サンブレイクのメインモンスター達についてざっくばらんに考察
そろそろ会話クリップの整理も終わってキャラ考察記事を書き始められそうなのですが、こう色々と準備している間に筆がなまってしまいそうなので、先にサンブレイクの物語の中核を担うモンスターたちについての感想&軽い考察の記事でも書いておこうかなという感じです。モンハンだしモンスターの記事もたまには書きたいじゃない。
※本記事は「モンスターハンターライズ:サンブレイク」の現時点のラスボスまで(エンディングまで)のストーリーネタバレを含みますので、既にラスボスを倒している方のみ続きをご覧くださいませ。
そんなわけで、今回の記事で扱うのは「メル・ゼナ」「ガイアデルム」「キュリア」についてのお話。ルナガロンとガランゴルムはいったん置いておきます。
この三者はいずれもサンブレイクの重要なモンスターたちですが、中でも特に物語の中核をなしているというか、ストーリーの諸要素を繋いでいる存在と言えるのはやはりキュリアでしょうか。筆者はこういう小型生物やら微生物やらの恐るべきパワー、みたいな話がモンハンで展開されるのは非常に好ましいと思っていまして。
モンハンのゲーム内容の主体は概ね「大型モンスターの狩猟」である以上、やはりどうしても「リオレウス」「ティガレックス」「クシャルダオラ」等々といったデカいメンツが脚光を浴びやすく、実際彼らが非常に魅力的であることも確かなのですが、一方でこの自然界はそういうデカいメンツだけで成り立っているわけもなく、小型生物やら微生物やらの存在も欠かせないわけですね。
そういう小さいメンツが食物連鎖の下位層(いわば土台)を担っていたり、生物の死骸を分解する的な感じで生命全体の循環を担っていたり、大量に集まることで大型生物を超越するほどの生命力を発揮していたり、あるいは生存戦略として大型生物と共生していたり……等々といった姿が見えてくることで、初めて自然界の実相みたいなのが分かるような気がするんです(早速話が本題から逸れていてすいません…)。その意味では、「小さいわりにキュリアまじヤバくね?(意訳)」みたいな感じで進んでいくサンブレイクのお話は非常に私の好みでした。
話を戻しますと、本編でのキュリアは当初は「メル・ゼナを宿主として共生する小型生物」だと思われていたものの、後の調査により、「キュリアはガイアデルムを真の宿主としてこれと共生する生物である」ということが判明(正確には「現時点ではそう結論付けられている」という形になりますが)。ガイアデルムは地上の生物たちの精気を吸収するためにキュリアを利用していたのでした。
メル・ゼナがキュリアを使役していたのは、かつてガイアデルムが宿敵であるメル・ゼナにキュリアを差し向けたものの、メル・ゼナは一方的に精気を吸われて枯死することなく、むしろ逆にそのキュリアと共生関係を築くようになっていたから、ということだったんですね。
で、その真の宿主たるガイアデルムもまた、メル・ゼナ以上の規模でもってキュリアとの共生関係にあったわけですが……いやまさかね、あろうことかキュリアを捕食するとは思いませんでした。
上の写真でガイアデルムの口をよく見てみますと、まず唇(?)の形状からして少し変わっていまして、人間や一般的なモンスターのように上唇と下唇の2つに綺麗に分かれているわけではなく、星形のように5つくらいに分かれているといいますか、顎の皮がムササビやモモンガの飛膜のように展開できるような感じになっています。さらに口腔内を覗いてみると、大きな舌の表面には生け花に使う剣山のような無数の針があるのが確認できます。
これはおそらく、ガイアデルムがキュリアを捕食しやすいような形になっているのだと思うんですよね。パタパタと軽快に飛行する小柄なキュリアをガイアデルムが食べるためには、大きく広く展開できる口でキュリアを包み込むようにして捕らえ、さらに舌のトゲにキュリアを引っかけて逃げ出せないようにする、という感じになるはず。ガイアデルムがキュリア自体およびキュリアが持ってくる他の生物の精気以外に何か自分で捕食する対象がいるのかどうかは不明ですが、少なくともキュリアを捕食するには困らない形状ですね。
その他にも、ガイアデルムが纏っている爆発性の結晶もどうやらキュリアらしく、ガイアデルムが捕食したキュリアの成分が身体の表面から分泌されたということなのか、あるいはキュリアの死骸が結晶化したということなのかは定かではありませんが、このキュリアの結晶を攻撃に用いるという生態もあるようです。キュリア自体が特に炎を吐いたりする能力を持っているわけではないようですから、キュリアの体の成分には油分が多かったり、衝撃で発火しやすい物質が含まれていたりするのでしょうか。
それでまあ、ガイアデルムのために多数のキュリアがそんな感じで死んでいくのを「グロ……」と言ってしまえばそれまでなのですが(とはいえ、実際その感想も誤りではないと思いますが)、こうしてキュリア自体がガイアデルムの餌や攻撃手段になることで宿主の生存性が高まり、ひいてはその宿主に身を寄せているキュリア達もまた生き延びることができるというわけですから、キュリアの生態には「一部の個体が宿主のために犠牲になることによって、結果的に種全体の存続に繋がる」というある種の逆説的な理屈が存在している、というのがなかなか興味深いですね。
そう考えてみるとむしろキュリアには同情というか、なんかこう憐れむ気持ちが生まれてこないでもないのですが、これこそが大型モンスター(特に古龍)と共生するキュリア達の種としての生存戦略であり、そういう残酷さも含めて自然界の循環は成立していますから、これはもうそういうものとして受け取っておくことと致しましょう。
その一方で、ガイアデルムにキュリアを送り込まれた側のメル・ゼナにしても、ストーリー中のアンジャナフやルナガロンのようにキュリアに一方的にやられることなく、そればかりか自身の体内にあるキュリアの毒を利用したり、キュリア自体を武器として使役できてしまうというのは、メル・ゼナの古龍としての強大さや異質さ、知能の高さを示すものでもあります。
自分にくっついてきたごく微小な幼体のキュリアのことや、ひいてはそのキュリアは自らの宿敵であるガイアデルムのものであることをメル・ゼナが当時認識していたかどうかは定かではないはにせよ、本来は共生関係にない小型生物と後天的に相互利益の関係を会得する(しかも短期間に)、というのは並みの生物の芸当ではありません。
しかしながら、これはメル・ゼナがすごいというばかりではなく、キュリア側にとってもまた、メル・ゼナと共生関係を築いてメル・ゼナに使役されるということには、「メル・ゼナはキュリアの力を攻撃手段として利用する代わりにキュリアはメル・ゼナの力を餌として貰える」という、両者の共生関係それ自体の互恵性以上の意味があるように思うんですよね。
話の前提として、メル・ゼナと共生していたキュリアたちが実際にガイアデルムにメル・ゼナの精気を持ち帰っていたこと、そしてその際キュリアたちが「親に褒められて喜ぶ子どものようだった(バハリ談)」ということからして、メル・ゼナと共生したキュリアは完全にその思考ごとメル・ゼナに乗っ取られてしまったわけではなく、「メル・ゼナとの共生の間も、あくまで本来の宿主であるガイアデルムにメル・ゼナの精気を持ち帰ることがその行動の根底にあった」ということは間違いありません。
その上で、吸精対象としてのメル・ゼナについて考えてみると、他の一般的な大型モンスターとは比較にならないほど強大な生命力と能力を備える古龍メル・ゼナから十分な精気を吸うのには時間がかかりますから、アンジャナフやルナガロンなど一般的な大型モンスターを襲う時のように一方的に精気を吸い取ろうと纏わりついても、メル・ゼナにはすぐさま「外敵」として認識され、精気を吸い尽くす前に返り討ちにされるだけだと。それならば、幼体の状態からメル・ゼナに纏わりついて馴染んでいくことで自然と共生関係を築き、そこから長い時間をかけて精気を吸い取っていくほうが、古龍から精気を奪う手段としてより確実である、という可能性は十分にあり得そう。
すると、メル・ゼナとキュリアとの共生関係とは、「メル・ゼナが自身に放たれたキュリアを逆に自分の側からも能動的に利用し使役しようとした結果として構築されたもの」というだけではなく、キュリア側からしても、メル・ゼナと共生関係を築くことこそが、強大な古龍であるメル・ゼナから精気を十分に吸い取ってガイアデルムに持ち帰るための最良の手段であるという二面性を持ったものである、ということが言えるのではないかと筆者は考えています。
付け加えるならば、メル・ゼナほど強い古龍であればあまり心配はないものの、精気を十分に吸う前に他の何らかの外的要因で宿主のメル・ゼナがやられてしまってはそれはそれで困りますから、キュリアがメル・ゼナの攻撃手段として使役されたり、メル・ゼナ自身がキュリアを利用した吸精を行えるようになったりすることで、メル・ゼナ自身の自然界における生存性が上がることもキュリア-ガイアデルム側にとっては却って有益とすら言えることになります。
まあ、ガイアデルムが果たしてどこまで考えているのかというのは定かではありませんが、ガイアデルムがメル・ゼナにキュリアを送り込み、キュリアは一方的に精気を吸うのではなくメル・ゼナとの共生関係を築いた、さらにその送り込まれたキュリアは最初から成体だったのではなく、幼体のものが送り込まれていた、という一連の事実の整合性を考えようとすれば、やはり吸精対象としての一般的な生物と古龍との違いを論じる方向にならざるを得ないように思います。
そもそも本来の宿主のガイアデルムにしても、キュリアに他の生物の精気を持ち帰ってきてもらう、キュリア自体を捕食対象とする、あるいは攻撃手段とするということの代償としてキュリアに差し出しているのはやはり自身の精気であると考えられますが、そんな共生関係が可能となっているのは、やはりガイアデルム自身もまた古龍であり、メル・ゼナをも上回る生命力の持ち主であるからということになるんですよね。
他の生物たちの共生関係にしても、例えばジンオウガ-雷光虫の関係は「ジンオウガが雷光中のおかげで雷エネルギーをパワーアップできる代わりに、雷光虫はジンオウガのおかげで天敵であるガーグァから守られている」ですから。共生関係の中で自分の生命エネルギーそのものをあの無数のキュリア達に差し出すというのはやはり並大抵のものではなく、規格外の生命力を持つ古龍ならではの芸当という他ありません。ある意味では、真の宿主か仮の宿主かという違いは有れど、ガイアデルム-キュリアの共生関係を、メル・ゼナ-キュリア間でも疑似的に行わせていたという言い方もできるかもしれませんね。
まあ、先ほどの推測には色々と反論も考えられまして、例えばガイアデルム的には自分の捕食活動(キュリアを介して地上の生物の精気を吸う)をしつこく邪魔をしてくるメル・ゼナはさっさとやられてくれたほうがありがたいのではないか、という説も十分にあります。それについては、ガイアデルム自身の本来の生態に即していえば、メル・ゼナの精気を吸い取って自身の強さを向上させた方が総合的に得であるとも言えそうですし、ここは何とも言えないところ。
バハリの話を聞く限りでは、ガイアデルムとメル・ゼナの縄張り争いは両者互角で決着がつかないようですから、真っ向勝負で勝てないのであれば、キュリアを送り込んでじわじわと仕留めてしまおう、メル・ゼナの力をも自分の餌にしてしまおう、という方向性になるのかもしれません。なんというかまあ、メル・ゼナがガイアデルムに素でタイマン張って負けないというのが普通に凄すぎてな……。
とまあ、だんだん考察が雑になってきたので話を戻しますと、そんなわけで王域生物たちの異変の黒幕はメル・ゼナではなく、実は深淵の悪魔ことガイアデルムだったということになっています。しかしながら、当初の最終目標であったところのメル・ゼナも、「これまでに何度も王国を危機に陥れてきた」という深い因縁があり、この原因については本編では明確に示されていません。しかしながら、メル・ゼナがガイアデルムと長期にわたる因縁があるという点を踏まえると、次のような説明が考えられます。
フィオレーネの話によれば、数百年前に王国を襲ったメル・ゼナは王都付近の大穴に姿を現しており(フィオレーネは「メル・ゼナがその大穴を巣窟としていた」と言っていますが、本編での調査結果を踏まえれば、大穴を空けた犯人(ガイアデルム)をメル・ゼナが穴に籠って監視していたということなのかもしれません)、そこでメル・ゼナとガイアデルムは邂逅を果たしている、あるいは少なくとも互いの存在を認識するようにはなった様子。
そして、その後も空いた大穴の近くにはメル・ゼナが確認されていること、またガレアスの話によれば、50年前にメル・ゼナが彼の故郷を襲撃した際、メル・ゼナは上空で「何かを待っている様子」だった(当時の城塞付近には「うめき声」が響き渡っていたということから、その「何か」とはガイアデルムのことだと思われます)ということから、メル・ゼナは数百年前の王都付近の大穴の時以来、ずっとガイアデルムの存在をマークしていたということになり、地上のモンスターの精気を奪おうと王域の地中を動き回るガイアデルムと、王域を根城とし自身の縄張りを侵す者を排除しようとするメル・ゼナの縄張り争いもまた、これまで幾度となく繰り返されていたということが推察されます。
で、そのメル・ゼナが過去に王国領内の人間の居住地を襲撃した例を考えてみると、先のフィオレーネの話に出た王都のほか、本編でガイアデルムが姿を現した海上の大穴のすぐ近くにかつて存在した、ガレアスの故郷である城塞都市(現在の城塞高地)、はるか昔にガイアデルムが開けた大穴「サン」のすぐそばに構えられている観測拠点エルガドがあげられます。
これ以外の事例は本編では示されてはいないものの、この3つの事例を見るに、メル・ゼナが王国領内の人間の居住地を襲撃したという行為は、メル・ゼナが宿敵であるガイアデルムが出現したor近いうちに出現する可能性のある地点に対して先制攻撃をかけ、ガイアデルムを牽制するためのものだったのではないか、と考えられそうなんですよね(その際、自分たちの居住地を襲われたと思った人間側がメル・ゼナに反撃を行った際には、メル・ゼナは人間たちも目下の敵として攻撃を仕掛けた)。
メル・ゼナが最初に王国を襲ったのも、地中深くから王都付近に迫る「何者か」の存在を嗅ぎ付けたからなのではないかな。モンハン世界のモンスターは悪の化身とかではないので、悪意を持って人間を襲う、理由もなく人間を滅ぼそうとする、ということはないはずですし、ましてや古龍ともなれば、そもそも自然界において自身の「外敵」となるような存在が滅多にいないほど強大な力を持っているのですから、自分自身の脅威にはならないような周囲の生物に対してはあまり意に介さないでしょうし、人間に対してもいたずらに攻撃的であるということもない、悠然とした存在であるはず。
ガイアデルムは城塞高地付近の海上や観測拠点エルガド付近など王域内に大穴を開けているように、このモンスターの地中での活動範囲は少なくとも王国のほぼ全域に及ぶようですから、メル・ゼナは王域全体をくまなく警戒してガイアデルムの牽制および排除に動く必要があり、それが結果として幾度となく王国に被害を与えてきた……ということになるでしょうか。
本編でバハリが「メル・ゼナはもう討伐してしまったのでガイアデルムを止めには来ない」と言っていましたが、これはメル・ゼナと王国との複雑な関係を紐解く重要な一言であるように思われます。
つまり、メル・ゼナは確かに王国を危機に陥れる災厄ではあるものの、一方でメル・ゼナの存在によってガイアデルムの行動が――ひいては、王国が受けるガイアデルムの被害が多少なりとも抑制されていた、という側面は決して否定できないということです。王国は何度もメル・ゼナに襲撃されて甚大な被害を被ってはいるものの、それら諸事例の中には、もしメル・ゼナの出現がなければ、ガイアデルムによって王都がメル・ゼナ以上の規模の被害に遭っていたかもしれないようなケースもあった可能性は0ではありません。
むろん、メル・ゼナはメル・ゼナで人類側に数多くの犠牲をもたらしてきましたから、メル・ゼナがガイアデルムを牽制する存在だからといって「メル・ゼナが出現してくれてよかった」などとは決して言えないのですが、いずれにしてもこうしたメル・ゼナと王国との関係は、「モンスターはしばしば人類の敵になることがあるが、しかし普遍的に人類の敵であるわけではない」という、自然界の複雑さを示す事例の一端と言えるように筆者は思います。
そんなわけで、短い(7,500字)記事ではありましたが、この辺りで考察……というほどのものではありませんが、感想記事は締めとしたいと思います。
ガイアデルムを倒した後のキュリア達は、さまざまな大型モンスターに一方的に寄生して精気を吸い、傀異化と呼ばれる凶暴化現象を引き起こしている様子ですが、これは果たして「宿主を失ったことによる帰巣本能の暴走」なのかどうかは今後気になるところ。
ライズのナルハタタヒメ→淵源ナルハタタヒメのように、「真のラスボスは最初のラスボスの強化バージョンになる」理論に則って妄想してみると、もしかしたらガイアデルムは今も奈落の底で一命を取り留めていて、キュリア達が大型モンスターたちに一方的に取りついて精気を吸っているのも、実は自分たちの宿主であるガイアデルムを回復させるために他の生物たちから大量の生命エネルギーを奪おうとしていたためだった……という展開もあるかもしれません。
そして、淵源ナルハタタヒメとの戦闘中に乱入してくるマガイマガドと同様に、真ガイアデルム(仮)との戦闘中にメル・ゼナが乱入してくるみたいな展開があったら……なおのこと胸熱ですね。ぜひ期待しておきたいと思います。たぶんタイムアタックではソッコー追い返すけどな……。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!