カゲロウさんの謎に迫る

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※注意事項※

・本記事は「モンスターハンターライズ」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・筆者は2021年12月17日発売の『モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録』を未読の状態で執筆しております。
 現在または今後公開される公式設定が、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)ことがある可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。
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夏の大型アップデートを控えたこの時期、少しずつサンブレイクの情報も公式から発表されつつありますが、ライズに既に登場しているNPCの中で、サンブレイクのストーリーにも何らかの形で絡んでくるだろうと予想されているキャラクターの一人が、謎に包まれた商人・カゲロウさんです。

 

元々カムラの里の生まれではなく、他の国の出身で現在はカムラの里に身を置いているというカゲロウは、自分ではあまり自らのことを詳しく語る機会はないものの、情報屋のフカシギから聞くことが出来る情報をはじめ、彼の素性や経歴について推測させるようなヒントがゲーム内にはさまざまに散りばめられており、「カゲロウはいったい何者なんだろう?」と気になっている方も多くいらっしゃることでしょう。

 

そこで本記事では、そうしたカゲロウについての作中の情報を整理してまとめ、カゲロウがどんな人物なのか、過去に何があったのか、どうしてカムラの里にやってきたのか……という彼の一連の経歴について推測を立てつつ、彼の故郷の国やカムラの里への思い、そしてカゲロウに大きく関わりがあるとされるある人物との関係についても考察していきたいと思います。

 

ーーー※2022年5月4日追記ーーー

 

本記事でのカゲロウの話は、以下の記事におけるサンブレイクの新キャラクター予想考察とも関係してくるものとなっております。私の解釈が微妙に変わっている点もちょこちょこあり、本記事の考察も項目によっては少し古い部分がありますので、以下の記事も併せてお読み頂けるとミスリーディングの部分が減るかと思います。

 

mhrisecharacter.hatenadiary.jp

 

なお、もちろん本記事での考察も気合を入れて書いておりますので、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

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ーーーもくじーーー

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1.カゲロウの過去

カゲロウ関連の情報で最もよく知られているのは、情報屋のフカシギから聞ける次のエピソードではないでしょうか。

 

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ニャンとフカシギ、謎の情報屋、ただいま参上…だニャ。

フム、ではカムラの里の裏情報…「すぺしゃる」のうちの1つをオヌシに伝えようではニャいか…。

茶屋のヨモギちゃんは…。

じつは…。

その出自に、本人も知らない秘密があるのニャ…。

まあ、これはカムラの里のものでもほとんどが知らニャい情報なので、くれぐれも取り扱い注意ニャのだが…。

ヨモギちゃんは、赤ん坊の頃、竜人族のハンターに連れられてきて この里で保護されたのニャ。

その後、竜人族のハンターは行方知れず。ヨモギちゃんは里に引き取られて現在にいたる…というわけニャ。

彼女が何者で、どういう経緯で里に来たかはフゲン殿とゴコク様、それにヒノエちゃんとミノトちゃんしか知らないニャ。

ただ、ワシは感じるのニャ…。

ヨモギちゃんから漂う、「やんごとなき」雰囲気…。すなわち並ではない尊さ、高貴さを…。

もしかしたら、どこぞの貴族…。いや、それ以上の…。

おっと、推測はこれくらいにしておくニャ。

……ニャんとも驚愕の情報だったニャ。では、2つの「すぺしゃる」な情報のうちの1つは、これにて終了だニャ。

(里☆6 フカシギ)

 

里クエを最後まで進めているプレイヤーであればいつでもこの話を聞けるので、またゲーム内で聞いていない方はぜひフカシギ(自宅の掛け軸の裏)に話しかけてみて頂きたいのですが、この話に出てくる竜人族のハンター」、つまりかつて幼いヨモギをどこか別の国からカムラの里に連れて来た人物というのが、本記事で取り上げるカゲロウなのではないか? というのが、現時点の考察において定説となっています。

 

じっさいライズの作中においても、カゲロウ本人の台詞を筆頭にそれを示唆するようなNPCの台詞が数多く見受けられており、この定説は概ね正しいと考えてよいと思います。本記事ではそれらの定説の根拠となる情報を、既に広く知られているものも含めて改めて整理しつつ、カゲロウの来歴や人となりについて考察していきたいと思います。

 

まず、カゲロウが他の地域から里にやってきたという話自体は、ストーリー中でも結構早い段階で本人の口から聞くことができます。

 

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それがし、行商で各地を回っておりますが、そもそも行商を始めたのは、里長殿やゴコク殿の勧めがきっかけなのです。

それまでは、いろいろとありまして… 流れ着いたこのカムラの里で、商売のイロハを教えていただきました。

おかげさまで、今では充実した第2の人生を歩ませていただいております。

百竜夜行が迫るというのであれば… カムラの里の恩義に報いるため、それがしもできる限りのことはさせて頂きますよ。

(ハンター登録後 カゲロウ)

 

ただしこの時点では、「どういう事情でカムラの里に流れ着いたのか」「カゲロウの故郷はどんな所なのか」「以前は何の仕事をしていたのか」ということは分かりません。唯一「流れ着いた」という表現から、カムラの里に来たのは単なる移住というよりは、故郷を離れざるを得ない何らかの理由があったことが察せられるという程度です。

 

そしてこれらの情報は、実のところライズのストーリー内ではいずれも本人の口から明確に語られることはないのですが、それを匂わせるような台詞がカゲロウの会話の中にいくつか多く出てきたり、他の住民が情報を教えてくれたりするため、以下それをまとめていきたいと思います。

 

まずは、彼がどういう事情でカムラの里に来たのか、彼の故郷はどんな所なのか……ということについてですが、カゲロウの事情を知るフゲンの話から、彼は元々カムラの里からは遠い国に住んでいた人物であることがわかります。

 

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カゲロウは、遠い国から十数年前にこの里に流れ着いてきた。…まあ、いろいろあってな。

その後、これまたいろいろあって、ゴコク殿の手引きで商売の勉強を始めたのだ。

今では、各地で雑貨を売り歩く行商人だ。評判も上々と聞いているし、どうやら今の仕事が性に合っていたようだな。

(里☆4 フゲン)

 

遠い国、というだけで具体的に世界のどのあたりの国なのかは分かりませんが、里の地理的にも海を隔てた地域であってもおかしくはないでしょう。カムラの里に遠方から陸路で辿り着くのもなかなか困難ですし、里の船着場に水路(船)でやってきた……と考えるのが自然に思われます。またこれに加えて、カムラの里に着いた当時のカゲロウは、深い傷を負っていたといいます。

 

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この里におると、医者は暇で暇で仕方がないニャ。ええことだがニャ。

とはいえ、医者がおらんと困るニャ。たまにとはいえ、必要なときがどうしても出てくるからニャ。

里の医者をしていて、今までで一番大変だったのは…そうだニャ、カゲロウがこの里に来たときかニャ。

ありゃ~ひどい傷だったニャ。さすがのワシも、ダメかと思ったが…

見ての通りばっちり全快だニャ。さすがワシだニャ。にょほほ。

(里☆5 ゼンチ)

 

生命の危機に瀕するほどの傷ということですから、これは普通のケガというわけではなさそうです。彼の故郷の国において、もしくはそこからカムラの里に至るまでの道中において、大きな事故や災害によって、あるいはモンスターに襲われたことによって負った傷―—その辺りと考えるのが妥当に思われます。

 

ちなみに、カゲロウとゼンチはこの一件以来深く親交があり、カゲロウの店でセールをやっている日には、ゼンチも客寄せに手を貸してくれるのだそうです。

 

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この里に流れ着いたとき、それがし ひどい傷を負っておりましてな。なかなかに危険な状態だったのです。

それを、お医者のゼンチ殿が治してくださいました。よく屋根の上でお昼寝されていますが、あの医術は妙技…。

そこから仲良くなって、セールのときにはお手伝いに来て盛り上げてくださるのです。

窮地を救ってもらった上に 商売にまで手を貸していただいて… まこと、ゼンチ殿には頭が上がりません。

(里☆5 カゲロウ)

 

少し余談、というか裏話を致しますと、セールの時にはゼンチがカゲロウの店を手伝う(この時、ゼンチの台詞は進行度に関わらず専用のものに変わる)というこの行動、実は私が里の住民の台詞集めをしていた際には微妙に厄介なムーブでありまして。

 

というのも、雑貨屋は緊急クエストをクリアして進行度が上がった直後には必ずセールになるという仕様になっていまして。そして、進行度が上がった直後というのは里の住民たちの会話が更新されるタイミングなので、ここで皆の新しい台詞を収集しに行くのですが、上述の通りゼンチはセール中は専用の台詞に変わってしまうため、ゼンチ以外の会話を聴いた後で適当に採取ツアーなどのクエストを受けてクリアし、雑貨屋のセールを終わらせるという手順を踏まないとゼンチの会話を聞くことができません。

 

まあ後になってみれば、ゼンチの会話を聞くためにわざわざ採取ツアーを受けずとも、次のキークエストを1つクリアしてセールが終わったタイミングで話しかければよかったという話なのですが、私が皆の台詞収集をしたの1stデータ(初見プレイ時)で、どこで緊急の百竜夜行が入って住民の会話が更新されるとかも全然分かっていなかったので、台詞集めは同じタイミングでいっぺんに済ませてしまうのが安全という判断でやっていた、という感じになります。

 

話を戻しまして、カゲロウは命からがらカムラの里に流れ着いたということでしたが、どうしてそんな傷を負ってしまったのかということは、本人の口から直接語られることはありません。しかし、彼が追った傷におそらく関連しているであろうこととして、カゲロウの故郷は何らかの理由で失われる事態になってしまったということを彼の台詞から窺い知ることができます。

 

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さて、いよいよ百竜夜行ですな。微力ながらこのカゲロウ、砦へおもむき物資の供給を担当させていただきます。
故郷を失うというのは、まことにつらい、そのような想いをするのは、それがしが最後で結構…。

……ははは、無駄話をしてしまいましたな。今は、カムラの里を守ることが第一。それでは、砦へ参りましょう。

(里☆3百竜前 カゲロウ)

 

滅ぼされてしまった故郷のことはカゲロウにとっては痛ましい思い出でしょうから、主人公ハンターに自分のことを打ち明けたいという意思はあれど、そのことを包み隠さず伝えるだけの勇気は出ない……そのような心境をうかがわせるような台詞。カゲロウにとっては、かつて何らかの理由で故郷を滅ぼされてしまった自分に、今まさに百竜夜行という災禍に立ち向かおうとしているカムラの里の人たちが重なって見えるようです。

 

それでは、そのカゲロウの故郷を滅ぼした災いとはいったい何なのか、ということなのですが、これこそ「彼は故郷にいたときは何をしていた人物なのか」という疑問と深く関わりがあることでして。カゲロウの前職についての情報も、ヨモギの出自について教えてくれるよりも前の時点で、同じく情報屋のフカシギから聞くことが出来ます。

 

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ニャンとフカシギ。謎の情報屋、ただいま参上…だニャ。

フム、ではカムラの里の裏情報その4をオヌシに伝えようではニャいか…。

雑貨屋のカゲロウ殿は…。

じつは…。

すごいハンターだった!

フカシギなことが多いカゲロウ殿だけど、昔はハンターであったことを含め、壮絶な過去を秘めているらしいのニャ。

……ニャンとも驚愕の情報だったニャ。では、次の情報更新は、ヒノエちゃんからの緊急クエストをクリアしたあとだニャ。

(里☆3百竜後 フカシギ)

 

里☆3の緊急百竜夜行の後という地味に見落としやすいタイミングで出してくるあたり、図ったような何かを感じなくもありませんが、フカシギによればカゲロウは、かつてはハンターの仕事をしていたといいます。

 

フカシギ自身はこの情報と、ヨモギの話に出てくる「竜人族のハンター」とをとくべつ結び付けてはいない様子ですが、これは情報屋として自分の手元にある情報を恣意的に結び付けて考えないという彼の仕事上の主義なのかもしれませんし、或いは知っているけれども、カゲロウという人物のかなり深い部分に関わる話であり、自分の口から教えられる限度を超えているという判断で敢えて言わないでおいているのかもしれません(まあ、プレイヤーに自分で考えて欲しいという事で残してある余白なのだと思いますが)。

 

当のカゲロウ本人からは、自分は昔ハンターであったということを直接ゲーム中の会話で教えてもらえる機会は無いのですが、それを匂わせるような会話はいくつか存在しています。仮に上記のフカシギの情報を見落としていたとしても、プレイヤーが「カゲロウは昔ハンターだったのかも?」という推測にたどり着けるだけの十分なヒントとなっているため、順に紹介していきましょう。

 

 

まずは、カゲロウが持っている、彼のトレードマークの一つとも言うべき赤い日傘についての話。

 

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○○殿、アケノシルムを狩猟されたそうですな。
じつは、それがしの番傘、アケノシルムの素材からできているのです。色合いなど、特徴が出ていますでしょう?

ハモン殿が「身を守るのにも使えるから」と特別にこしらえてくださったのです。それがしの宝物ですよ。

(里☆3 カゲロウ)

 

アケノシルムの肉質データを見ますと、傘の部分は火属性、水属性が共に0ということになっていまして、この素材を用いて作られた日傘であれば耐久性に優れていて雨風にも強く、鳥竜種や飛竜種に襲われたときには多少の炎も防げそうですから、各地を渡り歩く行商の仕事道具としてはとても理想的です。

 

が、ここで気になるのは、そのアケノシルムの素材がどこから来たのか、というところ。加工屋のハモンはモンスターの素材を使って武具や道具を作ってくれますが、その素材自体はハモンが提供してくれるわけではなく、あくまでも自分自身で調達したものを彼のもとに持って行く必要があるはず。

 

傘屋のヒナミは、カゲロウからそのアケノシルム傘の手入れを定期的に依頼されるそうで、彼女もこの日傘のことが気になっている様子です。

 

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雑貨屋のカゲロウさんが、たまに 持ってる傘の手入れの頼みにウチに来るんだけどね…。

アンタ、知ってた? あの傘、アケノシルムの素材でできてんの。頭のトサカみたいなやつ使ってさ。
あんなの、どこで買ったんだろ。もしかして、自分で作ったのかな。

(里☆3 ヒナミ)

 

ヒナミによれば、日傘に使われているのはアケノシルムの頭部にある扇状のトサカ(?)の部分のようで、この部分をほとんどそのまま日傘にしてしまう(大きめの個体のトサカの端と端を合わせて円錐状にするか、2体分のトサカを繋ぎ合わせて円状にするかしているのでしょう)というのは、素材の持ち味を生かすハモンの技術の妙と言うべきところですが、そのトサカをどのように手に入れたのかというのが注目すべき点。

 

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(上から見た傘)

ハモンがハンター現役時代のときに狩った個体のものというのは考えられなくもありませんが、アケノシルムのトサカがいくら丈夫とはいっても、生体素材ですからさすがに経年劣化するでしょう。カムラの里にモンスターの素材を溜めているところがあるというのも考えづらいですし(仮にそういう所があったとしても、それは里全体の資源であって個人的な目的で利用されるというのはなさそうです)、カゲロウが元々持っていたもの、つまり彼が自分で狩猟した個体のもの、と考えるのが自然に思われます。

 

つづいて、カムラの里の「里守」についてのカゲロウのコメント。

 

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百竜夜行に備えて、カムラの里の皆様は熱心に腕をみがいておいでですな。

それがしが見ていて驚いたのは、ハンターではない若い皆様が秘めていた武芸の才能です。

特に際立ったのは、ヒノエ殿とミノト殿、それにヨモギ殿とイオリ殿でしょうか。

さすがは、たたら製鉄の里…。日頃から武具に親しんでいたがゆえ、馴染むのが早かったのでしょうな。

(里☆3 カゲロウ)

 

里守として武器を扱えるカムラの里の人たちについて、カゲロウが深く感心している様子がうかがえる会話。ここで特筆するべきは、彼がヒノエやミノト、ヨモギ、イオリの実力が突出していることを的確に見抜いているという点です。

 

この台詞を聞ける時期はまだ最初の百竜夜行(里☆3の途中)がくる以前ですから、恐らく彼は修練場などで里守達の腕前を見る機会があったということなのでしょうが、戦闘民族よろしく皆して実力者ばかりの里守たちの中でも、「特にこの4人がすごい」ということが見抜ける観察眼は、カゲロウ自身も武器の扱いに精通しているからこそのものなのではないか? という推測が十分立てられる内容です。

 

続いて、ゲーム中で一度しか聞けないので忘れられがちな会話ですが、カゲロウから片手剣「ニンジャソード」の作製レシピを教えてもらえるサイドクエストの台詞。

 

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(↑ ゴッドカブトとアオアシラの依頼を放置している人)

「上位マガイマガドを捕獲して、あなたの実力を示してほしい」という彼のサイドクエストを達成した際に、何やら意味深な一言を聞くことができます。

 

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あのマガイマガドを捕獲されるとは…。さすが、○○殿です。この里はもう、あなたがいれば安心ですね。

もうそれがしが、再び武器を取る必要も… いえ、何でもございませんよ。

さて、そんなツワモノであるあなたに使っていただきたい武器がありましてな。加工屋のおふたりに製造法を渡しました。

ぜひ、今後の狩猟にご活用ください。

(サイドクエスト達成時 カゲロウ)

 

2行目の「もうそれがしが、再び武器を取る必要も…」という、言いかけてやめた一文が非常に気になる部分ですね。カゲロウがかつてはハンターとして武器を取って狩猟をしていたこと、そしてひとつ前の「この里はあなたがいれば安心です」という会話の流れからすると、もしかしたらカゲロウもまた主人公ハンターのように、自分の国を守るためにハンターとして何かと戦った過去があるのかもしれないということを仄めかすような内容となっています(同時に、ハンター時代の彼の得物は片手剣だったのだろうという推測も立ちます)。

 

そして極めつけが、「百竜ノ淵源」に挑む直前の時期のカゲロウの台詞。

 

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○○殿。それがしは勝手ながら、自身をあなたに重ねてみることがありました。
それがしは大いなる災いに背を向け、故郷を失った。しかしあなたは、真正面から立ち向かい、故郷を救おうと奮闘している。

神龍と雷神龍。相手は強大ですが、あなたのまっすぐな意志が、災禍をはらうと信じております。どうか、お気を付けて。

(淵源討伐前 カゲロウ)

 

ニンジャソードの時の会話と併せて、カゲロウもかつては主人公のように、故郷の国を守る立場の人間であったことが窺えます。そして先の発言における「武器を取った」というのがこの災いに対してのことであるとすると、カゲロウの故郷を襲った災いとは、台風や土砂災害などのような自然災害ではなく、カムラの里を襲う百竜夜行のようなモンスターの襲撃、少なくとも何らかの形でモンスターが関わっているものであると推測されます。

 

モンスターの災禍から里を守らんとする主人公ハンターにかつての自分自身を重ねている、という点からしても、この予想は概ね的中しているものと考えてよいでしょう。その上で、これまでの情報を総括すると、故郷の国を離れてカムラの里に至るまでのカゲロウの来歴は、次のようなものであることが推測されます。

 

すなわち、カムラの里と同様にカゲロウの故郷の国もまたモンスターに襲撃される災禍に見舞われてしまい、当時ハンターであったカゲロウはモンスターの脅威から国を守るには力及ばず、最終的に彼の故郷の国は滅ぼされてしまい、彼自身はカムラの里へと命からがら流れついた、というものです。作中の情報からの推測であり公式で明言されていない以上、この解釈は現段階ではあくまでも仮説の域を出ませんが、考え得るかぎり非常に有力な仮説であると言ってよいと思います。

 

この仮説を踏まえて、改めて冒頭で紹介した、フカシギから聞ける情報について考えてみましょう。カゲロウが「竜人族のハンター」という条件に合致する人物であることはひとまず言えるとしても、彼がフカシギの話に出てきたヨモギをカムラの里まで連れて来た竜人族のハンター」と同一人物なのかどうかということは、ここまで紹介した情報のみでは分かりません。

 

フカシギの言う「竜人族のハンター」がカゲロウであるという解釈に説得力を与えるためには、カゲロウとヨモギに何らかの接点があることを示さなければなりませんが、それについても、カゲロウやヨモギの台詞のなかに非常に気になるものがありました。まずはヨモギの方の話を聞いてみましょう。

 

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この茶屋の設計や装飾は、雑貨屋のカゲロウさんがぜんぶやってくれたんだよ!
「同じ商売人ですから、手を貸すのは当然です」って、仕入れの仕方とか、必要なこと、いろいろ教えてくれたの。

顔は隠してるし、ナゾが多いけど、いい人だね! カゲロウさん!

(里☆3 ヨモギ

 

ヨモギからは、彼女が茶屋の商売を立ち上げるときに全面的に協力をしてくれたのがカゲロウである、という話を聞くことができます。ヨモギの茶屋の仕入れ先である行商人さんはカゲロウの商売仲間でもある、という話を里の緊急オサイズチの後に聞くことができますから、その商人をヨモギに引き合わせる、ということもカゲロウはしていたかもしれません。

 

カゲロウにとっては、かつて自分がカムラの里に来て商売のノウハウを教えてもらった恩を、これから商売を始めようとする若い世代の手助けをするという仕方で還元しようとしたという意味もあるかもしれませんが、それにしても非常に手厚いサポートであり、何かヨモギに対する特別の思い入れを感じないでもありません。

 

そのカゲロウの方からも、ヨモギの茶屋での働きぶりについて次のようなコメントがあります。

 

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ヨモギ殿のうさ団子は、まことに美味ですな。
ヒノエ殿が「お腹も心も満たされる」と話しておられますが、まさにそのとおり。なんともはや、不思議なものです。

ヨモギ殿の優しく清らかな心が うさ団子に込められているのでしょう。

……ふふ。さすがにほめすぎですかな?

(里☆6 カゲロウ)

 

なんだか典型的な親バカのようなコメントですが(といっても、言われていることは実際その通りなので別に親バカというわけでもありませんが)、ヨモギが立派に茶屋の仕事をこなしていることや、彼女のうさ団子が里で愛されていることをカゲロウはとても喜ばしく思っている様子。

 

ヨモギのことでつい饒舌になり、本人も「さすがにほめすぎですかな?」と照れ隠しをしていますが、それだけヨモギの生き生きとした姿を尊く想っているということ、ヨモギの店の立ち上げを手伝った後も、ずっと彼女の成長を見守っていたのだろうということはよく伝わってきます。

 

このように、カゲロウとヨモギには「店の立ち上げに協力した」という結構重要な接点があることが作中でも語られており、ヨモギとの関係性という点においても、フカシギの裏情報の「竜人族のハンター」がカゲロウであるという仮説の説得力はそれなりに高いと言えそう。そこで、竜人族のハンター=カゲロウであり、そしてヨモギもまたカゲロウの故郷の国の出身で、フカシギ曰く貴族やそれ以上(王族?)の家柄であるという仮定で、この2人が故郷の国からカムラの里に至るまでの経緯を推測すると、概ね以下の通りであると考えられます。

 

①2人の故郷の国が何らかの災い(おそらくモンスター関係)に襲われる

②カゲロウ、赤ん坊のヨモギを連れて故郷の国を一度離れ、カムラの里にヨモギを託す

③カゲロウ、故郷の国に戻ってモンスターと戦うが敗北する、あるいは撤退を余儀なくされる

④モンスターとの戦いで負った傷を抱えながらどうにかカムラの里に辿り着き、ゼンチの治療で一命を取り留める

⑤一部の人(フゲン等)以外には身分を隠したまま、雑貨屋として働きつつヨモギの成長を見守る

 

順に説明していきますと、まず①と②については、「竜人族のハンターは、赤ん坊のヨモギをカムラの里に預けて消息不明になった」というフカシギの情報を解釈したものです。

 

王家や王室、伝統的な家柄といったものが存在する国家においては、何よりもまずその血筋を絶やさないようにすることが国家の存続には不可欠。当時は赤ん坊だったヨモギがそうした血筋を引いている人物なのだとすれば、恐らくまずは彼女をどこか、災禍の手の及ばない安全な土地まで避難させよう、ということになるでしょう。

 

百竜夜行ではないにしても何らかの形でモンスターが絡んでいる災いであれば、その追跡を掻い潜りながら国を離れなければなりませんし、他の地域へ向かう道中にもモンスターが襲ってくる可能性がありますから、ヨモギを連れて行く役割を担うのはやはりハンターが適任ということで、カゲロウがその任を負うことになった。そしてカゲロウは、故郷の国を襲う災いの魔の手が及んでいない十分遠い地域ということで、元々カムラの里を知っていたのかどうかは分かりませんが、はるばるカムラの里を訪れてヨモギを預けました。

 

その後は、彼はハンターとして故郷の国を襲うモンスターと戦わなければなりませんから、再び自らの国へと帰り(=行方知れず、と言われている部分)戦線復帰をします。しかし、カゲロウや他のハンターたちの力を合わせても災いに打ち勝つことはできず、彼の故郷はついに滅ぼされてしまいます。

 

そしてカゲロウは、失われた故郷の国のハンターとしての、自らの最後の使命として、国の生き残りでありその血筋を引くヨモギを―—自分たちの故郷の国がかつて存在していたという証であり、災いを生き残った尊い命である彼女のことを近くで見守っていきたいと考えて、傷だらけのまま再びカムラの里を訪れ、行商人としてここで第二の人生を歩み始める……。

 

……という感じで、カゲロウの心理描写などはだいぶ私個人の推測が入っていますが、おそらくこのようないきさつで、カゲロウとヨモギはカムラの里に来たのではないかと私は考えております。そしてサンブレイクのPV映像で出てきた滅んだ王国のようなマップは、まさにこのエピソードに登場する、十数年前に滅ぼされたカゲロウとヨモギの故郷の国なのではないか、という予想にも繋がるわけですね。

 

2.カゲロウの顔のお札の理由

さて、サンブレイクの話はいったん置いておくとして、カゲロウのことで更に気になるのは、彼が顔に付けているお札です。顔の前にそれがあってよく前が見えるなぁというツッコミはさておき、彼がこのお札を付けている理由については、彼自身はどうも言いづらそうにしているというか、明確に理由を話してはくれないんですよね。

 

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この顔に付けている札… よく女性の方に「一度でよいので取って見せてくれませんか」と頼まれます。

何やら、それがしがとてつもない「いけめん」とウワサされているそうで…。

好意的に考えてくださっているのは光栄ですが、いろいろ事情があってこの札を取るわけにはいかないのです。

それに、まあ…「いけめん」というのがどういう顔か存じませんが、ご期待に沿うような楽しい顔でもございませんよ。

(里☆1 カゲロウ)

 

カゲロウは100%イケメンだろうなぁ~~。個人的には、完全にカゲロウの声優さん(梅原裕一郎さん)の他の出演作品のイメージに引っ張られていますが、ノイエ銀英伝キルヒアイスみたいな顔だと思っています。

 

まあそれはともかく、本人曰くいろいろと事情があってこの札は取れないということらしいのですが、なぜその札をしているのか、そしていつからしているのかという点は気になるところ。彼の故郷の国にもしかしたら顔の前に札を付ける文化があったのかもわかりませんが、彼の前職はハンターであり、モンスターを狩猟するという危険な仕事のハンターがリアルに視界縛りをするというのはあまりにも考えづらいですし、カムラの里に来てから付けるようになった、と考えるのが自然に思われます。

 

加えて、カゲロウは行商で周辺地域を渡り歩いており、当然ながら移動中に顔にお札を付けていては前が見えず、彼がエスパーの類いでもなければ到底安全な旅路とは言えませんから、彼がお札をしているのはカムラの里や各地で店を開いている時のみ(人に会う時のみ?)、ということになるでしょうか。

 

かつての戦いのときの傷が顔に残っていてあまり見せたくないとか、理由をつけようとすれば色々考えられるのですが、ここまでの考察を踏まえて筆者なりに解釈するならば、彼が顔にお札を付けているのは「故郷の国を守れなかったことへの罪の意識、自責の念」によるものであると私は考えております。

 

自分の国を災いから守ることが出来なかったことについて、自分はその災いに「背を向けた」のだとカゲロウは言っていました。ここまでの解釈によれば、カゲロウはカムラの里にヨモギを預けたのち自分の国に引き返してモンスターと戦った、と考えられることから、彼は初めから自分の国を捨てる気でいたわけではなく、むしろ奮戦はしたもののそのモンスターには勝てそうにないと判断し、ギリギリのところで撤退してカムラの里に流れ着くことになった、ということになります。

 

端から逃げる気でいたのではなく戦ったけれども勝てなかったという事であれば、彼の行動は少なくとも「背を向けた」という表現には当てはまらないと、客観的にはそう言えるかもしれません。それに、そもそも1ハンターが―—しかも、凄腕と称されるほどのハンターがどれだけ頑張ったところで覆しようがないほどの状況だったのであれば、もはや彼が責められるべき道理はないでしょう(カムラの里の百竜夜行だって、決して主人公ハンターの独力ではなく、里の結束力と数十年にも及ぶ里守達の修行の成果によって初めて乗り越えることが叶ったのです)。

 

しかしカゲロウは、ハンターとして彼の故郷やそこに住まう人々の生活を災いから守ることが出来なかったことを深く後悔しており、状況的に仕方のないこととは言えども、自分はハンターとして為すべきであった事を放棄して敗走した身なのだという自己認識が強いからこそ、自分は災いに「背を向けた」という表現をしているのでしょう。かつての彼のハンターとしての使命感の強さの裏返し、と言ってもよいと思います。

 

そしてカゲロウは、故郷を守り切れなかった自分の次の使命として、故郷の生き残り(彼の故郷の他の人々がどうなったのかは定かではありませんが、相当の死傷者が出ていると見て間違いないでしょう)であり彼にとって大切な存在でもあるヨモギが、カムラの里で幸せな生活を築いていくことを見守り、支えていくということを決意して再び里に戻ってくるわけですが……ここでカゲロウは、次のようなことを考えたのでしょう。

 

すなわち、ハンターとして故郷を守る使命を果たせなかった自分がどの面を下げてこれから生きていくのか、特に、本来ならばその故郷の国で幸せに生活できるはずだったヨモギにどうして顔向けができるというのか、ということです。自分は故郷を襲った災いに「背を向けた」くせに、今さら善人面をしてヨモギを支えるなどということが許されるのだろうか―—。

 

しかし、だからといって里にヨモギを託したまま、自分は彼女の元を離れてしまうというのもそれはそれで筋が違います。災いから守るためにヨモギをカムラの里に保護してもらった、そしてその故郷は力及ばず失われてしまった―—自分の為したこと、為せなかったことへの責任をきちんと引き受けて生きるためには、やはり自分はカムラの里に居てヨモギを見守っていきたい。この矛盾を解消するために、彼は札で顔を隠し、「謎の商人カゲロウ」としてヨモギに接するという形を選んだ、という可能性は考えられるのではないでしょうか。

 

それに、ヨモギのみならず、彼の故郷で暮らしていた人々―—災いに巻き込まれて亡くなった人たちや、自分と同じく一命を取りとめて他の地域に流れ着き、故郷や大切な人を失いつつも生きている人たちにも、自分は本来なら合わせる顔などない。故郷を守るというハンターとしての使命を果たせなかった、非力な、罪深い自分自身への呪いとして、彼は顔に札をしているのだと私は解釈しています。

 

カムラの里で第2の人生を送ると決めたカゲロウに、ゴコクが雑貨屋を勧めたというのも、彼の来歴を考慮してのものかもしれません。雑貨屋は日用品のみならず、ハンターが(カムラの里の場合は里守たちも)使うアイテム、弾薬なども販売しています。彼の第1の人生、つまりハンターとしての人生はすでに死んでしまいましたが、それでも、雑貨屋として他のハンターの狩猟を支えるという形で、第1の人生への後悔を少しでも消化することができるように……という意図で、ゴコクは雑貨屋を提案したのかもしれません。カゲロウは百竜夜行の時にも、物資の供給担当として砦まで同行してくれますからね。

 

3.カムラの里への、カゲロウの想い

さて、かつて住んでいた故郷を失いカムラの里で雑貨屋として再起したカゲロウは、カムラの里のことを「第2の故郷」だと言っています。

 

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○○殿が災禍を退け、百竜夜行も収束が近づき… 里もますます活気づいてきましたな。
愛すべき第2の故郷が守られた…。いやはや、まことに喜ばしい限り。すべてはあなたの活躍のおかげです。

もう里に災禍が訪れることなく、この安寧が、永遠に続きますように…。

(淵源討伐後 カゲロウ)

 

彼にとってカムラの里は、故郷を失い致命傷を負った自分を救い、雑貨屋としての人生の再起の機会を与えてくれた場所であり、見ず知らずの自分が託したヨモギを守り、彼女の成長を支え、見守ってくれた恩義のある場所でもあります。彼の母国、すなわち自らの第1の故郷を既に失い、続いて第2の故郷をも、同じく災禍によって失われるような事態にならずに済んだことを、彼は心から喜んでいる様子。

 

特に、ヨモギを預ける先としてカゲロウがカムラの里を選んだという点は、不幸中の災いと言える点かもしれません。本来のカゲロウの想定が、里にヨモギを保護してもらって故郷の国へ引き返した後、災いとなるモンスターを追い払った後で再びヨモギを連れて帰り、国を再建する、というものだったとすると、ヨモギがカムラの里でそのまま生活することになったのは、結果としてはカゲロウや彼の国の他のハンターたちが、その災いに打ち勝てなかったことが要因となっています。

 

その意味では、ヨモギの立ち位置はいわゆる戦災孤児みたいな感じになるわけですが(人間対モンスターなので戦災という表現は必ずしも適切ではありませんが)、それでもその過去がヨモギの人生に陰を落とすこともなく、孤独とも無縁で、また自らの本当の出自について良い意味であまり意識することもなく、茶屋の看板娘として彼女が幸福に暮らせているのは、ヨモギを里の「家族」として迎え入れてくれたカムラの里の温かな文化のおかげに他ならないでしょう。

 

まあ、カムラの里ではなく別の村や街に行っていたらどうなっていたかとか、そもそも故郷に戻れていたらどうなっていたかとか、そういうifの物語はいくらでも浮かんではくるのですが……それらと比較してカムラの里に来たことは最良の選択だったかどうかなどと比較検討するというよりは、現にヨモギがカムラの里で幸せに過ごしているという、目の前の事実をこそ私は大事にしたいと思っています。

 

ヨモギは彼女のサイドクエストを達成した時にも、青フキダシで「大好きだよー!」といきなり愛の告白かましてきたり(本人としては別に恋愛的な意味ではなく、親愛の気持ちで言っているのだと思いますが)、百竜夜行の撃退成功時に「カムラの里の団結力は地上最強!」と言ったりなど、愛情表現が豊かで人一倍里の絆を大切に思っている印象があるのですが、これらの描写も、それだけ彼女は里の皆との繋がりに支えられて成長してきたのだということを裏付けるようなものなのでしょうね。

 

カゲロウはそういったことまで見越して、つまり自分が敗北してしまいヨモギを連れて故郷に戻れなくなったとしても、カムラの里なら彼女は幸せに暮らせるかもしれないということを信じてカムラの里にヨモギを預けたのではないか……というのはまあ、さすがにちょっと穿ちすぎな解釈ではありますが、それにしてもカゲロウがヨモギを保護してもらう場所として、どうしてカムラの里を選んだのか、というのは結構気になるところ。

 

そもそもカゲロウは元々カムラの里を知っていたのかどうかというのも分かりませんが、カムラの里はハンターの拠点の一つですから、ハンターであれば普通に知識として里の事は知っていてもおかしくはありません。

 

カムラの里を知らなくてマグレor中途で情報収集をして辿りついたという可能性もなくはないですが、里の文化や歴史までは知っていなくとも、自分の国からじゅうぶん距離があり、自国を襲う災いの影響する範囲からは逃れているという地理的な情報は大方分かっていたのでカムラの里にした、という可能性も十分ありえるでしょう。

 

カムラの里に百竜夜行がある(数十年毎という長い周期ではあるものの)ことまで知っていたと仮定すると、「災いから引き離すつもりが別の災いのあるところに連れていくことにならないか?」という気はしなくもないですが、他の街にしたところで、百竜夜行がないからといってモンスターの脅威は全然あるわけですし、むしろ百竜夜行の対策のおかげで、里守の技術や防衛設備が他の場所よりも遥かに充実している高いカムラの里の方が、総合的に見ればかえって安全、という考え方もないわけではありません(実際、里守の超人的な身体能力で今回の百竜夜行は全部撃退できているわけですし…)。

 

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百竜夜行のものとは異なる異質なざわめき、その正体はマガイマガドであった …というわけですな。

いや、それにしても○○殿、それにヨモギ殿やイオリ殿がご無事で何よりでした。

あやつめは百竜夜行を喰らいますゆえ、○○殿の前に現れたときは、満福で気力に満ちていたことでしょう。

立ち向かわずに退いたことは賢明です。腹を満たしたマガイマガドは、そう簡単には倒せませぬゆえ。

(里☆3百竜後 カゲロウ)

 

百竜夜行に付随する大きな脅威であるマガイマガドについても、カゲロウは元々知っていたとも知らなかったとも取れる口ぶりで、特に後半の方だけ見れば、カゲロウもマガイマガドと戦ったことがありそうな感じも少しあり、なかなか掴みかねるところがあります。しかし、マガイマガドというモンスターを知っていることと、カムラの里における百竜夜行について知っていることはまた別の問題、という考え方もできるでしょう。

 

後の会話(里☆5緊急前)では、そのマガイマガドがカムラの里にとって因縁の相手であるということは里の人から聞いたという旨の台詞があったり、先の通り里守については普通に驚いていた様子を見ると、カムラの里のことについては、少なくともその文化や歴史、カムラの里に百竜夜行があることについては全く知らなかったorあまり深く知らなかったというあたりが妥当なところかと思われます。

 

それでも……ひょっとすると、親切な人が多くて温かい雰囲気がある場所だということはどこかで耳にしていて、一時的な保護をお願いするにしてもヨモギを受け入れて貰いやすいかもしれないということでカムラの里を選んだ、という可能性は、決して0ではないかもしれませんね。

 

そして、カゲロウにとって、大切なヨモギの人生のこと、また自分自身のこれからの人生設計という点ではカムラの里にめぐり逢えたことは幸運と言ってよいと思いますが、一方で彼の過去との関係という点では、カムラの里や主人公ハンターの活躍を見て、自分自身と比較して複雑な気持ちになる部分もあるのではないかと思います。

 

故郷の国から流れ着いたカムラの里もまた、数々のモンスターが狂騒して里に迫り来る百竜夜行が数十年周期で発生するというモンスター絡みの災禍に見舞われている土地であり、実際に前の百竜夜行では、マガイマガドの脅威と併せて里は壊滅的な被害を負いました。カゲロウはそんなカムラの里に、どこか自分の故郷の境遇に通ずるものを見いだしているということは本人の口からも話してくれています。

 

しかし今回の百竜夜行では、カムラの里には50年前の教訓を糧に修行に取り組んできた凄腕の里守たちや、高い実力を持ち後に里の英雄となるハンターの存在があり、その狩猟を支える里の強い結束があり、それらの要因のおかげでカムラの里は数度にわたる防衛戦をことごとく成功させ、主人公ハンターは仇敵のマガイマガドや、ついには百竜夜行の根本原因である古龍をも仕留めることに成功する。

 

先の会話クリップにもあったように、カゲロウはカムラの里の里守たちの武芸の練度の高さにも非常に関心を寄せていましたが、ハンター資格のない住民でも武器を取って戦える里守の制度や、防衛における里の団結の中心を務め、古龍にも臆さず立ち向かう主人公ハンターの存在があるカムラの里は、ひょっとすると彼の目には、自分自身や自分の国が辿りえなかった道―—―もしその道を辿ることが出来ていたならば、自分の故郷が滅びることはなかったかもしれないような道を歩んでいる存在として、そしてそれだけに、カゲロウの悔しさをより一層深めてしまうような存在としてもまた映っているのではないかと私は考えています。

 

カゲロウの国を襲った災いと、カムラの里を襲う災いは必ずしもその性質が一致しているわけでもないでしょうし、それぞれの風土も文化も異なるでしょうから単純な比較はできませんが、今回を以て百竜夜行に打ち克ったカムラの里は、ひょっとするとカゲロウの国の「ありえたかもしれない未来」の一つということになるのかもしれません(そして同様にカムラの里にとっても、災いによって滅ぼされてしまったカゲロウの国は、もし自分たちが百竜夜行に屈してしまったら辿ることになるであろう、別の可能性でもあるということであり、人類社会の明暗の対比がここで描かれていると言えます)。

 

そして里の英雄、主人公ハンターの存在というのもまた、カゲロウにとっては愛すべき第2の故郷を守護する非常に頼もしい存在であると同時に――これは筆者の邪推を含むことを承知の上ですが、ある種のコンプレックスの対象にもなり得るでしょう。

 

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○○殿、近頃はますます顔つきに威厳が出て参りましたな。

しかし、威圧や恐怖は感じません。目の奥は、優しい光に満ちている…。

まことに強きハンターとは、そういうものです。狩猟の道を突き進む強さと、弱きを助ける優しさを持っている。

どうかこれからも、その強さでカムラの里を守っていただきたい…。故郷を失うというのは、耐えがたい苦痛ですからな…。

(里☆6 カゲロウ)

 

マガイマガドという里の大きな脅威の一つを討伐した主人公ハンターに対して、カムラの里には、かつて自分の故郷が滅ぼされた(ということをカゲロウはここでも間接的に伝えようとしています)のと同じような目に遭ってほしくない、そのために、あなたにこれからも里を守ってほしいという切望を述べています。実際に自らの故郷を滅ぼされてしまい、その悲しさ、喪失感、痛みというものを経験した彼だからこそ、カムラの里の人たちにはその辛さを味わってほしくないという気持ちは人一倍強いでしょう。

 

そしてカゲロウは主人公ハンターのことを「故郷を守る力」を体現した理想的なハンター像に適う人物であると称賛していますが、彼から見た主人公ハンターの存在とはまさしく、「故郷を襲う災いに背を向けるしかなかったかつての自分が、本当はそうありたかった姿」なのではないかと思います。

 

主人公ハンターのような強い意思と十分な実力をかつての自分も持ち得ていれば、自分も故郷を救うことができたのではないか……。カゲロウは、百竜夜行という災いに立ち向かう主人公ハンターに昔の自分自身を重ねて見ていると言っていましたが、一方で主人公と自分の置かれた境遇自体は似ていても、その意志と行動の点で主人公は自分とは決定的に違うということも彼は理解しています。

 

まあ、主人公ハンターも1人で戦っているわけではなく、それは里の皆の結束ということもそうですが、カムラの里は一般の住民も「里守」として戦線に立つことがギルドから特別に許可されているという場所であり、マガイマガドなり古龍なりといった強敵との一騎打ちこそハンターの役目ではあるものの、百竜夜行の防衛に関してはその字面通りハンターが1人で戦うわけではなく、里守を合わせた里の全体の戦力は、ハンターの役職にある者だけで戦う場合よりも遥かに充実していると言えます。

 

その意味では、恐らく里守に準ずる役職がないであろう国でハンターをやっていたカゲロウが自らを主人公ハンターと比較するというのは、実際のところ彼自身にとってなかなか酷な話だったりもするのですが……いずれにせよカゲロウは主人公ハンターの勇戦を目の当たりにして、自責の念や祖国への負い目、コンプレックスを感じてしまうことを禁じ得ない部分もまたあるように思われます。

 

「まことに強きハンターとは、そういうものです。」の一言は、単に主人公ハンターへの敬意の表明というだけではなく、過去の無力だった自分に言い聞かせる言葉、災いに背を向けた自分自身を呪う言葉でもあるのではないか……何となくですが、私にはそんな風に感じられてなりません。

 

主人公ハンターに「故郷を失うのはつらい。その強さでカムラの里をこれからも守ってほしい」と訴える彼の言葉も、そうしたカゲロウの心理を基にして考えてみると、更に別の色合いを帯びてきます。

 

つまり、カゲロウはまず何よりも、故郷を失うことの痛みを知っている。カムラの里は主人公や里の住民たちにとっては自らの生まれ育ったふるさとであり、またカゲロウにとっても、災いから逃れてきたヨモギと自分を迎え入れてくれた第2の故郷であり、大切な故郷を失うことの悲しみがこれ以上、誰の心の中にも生まれてほしくないと思うからこそ、カゲロウは主人公に「カムラの里を守ってほしい」とお願いしている。これは、カゲロウの言葉が第一に意味するところのものです。

 

しかしそれだけではなく、カゲロウは主人公個人に対して「"ハンターとして"故郷を失うことの痛み」をも伝えようとしているのではないでしょうか。かつてのカゲロウや今の主人公には、「ハンターとしてモンスターから故郷と人々を守る」という使命があり、そこでもし災いに故郷を奪われてしまったとしたら、使命を果たせなかったハンターの心には「故郷を失った」という痛みだけではなく、「自分の力が及ばなかったばかりに、自分の無力さのせいで、自分が背を向けたから、自分の故郷が失われてしまった」という痛みがそこに重なってくることになります。

 

その災いが、客観的に見ればもはや人ひとりの力ではどうにもならなかったものだったとしても、災いに屈したハンターは、自分が守るべきであった場所や人々への負い目を感じずにはいられません。ハンターにとってはその経験は恥であり、屈辱であり、あるいは罪であり、自分の存在意義そのものへの動揺である。――そんな気持ちを主人公ハンターには味わってほしくない、というのが、カゲロウが主人公に伝えようとしているもう一つの願いなのだと私は思います。

 

※以下、ライズ時点でのサンブレイクの内容予想の考察部分を含みます。サンブレイク以降に本記事をお読み下さっている方は、以下の情報にはサンブレイクで新たに公開された情報と異なる部分が大いにあることをあらかじめご了承ください。

 

さて、サンブレイクでカゲロウとヨモギの故郷のことが登場するのかどうかと言えば、ここまで丁寧なフリをしておいて何もない訳がないでしょうから、恐らく何らかの形でストーリーには絡んでくるでしょう。PVにあった西洋風の城のようなマップが、滅ぼされたカゲロウの故郷なのではないかという推測も、当たっている可能性が十分あると考えています。

 

仮にそうだとすれば、個人的には、西洋風の城のような廃墟という点がどうもシュレイド城の境遇に似ているような気がしないでもないですし、手記の「脈動」という記述からグラン・ミラオスの存在が考察されていたように、サンブレイクのシナリオにもシリーズ恒例のミラ系が絡んできて、それがカゲロウの国をかつて滅亡させた災いと結びついてくるみたいな展開も割とありそうじゃね!? と思っています。

 

あのマップでは新しい古龍メル・ゼナと戦うことになるらしいということはPVで分かっていますが、そのメル・ゼナが果たしてあの国を滅ぼした張本人なのかどうか……というと、個人的には微妙なところでして。

 

明らかに強そうなのは確かですが、「国1コ滅ぼしてます」みたいな顔かと言われるとそうでもなく、むしろあの国を滅ぼしたモンスターは別にいて、メル・ゼナはその廃墟に棲みついてそのエリア一帯のボス的な立ち位置になった、という方が自然に見えるんですよね(完全なフィーリングではあるのですが)。ドラキュラというモチーフの通り、「手下のコウモリみたいなやつ(粒子?)と連携して他のモンスター等から吸血をする」という生態があるのだとすれば、それは対生物の攻撃としては非常に強いですが、逆に建物破壊したりする感じではなさそうなので。

 

カゲロウの国を襲った「災い」というのがおそらくモンスター絡みであるにしても、具体的にどういうものだったのかということはまだ本人の口からも話されていませんが、今後のストーリーでいずれ明らかになることでしょう。……と言っても、カゲロウ本人の言動を見るに、自分の過去を遠回しにほのめかす表現が多いですから、主人公ハンターに自分の身の上のことを話すのは、未だに結構ためらいがあるような様子。

 

主人公ハンターに対して、自分の過去のことを打ち明けたいという素振りは見せつつもはっきりとは伝えられないでいることも、主人公ハンターへの複雑な気持ちのゆえかもしれませんね。かつての自分と同じくハンターとして故郷を守らんとする人物だからこそ、自分の抱えている気持ちも受け止めてもらえるのではないかと思う反面、活躍を重ねる主人公に対して自分は災いに負けて逃げてきた身であり、そんな自分が主人公にはどう思われるのか、正直怖いと思う部分もある……という矛盾をまだ解消できずにいる感じなのでしょう。

 

カゲロウは恐らく里のほとんどの人には自分のことを話していない(過去の負い目ですから、無理もありません)中で、彼は主人公を特別な存在と思ってくれているようで、過去のことも話したいと思っているようですから、来たるべきタイミングを待つ、という感じになるでしょうか。

 

それから、主人公に話すのはともかくとして、カゲロウがヨモギに対して自分の正体や来歴、ひいては彼女のルーツについて話したいと思っているかどうかという点ですが……それを聞いた時のヨモギの気持ちを考えれば、かなり慎重になるところではないかと思います。

 

フカシギがヨモギのルーツについて「本人も知らない出自の秘密」と言っていたのを見るに、少なくとも今のところはカゲロウも彼らの事情を知る他の人たちも、ヨモギが実は遠い国の生まれであるという出自について彼女に伝えてはいないようですが、それはおそらく、その情報はヨモギにとってはまだ重すぎると考えたためでしょう。

 

それに、ヨモギには何よりもまず「カムラの里の一員」というアイデンティティを大切にしてほしいというのもあるでしょうね。その上で今後、それに相応しい時期が訪れたら、もしくは彼女がもし自分のルーツが気になるということになったら、その意志を尊重し、彼女の求めるところに応じて彼女の出自についての情報を伝えてあげる、というのがベストな形かもしれません。

 

カゲロウ個人としては、ヨモギが生まれた国、彼女の肉親、もうひとつの故郷のことを彼女に伝えるという形で、その遺志、その存在した証しをこの世界に残したいという気持ちはあるかもしれませんが、一方で「自分はその国のハンターで祖国を守れなかった」ということをヨモギに打ち明けるという行為が、「過去の自分への赦しを得たいというエゴ」となってしまうのではないかとしてそれを避けたい気持ちもあるのではないか、とも思うんですよね。自分が災いに背を向けたこと、故郷のために為せなかったことに対して、痛ましいほど真剣に向き合う彼なればこそ、「ヨモギに話して自分の心が楽になる」などという逃げ道をむしろ許せないと思うのではないでしょうか。

 

それでも、ヨモギをカムラの里に引き合わせて災いから守護し、その後で国に戻って生命の限界まで戦うも敗北、故郷を守れなかった自分のことを「背を向けた」と責め、今は正体を隠して大切なヨモギを見守り続けている……そんな彼が、少しでも報われる道がないものか、と個人的には思ったりしています。

 

必ずしもカゲロウ本人の口からというわけにはいかなくても、もしいつの日かヨモギが、カゲロウは自分を災いから救ってくれた人物であり、結局災いによって2人の故郷は滅ぼされてしまったけれども、彼はその故郷を守るために、死にそうになるまで戦った素晴らしいハンターなのだということを知ってくれたとしたら―——。そんな可能性に、私は淡い期待を抱いている次第です。

 

さて、最後に小ネタを2つほど。1つ目は、カゲロウの荷車に何本か飾られている薄紫色の花について。

 

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鬼滅の刃をご存知の方にはお馴染みの花でしょうか(と言いつつ、筆者は鬼滅の刃は胡蝶しのぶ以外の柱の名前をフルネームで言えないレベルでほとんど知識がないという体たらくなのですが)。こちらは見るところおそらく藤の花で、カゲロウが道中の安全のために、魔除けのお守りとして藤の花を飾っているものと思われます。行商人の荷車には機能性も求めたいということも考えると、本物の花ではなく造花かもしれませんね。

 

カムラの里といえば桜ですが、藤にもまた独特の趣がある……というのと同時に、モンハン世界にも藤の花(こちらでも藤と呼ばれているのかは分かりませんが)が存在しているという事実は、この世界の植生についてのちょっとした有益情報とも言えるかもしれません。

 

続いて、カゲロウの荷車を引いているポポについて。

 

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ポポは草食獣ということで、里で休憩している時は桶に入っている野菜を食べているのですが、この野菜たちはどこから来ているのか、といいますと……。

 

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カゲロウのお隣でワカナがやっている八百屋の店頭に、何やらそれらしいものが並んでいました。おそらくこのポポは人参と、大根のの部分をワカナから貰っている(持て余しやすい大根の葉の方はともかく、人参のほうはカゲロウが購入している)のでしょう。大根の葉というのがやたらと生活感のあるチョイスです。

 

あるいは、ワカナはツリキに野菜を渡したりしているところを見るにかなり世話焼きなタイプのようですから、店頭には並べなかった野菜を彼女自らポポに渡しているのかもしれません(ツリキは野菜嫌いなようですが、彼もポポを見習ってちゃんと野菜を食べたほうが良いと思います)。いずれにせよ、カゲロウと他の住民との接点を示すポイントの一つであり、彼がすっかりカムラの里に馴染んでいる様子を窺わせる、さりげない作り込みですね。

 

さて、小ネタはこの辺りと致しまして、文章に色々と試行錯誤をしてしまったことや、寒さのせいかモチベがややダウンしていたこともあり、1月中に出すはずが間に合わなかった今回のカゲロウの記事。サンブレイクの発売日程は現在不明ですが、「夏」ですから早ければ6月はあり得るだろうということで、それまでに全キャラ分の記事を何としてでも完成させなければ……という感じで、更新を頑張っていきたいと思います。相変わらずの20,000字超にも及ぶ長い記事でございましたが、もし気に入って頂けましたら他の記事にも足を運んで頂けますと幸いです。


それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また別の記事でお会いしましょう!