カゲロウとタドリと「姫みこ様」

 

※注意事項※

・本記事はモンスターハンターライズ:サンブレイク」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。


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サンブレイクのキャラクター考察記事のトップを飾るのは、行商のカゲロウさん、薬師のタドリさん、そして茶屋の看板娘ヨモギちゃんの三名。

 

まあ、メインの舞台はエルガドなのにいきなりカムラの里の人ばりばりおるやんけという話ではあるのですが、今後のアップデートで追加されるであろう続きのストーリーでおそらく彼らの物語が展開されることになるであろうキャラクターたちなので、現時点で出ている情報はアプデ前に早めにまとめておきたい! という意味も込めてまずはカゲロウたちの記事から書いていくことに致しました。「トップバッターはツリキ!」とかだったらさすがにちょっと困惑するでしょ?

 

本記事でのお話は、以下の「モンスターハンターライズ」時点で明かされているカゲロウについての情報を前提としております。この点についてご存じでない方は、まず以下の記事を先にお読み下さいますと、本記事の内容がお楽しみいただけるようになるかと思います(なお、以下の記事はサンブレイクの情報が発表されていない時期に書いたものなので、情報や考察が古い部分がございますことをあらかじめご了承ください)。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

ーーーー目次ーーーー

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1.サンブレイクで明らかになるカゲロウの過去

 

※以下、公式アナザーストーリーvol.4「姫みこ様へ」公開(2022/09/30)以前の考察を含みます。あらかじめご了承ください。

 

ライズの時点では、カゲロウの過去については明確に語られていない部分も多く、本人やフカシギの話から得られる情報を通じて「おそらくこうなのではないか」という推測の域に留まる部分がありました。まず、カゲロウやタドリが現在の状況に至るまでの来歴や事実関係について、サンブレイクで新たに確定した部分をまとめておきましょう。

 

まずは、フィオレーネの治療のことでタドリの居場所をたずねるために、彼と旧知の仲であるカゲロウに話を聞きに行ったときのこちらの台詞。

 

おかえりなさいませ、○○殿。「えるがど」での生活はいかがですかな?

…………ほう。ろんでいぬ殿の姉上、「ひおれいぬ殿」が倒れてしまったと…。それは、一大事ですな。

おっしゃる通り、薬師のタドリはそれがしの友、故郷が滅びた十数年前、共に生き延びた数少ない仲間のひとりです。

以来、手紙のやり取りはしていますが… タドリはもともと薬の材料を求めて各地を旅する人物ゆえ、会えてはおりませぬ。

ただ、つい先日の手紙にて、「密林に向かう」とありました。今もそこにいると見て間違いないかと。

……そうそう。タドリに会ったら、一言、伝言をお願いできますかな。

「姫みこ様は、カムラの里にて笑顔で過ごしておられる。姫みこ様のうさ団子を、一度ご賞味あれ」と。

伝えていただければ、わかります。手紙で記すにはおそれ多く…。しかし、あなたの伝言であれば安心ですので。

(マスター★4 緊急ライゼクス前 カゲロウ)

 

そして、その伝言を主人公から聞いた時のタドリの台詞。

 

[前略]

……ああ、あと、○○殿。

ここへ戻るときに伝えてくださった、カゲロウからの言葉…。まことに心が熱くなりましたよ。

カゲロウが主君より託された「姫みこ様」が元気でおられること…。何よりのことです。

あの日、私はいつものように薬を探す旅に出て、その間に故郷は…。それが、ずっと負い目だったのです。

…以来、カゲロウと手紙のやり取りはしていましたが、故郷を守れなかった私は会いに行く勇気が持てずにいました。

しかし、あなたが伝えてくれた言葉で、一歩が踏み出せそうです。まこと、感謝にたえません。

[後略]

(マスター★4 緊急ライゼクス後 タドリ)

 

ライズの時点での情報に基づく以前の考察記事では、ヨモギは十数年前に滅ぼされてしまったカゲロウの故郷の国の王族の子孫であり、彼らの国が災いに見舞われた当時、カゲロウはまだ幼かったヨモギを連れて、災いの魔の手が及ばない地域——すなわち遠く離れたカムラの里を訪れ、彼女の身の安全を託した。そしてカゲロウは彼の故郷へと戻り、ハンターとして国を襲う「災い」に立ち向かったものの、災いに打ち勝つことは叶わず故郷は滅んでしまい、戦いで重傷を負ったカゲロウもまた、ヨモギを預けていたカムラの里に流れ着いて一命を取り留めた……というあたりがカゲロウの来歴なのではないか、という推測を立てていました。

 

そして上記のカゲロウとタドリの台詞は、カゲロウの来歴がおおむねその推測の通りであることを示すものであるように思います。タドリの言うところによれば、当時の彼らの主君は国の危機に際して「姫みこ様」なる人物をカゲロウに託したということであり、そしてその姫みこ様なる人物は今も健在で、カムラの里におり、「うさ団子を作る仕事をしている」人であるとのこと。

 

もちろん茶屋に勤めているのはヨモギ以外にもたくさんのキャラがいますが、姫みこというからにはおそらく人間でしょうし、フカシギの「ヨモギは貴族あるいはそれ以上の身分の出自なのではないか」という話とも合致しますから、「姫みこ様=ヨモギ」というのはほぼ間違いないと言えるでしょう。

 

そしてヨモギをカゲロウに託した彼の主君、つまりヨモギの肉親にあたると思われる人物は、おそらくは国に残って統治者としての責任を全うした――すなわち、ハンターたちを率いて「災い」に立ち向かい、その戦いに殉じたのでしょう。一国の王である自分だけが、災いに背を向けて安全な場所に逃げるわけにはいかない。そこで愛娘のヨモギの命を信頼できるハンターであるカゲロウに託し、自らは災いとの戦いに赴く、という選択をしたのでしょうね。

 

その当時の記憶はヨモギ自身の内にはないとはいえども、幼いころに肉親と自らが生を受けた国を失うというのは、彼女もあまり恵まれた生い立ちではないということになるかもしれません。しかしながら、カゲロウがヨモギを託したカムラの里が、彼女を里の新しい家族の一員として受け入れて、彼女の成長を温かく見守ってくれているということは、ヨモギやカゲロウの人生に少なからず希望を与えてくれるものであったはずです。

 

で、そんなヨモギからも、次のような興味深い話が聞けたりします。

 

あっ! ○○さん! 聞いたよ~! 里の外へ行くって! 里の外、初めてでしょ? ドキドキだね!
あ、でもねでもね…私は小さいときに里の外に出たことがある…みたいなことを 前にゴコク様が言ってたの。

私びっくりして、「いつ!?」って聞いたら「赤ん坊のときでゲコ」って、もー、そんなの全然覚えてないよ~!

結局、ゴコク様もそれ以上詳しく教えてくれなくて、そんなの、出たことないのと一緒だよねぇ?

しかたないから、外の話は○○さんに聞こうっと! おみやげ話、いっぱい聞かせてね!

(旅立ち前 ヨモギ

 

ヨモギは幼少期にカムラの里に引き取られて以来ずっと里で育ってきているでしょうし、本人の口ぶりからしても、少なくとも記憶にある限りでは里の外に出たことはないということですから、ゴコクの「里の外に出たことがある」というのは額面通りの意味ではなさそうです。

 

おそらく本当は「他の国から里にやってきた」が正しいのですが、ヨモギ自身はあくまでも自分はカムラの里出身だと信じて疑っていないでしょうから、彼女の自己認識に話を合わせる形で「里の外に出たことがある」という表現をゴコクは選んだのでしょう。これは決してゴコクがヨモギに嘘をついて誤魔化しているとかいうわけではなく、ヨモギに彼女の本当の出自のことを話すべきタイミングは今ではないと考えているからなのでしょうね(後述)。

 

それから、以前の記事で「カゲロウたちの故郷は "王国(チッチェ姫やフィオレーネの国)" の領内にあったのかどうか」「チッチェ姫とヨモギは何か関係がある(例えば姉妹や従姉妹)のか」という疑問も上がりましたが、これについてもおそらくは「"王国"とカゲロウ達の故郷とは別の国家である」と見てよいと思います。

 

もしこれらが同一の国家であり、したがってヨモギもまた「王国」の王族の血縁者であるということになれば、チッチェやフィオレーネ等から既に「王族で十数年前に行方不明になった人物がいる」的な話は出るはずでしょうし、そもそもこの仮定では国家自体は存続していることになっている以上、カゲロウがヨモギをずっとカムラの里に留まらせている理由がありません(カゲロウはエルガドに行商で何度も訪れているということですから、彼が現在の王国のことを知らないはずもありません)。

 

それに、「姫みこ様」という呼び方から察するに、カゲロウの故郷では王族が神職(巫女)を兼ねているようであり、一方の「王国」については、チッチェ姫を慕う周囲の人々の様子を見ても王族が神職を担うような信仰体系があるようには窺えませんから、文化が根本的に違うということで、やはり別の国家として考えるべきだというのが妥当なところでしょう。

 

ところで、十数年前に彼らの国を滅ぼした「災い」が何なのかという話をしておきますと、当時ハンターであったカゲロウが「武器をとった」という話がライズの時点であったことから何らかの形でモンスターが絡んでいるものと考えられていましたが、更にタドリの話から次のような情報が得られました。

 

(マスター★5 タドリ)

タドリによれば、彼らの国は「燃やされていた」とのこと。何らかの人為的な原因である可能性も考えられなくはありませんが、国一つを消失させるほどの規模の火災となれば、おそらくは炎なり爆発なりを操るモンスターによってもたらされた災禍であると考えられるでしょう。

 

ガイアデルムおよびメル・ゼナが使役しているキュリアの存在は少し気になるところです。ガイアデルムやメル・ゼナ自身には炎を吐いたりする能力はありませんが、ガイアデルムのハンターノートの情報によれば、キュリアは結晶化する(死骸orガイアデルムに捕食されて成分のみが体表に分泌されることによってできる?)ことで爆発性を持つようになるということです。

 

ガイアデルム自身はもちろん、知能の高いメル・ゼナも頑張れば(?)結晶化したキュリアの爆発性を使うことくらいはできると思いますから(エルガドのロード画面の左端には、火災の起きている都市の近くにメル・ゼナがいる様子が描かれています)、王国でのキュリアの調査がひょっとするとカゲロウたちの祖国が滅んだ原因にも何らかの形で繋がっている可能性は大いにあり得ると思います。

 

ただ、次のタドリの台詞を見るには、彼の故郷とメル・ゼナとは直接の関係はなさそうかなーといったところ。

 

フィオレーネさん、お元気になられて本当によかったですね。
やはり、エルガドの皆さんの表情もパッと明るくなったのがわかります。

そしてさっそく、メル・ゼナの討伐へ向かわれるご様子…。心配です…。

ですが、エルガドの方たちにとっては特別なモンスターなのですよね。私はここで、無事を祈っております。

(マスター★5緊急前 タドリ)

 

この台詞を見るに、タドリはメル・ゼナという名前に対して何か並々ならぬ気持ちがある…というわけではない様子。もちろん、彼は祖国がモンスターに襲われているところを直接目撃してはいませんから、もしかしたら彼が知らないだけでメル・ゼナも関わっていた可能性は否定できません。しかし、タドリはその後もカゲロウとは文通で連絡を取っていて、当時の状況についても少しはカゲロウから聞いているでしょうから、もし少しでもメル・ゼナに心当たりがあるのであれば、「王国の人たちにとっては…」の台詞はもう少し違ったものになるはず。

 

先ほどの「カゲロウ達の故郷は "王国" とは別の国家である」という考察も踏まえれば、彼らの国は「王域」外、すなわちメル・ゼナの縄張りの外にあるかもしれないことも考慮する必要があり、その意味でもメル・ゼナが直接の主犯であるというのは少し考えづらいかもしれません(憶測の域を出ないところではありますが)。

 

あるいは、百竜夜行と似たような形で多数の大型モンスターに襲われていて、その中にリオレウスやアンジャナフといった炎を吐くモンスターがいたために国が焼き尽くされた、という線も可能性としてはなくはありません。それこそ、何らかの形でキュリアが関わっており、傀異化して暴走するモンスターたちの群れが直接の壊滅の原因だった、ということもあり得る話です。

 

しかし、凄腕のハンターとされるカゲロウが傀異化したモンスターに手も足も出ないというのは考えづらく、王家に仕えるハンターにはカゲロウ以外にも腕の立つ者が何人もいたでしょうから、いくら傀異化モンスター相手とはいえども国自体が影も形もなくなるほど全壊させられる、というところまで惨敗することはないはずです。やはり、強大な力を持った古龍の存在が可能性としては一番高そう。この点はおそらく今後のアプデで追加されるストーリーで明らかになる部分であると思われます。

 

2.実は2人とも元々ハンターでした

 

さて、ここまではカゲロウとヨモギの話がメインでしたが、ここでタドリの来歴の話ももう少し交えていきましょう。

 

かつて、私とカゲロウは故郷でハンターをしておりました。
しかし、勉学が好きな私が薬師になり、武の才に長けていたカゲロウは出世をし とある偉いお方のそばに仕えていました。

……そしてある日。私が植物の現地調査におもむいていた日に 故郷はモンスターの襲撃を受けたのです。

…私が調査を終え、故郷へ戻ったときには すべて燃え、破壊しつくされたあとで… 誰も、何も、残っておりませんでした…。

それ以降、より一層薬学を学ぶようになったのです。誰も守れないなんてことが、ないように。

そして同時に、一か所に留まることがほとんどなくなりました。…カゲロウとは、いろいろと真逆ですね。

(マスター★5 タドリ)

 

カゲロウが王家に仕えるハンターであった、というのはこれまでの話からも予想のつくことでしたが、なんと現在は薬師をしているタドリも、元々はハンターとしてカゲロウと共に活躍していたとのこと。そこからカゲロウは宮仕えの凄腕ハンターとして、タドリは一流の薬師としてそれぞれの道を歩み始めることになったわけですが、その結果として2人は奇しくも異なる仕方で故郷の滅亡を味わうことになりました。

 

カゲロウの味わった「自分の目の前で故郷が滅んでいく」という苦悩、「ハンターとして災いを食い止めることができなかった」という無力感。タドリの味わった「調査を終えて帰ってきたら、そこにあるはずの故郷が既に影も形も無くなっていた」という苦悩、「故郷が襲われていたのに自分はその場にいることすらできなかった」という無力感。故郷を喪失したという点では同じであっても、2人はそれぞれ別々の傷を抱えて今に至るというわけなのですね。

 

で、そんな2人ですが、故郷が壊滅させられて以来、これまでずっと手紙でのやりとりしか連絡を取っていなかったものの、主人公の「姫みこ様」についての伝言をきっかけに心境が変わったのか、現在は久しぶりに顔を合わせようか、という話になっているようです。

 

えるがどでの仕事が落ち着いたら タドリに里を訪ねてほしいと思っております。

タドリとは、故郷を出て以来 文を交わすのみでしばらく会っておりませんし…

何より、姫みこ様の成長なされたお姿を、ぜひとも…。

…しかし、あらたまって2人で話を、というのは、どうにも気恥ずかしいですな。

もし、差し支えなければ… その際は、○○そのもご一緒にいかがですかな…?

(マスター★6 カゲロウ)

 

[前略]

エルガドに滞在中は…そうですね。せっかくなので、カムラの里へ顔を出すのもいいのかもしれませんね。
……あの、よければその際には、貴方も一緒に来てはいただけませんか?

なにぶん、久方ぶりですので…。カゲロウと顔を合わせるのが、少々気恥ずかしいのです…はは。

(マスター★6 タドリ)

 

故郷を襲う災いとの戦いに敗れた後、遺されたヨモギの後見人としての使命を全うするべくカムラの里に流れ着いたカゲロウと、現地調査から帰ったら既に滅ぼされた後の故郷を目にし、そのまま各地を渡り歩くようになったタドリ。離れ離れになってしまっていた2人がこれまでに会おうとしなかったのは、互いに故郷を守れなかった無力感から相手に合わせる顔もなく、たとえ会って話をしたところで、けっきょくは故郷の悲劇的な思い出を共有することにしかならないだろうと思ったからでしょう。しかし、彼らにとって最も大切な存在である「姫みこ様」が今もカムラの里で元気にしている、という話であれば、互いに前向きな気持ちで再会することができます。

 

主人公の伝言を聞いたタドリの反応を見るに、ヨモギが今も健在である、ということをカゲロウは今まで文通でタドリに伝えるというようなことは取り立ててしていなかった様子ですが(タドリは故郷の危機の際にカゲロウがヨモギのことを託されたことは知っていますが、その後の安否、どこでどうしているのかということまではおそらくあまり知らなかったのでしょう)、おそらく互いの心の傷が癒えて明るい話ができるようになるまで、またヨモギがカムラの里で一人前に成長するまでは、彼女のことは心の内に秘めていたのでしょう。

 

それに、カゲロウは彼の主君から直々にヨモギを守るという使命を預かった身であり、また彼が戦いに敗れた後に重傷を負いながらも必死でカムラの里までたどり着いたのも、ハンターとして災いから国を守るという使命が果たせなかったことへの深い後悔があり、それゆえに王家の生き残りであるヨモギがカムラの里で成長するのを見守っていくという、王家に仕えていたハンターとしての彼の最後の使命を果たすためであったように思われます。

 

カゲロウが、カムラの里を第二の故郷と言ってくれるまでになったのは 本当に喜ばしいことでゲコ。

あのときのケガを思えば、今こうして商人として元気に働いとるのは奇跡といっても過言ではないし…。

これもゼンチの献身的な治療と… やはり、本人の気力だゲコ。

守るべきものの存在は、人を強くする… それは何も、実際の力に限ったことではないでゲコね。

(マスター★6 ゴコク)

 

カムラの里に流れ着いた当時のカゲロウを知るゴコクも、致命傷を負っていたカゲロウを生き永らえさせたのは、神業ともいわれるゼンチの医術もさることながら、最終的には「ヨモギのそばにいて守っていく」という彼自身の強い意志の力であろうと言っています。

 

そういうわけで、自分がその使命を果たせたとは言えないうちから――と言っても、その使命がどこで終わるのかというのも難しいのですが、少なくともヨモギが一人前の大人に成長していないうちから彼女のことをタドリに逐一連絡する、みたいなことは、彼の責任感が何となくそれを許さなかったのかもしれません。

 

で、サンブレイク本編の時期ではカゲロウはそろそろタドリにもヨモギのことを話したいと思っていたものの、今まで通りの手紙でそのことを伝えるのもなんだかな…と思っていた。そんな折に主人公が偶然タドリのことを訊いてきたので、これからタドリに会いにいくという主人公に自らの想いを託したのでしょう。自らの友人である主人公に伝言を頼むということによって、今まで通り互いの近況報告をし合う「平行線」の手紙とは違う、何かこう互いの生をより直接に感じられるような、特別な伝え方ができるからです。

 

ヒノエも言っていたように、カムラの里の人たちがエルガドを訪れるのとは逆に、現在エルガドにいる人たちがカムラの里に来てくれる、ということも今後ありそうな感じですから、2人がヨモギちゃんの茶屋で共に食事をしている、みたいな光景も見られるかもしれませんね。これは非常に楽しみです…!

 

ちなみにカゲロウさんですが、サンブレイクに入ってからも輪をかけてヨモギちゃんにデレッデレでして、相変わらず彼女のことをベタ褒めしています。

 

○○殿がえるがどへ行かれてから、ヨモギ殿がますますはりきっておいでです。
新作のうさ団子を開発して えるがどでも食べられるようにするんだと それはそれは、すごい気迫で。

茶屋もますます活気にあふれていて… ヨモギ殿が茶屋を、いえ、里全体をパッと輝かせてくれているようですな。

(マスター★2 カゲロウ)

 

彼が褒めている内容自体は至極その通りだと思いますから、特に溺愛しているがゆえの過大評価というわけでもないのですが、それにしても彼にはなんとなく親バカ気質があるような気がするんですよね。

 

※アナザーストーリー公開後追記:アナザーストーリーの内容によれば、カゲロウはヨモギの母親である「ミカド」のそのまた先代の主君から仕えていて、その娘にあたるミカドが婚約する際には本当の父親のような心持ちでそれを見届けたということですから、そのミカドの娘であるヨモギに対しても、彼が親心のような感情を抱くというのは、まったく想像に難くありません。カゲロウにはこれからも、ヨモギちゃんの成長をそんな感じで温かく見守ってほしいところですね。

 

3.ヨモギちゃんに事実を明かす日は来る?

 

話を戻しまして、フィオレーネのことで主人公にタドリのことを訊かれた件から少し後のカムラの里でのお話。「姫みこ様」ことヨモギの無事をタドリと共有したことがきっかけになったのか、カゲロウは里長フゲンとヨモギのことで何か話し込んでいたようです。そして、ヨモギも2人が自分の話をしているのを耳にはさんだらしく、「姫みこ」とは何なのかとフゲンに尋ねます。

 

ねぇねぇ○○さん… 「ひめみこ」って、一体なんの話か知ってる?
ん~、この前 里長とカゲロウさんが話してるのがちょっと聞こえちゃって。

里長に聞いてみたんだけど、「…そのときがきたら教える」みたいに言われたの。

なんか、気になるなぁ…。でも、「そのとき」になったら教えてくれるってことなんだよね?

それなら、まあいっか。さ、うさ団子作ろっと!

(マスター★6 ヨモギ

 

フゲンからは「そのときがきたら話す」との返事で、ヨモギも気になる様子ではありながらも、「まあいっか」とそれ以上の詮索はしなかったようです。

 

おそらくカゲロウとフゲンの話はヨモギの出自に関することだと思われますが、以前の記事でも書いたように(たしか書いたはず…)、じっさい、本当の出自は亡国の王族であるということを彼女にいつ伝えるべきか、そもそも伝えるべきなのかどうかというのはなかなか難しい問題です。

 

ヨモギ自身は自らの幼少期のことを知りませんから、彼女はあくまでも自分はカムラの里の出身だと思っているでしょうし、今の彼女には「カムラの里の茶屋の看板娘」という確固たるアイデンティティが既に確立されています。そんな中で、「本当は十数年前に滅んだ国のお姫様だよ」という彼女の本来のルーツを伝えることは、ともすればそのアイデンティティにヒビを入れてしまうことになりかねません。

 

もちろん、彼女の出自がなんであれ、ヨモギはカムラの里で育った大切な家族の一員であることには何ら変わりないですし、おそらくカゲロウやヨモギ自身もそう言うであろうと思います。

 

しかしその一方で、自分には "カムラの里の家族のみんな" とは別に本当の肉親がいて、しかもその親は十数年前におそらく既に亡くなっている、という話を聞けば、ヨモギはショックを受けたり戸惑ったりということになるでしょうし、今まで「カムラの里出身」というアイデンティティで里のみんなと一緒に時間を過ごしてきた彼女が、「自分だけ出身が違う」ということを教えられたとき、何かこう言いようのない孤独感に苛まれてしまう可能性もないわけではありません。

 

私たちの世界にも「出自を知る権利」というものがあるように、個人のルーツがその人の今後の自己形成に及ぼす影響というのは決して無視できないもの。だからこそ、本当の出自を伝えるというのは非常に悩ましいことでもあるのですが……。

 

とはいえ、ヨモギの場合はその出自のスケールが桁違いであるだけに、彼女にそれをまるきり知らせないままというのも、それはそれで今後何らかの支障が出ないとも限りません。それに、もしヨモギが実は自分のルーツについて内心では何か気になることがあり、それを一人で抱えているのであれば、彼女に事実を伝えることは却って彼女の気持ちを楽にできるという可能性もあるのです(※)。

 

※とはいえ、カムラの里は全員が家族同然の付き合いであり、ヨモギも里の皆に温かく見守られて育ったでしょうから、ひょっとすると彼女は自分に肉親がいないことについて特に疑問を抱いたことはないかもしれません。そのあたりどう思っていたのかというのも、今後ヨモギとの会話で明らかになる部分かもしれませんね。

 

また、当時幼かったヨモギを遺しておそらくは亡くなってしまった彼女の親(=彼女の国の主君)や、命を賭して災いに立ち向かった彼女の国のハンターたち(=カゲロウの仲間)の想いを繋いでいくこと―――ヨモギを生み、愛し、守ろうとした、今は亡き人たちの存在を知ってもらうということも考えれば、やはりカゲロウ達はいずれはヨモギに彼女の本当の出自について教えることになるのではないかと思います。となれば、やはり今のヨモギに話すべきかどうかというタイミングを考えなければならず、それがフゲンの「時がきたら」という言葉の意味の一つなのでしょう。

 

あるいはカゲロウ達は、今回の王国の異変を知る中で、ヨモギやカゲロウ、タドリの故郷である国が滅ぼされてしまった原因に何か心当たりがあるのかもしれません。今回の王国の一件がいずれ十数年前に自分たちの国を滅亡させた原因にも繋がっていると予想されるのであれば、事の真相を明らかにし、全てが片付いた後でヨモギにも改めて話をする、という段階を踏む方が、各々が未来を向くためにはより適切な順序ということになるでしょうか。その意味で、フゲンは「今はまだ話す時ではない」とヨモギに伝えたのかもしれません。

 

まあ、メタ的な話をすれば、現時点で作中にここまで伏線がある以上は、カゲロウやタドリ、ヨモギの故郷に関する物語が今後のアップデートで展開されてゆくことになり、ヨモギも近いうちに自らの出生を知ることになるのかな、と思うのですが……。ヨモギは色々と驚くでしょうし、彼女の肉親や多くの人々の死の事実にはショックを受けてしまうところもあるかもしれないけれど、そんな時にこそカゲロウや、里のみんなが彼女の心を支えてくれたら私は嬉しいな。なんといったって、カムラの里の団結力は地上最強ですから。

 

ーーーー※10月15日追記----

 

カゲロウ、タドリ、ヨモギについてのアナザーストーリーが、サンブレイク公式Twitterで公開されました。

 

 

大いなる災いによって滅ぼされてしまった彼らの故郷は「ツキト(月兎)の都」というそうで、またその「災い」の出現時には嵐が発生していることから、これはアマツマガツチなのではないか? という予想もなされていますね。元々アマツは和風モチーフのモンスターでライズへの参戦を期待されていただけに、サンブレイクでこういう仕方で復活するというのは十分に考えられる話です。ライズ時代には、イブシマキヒコ・ナルハタタヒメとアマツマガツチを何らかの形で関係づけるような考察もありましたからね。

 

で、ヨモギが営んでいる茶屋の紋は、月に住まう兎の紋を元に、カムラの里の象徴である桜の花を加えたものであるという話ですが、ヒノエの話を聞いてみると、その茶屋の名物である「うさ団子」という名称も、恐らくはヨモギが考えたものであるらしいんですよね。

 

昔からお団子は皆の大好物だったのですが、そこに革命を起こしたのが、茶屋のヨモギちゃんなのはご存知ですよね?

うさ団子…! 見た目のみではなく、その作り方も味も、団子の概念を根底からくつがえしたのです…!

[後略]

(里☆1 ヒノエ)

 

「昔からお団子は……」という口ぶりから、恐らく里のお団子は元から「うさ団子」という名前だったわけではないみたいですね。長らくカムラの里の伝統的な名物であったお団子に、ヨモギが「お団子をより可愛らしく、みんなを笑顔にできるように……」みたいなことでウサギの要素を加えて、里のお団子は「うさ団子」へと進化したという経緯であるように思われます。

 

ヨモギが「ウサギ」という着想を得たのが、カゲロウが茶屋を始めるヨモギのために設営した茶屋の設備に兎の紋があったからなのか、それとも幼い頃からヨモギの手近にツキトの都の紋が描かれた品(彼女を包んでいた風呂敷など)があったからなのかは分かりませんが、いずれにしてもヨモギを産み育てた彼女の両親、ヨモギや故郷を守らんとして大いなる災いに立ち向かい、またそこで命を落とした多くの人々……彼らが生きていた証、彼らがヨモギのことを愛した証であるところのツキトの都の紋が、ヨモギの茶屋の紋へと形を変えつつ引き継がれ、そうしてカムラの里の中で、ヨモギのいのちのすぐそばで彼らの想いがなお生き続けているというのは、非常に胸が熱くなる話でございますね……。

 

うさ団子ヘビーユーザーであるヒノエがあれほどうさ団子を気に入っているのも、彼女が元から食べることが大好きであること、お団子が好きであることが第一の理由ではあると思いますが、複雑な事情で里にやってきたヨモギを里の家族として護り育てていくという十数年前の決意と彼女への愛情、そしてそんなヨモギが今は茶屋の看板娘として日々を元気に生きていることへの喜び……そういう想いも含まれているのかもしれないなぁ。

 

そして、カゲロウがヨモギに彼女の出自について伝えるのか、伝えるのならばいつにするのかというのも長らく疑問ではありましたが、マガイマガドの一件と百竜夜行を経て大人になったといえる今のヨモギになら、真実を伝えてもよいのではないかとカゲロウは考えている様子。そして本記事でも先述した通り、やはりカゲロウも、ツキトの王家の家臣として、ヨモギのことを大切に想っていたツキトの都の人達の存在を心に留めて欲しいという想いもありつつ、ヨモギの故郷とは、今までもこれからも「カムラの里」でよい、と考えているみたいですね。

 

むろん、そうとはいえどもヨモギは真実を聞いて少なからず動揺することはあるでしょうし、先に述べたように自分のルーツやアイデンティティに悩んだり、自分の知らぬ間にそんなに凄惨な災いがあったということ、カゲロウを始めとして自分のために負傷したり、災いに殉じたりした人がいること等々にショックを受けることもあるやもしれませんが………最終的には、カムラの里の人たち、両親をはじめとするツキトの都の人たち、たくさんの人たちが自分の幸せを心から願ってくれていた(いる)ということを、誇りに想ってほしいと筆者は考えています。

 

それにしても、当のカゲロウにとっては、ヨモギに「貴女の故郷はカムラの里でよい」と伝えるのは、少しばかりつらいことでもあるのかもしれません。カゲロウはカムラの里を「第二の故郷」として愛しく想っており、また見ず知らずの自分とヨモギとを救ってくれた恩義を大切にしていますが、同時に彼の第一の故郷であるツキトの都への、愛情、忠誠、郷愁、責任、後悔……そうした並々ならぬ思いが揺らぐことは決して今後もないでしょう。

 

その一方で彼は、そのツキトの都の生き残りであり彼が仕えていた王家の子孫であるところのヨモギには、ツキトの都の人たち、彼女の肉親の想いを忘れないで欲しいと思いつつも、彼女の故郷は(今まで通り)カムラの里であるという自己認識でよいとも考えています(これは言うまでもないことですが、カムラの里とツキトの都との間に価値の軽重をつけるということではありません)。

 

カゲロウにとってそれは、故郷であるツキトの都の王家に長らく仕えてきた自らの人生と、その子孫である姫みこ様――すなわちヨモギの存在とを、どこかで切り離して考えなければならないということでもあると思うんですよね(もちろん、これはカゲロウがいずれヨモギの元を去るとか、2人の間の絆が失われるという意味ではなく、むしろ今のカゲロウの志は、里を拠点に雑貨屋を営みつつ、亡き主君の遺志を汲んでヨモギを見守っていくということに固まっているでしょう)。

 

しかしそれはそれとして、カゲロウは自らの使命として、王家の生き残りであるヨモギを守り、そして彼女の両親やツキトの都の人々のことをヨモギに伝えるということはするつもりであれど、だからといってヨモギ自身がその過去に縛られるということ、ツキトの都のことを必要以上に彼女が重く受け止めてしまうことは望んでいないとも思います。

 

災いによって既に失われてしまった彼女の本来のルーツに囚われてしまうのではなく、それを知った上でなお、ヨモギ自身はあくまで「カムラの里で育った茶屋の看板娘」というアイデンティティを第一として、さまざまな人との繋がりを築きながら彼女自身の望む人生を切り開き、(フゲンの言葉を借りれば)日々を力強く生きてゆくこと。亡くなった彼女の肉親も、カゲロウやタドリも、それをこそ望んでいることでしょうし、ヨモギが彼らの想いをすぐには受けとめきれなかったとしても、両親やツキトの都の人たちの遺志を受け継いで生きると志してくれるようになるのであれば、その形が一つの理想であるように思います。いずれにしてもヨモギが、自分の過去を受け入れようと焦ったり、独りで抱え込んだり、自分の正直な気持ちを我慢したりする必要はありませんね。動揺して当然のことなのですから、長い時間をかけて、ゆっくりでよいのです。

 

他方で、カゲロウにとって、ヨモギに「貴女の故郷はカムラの里でよい」と言葉にして伝えることは、同郷であるという繋がりを共有しつつも、ハンターとして災いから故郷を守り抜くことができなかったという十字架を背負う自分と、カムラの里の子として今までも、これからも彼女自身の人生を歩んでいくヨモギとは、なんというか……生きる時間というか、あるいは地盤のようなものが、どこかで決定的に異なるということを、自分自身に言い聞かせることでもあると思います。彼がヨモギに対して見せる親心のような温かな視線の中には、その意味での一抹の寂しさのようなものもあったりするのかな……ともちょっと思ったりするんですよね。

 

彼が主君から託されたヨモギを必死に守り抜いたのも、そのヨモギにツキトの都のことを知らせようとしているのも、記憶の中の故郷から彼が感じている、ある種の引力によるものであり、ヨモギに彼女のもう一つの失われた故郷のことを伝え、そこにいた人たちの生きていた証を共有することは、ヨモギにとっても、カゲロウやタドリにとっても、そして今は亡き都の人達にとっても、大いに意味のあることです。

 

しかし先述したように、カゲロウは同時に、自分自身の過去、ツキトの都に対する己自身の感傷に、ヨモギを深く巻き込みすぎるようなことになってもいけないということをも、よく理解していると思います。そういう理由もあって、彼はヨモギには「カムラの里の子」として生きて欲しいと願っているのでしょう。それに、彼女が里で健やかに、幸福に成長していっているという事実が、カゲロウの第二の人生を前向きなものとさせてくれるという面もあるでしょうからね。

 

だから、かつてツキトの都という場所があったこと、災いに瀕して最後までヨモギとその故郷のことを想い続けた人たちが、この世界に確かに存在していたということ……それを胸に留めておいてほしい、それでよいのだ、とカゲロウは考えているのだと思います。たとえその選択が、彼自身のツキトの都の想い出、戦いと滅びの傷を彼自身の心の内にしまい込むという、一つの孤独としてあるいは帰結してしまうのだとしても……。

 

カゲロウとヨモギのことに限らず、本人が身に覚えのない過去、それも簡単には受け入れがたい壮絶な過去のことを伝えるという行為は、それ自体が先に生きていた者のある種のエゴイズムなのかもしれません。カゲロウ自身も、今でこそヨモギにツキトの都のことを話すことを決意しているものの、それ以前には「伝えなくてもよいのではないか」と、何度も迷ったと手紙の中で語っています。亡き主君の魂が少しでも報われてほしいという自分の気持ちを一方的に彼女に押し付けるだけなのではないか……と、葛藤の末の決断だったのでしょうね。

 

しかしその一方で、いま自分がこうしてここに生きている理由を知ること、自分を生かしてくれた人たちのことを記憶し、その想いを汲み取るということは――「それに報いることが生きている者の"責任"や"義務"である」などというのは過言ではありますが――生きるということの中には、そうした縁起を知るということも含まれているのであり、カゲロウがいずれヨモギに伝えようとしている真実は、いずれヨモギにとって、きっと大きな意味があるものになるだろう、そうなってほしい……と改めて思った次第です。まあこういうのは例によって、筆者がやたらと深く考えすぎなだけかもしれませんけれどね。

 

いずれにしても、公式でこのようなアナザーストーリーが公開されたということは、いずれ作中でも進展があるでしょうし、ツキトの都をかつて襲った災いの元凶と対峙することになる可能性も高いでしょう。今後のアップデートに大いに期待したいところですね。

 

※10月15日追記分おわり

 

4.おまけ

さて、最後にちょっとしたおまけといいますか、記事本編中に入れようと思っていたものの入れられなかったカゲロウの会話クリップをここでご紹介。

 

商人仲間の中には、決まった場所を持たず 常に旅を続けている者もおりましてな。

この里を「ほーむ」とするそれがしからしますと、帰る場所がないというのは たいそう心許ないのではと思うのですが…

曰く、「己の居場所を見つけ居を構えたいか、何事にも囚われず気の向くまま移ろいたいか それぞれ欲の向く先が違うのでしょう」と。

…言われてみれば、一度故郷を失ったそれがしは、その者より「居場所」というものにこだわりがあるのやもしれませんな。

(旅立ち前 カゲロウ)

 

○○殿は、えるがどでもうさ団子を食べておられますかな?

それがしも、えるがどへ行った際は茶屋でうさ団子をいただくことにしております。

離れた地でもおいしいうさ団子を食べられるのは、ヨモギ殿を始めとした茶屋の方々の努力あってのこと。素晴らしいですな。

唯一の難点は… 一口食べると里の情景が思い浮かび…。

帰りは、ずいぶんと足早になってしまうのですよ。ふふ。

(マスター★3 カゲロウ)

 

自分は「ほーむ」にこだわりがあると自認しているカゲロウ。彼は故郷を失って以来、自分の「帰るべき場所」というものへの執着心が強まっていたのかもしれません。そして、カゲロウが辿り着いたカムラの里は、見ず知らずの人間である自分が託したヨモギのことを温かく迎え入れてくれたうえに、その後の戦いに敗れて重傷を負った自分自身にも第二の人生を与えてくれた場所でもある。何より、彼の故郷と主君の形見であり、彼にとって最も大切な存在であるヨモギが日々を笑顔で過ごしている場所である。そんなカムラの里であるからこそ、カゲロウはここを「第二の故郷」、今の自分が帰るべき場所であると感じているのでしょう。

 

一方で、カゲロウと正反対の行動をとっているのはタドリですね。彼自身も言っているように、カムラの里をホームとして商人の仕事をするカゲロウとは逆に、タドリは故郷を失って以来、各地を転々と渡り歩いています。

 

調査に出て帰ったら故郷が跡形もなくなっていた、という状況に直面した当時のタドリの心境は、悔しい、悲しいという感情が湧いてくるよりも先に、まず頭が真っ白になり、驚愕し、呆然として、激しい虚無感に襲われたことでしょう。ヨモギという守るべきものが身近に残されていたカゲロウと異なり、自分が守るべきものは既にそのすべてが目の前から消え去っていた……そのような心境で、文字通りの根無し草として放浪の旅に赴く、というのは自然な気持ちなのかもしれません。

 

それに、詳しくはオボロの記事の方でまた話しますが、タドリにとっての薬学の師は特定の誰でもなく、多様にして深遠な「自然界」そのものであるようです。故郷の何も守ることができなかったかつての無力な自分自身を乗り越え、真に人々の危機を救う薬師になるためにこそ、各地を渡り歩いてはフィールドワークを行い、動植物についての幅広い知見を得るという旅にタドリは身を投じてきたのでしょう。故郷を失って以来のカゲロウとタドリの行動は正反対のものに見えて、「自らの守るべきものを守る」という目的では一致しているような感じがしますね。

 

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そんなわけで、サンブレイクに入って初めてのキャラクター考察記事である本記事も、このあたりで〆としたいと思います。久々の人物考察でなんかこう文章も気のせいか若干ぎこちない感じがしてならないのですが、このような拙文でも最後までお読みいただいた方には本当に感謝しかございません。

 

今後も随時(目標は週1)エルガドやカムラの里のキャラの考察記事を投稿し、最終的にはライズの時と同様に全員分の記事を執筆したいと考えておりますので、いつ終わるのかは分かりませんが、気長に応援して頂けますと幸いです。

 

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!