取るように、かわいいぬいぐるみなどに対して癒しを求めたり、甘えたいという欲求を満たそうとするというのはありそうな気がしますね。

 

ちなみに、ロンディーネは盟勇でミノトと一緒に連れて行くと、姉を守れるように修行したいというミノトに対して「なんと美しい姉妹愛だろう!」と賛辞を送りミノトを照れさせるという内容の特殊会話があります。ロンディーネはおそらくミノトのようなガチシスコンではないにしても、妹としてフィオレーネに対して色々な想いのある彼女ですから、ミノトに共感する部分も多々あるのでしょうね。この2人は一緒に食事をした仲ですが、お互いの姉についての話も色々したりしたのでしょうか。公式アナザーストーリーでぜひその辺りの話を期待したいところです…!

 

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そんなわけで、前回のカゲロウの記事からずいぶん空いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。本記事に関して少し補足をしておきますと、筆者は「ミノト」「ロンディーネ」のエルガド滞在時の台詞を一部取り逃しているため、2ndデータを進めて台詞を再収集した際に、必要があれば本記事に一部加筆修正を行うことになると思われます。1stデータですらこれからまだまだ沢山のコンテンツ追加があるというのに、2ndデータを進めるのはいつになるのやら…という感じではあるのですが、いずれ必ず行う予定ではありますので、どうか気長にお待ちいただけますと幸いです。

 

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!