フィールドワークが繋いだ絆
※注意事項※
・本記事は「モンスターハンターライズ:サンブレイク」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。
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今回は薬師のタドリと、彼の旧友のひとりである研究員のバハリ、そして彼の弟子である雑貨屋のオボロについて取り上げていきます。タドリはストーリーではMR★4、バハリもMR★3からの途中参戦組であり、その分本編での世間話の台詞数自体が他のキャラに比べて少なめなのですが、その途中参戦が惜しまれるほどの個性派ぞろい。そして、タドリがエルガドを訪れる前から彼の存在について色々と話していた、実は重要な伏線担当だったオボロもこれまた魅力あるキャラクターでございまして、彼らの人となりと関係性について本記事で見ていきたいと思います。
なお、タドリのエピソードのうちカゲロウやヨモギ、ツキトの都に関係するものについては、7月に投稿した別の記事の方で紹介をしております。いちおう本記事でもツキトの都の話題はいくらか登場しますが、今回はそちらがメインというよりは、薬師としての彼の経歴と活躍、交友関係などに主に焦点を当てていくという感じで。
mhrisecharacter.hatenadiary.jp
ーーーー目次ーーーー
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1.フィールドワークの達人、薬師のタドリ
タドリはカゲロウと同じく「ツキトの都」の出身であり、元はカゲロウと同じくハンターでしたが、途中で医学の道に転身し薬師となったという経歴の持ち主。災いによって故郷が滅ぼされて以来、各地を転々としてはその土地の動植物の調査研究に打ち込んでいました。本編でのタドリは、メル・ゼナとの交戦後に倒れてしまったフィオレーネを救うべくエルガドを訪れることになりましたが、それ以前から彼は王国と縁があり、50年前に疫病(当時は幼体であったキュリアが原因)が流行した際にも、薬を調合して王国を救っています。
私はそこそこ長い間、薬師をさせていただいております。
先ほどのお話でもありましたが むかし王国で疫病が流行ったときも 私が薬を調合いたしました。
キュリアが原因ならば、同じ薬でフィオレーネさんを治せるはずです。
ただ、用途が用途なだけに薬の在庫がなく…。急ぎ調合しておりますので 今しばらくお待ちください。
(マスター★4ライゼクス後 タドリ)
50年前の時点で疫病への特効薬を調合することができた、ということは、少なくともタドリはこの前後で疫病の正体はキュリアであることを何らかのきっかけで見抜いていたということになりますから、研究者としての彼の手腕の凄さは言うまでもありません。さらに9月末アプデ後のシナリオでは、傀異化したモンスターの被害を受けた村のための薬の調合のために、エスピナス亜種はもとより、あのタマミツネ希少種の滑液を主人公に依頼しています。つまり、タドリは目撃例が少ないとされるこのモンスターの存在と、その滑液の薬効をも既に知っていたということに……。この人いったい何者なんだ……。
いずれにしても、タドリはタマミツネ希少種の滑液の成分まで知り尽くしているほどのフィールドワークの経験値があるわけで、彼にとってはこの自然界全体が大きな薬箱であるといっても過言ではないかもしれません。考えてみれば、薬師と言っても手持ちの薬だけで全てを賄えるわけではありませんし、ましてモンハン世界には、我々の世界の薬局とか総合病院というように医療のインフラが充実しているわけでもなく、数百、数千種類もの薬を一挙に保管し患者に適切に処方する機関、というものが、(少なくとも世界各地にまんべんなく)あるわけではありません。
そういう世界において、各地での多種多様な病気やモンスターの被害に的確に対応していくためには、それぞれの地域にどういう薬効を持った動植物があるかということを自分自身の目と足で確かめて体系的に把握しておき、現地で(必要によってはハンター等に依頼し)それらの材料を供給する、という風にするのが最良の形であるというのは、その知識を集積させるのには相応の時間と努力が必要であるとはいえ、確かに理に適っていると言えるのかもしれません。その意味で、タドリはフィールドワークによる調査研究という道を選んだのかもしれませんね。
そして、彼がこれほどの知識量を備えているのは、上述のような長年の現地調査の経験値もさることながら、カゲロウの記事でも話したように、タドリの故郷であるツキトの都が災いによって亡ぼされて以来、彼が立てていた一つの誓いがあるのでした。
ツキトの都が災いに襲われているとき、タドリは現地調査へと赴いており、彼が故郷へと戻った時には、既に災いによって都は壊滅させられてしまっていました。何もなすすべなく、取り返しのつかない形で故郷を失ってしまったタドリは、「もう何も守れないことがないように」と、無力であったかつての自分を乗り越えるべく、薬師としての決意を新たにしたのです。
その誓いは作中でも身を結んでおり、彼は本編では王国騎士団の中核たるフィオレーネを救い、そして直接の登場はないものの、傀異化したモンスターの被害を受けた村をエスピナス亜種とタマミツネ希少種の素材から作った新薬で救っています。
おみごとです…! おかげさまで薬の改良もうまくいって、ケガを負った方も意識を取り戻しました。
ずいぶんと感謝されましたが、私は薬師として当然のことをしたまで。
それよりも、あの薬は○○殿の力があってこそ完成したもの。そのことを、しっかり伝えておきましたよ。
襲われた村は、復興に向けて、少しずつですが着実に前へと進んでいます。
一致団結して再建に取り組む村の方々を見ていると、ふと失ってしまった故郷を思い出しました。
そして、カゲロウと、姫みこ様のことも…。
ともあれ、ご協力ありがとうございました。気が抜けない状況が続きますが、ひとりでも多くの人を救うため、私も尽力します。
(マスター★6タマミツネ希少種後 タドリ)
タドリとしては、自分自身の手で救った人々や村を見るというのは、薬師としての使命を、またかつての誓いを果たすことができているという喜びである一方で、もし自分の故郷が災いに見舞われたときにも、何かをなすことができていたら……という無念さを掻き立てるものでもあるでしょうし、なかなか複雑な心境であるかもしれません。
彼は自分の仕事を「薬師として当然のことをしたまで」とそれほど高く評価してはいないようで、これは彼自身の謙虚さと向上心、あるいは自分自身への厳しさの表れではありますが、キュリアという大きな災いから本編中で何度も人命を救っている自らのことを、彼自身もっと評価してほしいとも思わないでもありません。しかしながら、薬師としての自分の実力に決して驕りを持たないというのは、彼の固い決意と信条の内に含まれていることなのでしょうね。
2.タドリとバハリの出会い
さて、ストーリーでも密林で調査研究を行っていたように、タドリはふだん、その土地の自然環境や動植物を自らの足で調べるという「フィールドワーク」を主体としています。そう聞くと "孤高の凄腕薬師" というような印象ですが、そんなフィールドワークにも偶然の出会いというものはあるようでして、彼がフィールドワーク中に出会って以来、深く親交のある人物がエルガドにおります。同じくフィールドワークを主体にモンスターの研究を行っている、研究員のバハリです。
いや~、やっぱりタドリは頼りになるなぁ! これぞ旧知の仲! 話が早くて助かる!
あとはタドリに任せておけば大丈夫。俺たちはそれぞれの仕事を進めて待っておくとしよう。しかし、まさか以前王国を襲った疫病と 原因が同じだったとは驚いたよ。あの頃からキュリアはいたんだね。
まだまだ世の中、未知のことがたくさんだ! これだから研究はやめられないよ!
(マスター★4ライゼクス後 バハリ)
性格はまるで違う二人ですが、互いにフィールドワークを好むというところから意気投合し、今では長年の旧友という間柄。バハリはタドリの薬師としての実力を大いに頼りにしておりまして、メル・ゼナとの初の交戦後、彼にとっては無二の相棒ともいえる存在であるフィオレーネが倒れてしまうという、彼自身も心中穏やかではないような事態においてすら、「タドリに任せておけば大丈夫」と断言できるほどの信頼を寄せています。
メル・ゼナとキュリアとの関係、そして王国にかつて流行した疫病についてのタドリの医学的な見解についても、バハリは非常に面白そうに話を聞いていました。
なるほどなぁ…たしかにメル・ゼナもキュリアも成長をしている。だから毒も強くなっているのか…。
タドリの見解は非常に興味深いよ。俺は、医学的な知識はそこまで持ってないからさ。でも! 毒の採取は得意だ! 俺がた~っぷり取ってくるから、狩猟の方を、よろしく頼むよ!
(マスター★4エスピナス前 バハリ)
彼自身が超一流のモンスターの研究者であるにもかかわらず、「俺は医学的な知識はそこまで持ってないので興味深い」と言い切り、タドリの話をワクワクしながら聞いているところが、自分の研究に対して(ややクレイジーさを感じさせるほど)実直なバハリのバハリたるゆえんでもありますね。
バハリも言っているように、一つの分野にどれだけ精通した者であっても、他の分野についても同様に詳しいというわけではない。その上で、異なる専門知を掛け合わせることで、これまで見えてこなかった別の真理が見えてくる――そこにこそ超分野的な研究の醍醐味があり、ひいてはこの作品において「モンハンらしさ」を支えているものなのかもしれません。
ちなみに、ここで「毒の採取は任せろ!」と意気込んでいたバハリですが、エスピナスの狩猟後にどうなっていたかといいますと…。
必要量の500倍も毒採れることある? さすがのタドリもちょっと引いているレベルでエスピナスの毒を採取してきていました。いや500倍って……。まあこれも、モンスターの毒の性質を熟知していて、効率よく、かつ劣化させないような採取方法を心得ているバハリの経験値のなせる技なのかな。あるいはエルガドに旧友のタドリがやってきたことがとても嬉しくて、やたらと張り切ってしまった結果なのか……。
そんなバハリですが、タドリの独特すぎる食生活に関して、少し気になるところがあるようです。
俺とタドリは、専門分野は違えど お互いにフィールドワーク主体でしょ? だから結構気が合うんだ。
タドリと出会ったのは、いつだったかな…。どこかで調査をしていたら、同じく現地調査をしてたタドリに会ったんだよ。調査中に誰かと会うなんて珍しくてさ。だって、山奥とか密林とかだよ? つい声をかけて一緒にキャンプしたんだ。
そのとき、タドリがおもむろに野草やキノコをそのまま食べだしてさ…。俺、時代が過去に飛んだかと思ったよ。
どうやら食に無頓着すぎるらしい。食事と睡眠にはこだわってる俺からしたら 信じられなかったな…。
それからいろいろな意見交換をするようになって、今では旧友って感じ。世の中何があるかわからないもんだね。
(マスター★5 バハリ)
タドリは食べても大丈夫な野草やキノコを見分けられるので、それらを生で食べることは大丈夫……だとしても、味のほうは果たして大丈夫なんでしょうか。さすがにここまでくると、単に「食に無頓着」というのみならず、彼はそもそも植物の薬効や栄養価、毒性等々についての興味が先行してしまい、味が美味しいとか美味しくないとか、どうすれば美味しくなるかといったことへの興味が薄いのかもしれません。それはそれで、根っからの薬師といえばそうなのですが……。「素材の味が好き」という説もワンチャンありますが、これではもはや素材の味というか素材なんですよね。
で、これを見かねたバハリが、タドリにお弁当を作ってあげているらしいということをフカシギから聞くことができます。
[前略]
薬師タドリ殿は…。
じつは…。
バハリ殿にお弁当を作ってもらっている!
1人で現地調査を行っているタドリ殿は 外に出ていることが多いのもあって あまり食に興味がないようなのニャ。
草やキノコをそのまま食べている姿をみかねて、バハリ殿が料理を作ってくれているニャ。
バハリ殿は食事と睡眠を大事にしているだけあって 料理の腕はかなりのものなのニャ。
タドリ殿がたまにエルガドに来たときに 日持ちする食べ物やお弁当を持たせて 食のお世話をしているニャ。
あんなに冷静で大人なタドリ殿が 変わり者のバハリ殿のお世話になってるなんて、意外すぎる関係なのニャ。
[後略]
(マスター★6 フカシギ)
2人の天才研究者たちのなんと微笑ましい光景であることでしょうか。フカシギも言っているように、作中での印象ではバハリは陽気で変わり者、タドリは穏やかで大人っぽいという印象ですが、日常生活面ではバハリの方が遥かにしっかりしていて、タドリは逆に無頓着であるというのはこれまたギャップ萌えをくすぐられるところです。いずれにしても、タドリとバハリの出会いは研究者として互いに良い影響を与え合う関係を築き得たのみならず、タドリの生活水準の向上をも同時にもたらしたということになりますね。
タドリにしてもバハリにしても、彼らの生業とするフィールドワークというのは、ある意味ではとても孤独な営みでもあるはず。自然は決して親切な教師ではなく、フィールドワークは自分ひとりでものを調べ、疑問を持ち、答えを探求するということを要求されるものだからです。
もちろん、自分の頭と足で学ぶという、孤独だがやりがいのある道のりに魅力を感じてこそ彼らはフィールドワークをやっているのであり、この場合の「孤独」はむしろ肯定的な意味合いをも多分に含むものでもあるのですが、そうしたフィールドワークの楽しみや孤独さを肌感覚で理解し合える関係というのが、彼らの間に長らく結ばれてきた友情というものなのかもしれません。
3.タドリの弟子、雑貨屋のオボロ
続きましては、将来は薬師を志して現在タドリに師事している、雑貨屋のオボロについてご紹介。タドリとのエピソードについてお話しする前に、まずは彼の性格や人となりから順に見てゆきましょう。
○○さん、どうも! エルガドはもう見て回ったかい?
ここは観測拠点なんて仰々しい名前がついているけど、そんなの忘れちゃうくらいいいところだよ!
空も見えるし、海も見渡せる。いや~、開放的だねぇ! これはお財布のヒモも緩んじゃうね~!
(エルガド到着後 オボロ)
○○さん、なかなかやるねえ! さすがカムラの里から来た精鋭だ!
うんうん、いいねえ。まだまだこんなんじゃないぞ、って顔をしているね!
物資面でバックアップできるよう 仕入れには余裕をもっておくよ! ってことで、何か買っていくかい?
(マスター★2アンジャナフ後 オボロ)
……と、こんな感じで、話の最中にさらっと売り込みを入れてくる、なかなか調子のいい感じの青年です。やたらと何か買うのを催促してくるのは後述する理由もあってのことですが、私はサンブレイク発売前、新キャラとして発表されたオボロの外見だけを見て「これはおしとやか系クール美人に違いない(?)」と謎の確信を抱いていたのですが、蓋を開けてみればこのようにノリが軽くて親しみやすい人柄、しかもそこはかとなくあざとかわいい感じでしかも後輩キャラという、自分が勝手に抱いていた第一印象とのギャップに逆に萌えを感じてしまいました。
で、タドリがエルガドを訪れる以前から、彼の存在についてはこのオボロから度々示唆されることになるのですが、オボロは師匠のことがあまりにも好きすぎるあまり、主人公に対してやたらとタドリの話を出し惜しみしようとするんですよね。
最近は師匠にも会ってないなぁ。…そういえば、○○さんは 俺の師匠は知らないんだっけ?
師匠のこと、超・尊敬してるんだ。本当にすごい人だよ。…どんな人か知りたいの?
え~、どうしよっかなぁ~。知らないんだったら直接会う時まで 内緒にしてた方が、おもしろくないかい?
(マスター★3 オボロ)
出たなあざといムーブ。「ちょっとくらい教えてよ~」「いや~どうしよっかな~」みたいな感じのやつを楽しまれてるやつじゃんこれ。本当はタドリのことなら無限に語れるであろうところをあえて出し惜しみすることで、主人公が自分の師匠により興味を示してくれているその反応を楽しもうとする感じのやつやん(長い)。
フィオレーネを助けるために「凄腕の薬師」なる人物に会いにいこうとしているときにも、オボロは主人公が探しているその人物がおそらくはタドリではないかと早くも勘づいており、近いうちに久方ぶりに師匠に会える、またその師匠を主人公に紹介できるということで何かと一人でそわそわしています。
フィオレーネさん、大丈夫かい…? 薬学を学んでいる俺でも、さすがにメル・ゼナの毒を治す薬は知らないな…。
こんなときに師匠がいてくれたら…。 …え? スゴウデの薬師を探している…?
…ふむ。いやぁ、なるほど。それは妙案だ。そういうことなんだね。…いや、なんでもない。こっちの話さ。
フィオレーネさんを助けるために ○○さん、よろしく頼むよ!
(マスター★4ライゼクス前 オボロ)
……まあ、リアクションが分かりやすすぎるため、隠すつもりがあるのかないのかよくわからない感じではありますが(これで人違いだったらハズイというのもあるでしょうし)、その後実際にタドリがエルガドにやってきた際には、もう溢れんばかりの喜びようです。
やっぱり! タドリ師匠だ! 俺の師匠、タドリ師匠だよ! はははっ、ついに会えたね!
さすが師匠だ…。メル・ゼナの毒を治す薬も知っている。タドリ師匠、やっぱり超・尊敬…。
○○さん、タドリ師匠は実力のある、信頼できる薬師だ。治療薬の材料集め、お願いするよ…!
(マスター★4ライゼクス後 オボロ)
いつも飄々とした感じの彼とは打ってかわって、師匠に会えたときのこの無邪気な笑顔ときたら。ひょっとするとこのギャップ萌え属性も師匠譲りなのかもしれません。メル・ゼナの毒への対処法も心得ているタドリの知識量に、「超・尊敬」と感服するオボロ。
エスピナスの毒か…なるほど。毒を以って毒を制す…ね。さすが師匠、俺もまだまだ勉強不足だな!
これできっとフィオレーネさんは快方に向かっていくよ。間違いない。タドリ師匠の調合した薬だからね!
タドリ師匠の腕は、それだけすごいんだ! もう安心してもらって大丈夫さ。俺たちは俺たちの務めをしっかり果たそう!
(マスター★4エスピナス後 オボロ)
バハリ同様、タドリの腕に全幅の信頼を置くオボロ。最後の「俺たちは俺たちの……」のところ、同時期のバハリの台詞とけっこう似ていますね。チーム・エルガドの車輪が再び回り出していくところを感じさせる言葉でもあり、そしてオボロが根はとてもまじめな人物であることを示しているものでもあります。
エスピナスの毒を用いる、というタドリの発想は、やはり彼のハンターとしての経験値に基づいている部分もあるのでしょうか。それに、毒を薬として用いるというのは、毒というもの自体への理解(毒という物質自体があるわけではなく、諸物質の中でそれを摂取する生体にとって有害である物質が毒という括りで呼ばれているということ)を前提に、どの物質がどの物質の毒性を中和できるのかという知識の網が必要になりますから、やはりタドリの引き出しの量は別格といったところですね。
まあ、その毒の話をさらに深堀りすると、恐らくは物質としてはそれぞれ違うであろうドスフロギィ、リオレイア、エスピナス、オオナズチ、その他諸々の毒使いのどんな毒でも治療できる漢方薬とかいうアイテムはいったい何なのかという話にもなってくるのですが……。逆に、それらのモンスターに対して、ハンター側が毒属性武器で攻撃すれば(耐性値は高めな傾向にあるものの)毒状態にできるというのも、毒と言われる物質は一種類のものではないということの証左、ということになるでしょうか。
脱線はこの辺にしておきまして、そのように薬師としての卓越した技術と見識を備えている師匠のタドリに対して、オボロは「タドリの師匠は誰なのか?」と疑問に思ったことがあるようです。
この前師匠と話していてさ。俺にはタドリ師匠という素晴らしい師匠がいるわけで。
タドリ師匠の師匠って どんな人なんだろう…って思ってさ。ね、気になるだろう?
あんな凄腕の薬師を生み出した人…。きっともっとすごいに違いないと思って タドリ師匠に聞いてみたんだけどね。
タドリ師匠は「独学です」って言うんだ。…信じられる? あんな膨大な知識と調合のセンス、全部独学…? ってね。
つまり、俺も努力すれば届くのかもって思えてさ。さすがタドリ師匠だよね。弟子を乗せるのもうまい! はははっ!
(マスター★6 オボロ)
なんと、タドリの膨大な知識量はすべて彼が独学で、つまり自らのフィールドワークを通じて身につけたものであるといいます。彼はまさに「自然は教師である」という命題を体現する人物ということになりますね。むろん、そうした学びを可能にしている理由の一端は、彼が竜人族という長命な種族の生まれであることにもありますが、それにしても世界各地を旅してはその土地の動植物を具に調査して体系的な知識とするという作業を継続できる気力と体力は、やはり並大抵のものではありません。
かつて彼の故郷であるツキトの都が災いに見舞われるに際して、何もすることができなかった自分自身を悔いて以来、彼は「もう誰も守れないということがないように、一層薬師としての修練に取り組む」という誓いを立てたといいます(カゲロウの記事参照)。そんな彼にとっては、書物からは決して得られることのできない知恵を多く学ぶことのできる大自然に身を投じ、終わりなき学びを積み上げていくことこそが最善の道ということなのでしょう。
で、そんな師匠の言葉に「弟子を乗せるのもうまい!」とご機嫌なオボロですが、彼も師匠に少しでも追いつけるようにと、雑貨屋の仕事の合間に欠かさず勉強をしているようです。
おや、○○さん。何か聞きたそうな顔してるよ。みずくさいなぁ、なんでも聞いてくれよ。
…あぁ、今読んでいる本のことかい? これはマカ錬金や薬学などの調合に関する書籍なんだ。
一応これでも、結構勉強してるんだよ? 気になったことは、自分が納得するまでどこまでも調べ上げるんだ。
好きでやってることでもあるけど これくらいしないと、師匠には追いつけないからね~。俺、偉いでしょ?
(マスター★4 オボロ)
現在は雑貨屋を営みながら薬学の書物を読み漁っているオボロですが、いずれは師匠であるタドリと同様に、自らもフィールドワークに身を投じたいというのが彼の目標。実は彼が今雑貨屋をやっているのも、自らが志す研究の道の元手を稼ぐためのものでもあるようです。
じつは、師匠と会うのは久しぶりでね。タドリ師匠は動植物をメインに調査・研究してる薬師なんだ。
だからどうしても、現地にいる時間が多くなってしまって、なかなか会えない。でもだからこその、膨大な知識量なんだ。
俺もいつか、タドリ師匠のように各地を回りながら研究するのが夢だからね。そのためにも、まずは元手を稼がないと!
(マスター★5 オボロ)
雑談の合間にさらっと売り込みをかけてきたりとラフな性格の印象があるオボロですが、雑貨屋を営んで資金を稼ぎながら勉強に励み、好きなこと、疑問に思ったことはどこまでも追求するという、芯のしっかりした熱い男という一面を見せてくれます。雑貨屋というチョイスにしても、一般向けのものからハンター向けのものまで幅広く医療品を扱うことができるため薬師の下積みとして最適である、という意味もあってのことでしょうし、一見するとノリが軽い人物に見えて、薬師としての将来設計を綿密に考えているんですよね。
そうしたオボロの熱心さは、タドリの親友でオボロとも知り合いであるカゲロウもよく知るところです。
えるがどの雑貨屋は品揃えがよいでしょう? オボロの向学心と、師であるタドリの教えが成したものでしょうな。
ですから、それがしの雑貨屋にあり あちらの雑貨屋にないもの、などはおそらくないと思いますが…
それでもこうして顔を見せていただけるというのは嬉しいものですね。
(マスター★6 カゲロウ)
ところで、このようにタドリの背中を追いかけて日々努力を重ねているオボロですが、そもそもこの2人がどこで出会ったのか、というのは気になるところ。タドリはフィールドワークが主体であり、野草なりキノコなりを直に食べながらキャンプ生活、みたいなことが日常になっていますから、有事の際を除けば一つの街や村にそれほど長く滞在するということはなさそうですから、彼と親交を持つきっかけというのは結構限られているように思います。その辺りのことについては、タドリから話を聞くことができます。
オボロさんが私の弟子になったのは、たまたま、エルガド周辺の草木の調査をしていたときでした。
私が薬の材料を集めていると どこからかふと現れたオボロさんが じっとこちらを見つめていたのです。
どうやら、草木を直接目で見てよしあしや種類を判別し学んでいる姿がとても斬新に映ったようです。
なぜか感動したオボロさんは その場で私の弟子に志願してきました。
特に断る理由もないですし 私の知識が役に立つなら、と承った次第です。
師匠といっても、現地調査が主のため あまり師匠らしいことはできていないのですけれどね。
またか。例によってオボロもまた、タドリがフィールドワーク中に偶然にも知り合いになった人物の一人ということでした。何をしていたのかも不明でどこからかふと現れたという神出鬼没(?)のオボロもオボロですが、散策中のタドリと偶然遭遇して知り合いになった人物が2人もエルガドにいるというのはなかなか奇跡かもしれません。
タドリ自身、オボロを弟子にすることを了承しつつ、自分のライフスタイル上あまりオボロの修行に付き合うことができていないことを少し申し訳なく思っているようではありますが、オボロの方はさほど気にしていないといいますか、もちろん師匠に色々と聞きたいという気持ちはありつつも、師匠はそれでこそ師匠だという感じで肯定的に思っている様子。
メル・ゼナかぁ…。王国が追っていたモンスターだよね。
俺は見たことないんだけど…。もしかしたら、師匠なら何か知っていそうだなと、ふと思ったんだ。
まぁでも師匠が今どこにいるか 俺も知らないんだよね~。自由な師匠を持つと、弟子も大変だよ! はははっ!
(マスター★4 オボロ)
オボロはタドリがどこにいるのかすら知らされていない以上、彼に会う機会自体がなかなか稀少ではあるものの、むしろ向学心豊富で自主性のあるオボロにとっては、タドリがそうしてフィールドワークに打ち込み膨大な知識をつけていく姿そのものが彼にとっての刺激になるようですし、これはこれで師匠らしいことができている、と言ってもよいのかもしれません。
いずれにしても、オボロがいずれ大成し、師のタドリに追随する薬師となる将来が非常に楽しみですね。ライズ-サンブレイクはこのオボロも含めて、「~見習い」やら「ハンターの素質がある(コミツなど)」やらといったキャラが結構いますから、後の作品で彼らの成長した姿が登場する可能性にも大いに期待がかかるところです。
ガイアデルムの討伐、お見事です。貴方のことを信じていましたが 無事に帰ってきてくれて安堵しました。
危機が去るのを見届けましたし 私もそろそろ旅立とうか…と思いましたが オボロさんはまだ話し足りないようですね。
今しばらく、エルガドにいようと思います。たまには滞在が長くなるのもいいでしょう。
[後略]
(マスター★6 タドリ)
キュリアの被害が未だ収束の気配を見せないということもあるでしょうし、タドリはしばらくはエルガドに滞在するということです。一つの場所にあまり長居しないタドリにとっては珍しいことかもしれませんが、そのおかげでオボロは師匠の旅の話、薬学の話を色々とできるということで、またとない機会ということになりそうですね。今回の危機が収束すれば、いずれはタドリはまたエルガドを離れ、現地調査の旅へと赴くのかもしれませんが、彼もまたチーム・エルガドの一員ですから、いつでもエルガドへと帰って来て欲しいものです。
それから、本項の最後におまけのエピソードを1つ。先のバハリとタドリの項で「バハリは変わり者な性格である」という話を致しましたが、作中でも得意のフィールドワークにおいて何かとエルガドをお騒がせすることに定評がある(?)バハリについて、雑貨屋のオボロは次のようにコメントしています。
バハリさんがようやっと エルガドに帰ってきたんだね~。今回もまた長かったなぁ。
バハリさんいつもすぐどっか行っちゃって なかなか帰ってこないんだよね。調査隊の人たちが困ってたよ。
俺はバハリさんの超・行動派なところ けっこう好きなんだけどな~。ロマンを追い続けてる! って感じ!
(マスター★3 オボロ)
自分の足で生の自然環境を直接調べ歩くというバハリのスタイルは、オボロにとっても彼の師匠であるタドリのそれに重なるところがあるのか、彼はバハリのアクティブさについてはかなり肯定的で、その活動を見守ることを内心愉しんでいる様子。
また、オボロも常に各地を転々としていてなかなか会うことができない師匠を気長に待つ、ということに精神的に慣れているからこそなのか、拠点内外をつねに忙しなく行き来していていつ連絡が取れるのかも安定しないという、周囲にとっては只管雲を掴まされるような彼のスケジュールについても、(彼自身は調査隊員ではないからというのを差し引いても)まぁなんやかんや大丈夫だろうと大らかに受けとめて楽観視しているような雰囲気があります。タドリという師匠をもつが故の、彼の器の大きさ……なのかもしれませんね。
4.オボロとカゲロウ
さて、先ほど少しカゲロウの台詞を紹介したように、オボロはカゲロウとも親交がありまして、彼はカゲロウのことをタドリと同様に尊敬しているといいます。
最近カゲロウさんに会ってないんだけど どう? カムラの里では元気だった? ………うんうん、それならよかった!
いやー、カゲロウさんとは昔から師匠つながりで仲良くしてもらっていてさ。俺、カゲロウさんを超・尊敬してるんだよ。
もちろん、師匠のことも尊敬しているさ。でもカゲロウさんは別軸で本当にすごい人なんだよな~。
今度、またじっくり教えてあげるよ。全部一気に話したら、つまらないだろ? 今後ともよろしくってことでさ!
(エルガド到着後 オボロ)
オボロがカゲロウと知り合ったのは、カゲロウの友人であるタドリを介してとのこと。フィールドワーク中のタドリと偶然出会ったことが、オボロにとっては更なる出会いのきっかけであり、彼の人生に大きく影響するものとなったということになります。「昔から」という部分や、カゲロウはタドリとは別の方面で尊敬していると言っていること、また次に紹介するように、オボロはカゲロウから剣術を習っていた(=当時のカゲロウは現役のハンターだった)ということから、恐らくは2人の故郷であるツキトの都がまだ健在であった頃からの親交であるように思われます。
どのくらい昔の話なのか、あるいはタドリ・カゲロウとオボロの具体的な年齢差はどのくらいなのかという点も不明ではありますが、竜人族という種族自体がもともと長命でありますから、外見的にはそれほど大きな差はないように見えて実は20年、30年、あるいはそれ以上の年齢差がある、という可能性も決してなくはありません。
俺が知ってる、カゲロウさんの話。あの人のすごい所を、ちょっとだけ教えてあげるよ。
カゲロウさん、じつは剣の達人でさ! 昔はよく教えてもらってたんだ。…俺はあまり才能がなかったみたいだけど。
同じ雑貨屋をしてるって知ったの、結構最近なんだ。俺にとってカゲロウさんは 剣の達人であこがれなのさ。
(マスター★2アンジャナフ後 オボロ)
で、当時はカゲロウから剣術を習っていたオボロですが、「自分には剣術の才能はない」と感じたようで、ハンター等の道には進まなかったようです。しかし、そうした彼自身の自己評価とは裏腹に、オボロは実のところ凄まじい実力の持ち主であるということをフカシギから聞くことができます。
[前略]
雑貨屋のオボロ殿は…。じつは…。
狩猟の腕は超・一流!
ケガをするのもさせるのも怖いから 狩猟はできないと言っているオボロ殿、本当は超・一流の才能を持っているニャ。
その秘めたる実力は、剣の師であるカゲロウ殿と並ぶ勢い…だそうニャ。
そしてその実力を買われて チッチェ姫の護衛という密命を王国から受けているのニャ。
でも命を奪う行為はしたくないので オボロ殿は木刀を隠し持っているニャ。提督いわく、木刀でじゅうぶんだそうニャ。
そして、姫が危険な目にあわないよう見ている必要があるため あの場所に雑貨屋があるのニャ。
[後略]
(マスター★5 フカシギ)
ここのフカシギの「超・一流!」という言い方、オボロの口癖(?)である「超・尊敬」に寄せているのがかわいらしいですね。フカシギによれば、オボロの剣の実力は彼の師であるカゲロウに追随するレベルのものであり、そのカゲロウは屈指の実力でツキトの王家に仕えるハンターだったわけですから、オボロの腕前も相当のものであることが窺えます。
本人が「才能がなかった」と言っているのは、あくまでも凄腕の師匠でありツキト王家の側近という重役であったカゲロウを基準として見た場合の自己評価ということなのでしょうね。加えて、フカシギによれば、オボロは「ケガをしたりさせたりするのが怖い」と言っていますから、剣術の実力やセンスとは別の問題で、彼の元来の気性に合わなかったという事情も含まれているのでしょう。
しかしながら、オボロは王国にその剣の腕前を見込まれて、チッチェ姫を密かに護衛するという役目を引き受けることに。真剣ではなく木刀で十分ということであれば、ケガをしたりさせたりという不安もあまりありませんからオボロも引き受けたということなのでしょうが、実はこの人事、かなり奇跡なんですよね。
チッチェ姫は「王国に危機が訪れているのに、王族である自分は安全な場所からただ見ているだけというのは耐えられない、自分も王国を守るために前線で働きたい」ということで受付嬢の資格を取り、エルガドに着任しました。そしてチッチェ姫は、エルガドでは姫としてではなく、あくまでも受付嬢として、ひとりの大人として、皆と対等な存在として接してもらえることを望んでいます。そんな彼女に対して、王国騎士から護衛をつけるということは、「自分はただ守られるのではなく、自分も王国を守る」という彼女の意志を軽んじることになってしまいます。
しかしながら、エルガドの受付嬢は多くのハンターと接する仕事ですから、何らかの人間関係のトラブルに巻き込まれないとも限りません。それに、観測拠点エルガドはかつてガイアデルムがその付近に大穴を空け、それに呼応してメル・ゼナも襲来したことがある場所ですから、万が一にもエルガドが強大なモンスターに襲われるという最悪の事態になった場合に、ガレアスやフィオレーネといった重鎮は騎士団を統率して迎撃の任にあたらなければなりませんから、彼ら王国騎士とは別で、チッチェ姫の専門の護衛もいる必要があります。そうした事情を考えると、チッチェ姫にまったく護衛をつけないでおく、というわけにもいきません。
ということで、チッチェ姫の気持ちを汲みつつリスクヘッジも考慮すると、「王国騎士ではない(=チッチェ姫と元々面識がなく護衛であるとバレない)」「本業のハンターではない(本業がハンターの者を姫の護衛の任でずっとエルガドに拘束するわけにはいかないため)」「王国騎士の幹部レベルの剣の腕前があり姫の護衛を安心して任せられる」という、割と奇跡の人材が必要になるのですが、偶然にもオボロがその条件にすべて当てはまるんですよね。
チッチェ姫、健気で頑張り屋さんで すごい良い子だよね~。
エルガドの騎士さんたちは、王国の姫なのに受付嬢として前線まで来てくれる彼女を、みんな慕っているよ。
まさにエルガドの精神的支柱ってヤツだ。しっかり見守って、彼女がケガとかしないようにしなきゃね。
(マスター★1 オボロ)
「見守る」というのは単に雑貨屋がクエストカウンターに近いから、大人として彼女を見守るということなのかと当初は思っていましたが、まさか姫の護衛という密命を受けていたとは…。
彼の雑貨屋がこの位置にあるのも、チッチェ姫のクエストカウンターがよく見える位置で周辺の監視に適しているから、という話からすると、オボロがエルガドに雑貨屋を開いたのもチッチェ姫の着任と同時、つまりオボロは元々別の場所で店を開いていたのを、姫の護衛役として王国にスカウトされてエルガドに居を移した、という感じなのでしょうか。もしそうなのだとすると、王国がオボロを護衛役として見出すに至った経緯は少し気になるところ。それこそ、バハリ辺りがタドリを通じてオボロのことを知っていて、彼からオボロをスカウトしてはどうかという具申があった、というような説も十分にあり得ますね。
うーん…なんなのでしょう…。あっ、○○さん! ひとつ、相談に乗っていただけませんか?
じつは、エルガドに来てからずっと どこからか、視線を感じるんです…。
いやな雰囲気の視線ではなく、まるで見張るような眼差しというか…。まったく敵意は感じないんです。
どちらかというと、温かさを感じるんです。見守られているというか…。でも、護衛はつけていませんし…。
わたくしの気のせいかもしれません。もし何か気づいたことがあったら 教えてもらえると嬉しいです!
(マスター★4 チッチェ)
で、当のチッチェ姫はそれに気がついているのかというと、本人は「護衛はつけていない」とは言っており、密命を帯びた護衛の存在には明確に気がついているわけではないものの、「何かしらの視線を向けられている」という実感はあるようです。謎の視線を感じる、というのは一歩間違えればホラーもいいところですが、彼女自身は「見守るような温かい視線」だと好意的に受け取っているようですから、まあこれはこれでよしというところでしょうか。
それにしても、一国の姫君を守るという点で言えば、チッチェ姫にとってのオボロはヨモギにとってのカゲロウと同じ立場であることになります。チッチェ姫とヨモギはサンブレイク発表当初は「生き別れの姉妹説」といったような予想も多くあり、本ブログでもこの2人とカゲロウ、オボロの4人に関して色々と予想を行いました。結果としてはチッチェ姫とヨモギには特に直接の繋がりや血縁関係はなく、筆者が事前に予想していたほどややこしい感じではなかったのですが、チッチェ姫とヨモギが対比的に描写されているのと同様に、カゲロウとオボロもまた一つの対比であるということは明らかでしょう。
オボロへと引き継がれたカゲロウの剣術は、長らくツキトの都の国家の繁栄を守り、最後には大いなる災いから、主君の形見でもある大切な姫みこ・ヨモギを守り抜いたもの。今やツキトの都は滅亡し、カゲロウ自身も剣を置いてしまいましたが、その技と心はオボロへと教え伝えられ、今まさに危機に立ち向かわんとしているこの王国の、前線の人々の心の支えであるチッチェ姫を守っている。「ツキトの王家に仕えるハンター・カゲロウ」の精神が、形を変えてなおも息づいている……というのは、なかなかに熱いストーリーですよね。
ところで、話は変わりますが、そのカゲロウのハンター時代の活躍、ないしカゲロウとタドリの故郷であるツキトの都について、オボロはどの程度知っているのでしょうか。エルガド近辺で出会うまでにオボロとタドリは面識がなかったことや、以前の記事で話したヨモギ周りの話で特にオボロの名前が出ているわけではないことから、おそらくオボロ自身もツキトの都の出身というわけではないというのは推測がつきますが、それにしてもオボロの台詞には、何となくその辺の話を知っているのかな? と予想させるようなものもあったりします。
さっき、提督の声がここまで聞こえたよ。あの人が大きな声を出すなんて 相当珍しいことだね。
普段は物静かな人が大きな声を出すときって 誰かのために熱くなっているとき…だと 俺は思うんだよね。
守りたい時、伝えたい時、止めたい時…。普段は静かだからこそ、心に響くよね…。…ま、そんなことより、買い物はどうだい?
(マスター★2緊急前 オボロ)
この台詞は、直接の文脈としては、自己犠牲に走ろうとするフィオレーネを咎めるガレアスに対してのコメントなのですが、「普段は物静かな人が大きな声を出すときって 誰かのために熱くなっているとき…だと 俺は思うんだよね」以降の話の展開的に、なんとなくガレアス以外にも、特定の誰かのことを念頭に置いているような雰囲気がないでもありません。それこそ、王家を守るために奮戦した、ハンター時代のカゲロウの活躍のことを少なからず知っているのかな? とも思ったりします。
主人公にカゲロウの話をするときにも、何か色々と深い事情を知っていそうな感じはありましたから、少なくとも全く知らないというような感じではないような気がしますね。いずれ本編でツキトの都のエピソードが語られるときには、おそらくオボロからも色々とカゲロウの話を聞くことができると思いますから、その日を楽しみに待ちたいところです。
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さて、今回の考察はこの辺りで締めとしたいと思います。冒頭にも申し上げたように、タドリはエルガドのメンバーの中では参戦が最も遅く、世間話の数も現状はそれほど多くはありませんから、彼の来歴や人物像についてはまだまだ知りたいことがたくさんあるんですよね。本編でもいずれ、カゲロウやヨモギとのその後のエピソードや、まだツキトの都が健在だった頃の話、薬師を志した日の話、今日までの旅の話……その辺りのことが語られる日が来ることでしょう。その際には、本記事やカゲロウの記事の続きとして、再びタドリの記事を書くことになると思います。今からその日がとても待ち遠しいところです(それまでに他キャラの記事も色々と仕上げなくては……)。
ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!