エルガドを支える ふたりの「チッチェ」

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。

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本記事では受付嬢のチッチェ姫を取りあげていきます。王国の王位継承権をもつお姫様でありながら、受付嬢の資格を取得してエルガドに赴任し、猛き炎や騎士たち、ハンターたちの狩りを支える人物です。聞くところによると、巷では何かと賛否のあるキャラらしいのですが、当の筆者はチッチェ姫にけっこうデレデレ……というと何か変な言い方になりますが、作中でも好きなキャラの一人です。今回はそんなチッチェ姫をご紹介していきます。

 

本記事では適宜、公式アナザーストーリーの内容を参照いたしますので、以下のリンクからぜひそちらもどうぞ。

 

 

ーーーー目次ーーーー

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1.姫としての使命に燃える

 

周知のとおり、チッチェ姫は王国のお姫さまであり、王国の危機において、普通なら最優先で守られるべき立場である彼女が最前線のエルガドに勤めているという状況自体、本来ならばあり得ないというようなことでもあります。しかしながら、チッチェ姫は「王族である自分だけ安全な場所で守られているばかりではなく、危機に立ち向かうことこそ王国の姫としてなすべきことだ」という強い使命感を抱き、前線の人手が足りていないことを洞察し、猛勉強の末に受付嬢としての資格を取得して、エルガドに赴任することになりました。

 

わたくし、やっとの思いで ここエルガドにて受付嬢のお仕事ができることになりました…!

王国の危機だというのに 姫である自分だけ、安全な場所で見ているだなんてできません!

カムラの里よりあなた様も来てくださいましたし…。なおさら、ですね!

いち受付嬢として接していただけると チッチェはとても嬉しいです。ではでは、クエストに行かれますか?

(マスター★1 チッチェ姫)

 

最前線の皆と同じ場所、同じ立場で共に戦いたいという意志が強く、エルガドでは姫ではなく一人の受付嬢として接してほしいと望むチッチェ姫。こうした彼女の振る舞いは、いきなりスケールが大きい表現になりますが、いわば「民のことを第一に考える」王国の理念そのものの体現であり、王国の異変に立ち向かおうとする人々の、協力と連帯の中心点になっていると思うんですよね。

 

しかしながら、「受付嬢」という仕事は実際に自分でモンスターを調査したり狩猟したりするわけではありません。むろん、姫が受付嬢として前線勤務をしているというだけでも、騎士たちにとっては大きすぎるほどの精神的支柱であることは確かなのですが、それでもなおチッチェ本人は「自分は安全な場所からハンターや騎士たちを危険な狩場に送り出している」ということを、心苦しく思う部分があったようです。

 

そんなチッチェ姫の悩みは、意外な人物によって解決されることになります。

 

…○○さん。わたくし、王女でありながら、危険な任務を騎士の方々に託すばかりで…

皆を護るために狩りにいけない自分を、もどかしく思っていました。

ですが、先日届いたロンディーネからの手紙に、「"護る"とは狩るのみにあらず」と書かれてあって、気持ちが軽くなりました。

カムラの里の、里長様のお言葉だそうです。きっと力強く、優しいお方なのでしょうね。わたくしもいつか…そのようになれたら…。

……あら、いけない! ダメよチッチェ! 今のわたくしは受付嬢! ムダ話をしてはいけないわ!

いま入っているクエストが、カムラの里とエルガドを繋ぐクエストと聞いて、つい思いを馳せてしまいました

[後略]

(マスター★1緊急ヨツミワドウ前 チッチェ姫)

 

このシーン、緊急クエスト前のさらっとした会話なのですが、個人的には非常に胸熱なんですよね。フゲンはエルガドでチッチェ姫が受付嬢をしていることを元々知っていたわけではないでしょうから、恐らくロンディーネからそのことを聞いたということになります。

 

ロンディーネはチッチェ姫の悩みを何かしらで知るところとなり、その際、カムラの里に赴任中に里長の口から話された、「里を護るとは、狩るのみにあらず」という印象的な言葉に思いが至ったのでしょう。そして、チッチェ姫に受付嬢の仕事に自信を持ってもらえるよう、フゲンに一筆をお願いした……という感じの事情になっていると思われます。カムラとエルガドがこういう形でも助け合っているという点や、何よりロンディーネのカムラの里へ対する思い入れの深さが感じられるエピソードなんですよ。

 

また、「危機が迫っているのに自分は狩りに行けない」というもどかしさを、「集団で大きなことを成し遂げるために、組織の中での自分の役割を大切にする」という気づきによって乗り越えるというのは、カムラの里を担う若手の2人、とりわけヨモギとの対比でもあるんですよね。ヨモギとチッチェは何かと共通点が多く、間違いなく意図された対比であると思われるのですが、こういう細かいところにもそれが存在しているわけです。

 

チッチェの受付嬢にかける熱意は、「エルガドで仕事がしたい」と言い出した当初こそ周囲からは色々反対されていた(彼女の能力や資質が云々というわけではなく、前線は危険だからという理由で止められていた)ようですが、実際に赴任して皆と共に仕事をするようになった今となっては、むしろエルガドにおける彼女の存在の大きさを皆が感じている様子。提督のガレアスも次のように言っています。

 

……ああして皆と同じように働く姿を見ると 信じられないかもしれないが… チッチェ姫は正真正銘、我らが王国の姫だ。

姫というご身分であるにも関わらず 王国を憂い最前線まで来てくださった。

……しかしいま彼女は受付嬢だ。受付嬢として接すればいい。チッチェ姫もそれを望んでいるはずだ。

(マスター★1 ガレアス)

 

騎士たちを統率する身として、前線の危険を誰よりもよく熟知している彼などは、チッチェ姫がエルガドに行きたいと言い出した時にはいの一番に反対していそうなものですが、そんな彼がこうしてチッチェ姫の意志を汲み、受付嬢としての彼女を立てるような事を言ってくれるのは嬉しいですね。

 

王女であるチッチェがエルガドに赴任するというのは、ガレアスら騎士団の他にもエルガドの人たちにはおそらく一通り周知されているようで、エルガドの交易を取り仕切っている船乗りたちの中にも、チッチェ姫の密かなファン(?)がいる様子。

 

ねぇ、さっき受付嬢の…っていうか、チッチェ姫様と話してただろ? すごいよなぁ、ハンターさんって…。

ほら…普通はお姫様なんて近くで見ることもないし、お話しすることなんてできないからさ… うらやましいっていうか…。

…え? な…何言ってんだよ、恐れ多くて俺なんかじゃ、姫さまとお話しできないって! ほら、店番もしなきゃならないし! …な?

(マスター★1 フルル)

 

チッチェ姫様がさ…さっきからやる気じゅうぶんってな感じで、すごい真剣な様子なんだよ。どうしたのかな…?

…え? いやいや! そんなにいつも見つめてるわけじゃないから! そんなの姫様に恐れ多いから!

ほら、俺って船乗りで視力もいいからさ、遠くからこうやって静かに見守ってるだけだから!

(マスター★3緊急前 フルル)

 

フルルはエルガドのミハバ枠にあたる人物で、彼は何かとチッチェ姫のことが何かと気になっているご様子。ヒノエに対するミハバほど突き抜けてはおらず、どちらかというと気持ちをあまり悟られたくないタイプではあるようですが、彼の中でチッチェは何となく「推し」みたいな存在になっているようですね。

 

そういえば、雑貨屋のオボロはチッチェ姫の護衛という密命を帯びており、あの雑貨屋の位置からつねにチッチェの安全を見守っているという話を前回の記事でご紹介しました。王国の要人中の要人ですから護衛をつけるのは致し方ないとしても、護衛の存在をチッチェ自身に伝えるのは、「姫として守られるのではなく自分も王国のために仕事をしたい」という彼女の気持ちをないがしろにしてしまいますから、チッチェ姫はオボロが自分の護衛であるということは知らない様子。しかし、どこからか視線を感じてはいるようで、次のようにコメントしています。

 

じつは、エルガドに来てからずっと どこからか、視線を感じるんです…。
いやな雰囲気の視線ではなく、まるで見張るような眼差しというか…。まったく敵意は感じないんです。

どちらかというと、温かさを感じるんです。見守られているというか…。でも、護衛はつけていませんし…。

わたくしの気のせいかもしれません。もし何か気づいたことがあったら 教えてもらえると嬉しいです!

(マスター★4 チッチェ姫)

 

彼女が感じているというこの視線、筆者はオボロが彼女のことを見守っている視線だと思っていたのですが……まさか、この視線の正体はオボロではなくフルルだったのでしょうか……? 

 

さて、そんな感じで受付嬢としてエルガドに馴染んでゆくチッチェですが、彼女の中の軸はあくまでも「王国の姫としてなすべきことは何か」という所にあるようでして。彼女は周囲には「姫ではなく受付嬢として接してほしい」と言い、自身も受付嬢として仕事に精を出しつつも、一方で彼女は王女としてあるべき姿、前線の皆を支える精神的支柱としての自分の役割を強く自覚し、つねに自己を律することを忘れません。

 

王域生物の影響で他の地域にも異変が…。王国の姫として、心が痛みます…。

…ハッ! ダメよ、チッチェ! そんな弱気なことを言っては! 姫だからこそ、しっかりしないと!

影響が出ているからこそ、早急に原因を突き止めなければなりませんね…! 引き続き、よろしくお願いします!

(マスター★2 チッチェ姫)

 

落ち込みかけた気持ちをさらっと前向きに切り替えているようにも見えますが、「王国の姫」「前線の受付嬢」という二重のアイデンティティの中で自分の使命を疎かにしない、というのは実際、かなりストイックなことをしている(本人はあまりこういう言われ方を好まないでしょうが、いくら王女とはいえこの年齢にしては特異なほど)と思います。明るい性格は彼女の元来のものですが、つらい状況でも皆を元気づけるために常に明るくあり続ける、というのは、彼女の精神的骨格の非凡さの証左といえるでしょう。

 

本編で初めてメル・ゼナが登場した後の出来事では、特にそのことがよく分かります。

 

メル・ゼナに襲われたと聞いたときは心配で泣いてしまいそうになりましたが、皆さんご無事でホッとしました。

ケガをしたフィオレーネも「異常なし」との検査結果ですので、まずはひと安心ですね。

ここから先はキュリアの調査が最優先とのことで… 引き続き、よろしくお願いいたします!

(マスター★4 チッチェ姫)

 

フィオレーネのことは心配ですが… 私はいつもどおりに、元気で、明るくお仕事をいたします!

だって、わたくしは受付嬢であると同時に、この王国の姫…! 暗い顔などしていられませんから!

[後略]

(マスター★4ライゼクス前 チッチェ姫)

 

メル・ゼナの件のあとに「泣いてしまいそうになった」ということですから、自分が周囲をいたずらに動揺させてしまわないようにと、心配で胸がはち切れそうな気持ちを心の中で必死に抑えていたみたいなんですよね。その後、エルガドの中核であるフィオレーネが病床に伏してしまったときにも、沈んだムードに傾きかけたエルガドの活気が失われないようにと、率先して元気よく、皆を安心させるように振る舞おうと心がけています。

 

しかしながら、フィオレーネが無事に回復した際には、張り詰めていた気持ちがほころんで涙を流してしまうシーンも。…というよりもむしろ、先述の通り、チッチェ姫がこれまで自分の中の不安な気持ちを表に出さないように自制を徹底し、受付嬢として(そしてまた姫として)エルガドを支える使命を全うしてきたという前フリがあるからこそ、フィオレーネ復帰のシーンで彼女が流した涙に意味があるんです。

 

(フィオレーネを案ずるガレアスを元気づけるチッチェ姫)

(しかしその直後、フィオレーネが戻ってきたときには安堵のあまり、
今まで必死にこらえてきた反動で涙を流してしまいます)

寡黙に海の向こうを見つめるガレアスの心情を汲み、フィオレーネはきっと大丈夫だと彼を励ますチッチェ姫。本当は自分だって、フィオレーネのことが心配で、いてもたってもいられないはずなのですが、自分が暗い顔をしていては皆を元気づけられないと、つとめて明るく振る舞おうとしています。このシーン、ガレアスに恭しく挨拶されて「ここでは受付嬢ですから」と言った直後なのですが、彼女自身はこうして姫としての役割を片時も忘れないんですよね。

 

ところがフィオレーネの元気な顔をみた瞬間、気持ちがほころんで涙が……。彼女が気を緩めて素直になる瞬間がここでようやく見られる、というところから、逆説的に彼女が背負っているものの大きさをしみじみと感じるのです。

 

そしてまたこのシーンはおそらくチッチェ姫にとって、彼女自身の内の一つの佳境を乗り越えた瞬間でもあったと思うんですよね。というのは、チッチェ姫は前々から、「受付嬢という立場で皆を危険な最前線に送り出すのが心苦しい」ということを悩んでいました。

 

むろん、そもそも一国の姫が前線の拠点に赴任するというだけでも異例の事態であり、騎士たちにとってはそれだけでも眩しすぎるほどの存在といいますか、前線の自分たちの心の支えとなるわけですが、それはあくまで周囲の者が客観的に見た場合は、という話。チッチェ姫自身はエルガドに赴任してもなお、騎士たちやハンターを調査やクエストへと送り出す立場として、「自分は安全な場所から……」という葛藤を抱えていました。

 

そんなチッチェ姫にとっては、現地に赴いたエルガドの仲間がモンスターとの戦いで重篤な傷を負ってしまうというのは、非常に負い目を感じることであるはず。まして、このままフィオレーネの病状が快復しなかったとすれば、心優しく責任感の強い彼女は「自分もエルガドを護るとはいったい何だったのか」などと、自分の存在そのものを罪として呪うやもしれません。

 

……まあ、その辺は例によって、私の想像が行き過ぎておおげさな表現になっていることはさすがに自覚していますが、いずれにしてもチッチェ姫はそれほどまでに最前線で戦う人たちのことを大切に想っていて、常に彼らと共にあり、そしてエルガドの誰も欠けることなく危機を乗り越えられることを願っていたからこその涙だった、ということは確かだと思うのですよね。

 

あとは、チッチェ姫とフィオレーネの個人的な関係についていえば、王国内での立場という形式でいえば、フィオレーネは女王陛下や王女のチッチェ姫の「家臣」であるわけですが、アナザーストーリーでもあったように、女王陛下にとってフィオレーネ・ロンディーネ姉妹は全面的に気を許している側近、非常に親密な間柄であり、おそらくチッチェ姫にとってのフィオレーネは、家臣がどうとかいう形式とは別に、「幼いころから自分の世話を焼いてくれた優しいお姉さん」という存在でもあるはず(アナザーストーリーでも、フィオレーネはチッチェ姫の普段の様子を熟知していました)。

 

そうなると、チッチェ姫にとってこの一件は、「ほぼ家族同然の間柄である親しい人物を喪うかもしれない」という恐怖に等しいものであった、ということにもなるやもしれません。それに、それだけの長い付き合いがあるとなれば、チッチェ姫としてもフィオレーネの性格はよく知っていて、彼女が使命感に駆られて自己犠牲に走りやすいきらいがあることを心のどこかで不安に思うところがあり、今回それがまさに的中してしまった、というショックもひょっとするとあったかもしれませんね(特にチッチェ姫は人間観察力にとても優れているので、なおのことフィオレーネの長所も短所もよく知っているかも)。

 

元気になったフィオレーネの顔を見て節操無く泣き出してしまったことを、彼女自身は「姫としては少し恥ずかしいことだった」などと後で思っているかもしれませんが、誰かのことを想って流した涙は誇りにしてよいものだと思います。このムービーは本当にサンブレイク屈指の名シーンよね。そしてこれの直後にバハリのあの「反撃の時間でぇす」がやってくるので、このムービーはサンブレイク屈指の迷シーンでもあるのだ……。情報量のインフレを感じる今日この頃です。

 

2.みんなのことをよく観察しています

 

さて、チッチェ姫の他の台詞にも触れていきますと、彼女との会話では、エルガドの皆のことについての話がしばしば登場するんですよね。チッチェ姫が元々色々なことに興味が尽きない性格であることや、エルガドの皆のことを大切に想う気持ちの表れということなのか、彼女はエルガドの一人ひとりのことをよーーーーく観察しているんですよね。

 

○○さん、バハリを無事に見つけてくださったそうで、わたくしからもお礼を申し上げます!

ですが、バハリは引き続き調査を続けるとのことで…

危険ではありますが、言い出したら聞きませんから、仕方がありませんね。

[後略]

(マスター★2アンジャナフ前 チッチェ姫)

 

基本的に誰に対しても丁寧な物腰のチッチェ姫をして「言い出したら聞きませんから仕方ない」と言わしめるバハリも逆にすごいものですが………。とはいえ、ここでのチッチェ姫は別に彼の現地調査のスタイルに呆れていて放っているというわけではなく、むしろバハリのことをとても信頼しているのです。

 

バハリの無事を確認できたようで、心の底からほっとしています。ありがとうございました。

彼にはいつもハラハラさせられます…。でもいつも、どんなに危険なところでも ちゃんと帰ってきてくれるんです!

自分の力量を正しく見定めているのですね。やはり天才は違うということでしょうか…! チッチェ、あこがれます…!

(マスター★2アンジャナフ後 チッチェ姫)

 

危険を顧みないバハリを引き留めないのは、主人公が水没林のアンジャナフを狩猟したことで目下の危険が去ったからというのもあるでしょうが、バハリは決して単なる猪突猛進なわけではなく、常にギリギリのラインを見極めて「可能な限りの無茶」の範囲内で行動していることを彼女は理解しているからです。以前のタドリの記事でも少し書きましたが、バハリは研究に対して純粋であるゆえに、天才的な研究者でありながら自分の知識や才幹におごることがないのが彼の大きな人格的魅力です。

 

バハリは研究員として本当に優秀です! わたくしもバハリから様々なことを学ばせてもらっています。

バハリは特に生物についての知識が豊富で 今回のような生態調査は得意分野なんです。やり方はちょっと過激ですけど…。

他にも、エルガドにある施設はほとんどバハリが設計しました。本当に彼は天才です。

現地調査が過激なこと以外はすごいのです! 過激なこと以外は、本当に!

(マスター★3 チッチェ姫)

 

とはいえまあ、彼の調査を傍から見ている分には肝を冷やしっぱなしですから、「ほどほどにしてほしい」と思うところも無いわけでは様子。これほど綺麗な「大事なことなので2回言いました」を久しぶりに拝見しました。しかしながら、いたずらに自制を求めれば却ってバハリの長所を削いでしまうことも分かっているからこそ、バハリはあれでよい、ということなのでしょうね。

 

やはりタドリさんはすごいお方でしたね! スゴウデの薬師というお話… 納得感しかありません。

…それにしても、バハリとタドリさんはどのようなご関係なんでしょうか…?

性格はあまり似ているようには感じませんし 出身が同じというわけでもなさそうです。

王国で疫病が起こった頃から、となると かなり長いお付き合いになりそうですが… むむむ…チッチェ、気になります!

(マスター★4ライゼクス後 チッチェ姫)

 

バハリと旧友であるタドリについても、彼女は興味津々。タドリは本編より以前にもエルガドには来ていますが、普段は各地をめぐって現地調査をしていますから、チッチェ姫はあまり直接の面識はない人物ということになります。2人は50年前の王国の疫病の時、つまりチッチェ姫が生まれる前からの友人であり、しかも色々と正反対な人となりをしていますから、彼らの友情についてはとても関心があるようです。元々のお城でのチッチェ姫の暮らしについてはあまり分かりませんが、お城の中での限られた人間関係の中で生活する時間が長かったからこそ、他人に対する興味が強いという一面もあるのやもしれません。

 

続いて、そのバハリが寒冷群島で捕まえてきたキュリアを見たエルガドの人たちについてのコメント。

 

今、ここエルガドは バハリが捕獲してきたキュリアの話題でもちきりです!

あの強烈なインパクトの見た目が… 賛否両論を巻き起こしています…。

…ですが、わたくしが知る限り 好んでいるのは、セルバジーナとフランだけです…。

あの見た目はちょっと怖いですよね…。○○さんは、どう思いますか…?

(マスター★3イソネミクニ亜種後 チッチェ姫)

 

チッチェはここで「キュリアの見た目に好感触なのはセルバジーナとフランだけ」と言っていますが、事実としてこの時期のエルガドの皆の会話を聞いてみると、確かにその2人だけ「綺麗」「かわいい」と言ってるんですよね。こういう話題一つとっても、皆のリアクションをよく見ているんだなぁと感心する台詞です。そして、キュリアの事を「強烈なインパクトの見た目」と表現し、決して「キモチワルイ」などマイナスな言葉を使わないところも、王族だからとかではなく、チッチェ個人の人柄としての品の良さを感じさせますね。

 

話を戻しまして、チッチェ姫は一国の王女ですから、王国の長である女王陛下とコンタクトを取ることが多い王国騎士団や研究所の上層部の人たちとはお城にいた頃から面識が深いようです。これまで話題に上がったバハリも然り、他にはフィオレーネのことについても、チッチェは色々と話してくれます。

 

バハリが帰ってきて、フィオレーネがとても楽しそうに見えます。ふふふ。

あら、そうは見えませんか? ですが、わたくしにはわかります。

表面上はどうあれ、ふたりは実力を認め合っている相棒のような関係なんです。そういう関係、とてもあこがれます…!

(マスター★3 チッチェ姫)

 

騎士としての職務に忠実なしっかり者である反面、あまりくだけた感情表現をしないフィオレーネが、バハリがエルガドに帰ってきたことで内心喜んでいる様子を彼女は楽しそうに見届けています。当のフィオレーネは、やたらと食事睡眠について小言をふっかけてくるバハリに「うっとうしい」とか言っているツンデレ(?)なのですが、チッチェはそんな彼女の機微が手に取るようにわかるようです。

 

フィオレーネがメル・ゼナとの初交戦後に倒れてしまったときも、フィオレーネを看病してくれるエルガドの皆のことを誇らしげに語ってくれます。

 

フィオレーネならきっと大丈夫です! 皆さんがついていますから!

茶屋のアズキさんは 病人でも食べやすい、やわらかいうさ団子を作ってくださっています。

ジェイは汗を拭いたり、バケツに水をくんできてくれたり、そばで看病をしてくれています。

ふふ、フィオレーネは愛されていますね。わたくしをはじめ、皆さんが 早く元気になってほしいと願っています。

(マスター★4エスピナス後 チッチェ姫)

 

チッチェ姫も受付嬢の仕事が忙しいでしょうに、それでもなお1人ひとりがフィオレーネに具体的に何をしてくれているのか、もれなく把握しているのがすごいんですよね。エルガドにいる一人ひとりがこうしてこの時期にここに居合わせたこと、そしていざという時に手を取りあえることの価値をこうして具に言葉にしてくれるのは、本人はいずれ統治者たる身として無意識のうちにできることなのかもしれませんが、王国にとって、エルガドにとって、かけがえのない大きな財産だと思います。

 

自己犠牲をいとわないフィオレーネをガレアスが叱ったときにも、彼の意図を汲み、全面的に信頼するようなコメントを残しています。

 

…な、何やら提督の大きな声が聞こえてきましたが、大丈夫でしょうか? 寡黙な彼にしては、珍しいことですね。

…ですが、人の上に立つ者は、ムダに部下を怒鳴ったりしないもの。それが騎士をまとめる提督ならば、なおさらのことです。

怒鳴ったのは、その必要があってのことでしょう。チッチェは詮索いたしません。

[後略]

(マスター★2緊急前 チッチェ姫)

 

ガレアスの意外な行動にも、彼は無為に怒鳴ったのではなく上司としての最善の行動を選んだのだと言うチッチェ。実際彼女のその観測は当たっており、この後のガレアスは主人公に「フィオレーネをフォローしてやってほしい」という旨の話をしてくれるんですよね。そして普段は他人に興味深々な彼女でも、こういう時には当事者たちの気持ちを配慮して、敢えて介入せずそのままにしておくという判断もできる。器の大きさを感じさせますね。

 

そして、「人の上に立つ者は…」というガレアスの行動への感想には、自分自身がいずれ女王として人の上に立つことになる時のことを、何となく想像しているような雰囲気もありますね。フゲンからの手紙に対しても「自分もそうなれたら…」と言っていたように、エルガドの仕事での経験や出会いを、自分がいずれ女王となるときの糧にしたいと考えているのだと思います。

 

よくよく思い出してみると、エルガドでは姫ではなく、受付嬢として接してほしいと彼女自身は言っていますが、その一方でチッチェは「未来の女王様」であって、持ち前の明るさからその重みを感じさせることはありませんが、よくよく考えてみるととんでもないものを背負っているんですよね。

 

姫としての彼女の姿勢には「立派な人だなぁ」と思うばかりですし、彼女自身も姫としての自らの使命や、その自分を支えてくれる人たちのことを誇る気持ちはもちろんあるでしょうが、彼女はそうした責任の伴なう出自を自然すぎるほど自然に引き受けているようにも見えるので、逆にそこから逃げ出したいと思ったことはないのだろうか? と気になる部分もあります。

 

おそらく、現在の彼女自身の中では前向きな気持ちの方が(100%ではなかったとしても)強いのでしょうし、今の受付嬢の仕事にしても彼女が一国の姫としてなすべきことを考えた結果ということではあるのですが、一方で彼女がエルガドで受付嬢として振る舞っている時間というのは、ひょっとすると彼女にとっても「姫ではないチッチェ」を楽しむことができる時間ということなのかも? と、少し考えたりもしています。

 

 

3.特技はセルフツッコミ(?)

 

このあたりで少し小ネタを拾っておきましょうか。これまでの台詞にもいくつか出てきていた通り、チッチェ姫は自分の気持ちが緩んでいると感じたときに、何かと「こら! チッチェ!」と、自分で自分を叱咤するような言い回しをします。受付嬢として、姫として、皆に情けない姿を見せないように自己を律するという心がけによるものであり、この年にして自分のことを客観視できるというのはなんかもう偉すぎでしょという感じなのですが、その中で時折とても可愛らしいシーンが見られることもあります。

 

[前略]
ではさっそく、任務としてあなた様に受けていただくクエストについてご説明いたしますね。

ここから、少し難しいお話になります…。わたくし、うまくできるかドキドキです…! ああ、心臓から口が飛び出そう!

……ダメ! しっかりするのよチッチェ! 心臓から口は飛び出さないわ! 例えにしたって、口から心臓でしょ!

…コホン、失礼いたしました。それでは、説明を始めます。

[後略]

(マスター★1 チッチェ姫)

 

主人公にクエストのことをうまく説明できるか緊張するあまり、「心臓から口が出る」という王道の言い間違いをしてしまうチッチェ姫。そこでただ言い直すのではなくて、「それを言うなら口から心臓が出るでしょ!」と、自分の独り言に対してしっかりとセルフツッコミを決めていくところが律儀でかわいいですね。本人はしっかりとした態度で振る舞いたいと思っており、実際しっかりした子であることは疑う余地もないのですが、それと同時に彼女の「感情表現豊かな少女」としての側面がよく伝わる一コマです。

 

こんにちは、○○さん! どうですか、エルガドには慣れましたか? 勝手が違って、困られていませんか?

カムラの里から遠路はるばる来ていただき 王国の者として、お礼を言わせてください。これからどうぞよろしくお願いします!

…ふぅ…受付嬢として、バッキリチマって… …こら! 噛んでいるわよチッチェ! 最後まで気を抜いてはいけないわ!

…コホン、失礼しました。受付嬢としてバッチリキマりませんでしたが、何かお困りでしたら頼ってくださいね!

(マスター★1 チッチェ姫)

 

無事に説明を終えてひと安心してしまったせいか、最後の肝心なところでカミッカミなチッチェ姫。心の中の会話を全部口に出しちゃう子ってかわいいよね。…というのはさておき、この台詞は少し気になるところがありまして。この「言葉を噛む」というのは、カムラの里のヨモギちゃんと同じ癖なんですよね。以前(かなり前ですが)ヨモギの記事で紹介した通り、彼女の台詞においても、モンスターの難しい名前が苦手で噛んでしまうというくだりが何度かありまして、こういう所にもこの2人の対比が盛り込まれていたりするんですね。

 

チッチェは何かとヨモギと共通する部分が多く、MRラスボスを討伐した後のエンディングでは実際に2人が対面するシーンもありました。エルガドの茶屋のアズキも、チッチェ姫を見ていると「ヨモギのことを思い出す」とコメントしています。

 

うふふ。チッチェさまが今日もお元気です。ぴょこぴょこされていて とても可愛らしいですニャ。
チッチェさまをみていると ヨモギさまを思い出しますニャ。

お二人ともがんばり屋さんで、明るくて。見ていて心がほっこりしますニャ。さてさて、お仕事がんばりますかニャ。

(マスター★4 アズキ)

 

サンブレイク発売前は「生き別れた姉妹とかなのではないか」とまで噂されていたこの2人。実際は、ツキトの都のエピソードなどを踏まえても、少なくとも直接の姉妹とかではないことは明白ではありますが、彼女らの出自が互いにまったく無関係なのかというと、実はそうとも言い切れないところがあるんですよね。この点は次回以降のアプデにも関わることですから、記事の最後にまたお話ししましょうか。

 

また、チッチェ姫のセルフツッコミは受付嬢としての自分をしゃんとさせるためのものだというお話をいたしましたが、彼女の見事なツッコミを以てしても、自身の私情を抑えられないシーンも。

 

カムラの里の方々にお話をお伺いしたく…。でもでも、異国の方々に話しかける勇気が… あぁっ! わたくしどうしたら……!

…ハッ! 落ち着くのよチッチェ! わたくしはエルガドの受付嬢! お仕事よりも己の好奇心を優先するだなんて!

…でも、少しお話をするだけなら…。……あの、○○さん…。少しだけ、受付嬢を交代しませんか…?

(マスター★1ヨツミワドウ後 チッチェ姫)

 

これまではお城の中での生活がほとんどだったチッチェ姫にとって、エルガドは初めての出会いの宝庫とも言えるような場所。カムラの里――王国の外の地域からエルガドを訪れたお客人に話しかけるのは緊張するけれど、せっかくの機会なのだから異国の人たちと交流を持ってみたい……そんな切なる願望から、受付嬢の仕事を一時的にお休みしたいという本音を零すチッチェ姫。

 

後述するように、チッチェ姫は身の回りのさまざまな物事に対して興味津々な研究家気質のある人物ですから、カムラの里から来たヒノエ達とお話ししてみたいという好奇心が抑えられないのも無理のない話です。本人としては、そうやって心が揺れ動くようでは自分は受付嬢としての覚悟が足りないのではないかと自戒の念を持つところもあるでしょうが、彼女の日頃の一生懸命な姿勢はエルガドの皆が知るところですし、受付嬢の仕事のみならずエルガドでの様々な経験を通じて視野を広げることも今後の彼女の成長に繋がるものですから、こういう時ばかりは少しくらい、肩の力を抜いても良いと思いますよ。

 

4.王女にしておくのはもったいない!?

 

さて、王女としても受付嬢としても、その務めを立派に果たしているチッチェ姫ですが、彼女の話を聞いていると、この子は別の適性が色々あるのではないか? と思わせるようなものがちらほら。詳しく見ていきましょう。

 

お恥ずかしいことに、じつは王国の城からあまり外に出たことがなかったんです…。受付嬢になり初めてエルガドまできました。

なので、他の集落の文化や生活など 外の世界すべてがとても新鮮で興味深いのです…!

○○さんは カムラの里からいらしたのですよね?

どのようなものを食べていましたか? どのようなお家に住まわれていたのですか? どのような植物が生えていましたか!?

…コホン、失礼いたしました。気になることがあると、ついはしゃいでしまうクセがありまして…。

少しずつでいいので、教えてもらえるとチッチェはとても嬉しいです。これからの楽しみが増えました!

(マスター★1ヨツミワドウ前 チッチェ姫)

 

長らく王都のお城で生活してきて、エルガドに赴任する以前は外の世界をあまり知らなかったというチッチェ。元々が勉強熱心で、いろいろなことを学ぶのが好きな性格ということもあり、身の回りの様々な目新しいことへの興味関心は尽きることがありません。

 

受付嬢になるために猛勉強したのですが その時から、本を読むのが好きなんです。

本は自分の体験できる範囲以上の様々なことを体験させてくれます。世界が広がるのです…!

わたくしの後ろにある本たちも 全て読破済みです。受付嬢のお仕事に役立ちそうなものを選んで持ってきました。

ただちょっと、本を読みすぎてしまって… 視力の方が…えへへ…。でも、この眼鏡も気に入ってます!

(マスター★5 チッチェ姫)

 

受付嬢の資格のための勉強に際して、短期間で視力に影響が出てしまうほどの本好きになったというチッチェ。目は大切にしてほしいところですが、興味を持った本は昼夜を問わず読みふけってしまう気持ちは私もよくわかります。受付嬢の資格のためにモンスターのことも恐らくたくさん勉強しているであろうこともあってか、モンスター関連の疑問を話してくれることもあり、その様子はさながら研究者の卵のよう。

 

○○さんがイソネミクニ亜種を狩猟して、その隙にバハリがキュリアを捕獲する作戦ですね!

○○さんがとても優秀なのは分かっているのですが やはりバハリが心配です…。

いつも少し手段が過激なのですよね。どうやって捕まえるんでしょう…。ジャンプしてキャッチするのでしょうか?

(マスター★3イソネミクニ亜種前 チッチェ姫)

 

危なっかしい現地調査をするバハリのことが気にかかっているチッチェ姫ですが、空を飛ぶキュリアの捕獲に関して、「ジャンプしてキャッチする」という発想が出てくる彼女もなかなかだと思うんですよね。毒性があるのかどうか心配なキュリアに果敢にも素手で挑もうとするという、バハリに負けず劣らずのワイルドさを見せてきます。チッチェは生物調査のことについてバハリに色々教えてもらっているということでしたが、生物の知識のみならず、研究者としての気質までもバハリから悪影響を受けているのではないか? と不安になる台詞が他にもあったりします。

 

毒から薬を作ることができるというのは 本を読んで、知識として、知識として知っていました。

ですが、エスピナスが使うような猛毒からも毒を作ることができるなんて…! 知らないことばかりで驚きの連続です。

…ちょっとした疑問なのですが 毒から作った薬って どのような味がするんでしょうね…?

舌がピリピリしたりするのでしょうか…。意外とおいしかったり…!? あとでタドリさんに聞いてみます!

(マスター★4エスピナス前 チッチェ姫)

 

姫…? エスピナスの猛毒で作った薬のにとても興味をお持ちのチッチェ姫。まあ、毒は薬に加工できるという知識が元々あることと、タドリの薬師としての腕に信頼を置いているからこそ、毒から作った薬は危険なものではないという前提でこういう疑問が出てくるということなのでしょうが、それにしてもなお、「毒で作った薬の味が知りたい」というのは、なんかこう心がざわざわする字面をしています。しかも、「舌がピリピリしたりするのでしょうか?」と妙に具体的な想像をしているあたり、実際に口に入れてみたいという、少しばかりスリリング志向な雰囲気を感じないでもありません。

 

それから、異変の元凶であると思われていたメル・ゼナとキュリアとの関係については、目を見張るほどの鋭い考察を披露してくれるシーンもあります。

 

[前略]

それにしてもキュリアが、王国を襲った疫病の元凶だったなんて…。チッチェはたいへん驚きました。

……ですが、そのキュリアはいったいどこからやってきたのでしょう?

50年前に幼体だったということは そのとき初めて共生関係に…? では、それ以前は…どこで、何を…?

うぅん、わからなくなってきました…。こういうことは、バハリやタドリさんにお任せした方がよいですね…。

[後略]

(マスター★4ライゼクス後 チッチェ姫)

 

なんとチッチェはこの段階で、メル・ゼナはキュリアの本来の宿主ではないのではないか? という異変解決の糸口に、彼女自身の思考によって辿り着いているんですよね。これはすごい。本当にすごい。この時点ではその推測を裏付ける確証が発見されていないゆえに、「こういうのは専門家に任せておこう」と言っていますが、チッチェ自身も研究者としての才能が十二分にあるような気がします。ひょっとすると将来は女王様兼モンスター研究者というのもありかもしれません。両立はなかなか多忙を極めるかもしれませんが……。

 

それから、チッチェ姫は(あろうことか)ハンターの才能もあるのではないか? というシーンもあります。

 

あっ! そうだ! ひとつだけ、自慢してもいいですか? いいですよね? ありがとうございます!

えへへ、わたくしが首から下げているこのかばん、とても可愛くないですか? 可愛いでしょう! そうでしょう!

これはですね、エルガドに赴任した際に騎士の皆さまがお祝いにプレゼントしてくれた 大切なかばんなんです…!

このかばん、大きいけれど意外と とっても軽いんですよ! 何を入れても不思議と重くならないんです!

この前なんて、拾ったキレイな鉱石や 後ろにある本を15冊ほど入れても まったく重くなかったんですよ!

とても不思議でステキなかばんですよね! お気に入りすぎて自慢しちゃいました。でも、いったい何でできているんでしょう?

(マスター★2 チッチェ姫)

 

お気に入りのかばんをどうしても自慢したくて、珍しく前のめりに会話してくるチッチェ姫がかわいいシーン。騎士団の皆がお祝いで贈ってくれた素敵なかばんですが、中に何を入れてもまったく重くならないという不思議な力(?)があるらしく、チッチェ姫はこのかばんが何で出来ているのか気になっているようです。

 

うーん……いくらモンスターの素材は不思議な力を秘めているとはいえ、かばんの素材に使うだけで、分厚い本15冊を入れてもまったく重くないというレベルで引力を無効化できるという魔法のようなことが果たしてあるのかどうか。

 

丈夫でしなやかな素材ゆえに身体にフィットするので重さの負担を軽減できる説、かばんを気に入っているというプラシーボ効果で軽やかに感じられる説、またそもそもハンターの身のこなしを見るに、このゲームの世界は我々の住んでいる地球よりも重力が弱いため、重さの感覚自体が違う可能性があるという説………それらを差し引いてみても、やはり分厚い本15冊というのはどう考えても普通にめちゃくちゃ重いです。それでもなお、チッチェ姫がまったく重さを感じないというのならば、それはもう「チッチェ姫の体幹がかなりすごい」と結論づけるしかありません。

 

スリムに見えて実は筋骨隆々なチッチェ姫などあまり想像したくもありませんが、どうもこの見立てはあながち間違いでもないらしく、一日中立ちっぱなしの仕事を毎日こなしているチッチェ姫に対して、黒鬼も次のようにコメントしています。

 

俺様が見るに、あの受付嬢やってるチビッ子…ただ者じゃあねえぜ。
毎日、俺達がここに座るときにはもうあそこで立ってるかと思えば…。一日中ああやってクエストの受付をしてやがる。

受付嬢をやらせとくにはもったいねえ足腰と根性してると思わねえか?

ありゃあ、鍛えようによっちゃあいいハンターになるぜ! バハハハハ!

(マスター★5 黒鬼)

 

姫に向かってちびっ子て。まあ、黒鬼は特にそういうのをあまり気にしていないのかもしれませんし、チッチェとしてはあくまでも一人の受付嬢として接してもらうことを希望していますから、彼女にとってはこういう感じの方がむしろ望ましいかもしれません。それはともかく、熟練のハンターである黒鬼をして、「鍛えればいいハンターになる」と言わしめるほどの身体能力を秘めているのですから、やはり本15冊がまったく重くないというのは、チッチェ本人の優れた体幹によるところが大きい、ということになってしまいそうです。うーん……いや、身体が丈夫なのは間違いなく良いことなんですが、なんかこうイメージがね……。

 

とはいえ一応、本編でチッチェ姫が主人公の活躍に触発されて、ハンターとして武器を取ることに憧れを持つようになった事があった際には、提督のガレアスがきちんとそれを諭したということですから、チッチェ姫のハンターデビューというのは少なくとも本編の世界線ではなさそうです。

 

 

が、ライトボウガンを使っている方はご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ライトボウガンの王国騎士派生の武器の名前は、彼女のなりきり装備と同じ「シャリテ」という名前であり、もしチッチェ姫がハンターとして活躍する世界線があれば、ライトボウガンを手にモンスターを狩猟していたのではないか、とプレイヤーの想像を膨らませるような要素はあったりします。

 

5.受付嬢チッチェはいつまで?

 

さて、研究者なりハンターなりを目指すというのは仮定の話ではありますが、チッチェ姫は王位継承権のある王女さまですから、彼女の今の仕事である受付嬢にしても、ずっとこれを続けるというわけにはまいりません。今回の王国の危機が収束すれば、彼女はまたお城での王女としての生活に戻ることになります。エルガドに平穏が戻る日を願って仕事に熱心に取り組む一方で、今の受付嬢としての生活が終わってしまうことを、どこか寂しく感じている様子も。

 

王国の脅威が去り、キュリアの影響も落ち着いてきたら きっとエルガドは平和になりますよね。

そうなったら、わたくしはきっと城に帰り 姫として過ごす日々に戻ることになると思います。

…ですが、再び王国に危機が訪れたら その限りではありません。

がんばって受付嬢の資格を取ったんです。危機に直面している前線までおもむき、また受付嬢として働くつもりです!

危機が訪れないのが一番ではありますが…。もし、そんなときがきたら ぜひ元気な顔を見せにいらしてくださいね!

(マスター★6 チッチェ姫)

 

王族としての生活を別段否定しているわけではないようなのですが、お城の外の広い世界に飛び出し、様々な出会いや発見のあるエルガドでの暮らしにとても充実を感じているようですから、本当はまだまだエルガドに居たい、というのが彼女の一つの本音であるようにも思います。むろん、それは王国の平和を願う気持ちとはある意味で矛盾したものであるからこそ、彼女はこうしてかなり気を遣った言い方にしているのだろうということも。

 

わたくし、がんばって受付嬢になって 本当によかったと心の底から思います。

エルガドの皆さんの、優しくて温かい光。猛き炎の、心に灯りをともす光。そして…曇天が消え、空から射す光。

どれも皆、すばらしい光です。そしてここエルガドに来なければ 出会えなかった光でした。

これからは、わたくしも皆さんと一緒に、希望という未来を照らしていけたらいいな… と思っています。

…なんちゃって、えへへ…。少しばかり気恥ずかしいですが、これからもよろしくお願いしますね!

(マスター★6 チッチェ姫)

 

危機が収束すればチッチェ姫はお城に戻り、そしてゆくゆくは王国の次の女王様……ということになるわけですが、エルガドでの経験や出会いは、未来の統治者としての彼女の成長を大きく支えるものになるはずです。ここでは特に「猛き炎」を名指しで話に出してくれていますが、主人公にしても他のエルガドの仲間にしても、彼女にとって範となるものをたくさん見つけられたのではないかな。

 

ここにいるとエルガドの皆さんが通ります。そして挨拶とちょっとしたお話をしてくれるんです。

そんなときわたくしはいつも、この王国の人々の温かさと優しさ、明るさを感じて… とても、誇りに思います。

わたくしはそれらを護りたいと思うのです。○○さん、どうか引き続き一緒にがんばりましょう!

(マスター★5 チッチェ姫)

 

これまで何度もお話ししたように、チッチェ姫は、エルガドでは自分を王女として扱うことはしないでほしいという姿勢を一貫していました。姫という肩書を外し、エルガドの皆と対等の目線で、より近い距離感での関係を築いていく中で、自分にとっての王国とは何か、王族とはいかにあるべきか、といった、彼女が受付嬢になると決めた日から胸の中に抱いていたであろう問いへの答えも、より一層深まっていったのではないでしょうか。

 

それにしても、何と言いますか……。筆者は当然ながら王族でも何でもありませんから、この記事を書くに際して「自分が生まれながらにして王族である」というアイデンティティをどうしても掴みかねる部分があり、自分が王国の姫であり、おそらく将来的には女王になるということを(少なくとも作中で見る限りでは)自然に受け入れて、その使命とは何かを考えて実行に移していくチッチェ姫の意志の持ちようについて、自分が十分な理解に達しているのかどうか、実のところけっこう不安な部分があります(そしてそれが分からないからこそ、自分の使命にまっすぐなチッチェ姫をとても尊敬しています)。

 

おそらく、これは私や多くの方が幼少期に「自分の生まれた国や家庭の価値観を特に疑うことなく吸収してきた」ように、チッチェもまた「自分が王族である」というアイデンティティを自然と形成していった、というところに根拠を求めるしかないのではないか? と思う部分もあったり。

 

いずれにしても、王国の「姫」というアイデンティティに最も深く向き合ったのはまぎれもなくチッチェ自身です。エルガドでの彼女は皆に対しては、自分を姫としてではなく受付嬢として、危機に立ち向かう対等の仲間として接してほしいと頼み、「姫」の一つの否定としての「受付嬢」という自分自身を確立しましたが、一方で彼女の意志の根幹には「後方でただ守られているのではなく、前線に赴いて皆を元気づけ、共に戦うのが姫としてなすべきことだ」という、「姫」としての自分自身があります。

 

その二重のアイデンティティ、言わばふたりの「チッチェ」の間を行き来しながら、つねに自己を律し、最前線のエルガドで自分のなすべきことを真摯に果たしてきたチッチェ姫は、逆説的ではありますが、姫としてとか未来の女王になる人としてとかではなく、ひとりの人間として心から尊敬できる人物であり、エルガドにも、そしてまた王国にも欠かせない人であると思います。そしてこれはまた、ライズから続く「災禍に立ち向かう人々の連帯」というテーマの、重要な一側面でもあるはずです。

 

 

7.ヨモギちゃんとの関係やいかに

 

最後に今後のアプデ関連で少しだけ。チッチェ姫はサンブレイク発売前からヨモギとの関連性が指摘されており、何らかの血縁関係があるのではないかという考察も多数見られました。実際には、ヨモギは今は亡国となったツキトの都の生まれであり、王国関係者からも特にチッチェ姫に生き別れの姉妹がいるなどといった話はないことから、少なくともこの2人は直接の姉妹ではないということは確定事項としてよいでしょう。

 

しかしながら、カゲロウのアナザーストーリー「姫みこ様へ」において、ヨモギの母親である「ミカド」の婚約者——すなわちヨモギの父親である「隣国の貴族」なる人物が、このサンブレイクの舞台である「王国」の王族であり、この者がツキトの都に嫁いだという話なのだったとすれば、ヨモギとチッチェは先祖の血が繋がっている従姉妹どうしであるという話にはなってきます。

 

で、この「隣国」が王国である可能性がどこから示唆されるのかといいますと、ツキトの都を嵐によって滅ぼしたとされる龍を、王国の特命騎士が調査しているという点です。この件について最初に話してくれたのは、特命騎士副隊長のラパーチェでした。

 

[前略]

……じつは、特命騎士が調べてるのは、タドリさんの故郷を滅ぼしたモンスターのことなんだ。

……うん、カムラの里にいる、カゲロウさんとヨモギさんの故郷でもあるんだよね?

あ、このことはナイショだよ♪ 極秘任務だから、もうこれ以上のことは聞かれても何もしゃべりませ~ん♪

それじゃあ、これからもみんなが笑顔になるように、がんばっていこうね♪

(渾沌ゴア狩猟後 ラパーチェ)

 

ツキトの都を滅ぼした龍の調査の指令が特命騎士たちに下っているのはエルガドの調査に多大な貢献をしてくれたタドリに報いるためという側面もあるでしょうが、ガイアデルムの調査の終了もまもなく、キュリアの脅威も続いているというこの時期に、王国最精鋭の特命騎士を嵐の龍の調査に向かわせる十分な根拠としては、それだけでは少し弱いです。むしろ、その嵐の龍が近いうちに王国の脅威となり得るであろうことが推測されるから、というのが第一の理由になるでしょう。

 

そうなった場合、王国は「少なくともツキトの都を襲った大型古龍の影響が十数年以内に及びうる程度にはツキトの都に近い」ということでなければなりませんから、そうするとツキトの都の「ミカド」の婚約者の出身である「隣国」が、サンブレイクの舞台である「王国」である可能性は十分にありうるのです。嵐の龍は例によって、長い寿命をもつ大型古龍であると考えられる以上、それが数年単位で居場所をコロコロ変えるというのも考えづらいですし。

 

むろん、その「隣国」はこの王国ではない別の隣国のことであるという可能性もあるわけですが、そもそも「貴族」という身分自体が、王政なり帝政なりといった社会体制において成立するものであり、そしてモンハン世界の人間社会で、そういった政治体制を敷いている国はそう多くはないようにも思います。

 

それに、カゲロウやヨモギの情報が特命騎士内で共有されているというのも、彼らが王国に何らかの関係があるということを示唆している、ということが言えないでもありません。まあ、この点に関してはただタドリから聞いて知ったためという説もあるので、あまり根拠らしい根拠ではないかな。

 

とはいえもちろん、この仮説にも大きな穴があり、仮に「ミカド」と結婚したこの「隣国の貴族」が王国の王族であったとすれば、ツキトの都と王国とは友好国の関係であるはずであり、ヨモギも(王位継承権等の話はまた別にしても)王国の血縁者ではあるのですから、カゲロウがツキトの都滅亡後から今日にいたるまでのどこかのタイミングで、ヨモギの身柄を王国に託したり、少なくとも何らかの相談を持ちかけたりといった様子がないのは、筋としては少しおかしいことになります。ミカドの結婚のことで何かもめたということもなさそうですし、カゲロウの何らかの私情が介入した結果、と無理に説明する以外に根拠の示しようがありません。この点は今のところは、さらなる追加情報を待つといった形になりそうです。

 

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ということで、本記事はこのあたりで〆としたいと思います。2023年初投稿ということで、大変遅くなりましたが、みなさま明けましておめでとうございます。なんと前回から2か月以上もあいてしまった記事更新……。記事にしていないキャラはまだまだたくさんいるのですが、動画も作りたいし、TAのための防具錬成やお守り錬金もしたいしで、自分の中で優先順位をつけるのがまだまだうまくできていないのを感じます。最低でも次回作までには全記事を間に合わせたいところ。気合を入れていきます。

 

えいやっ!(マスター★5シャガルマガラ後)

 

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!