ライズで描かれる、モンスターという存在の多面性
※注意事項※
・本記事は「モンスターハンターライズ」全編のネタバレを含みますのでご注意ください。
・本記事でのキャラクターや人間関係、世界観の考察に関しては、作中で判明する設定を基にした筆者の推測を含む箇所が多くありますことをご了承ください。
・本記事は、2021年12月17日発売の「モンスターハンターライズ 公式設定資料集 百竜災禍秘録」発売前に執筆されたものです。
したがって今後公開される公式設定は、本記事での考察内容と明確に異なる(=本記事での考察内容が誤りである)可能性がありますことをご了承ください。
・本記事の内容は、記事を改訂すべき点が発見された際には、予告なく加筆修正を致します。
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キャラ考察をメインとしているこのブログですが、たまには箸休めということで、せっかくモンスターハンターのブログなのですから、モンスターについての記事も書きたいと思います。モンスターといえば、様々な依頼の載っているクエストリストからクエストを受注し、そのクエストの「狩猟対象」として出会うことがほとんどですが、ライズではそれだけではない、モンスターという存在の様々な一面を発見することができます。
モンハンライズや過去のモンハンシリーズを長く遊んでいる方にとっては既知の内容も多いかもしれませんが、今回はそれらを改めて取りあげていこうと思います。
ーーーもくじーーー
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1.百竜夜行
本作のメインコンテンツの1つである百竜夜行は、古龍に追われてカムラの里に向かってくるモンスターの群れを撃退するという、タワーディフェンスに近いゲームとなっています。ハマれば非常に面白い反面、ふだんとは一味も二味も異なる戦い方のせいか、かなり好みが分かれている感じが見受けられますね。
私個人はどうかというと、私もいちおう弓をメイン武器の一つにしているものですから、各属性の百竜弓を一通り揃えるために(弓は一部を除いて百竜弓>生産弓となるので)、百竜夜行を何度も周回していました。
が、それだけでは飽き足らず、百竜夜行でどうやってソロでSSを取るか、ひいてはどうやってソロで出来る限り多くのサブ任務をコンプリートするか……みたいな楽しみにどっぷり浸かってしまったのです。その結果、ソロだけで180回くらい百竜夜行に行っていまして……。
Ver.3で単体クエが実装されたヌシジンオウガですが、私はタイムアタック以外では単体クエそっちのけで百竜夜行に行き、ヌシオウガ百竜夜行(ソロ)だけで素材が6~70個ほど溜まってしまう始末。……まあ、ハマったプレイヤーはこうなるというお話です。
で、そんな感じでそれなりに百竜夜行をやっていく中で気がついたのは、「普通の狩猟クエストで戦うときの強さ」とは別のベクトルで、「モンスターの強さ」が描かれているという点。より正確に言えば、「強さ」というよりは「強み」でしょうか。
それは具体的にどういうことなのか、例を用いて説明します。ここでは百竜夜行の破壊型のモンスターたちを例にとりましょう。
破壊型(関門を集中的に攻撃するタイプ)に属するモンスターは以下の通り。
・フルフル
・ヨツミワドウ
・アンジャナフ
・ヤツカダキ
この並び順はハンターノートの危険度順に並べたもので、単体クエストで狩猟する場合は、武器相性や個人の得意不得意もあるとは思いますが、おおむねリストの上のモンスターのほうが弱く(倒しやすく)、下のモンスターの方が強い(苦戦する)という感じだと思います。
じゃあ、百竜夜行で出たときの強さもこの順番なのか、つまりフルフルやヨツミワドウが「弱く」、ヤツカダキの方が「強い」のかと言われると、まったくそうではないんですよね。単体クエストでの強さと百竜夜行の敵ユニットとしての強さ、しかもどういう風に強いのかという「強さの質」は、まったくの別物だと思っています。
たとえばフルフルは視力が発達していないため、閃光玉を無効化します。フルフルのこの特徴は通常クエストでは、回復薬を飲みたいときに動きを封じることができない、くらいにしか働かないのですが、百竜夜行ではこの特徴がより厄介なものになります。
百竜夜行における閃光玉は非常に強力なアイテムで、空中にいる射撃型を地面に落としつつ、閃光の効果範囲内にいたモンスターを全員10秒程度足止めすることができるため、破壊型の侵攻を止めている間に撃墜した射撃型を先に処理したり、固定式竜炎砲台や撃龍槍の攻撃範囲内で足止めして大ダメージを稼いだりすることができます。
そんな強力なアイテムを無効化してくる(しかも現時点で唯一)のがフルフルであり、このモンスターを足止めするにはバリスタや大砲などで気絶を取るか、わざわざ落とし穴や麻痺弾などを使うしかありません。気絶での妨害はしやすいので足止めが難しいわけではないのですが、混戦時に閃光玉で瞬間的に行動を封じられないのは破壊型としての大きな強みになります。
ヨツミワドウやアンジャナフは肉質が柔らかくダメージを稼ぎやすいのですが、この2匹は関門へのDPSが高く、放っておくとあっという間に関門のHPを削られてしまいます。とくに同時に2体以上出現しまった場合、関門のそばに来る前にある程度HPを削っておかないと、撃退するまでに関門のHPを相当消費してしまうため、処理が遅れたときの危険度が高いです。
足止めは2匹ともしやすい方ではありますが、ヨツミワドウは狙う角度によっては徹甲を腹に吸われたり、アンジャナフはきちんと鼻先を狙わないと1発で気絶が取れなかったり、あとたまに頭が関門にめり込んでしまったりするので、妨害に手こずってしまったときのダメージが痛いですね。
なおアンジャナフについては、関門前で翼を開いている状態でダメージを与え続けていると特殊ダウンで動きを止められるため、攻撃力最強クラスの代わりに妨害もしやすい、という設計になっているようです。
バサルモスはデフォルトの弾肉質が硬く、バリスタや速射砲で攻撃する場合は、関門前で熱噴射攻撃をして肉質が軟化したときにしか大きなダメージを与えられません。さらに頭を狙った徹甲榴弾がやや翼に吸われやすい(これはフルフルにもいえる特徴です)ため、とくに「バリスタで撃退」のサブ任務があるときは非常に苦戦させられやすいモンスターです。
ヤツカダキもバサルモスほどではないものの弾肉質が硬めで、さらに通常時は「頭」の部位が隠れているため、基本的には関門前で火炎放射や糸吐き攻撃をしているときにしか頭を狙えません。したがって、関門前に辿り着く前の段階ではバリスタや大砲による気絶で妨害するのが難しいモンスターとなっています。
通常クエストでも、打撃武器やボウガンの徹甲榴弾でスタンを取るのが結構難しいヤツカダキですが、敵を足止めする主な手段が「気絶」である百竜夜行ではその特徴がより厄介なものになっています。ヤツカダキをスムーズに撃退する場合は、閃光玉なども使いつつ関門到着前にダメージを稼ぎ、関門への攻撃を始めたらバリスタで頭を撃って気絶させ撃退、という処理ルートが重要になります。
また、バサルモス、フルフル、ヤツカダキは関門への攻撃時に自身の周囲への攻撃範囲が広いモーション(それぞれ熱噴射、放電、火炎放射)を持っており、「反撃の狼煙」時に近接武器や弓で近づこうとしたときに思わぬ被弾をすることがあります。
また、フルフル、バサルモス、アンジャナフは足が細いため地面への接地面積が狭く、逆にヨツミワドウとヤツカダキは広いため、関門前の中央の地面に竹爆弾を設置した場合に、それを踏みやすいかどうかという違いがあります。この特徴は、悪名高いサブ任務「竹爆弾で撃退」があるときに、「HPをギリギリまで削ってから地面に竹爆弾を召喚してとどめを刺す」作戦がやりやすいかどうかの大きな分かれ目となります。
……という感じで、破壊型のモンスター5種を比べてみても、それぞれのモンスター毎にどういう所が厄介なのかという特徴が異なっており、一概に強さを比較することはできないということが分かります。
もちろん、後半に出現するモンスターやランクの高い百竜夜行に出るモンスターほど恐らくHPが高く設定されており、純粋な耐久力という点で強さを比較することは可能ですが、戦闘が進むとこちらの兵器も強くなっていくことも加味すれば、それも目に見えて差が大きいというわけではありません。
なので、たとえばラージャンやオロミドロなどの高ランク勢がひしめく中で、仮に破壊型の枠でフルフルやバサルモスが出たとしても強くないのかと言われたら、普通に強いですし厄介なんですよね。
百竜夜行では、それぞれのモンスター毎に役割が決まっていて、モーションも通常クエストの時よりは制限が入っているため、低ランクのモンスターと高ランクのモンスターの強さの差が出にくいという特徴があります。もちろん、生態系上位のモンスターの方が全体的に強いというのはあるのですが、百竜夜行においては序盤~中盤で出会うモンスターでも十分に脅威になるということです。
さらに、破壊型で例示した中でいえば「モンスターの体格」「無効化される足止め手段」「関門へのDPS」といった特徴がそれぞれのモンスターの大きな強みになっていて、通常クエストではあまり目立たない個性が百竜夜行で生かされたり、通常クエストでも厄介な特徴が百竜夜行でより厄介度が増していたり、百竜夜行の敵ユニット分類において新たに個性を付与されていたりなど、百竜夜行というクエスト形態は「モンスターの強さ・強み」というのが通常クエストとは違う形で、より多彩に描かれることに繋がっていると言えると思います。
あとは、集会所ストーリーを一通りクリアし、装備や装飾品も揃ってきてヌシや古龍との戦いがメインとなる時期になってくると、Ver.1.0からいた大型モンスターの単体クエストはもうあまり行く理由がなくなり、せいぜい金冠埋めくらいでしか行くことがなくなってしまうのですが、そういうところも百竜夜行がうまく穴を埋めてくれるんですよね。
百竜夜行を周回していれば、エンドコンテンツの時期になってもオサイズチやアオアシラ等を筆頭に色々なランク帯のモンスターに出番があるので、序盤~中盤に登場するモンスターたちがゲーム後半になっても存在感があり、「登場するモンスターが多い」というライズの良さが無駄なく活きているなぁという感じです。
とはいえ、百竜夜行ですべての大型モンスターに会えるわけではなく、イソネミクニやゴシャハギなど、元々の生息地の関係でカムラの里までは来れない子たちもいるので、もしサンブレイクでも百竜夜行が続投するのであれば、水辺の砦や砂原の砦などにも遠征してもっと色々なモンスターと出会えるようになると嬉しいですね。ジュラトドスも……
……と、これ以上書きすぎるとただの百竜夜行の解説記事になってしまうので、モンスターという観点から見た百竜夜行の良さ、というお話はここらで一区切りとしましょう。
2.操竜
百竜夜行と並ぶライズの新要素と言えば、鉄蟲糸でモンスターをあやつって戦う操竜ですね。ハンターが鉄蟲糸技で攻撃して操竜したり、モンスター同士が同じエリアに居合わせて争い、先に攻撃を受けて負けた方に操竜したりなど、4シリーズから続く「乗り」システムと、Wシリーズで生まれた「モンスター同士の争い」という生態系的な要素を上手く合流させた画期的な新システムと言えると思います。
特にモンスターが合流するパターンに関しては、モンスターの組み合わせによっては縄張り争いという固有の戦闘シーンまで用意されており、モンスター同士も敵対して戦うという大自然の営みを観察しつつ、さらにそれを操竜という仕方でハンターが利用することが出来るため、「自然環境の中で生きつつそれを有効利用する」という世界観をさらに深める要素となった、とも言えるでしょう。
まあ、モンスター同士の争いについてはゲーム的な都合もあり、ハンターの見ていないところではモンスターも互いに我関せずでのんびりしていたり、固有の縄張り争いモーションがない場合、生態系上でどちらが強いかに関わらず先に1発殴ったほうが勝つため、あの奇しき赫耀のバルファルクがヨツミワドウやディアブロスあたりに普通に負けたりなど、色々な意味で奇跡が起こるシステムでもあるのですが、それはそれでご愛敬ということで……。
で、ここまで上げた要素だけでも、操竜はモンスターの多様な一面がたくさん見られるシステムと言えるのですが、ここで更に注目したいのが、モンスターの敵としての強さと、操竜であやつった時の強さは必ずしも比例しないという点です。
マガイマガドやラージャンのように、敵としても強いし操竜しても強い、というタイプのモンスターも勿論いるのですが、敵としてはそこそこでも操竜するとめっちゃ強いというモンスターも結構いて、序盤~中盤帯のモンスターがその後の強敵との戦いで輝く場面も多いんですよね。
この手のモンスターで有名なのはトビカガチでしょうか。トビカガチは下+Aで繰り出せる尻尾叩きつけ攻撃が、「出が早い」「高威力」「追加効果あり(雷属性やられ)」という3拍子揃った性能をしており、敵としては中ランク帯でありながら操竜性能は最強クラスの太鼓判を押されています。
雷属性勢でいえば、ジンオウガの下+Aによる落雷攻撃が長射程で優秀なほか、フルフルの放電も高威力で出が早く、フルフル本人の機動力も高いので非常に使いやすいんですよね。ラスボスが雷属性使いだからということなのか、強力な雷属性やられを使ってほしいという開発からのメッセージなのか分かりませんが、雷属性のモンスターは全体的に優遇されている印象を受けます。
火力の高さでいえば、一番最初に戦うオサイズチも、下+Aの尻尾叩きつけが高威力で出が早く、射程も長くて当てやすいため、体験版のタマミツネ戦はもちろん、集会所上位に上がりたての頃は、武器攻撃よりもはるかに強力な火力ソースとして非常に重宝されたことかと思います。尻尾叩きつけ系の攻撃強いな……。
他にも、ドスバギィは操竜のフィニッシュ攻撃が睡眠液のため、大タル爆弾や大剣の溜め斬りなどを当てる補助としても活躍させることができたり、タマミツネの水ビームによる水属性やられは肉質を軟化させるため、操竜後に追撃を畳みかけて一気に敵のHPを減らしていくことができます。水属性やられは、操竜していないメンバーがすぐに攻撃できるマルチでは特に有効ですね。
逆に、敵として戦うときは非常に強力なものの、操竜して戦うとなるとクセがあり、強さを引き出すのに慣れとテクニックが必要なモンスターもいますね。個人的になかなかクセがあるなぁと感じるのはリオレウスで、Aで出せる炎ブレス攻撃2種はとても強力なものの、溜めている時間が長いため潰されやすいという弱点があります。Xの物理攻撃で大技ゲージを溜め、敵をダウンさせてからでないとなかなか技を決められません。ヤツカダキとかも同じタイプですね。
あとはオロミドロに関しては、一部の技や操竜大技を発動させると味方にも判定がある泥をバラまき、自分自身や他のハンターの移動を若干ながら邪魔してしまうという難点があります。操竜自体は強力なのでバンバン使っていいと思いますが、味方も戦いやすくしたい場合にはちょっとだけ技の出し方に気をつける必要がありますね。
逆に気の知れた友達同士でワイワイやる場合は、いかにオロミドロ操竜で味方を邪魔するかという遊びをやってもいいでしょう。
イソネミクニも同じくフィニッシュ攻撃が睡眠ブレスのため、モンスターを眠らせられる……かと思いきや、眠らせたやつを最後に自分で起こしに行ってしまうため、全体の拘束時間自体は長いのですが、「状態異常を敵にかける要員」という点ではドスバギィに及ばないところだったりします(逆に言えば、眠らせたヤツを起こすときの攻撃のダメージは大きくなる、という状態異常の仕様を教えてくれるモンスターとも言えるかもしれません)。這いずり突進とかは普通に優秀ですし、火力は結構あるので操竜性能自体は強い部類なんですけどね。
イソネミクニ、未発見状態ではそれぞれのマップの特定エリアにおいて、マップごとに違うフレーズと声色で空に向かって歌うという、生態的なところで非常に個性があるモンスターであることが知られています。私は元々海竜種系のモンスター全般が好きなのですが、ようつべでイソネミクニの歌の動画を拝見して以来、特にこのモンスターはお気に入りだったりします。
さて、イソネミクニの話はこの辺りにしておきまして、このようにモンスターの力を借りて圧倒的な火力で攻撃したり、様々な状態異常を発生させることができるのが操竜の良いところであり、かつ「操竜であやつった時にどんな技が使えるか」という点から色々なモンスターの強みを発掘できるのがこのシステムの魅力となっています。さらに、この操竜は通常の狩猟クエストのみならず百竜夜行とも相性がよく、的確に利用すれば大きな活躍を見せてくれます。
百竜夜行では、オサイズチやナルガクルガ、ディアブロスのような純粋なアタッカーも殲滅要員として非常に強力ですが、それとは別に「サブ任務」の達成において、状態異常の攻撃を持つモンスターも重宝されることになります。
百竜夜行のサブ任務には「敵を状態異常にする」「敵を気絶させる」「敵を属性やられにする」といった項目が含まれることが多く、これらの任務はハンターが自分の武器や砦の兵器を使って達成してゆくのがメインになりますが、操竜でモンスターの力を借りることができれば、任務達成の大きな助けになります。
また、これらのサブ任務がない場合でも、敵を状態異常や属性やられにすれば砦ポイントに加点が入り、砦レベルが上がりやすくなるため、強力な兵器をより早期の段階で解禁することができます。状態異常や属性やられを引き起こす攻撃を持っているということは、百竜夜行においてはそれ自体がそのモンスターの大きな強みになるんですよね。
さらに百竜夜行では、敵ユニットのうち破壊型はまったくハンターを狙わず関門破壊に集中し、射撃型はあまりポイントを動かずに砦内のハンターや里守、兵器をまんべんなく攻撃するほか、ハンターを狙いやすい強襲型もふだんのクエストよりはモーションに制限があるため、普通の狩猟クエストで「攻撃の出が遅い」ことが足を引っ張りやすいモンスターでも、敵を一方的に攻撃できる機会が多い百竜夜行ではあまり攻撃を潰されることがなく、持ち前の火力や状態異常技を生かして活躍させやすいという違いがあります。
「百竜夜行」「操竜」という2つの新要素がもたらしたのは、モンスターの「強さ」を「普通の狩猟クエストで敵として戦うときの強さ」だけではなく、「百竜夜行の敵ユニットとしての強み」「操竜したときの強み」「百竜夜行で操竜できたときの強み」といったように多角的に設定・評価できるようになったこと。これがとても大きいです。
それによって、低ランク帯から高ランク帯まで、どのモンスターにも自身の強みを発揮して輝ける場面があり、活躍の機会がきちんと各モンスターに割り振られる形になったということが、いわば「モンスターの間に価値の差をつくらない」ということに繋がってくれるんですよね。
狩猟対象として戦うときの強い弱いだけがモンスターの「強さ」になってしまうと、どうしても序盤~中盤のモンスターの影が薄れてしまうのですが、そこを新要素がうまく補って、さまざまなモンスターがプレイヤーの印象に残りやすくなるような設計になっていると思います。
3.縄張り争い
それから、やや話がそれますが、操竜との関連でいうと、Wシリーズから引き継いだ要素である縄張り争いについても、「モンスター間に価値の差をつけない」という文脈で考えたい要素だと感じています。
縄張り争いが発生したときには、モンスター同士の苛烈な争いを固唾を呑んで見守るもよし、推しのモンスターや劣勢側のモンスターを応援するもよし、優勢側のモンスターの強さに惚れ惚れするもよし、はたまた彼らには目もくれず砥石を使うもよし、色々な楽しみ方があるのですが、ここで私が目を向けたいと思っているのは「負ける方のモンスター」です。
まあ、縄張り争いという字面とは程遠い、MHWにあったイビルジョーとかに一方的にボコられている光景を見るとさすがにちょっと心苦しい感はありますが、押している側の動きはもちろん、押されている側の動きにも多彩な描写があって、戦っている両者のどちらも「自然の営み」ということで大事にしている感じがあるんですよね。ジンオウガvsタマミツネや古龍同士の戦いなど、一進一退で引き分けに終わる戦いの緊張感もこれまた魅力的です。
生態系的に下位のモンスターはもちろん、生態系上で強いポジションにいるほぼすべてのモンスターにも、自分の住処や生命を脅かす存在が自然界にいる。そして、あるモンスターが別のモンスターに負け、そして勝った方のモンスターもまた別のモンスターに負け……という形で連鎖していくのが大自然の循環です。
ある意味ではモンスターが負けている姿にこそ自然界の本質が見えるというか、循環の上では勝ち側のモンスターにも負け側のモンスターにも等しく価値があり、1匹のモンスターに勝っている姿と負けている姿の両方があり、だからこそ自然界の存在として魅力的である、という事が言えると思うんですよね。なんだかやたらと壮大な話ではありますが。
その点でちょっと良いなと思っていたのは、ライズのVer.2.0でドス古龍が追加されたことによって、本作看板モンスターのマガイマガドでも劣勢に追い込まれる相手がいる、ということをプレイヤーが認識できたことです。
マガイマガドは縄張り争いにおいて非常に強く、飛行能力を持つモンスターに相手の土俵である空中戦を仕掛けても、ベリオロス程度ならノーダメージで完勝、リオレウスやバゼルギウス相手でも、炎での反撃を食らいつつも優勢に終わるというレベルで割とヤバイ感じの戦闘巧者なのですが、クシャルダオラやテオ・テスカトル相手は分が悪いようで、健闘しつつも最終的には逆に押し返され、縄張り争い決着後はマガイマガドの方が操竜待機になるという強さ関係になっています。
最強だと思われていたマガイマガドでも厳しい相手がいるというこの事実は、マガイマガドもあくまで自然の生態系の一部であり自然の循環の中の存在であるということを、とくにライズから初めてモンハンに触れたプレイヤーに対して、強く印象付けるものだったと言えるでしょう。
とくに寒冷群島のクシャルダオラ戦では、モンハン初心者~中級者でも戦いやすいようにということなのか、他のモンスターとの合流がかなり発生しやすい(マガイマガド、ゴシャハギ、ティガレックスなど)配置になっています。
そこでマガイマガドとの縄張り争いを見たプレイヤーで「マガイマガド負けてるやんけ!」という感想を抱いた方も少なくないとは思いますが、自然界としてはそれで正解なんですよね。どんな相手にも勝ってしまう絶対者みたいなのがちらほらいるようでは、一つの種の影響力が大きくなりすぎて、あっという間に生態系のバランスが壊滅してしまいますから。
Ver.2.0のドス古龍追加アップデートは単なるモンスター追加アプデというだけにとどまらず、マガイマガドが負ける姿を描くという意味もあったのだろうと私は思っています。それもまた、看板モンスターのマガイマガドという存在を多面的に捉える一つのきっかけと言えるのかもしれません。
4.モンスターは人間にとって普遍的に敵ではない、というメッセージ
ここからは「モンスターの強さ」とはまた別のお話。モンハンライズのストーリーは、里に脅威を及ぼすモンスターを討伐して里を救う、という、王道の英雄譚のような物語になっています。これは、特にモンハンシリーズを初めて遊ぶ人にとっては、目標設定が明確でとっつきやすいという利点もあり、明快なストーリーで遊びやすいのですが、一方で「モンスター VS 人間」「モンスター=敵」という構図を強く印象づけてしまう部分もあると思います。
もちろん、百竜夜行という里の脅威と戦うにおいて、里に押し寄せるモンスターたちやマガイマガド、ナルハタタヒメ、イブシマキヒコなどは「敵」と呼びうるものではあると思いますが(※)、モンスターハンターの世界において、モンスターは普遍的に人類の敵というわけではないというのがこのゲームの世界観なわけです(ライズには登場していませんが、ギルドを通さずにモンスターを必要以上に狩りすぎたハンターをしばくための、対人専門ハンターことギルドナイトという存在もいるらしく……)。
※と言いつつ、本作中で狩猟対象となるモンスターのことを「敵」と呼称した事例は恐らくないため、世界観により厳密になるのであれば、「敵」という表現すらモンハン作品を語るには不適切かもしれません。ただし、本項目では考察の便宜上、この表現を敢えて用いていきますことをご了承ください。
そして、モンスターから里を守り抜く人たちの戦いを中心に描く物語であるライズにも、そうした世界観をプレイヤーに示唆する要素、モンスターは人間にとって必ずしも敵ではないというメッセージは、意識して見てみると結構あるものでして、モンスターという存在の色々な一面が見られるところですので、この記事で取り上げていきたいと思います。
まずプレイヤーの印象に残りやすいのは、集会所でギルドマネージャーのゴコク様が乗っているテッカちゃんでしょうか。
この子はテツカブラ(※)というモンスターの幼体で、ゴコクと大の仲良しであるという話をイオリから聞くことができます。
※テツカブラ:モンスターハンター4で初登場した両生種のモンスター。別名は「鬼蛙」。種族でいえば、ライズで初登場したヨツミワドウの先輩にあたる。テツカブラ自体は、ライズにおいては狩猟対象のモンスターとしては登場していない。
ギルドマネージャーのゴコク様がいつも集会所で乗ってる、子どもテツカブラの、テッカちゃん。
ゴコク様とすごい仲良しで、テッカちゃんは、ゴコク様のことをお父さんだと思っているみたい。
だけど、他の人には、あまり懐いてくれないんだ。ボクも仲良くなりたいんだけどな…。
(集会所☆1 イオリ)
こういう話をするのは、さすがオトモに詳しいイオリといったところですね。ゴコク本人からは、テッカちゃんとどこで出会ったのか、という話などは特に聞くことができないのですが、彼を父親と思っているというイオリの話から察するに、狩場で発見されたり人里で保護されていた卵からテッカちゃんが孵ったときに、最初に見たのがぐうぜんゴコクだった、という感じなのでしょうね。
少し脱線してゴコクについてもうちょっと触れておくと、彼はどうやら両生種とのフィーリングが合うらしいということが里の人たちの話から伺えます。かつてゴコクたちと共に狩りをしていたアイルーのコガラシからは、ゴコクの戦いを次のようにたとえています。
ゴコク殿がハンターであった時、どのような狩猟をしていたか… いつも、この説明に困るでござるニャ。
なんというか、「凄まじかった」…としか説明できないでござるニャ。
ゆえに拙者、記録には「鬼蛙の如し」とだけ記しておいたニャ。
(集会所☆4 コガラシ)
コガラシいわく、狩りをするときのゴコクの強さは「鬼蛙の如し」とのこと。鬼蛙というのは先ほど説明したとおりテツカブラのことですから、ゴコクの中にはどうやら秘めたるテツカブラ的要素(?)があるということなのでしょう。
具体的な内容が一切語られていないので、どういう戦いだったのか想像がつきにくいところではありますが……本家テツカブラに関して言えば、地面から岩を掘り起こして破壊したりしているので、きっと彼もそんな感じで戦っていたのではないでしょうか。"ある物は全て使う"とかのレベルを完全に超えている……
他にも、集会所下位のヨツミワドウの緊急クエストのときには、ミノトはゴコクのことを「ヨツミワドウに似ている」と言っているシーンがあります。
○○さん。緊急クエストでヨツミワドウの狩猟が入っています。
見た目こそゴコク様にそっくりですが、様々なものを飲み込んで、体を巨大化させる特徴があります。
これはゴコク様にはおそらくできない、モンスターならではの恐ろしい芸当…。くれぐれもご注意を。
(集会所☆2緊急前 ミノト)
このモンハンの世界で「ヨツミワドウに似ている」という評がどういうニュアンスを持っているのかは分かりませんが、私個人としては、ヨツミワドウは百竜夜行で幾度となく会っていることもあって結構好きなんですよね(これが単純接触効果というやつでしょうか)。イカツイけれどどこか可愛げもある雰囲気などは、威厳と愛嬌を兼ね備えたゴコク様に通ずるところがあると言えるかもしれません。
ちなみに体を大きく膨らませる形態変化というのは、テツカブラと同じく4出身で両生種のザボアザギル(別称:化け鮫)に見られる行動でして、これはまさしく両生種ならではのアクションですし、ゴコクは化け鮫の如しとは書かれていませんから、流石に厳しいとは思います。無理だとは思うのですが……「おそらくできない」というミノトの言い方が妙に気になるところ……
という感じで、両生種的なオーラを持っているゴコクは両生種に好かれやすいということなのか、テツカブラのテッカちゃんと心を通わせているのがゴコクという人物なのです。テッカちゃんが他の人にはあまり懐かない様子を見るに、ゴコクだけは本当に自分たちの仲間だと思われている可能性は否定できませんね。とはいえ、ゴコクに特別懐いているというだけで他の里の人を襲うということもなく、互いにすっかり馴染んでいて、当たり前のように生活しているなぁ~という感じです。
ちなみに、テツカブラの子どもがいるなら狩猟クエストでテツカブラは登場しないのか、という観点もなくはないのですが、いくらテッカちゃんとは別個体とも言えども、カムラの里の一員として思い入れの深いテッカちゃんと同じすがたかたちのモンスターを狩れ、というのに抵抗感を覚えるプレイヤーもいると思うので、テツカブラを狩猟対象として出さなかったのは英断だと思っています。
もちろん、モンスターは状況によって敵=狩猟対象になる個体もいれば、そうならない個体もいる、という認識がある人にとっては、テツカブラの狩猟クエが仮にあったとしてもおおむね受け入れ易いとは思いますが、新規ハンターも多いライズにおいては特に、このことは必ずしも共通認識とは言えないですしね。
話を戻しますが、ライズでは百竜夜行という災禍、迫りくるモンスターの脅威に立ち向かう人たちを描き、「人間の生活を脅かす敵として来たるモンスター」像を前面に押し出しつつも、一方でそのゲームの主題のアンチテーゼとも言える形で「モンスターと人間とが共存・共生しているすがた」をプレイヤーの目に焼き付けることによって、「モンスターは必ずしも人間の敵とは限らない」「モンスターは無差別に殲滅すべき存在ではない」というメッセージを発信しているのでしょう。
モンスターを狩るのはあくまでも、モンスターが暴れることで人の生活や周囲の自然環境に影響が出るとみられる場合や、自然の恵みとしてモンスターの素材を頂きたい場合であって、ハンターやギルドの目的はモンスターを人類の敵とみなして駆逐することではありません。
ギルドの体制についても、特に人の生活を脅かしたり周りの環境を荒らしたりしない大人しいモンスターであれば、ハンターに狩猟の指令を出すこともあまりなく、基本的には静観、互いに干渉せず共存という形をとるということが作中で示されます。緊急クエストが出た際には、対象のモンスターをなぜ狩るのかの理由をゴコクなどが教えてくれるのですが、その時にもそうした考え方の一例を見ることができます。以下では集会所の上位の壁として名を馳せた緊急タマミツネのケースを見てみましょう。
ふ~む…。大社跡のタマミツネは、大暴れするような性格ではなかったはずでゲコ。
しかし、大社跡を行き来する人に危険を及ぼしとる以上、狩るより他に道はないでゲコ。
それでは○○! 任せたでゲコよ!
(集会所☆6緊急前 ゴコク)
ゴコクの談によれば、大社跡のタマミツネは元々穏やかな性格だったので狩猟対象にはなっていなかったところを、何らかの原因によって暴れ始めてしまった(これは後ほど、古龍の影響で殺気立ってしまったことがわかります)ため、緊急クエストに指定されたということです。モンスターの狩猟依頼はたまに変なのもありますが基本的にはきちんと根拠付きで出されているんですね。
他にも、クリップは割愛しますが、集会所☆7緊急のヤツカダキは、古龍の影響で住処を追われて溶岩洞まで移動させられ、そこで暴れるようになってしまい、そのまま溶岩洞を起点に百竜夜行が発生するところだった……という事情があったりします。
あるモンスターが人の生活や周囲の環境への影響を出しているかどうかが、そのモンスターを狩猟対象と認めるかどうかの一つの判断基準とされており、そうでないものは狩猟命令が出されないということ、そして必要を超えて狩りすぎることでモンスターの種を途絶えさせることがないように配慮することが、ギルドやハンターの基本的な指針として重要とされていることが窺えます。
この基本をさらに発展させた例でいえば、百竜夜行のモンスターについても、「討伐」の対象となっているのはその群れを率いている大物やヌシのみであり、その他のモンスターたちについては「撃退」なんですよね。
大物やヌシはひときわ危険度が高く、これを討伐することで群れ全体の勢いを失くすことができるからこそ「討伐」の対象になりますが、他のモンスターはあくまでも、RPGでいうところの戦闘不能状態と言いますか、戦うだけの力を削ぐところまで攻撃するという意味で「撃退」の対象となっており、討伐するモンスターの数は最小限に抑えるような形になっています。
群れのモンスターはとにかく体力を奪って暴れるのを止めさえすれば、我に返ってそのまま帰ってくれますから討伐まで戦う必要もないですし、百竜夜行の群れのモンスターを全部討伐してしまえばモンスターの個体数現象や絶滅に繋がってしまいます。モンスターを狩るのは必要の範囲内で、という基本的な法則は、百竜夜行の防衛においても適用されていると言えそうですね。
そしてこれまた余談ですが、百竜夜行で迫りくるモンスターたちについては、人間の側からすれば撃退すべき敵であると同時に、彼らもまた古龍の被害者であるという側面も作中で語られています。
無数のモンスターが群れをなして、人里を襲う災禍…。皆が、百竜夜行とはそういうもんだと、思っとったでゲコ。
それがまあ、あの龍…イブシマキヒコに恐怖したモンスターたちによる大移動だったとは…。驚くばかりでゲコな。
ともかく、この原理が解明できたことはとてつもなく大きな前進でゲコよ。
[後略]
(集会所☆6 ゴコク)
長きにわたって、百竜夜行は、「モンスターたちが群れをなして、人里を襲う災い」だと信じられ続けていた。
その真実がまさか、あの青い龍…イブシマキヒコの威風が巻き起こす大移動だったとは…!
百竜夜行のモンスターたちも、好きで人里を襲っていたわけではなかった。
イブシマキヒコから被害を受けているという点では、俺たちと同じだったというわけだ。…なんとも、皮肉な話だな。
(集会所☆6 フゲン)
百竜夜行と戦ってきた歴史をもつカムラの里の人たちにとっては、この事実は衝撃的なものであり、これまで純粋に「里を襲う敵」として戦ってきたモンスターたちへの見方を大きく変えるものでもありました。
先ほど紹介した、古龍の影響で殺気立ってしまったタマミツネや、溶岩洞のヤツカダキなども、このモンスターが暴れ出す原因となった外的要因がなければ特に狩猟しなければならない対象になることもなかったのであり、同様に古龍の被害を受けているというか、運命を大きく変えられてしまった個体と言えるでしょう(とはいえこのモンスターを直接手にかけているのは人間なので、あまりこういう事を言える立場でもないのかもしれませんが)。
もちろん、百竜夜行のモンスターたちをそう憐れんでばかりもいられない実情ではあるのですが、それでも一方ではどこか彼らに共感せざるを得ないようなところもあるのが正直なところ。モンスターたちも好きで人里を襲撃してきているわけではなく、彼らも彼らで古龍には困ってるという事実が発覚した今となっては、彼らは人間側からすれば一応「敵」ではあるものの、単なる敵という範囲には収まらないような存在に見えてきます。
古龍の影響がなければモンスターたちも住処で普段通りに暮らしていたわけですし、作中で語られてはいませんが、モンスターが元々の棲息地を追われて別の地域に来てしまうことは、そのモンスター本人にとっても、その周囲の生態系にとっても、悪い影響をもたらす可能性は十二分にあるでしょう。その意味では、百竜夜行の原因を絶つということは、結果として他の生物の住環境を守ることにもなるのかもしれません。もちろん、だからといってイブシマキヒコとナルハタタヒメを絶滅させてよいというのもそれはそれで違うような気もしますから、なかなか難しいところです。
また、今後別の記事でも触れますが、カムラの里において里守が育成され百竜夜行の防衛戦が行われているのは、里の場所を他の所へ動かすことができないから、という要因がどうも大きいように思います。
カムラの里に襲来するモンスターの群れに関していえば、これまでのデータから百竜夜行のルートを割り出し、モンスターたちが通らないルートに里自体をまるごと移住させてしまうということを、50年前の百竜夜行の後から計画し実行するという道もあったはず。
もし、カムラの里が第三次産業を主体とする都市だったのなら、かつてのフゲンたちはその道を選んだかもしれません。しかしカムラの里は、豊かな自然を生かした第一次産業、鉱山資源とたたら製鉄の技術を生かした第二次産業を主体とする里であり、したがって里の場所を移動するとはこれらの産業文化を放棄すること、つまりこれまでのカムラの里の姿を丸ごと解体することに他ならない。故郷を失うのは精神的にもつらいですし、それらの産業を放棄して里の皆はどうやって生活していくのか? という形で物理的にも大問題になります。
もちろん、里の場所を移動したからといって、モンスターの移動ルートがつねに一定である保証はなく、この地域一帯ならばどこに居ても百竜夜行に襲われるリスクが0にはならない、ということも考慮する必要があるでしょう。
あるいは、そういう案は百竜夜行という現象の正体が分かった今だからこそ言えることであって、そもそも百竜夜行は元々は「モンスターたちが人里を狙って襲ってくる」もの、つまりある種の呪いのようなものとして考えられていたわけですから、里の場所自体を移動して災禍を回避するという発想自体が最初から出なかった、という可能性もあります。
いずれにしても里を大移動するのではなく、この地域に留まりつつ百竜夜行の防衛に力を入れたという判断は決して間違いではないと私は思いますが―—それでも、百竜夜行で我々が戦うモンスターは、「状況が違えば戦わずに済んだかもしれない、"人間の敵"とはならなかったかもしれない」という側面が伴なうものでもある、ということは確かに言えることでしょう。
それから、百竜夜行とはまた別の話題ですが、モンスターを含む自然全体の保全と尊重という話でいえば、本作でのプレイヤーハンターのボイスにもそうした要素が含まれていますね。本作ではプレイヤーハンターのボイスが非常に豊富ですが、討伐したモンスターから剥ぎ取りを行う際には「無駄にはしない」「素材を大切に使う」という旨のセリフを聞くことができるのも、注目すべきポイントです。
色々な理由で、とくに人間側の都合によってモンスターの狩猟が必要なときに狩りを行う、包み隠さず言えば1つの生命を奪うのがハンターの仕事であり、その仕事には命を頂くモンスターへの感謝と尊敬の念がなければならないという考え方があるからこそ、そういう「モンスターの生命にも思いを馳せる」セリフが含まれているのです。
もし仮に、モンスターは倒せば倒すだけ良い、モンスターは人間にとって悪というような世界観だったとしたら、こういうセリフは恐らく作られなかったことでしょう。個人的には、モンハンの世界観の根幹となる考え方をプレイヤーに印象付けるものとして、この仕様は次回作以降にもずっと続いて行ってほしいと願っています。
ちなみに、私はキャラクターボイスで14番をずっと愛用していまして、体験版で弓を使っていたときに(DEMO Ver.の弓のキャラはボイス14番)、モンスターから剥ぎ取りをするときの「大事に使うね」という一言にときめきを感じてしまったもので、それで使っているという次第です。ボイスに関しては、「役得役得~♪」でお馴染みの12番(DEMO Ver.ではライトボウガンのキャラ)も可愛かったのでこの2つで非常に迷ったのですが、最終的には剥ぎ取りボイスの良さで14番に決めました。
……さて、色々と脱線がありましたが、人間とモンスターの共存関係、友好関係という話はこの辺にいたしまして、ライズにはもう一つ注目したいポイントがあります。これは、先ほどのテッカちゃんの話のような、友達とか仲間みたいな関係とはちょっと毛色が異なるのですが、ストーリー上の重要な戦闘で、人間とモンスターが共闘するかのようなシーンが存在しているという点。すばり、淵源ナルハタタヒメ戦におけるモンスターの乱入です。
百竜の淵源の乱入モンスターは、初回はマガイマガド固定、2回目以降はマガイマガド、テオ・テスカトル、クシャルダオラの3体からランダムで出現ということになっていて、看板モンスターの面目躍如という演出になっています。
百竜の淵源初見攻略時、本気を出したナルハタタヒメの猛攻に押されながら必死に戦っているところに、「かつての敵」であったマガイマガドが来て(厳密には別個体ですが)ナルハタタヒメに対抗、最終的にはその力を借りて最強クラスの操竜で戦えるわけですから、「お前……助けにきてくれたのか……!!」と、苦しい戦いに光明の差した気持ちになる、作中屈指の胸熱シーンでしたね。
なお実際のところ、マガイマガドはハンターに助太刀する目的で龍宮砦跡まで来たのかというと微妙なところで、好戦的な性格のゆえ格上のナルハタタヒメにも戦いを挑みにきた、そしてあわよくば捕食をしに来た(卵を狙って?)、というぐらいの目的ではないかと思っています。テオやクシャについても、他の古龍が自分の縄張りを侵犯しに来たと感じて戦いに来たのだと思います。
ですので、ストーリーズのライダーとモンスターの関係などとは違い、淵源で一緒に戦ってくれるモンスターたちはハンターの「仲間」とは言えないものの、標的が同じで利害が一致している状況であれば、ハンターとモンスターが一時的に共闘することもある、というのは、かなり画期的な描写だったと思います。
普通の縄張り争いにおいても、モンスター側はハンターを無視して他のモンスターと戦いますし、モンスター目線での敵視の対象がハンター<モンスターとなる場面はありますから、淵源の乱入はその更に発展したケースと言うこともできるでしょう。
まあ、淵源の周回やタイムアタックという話になってくると、斬裂弾を使うボウガンは乱入と同時に彼らを放置してキャンプに弾の補給に戻ったり、弓に至っては操竜待機状態のモンスターを殴って早々にお帰り頂くというプレイングまで行われていたりしますから、なんとも世知辛いものです……(高火力の武器は、乱入モンスター登場の時点でほぼダメージストップに入っているため、さっさと乱入モンスを帰してナルハタを次の形態に変化させたほうが速いようです)。
と、そんなわけで、本記事ではモンハンライズのモンスターたちの様々な一面について紹介してきました。モンハンは3Gから入った私としましても、当時は「狩猟クエストの敵」としてしか会うことがなかったモンスターが、本作では百竜夜行や操竜の存在によって多彩な強さを発揮してくれるようになったり、人間と共生、あるいは共闘するといった関係も見られるようになったりといった要素があり、モンスターの色々な表情を楽しむことができました。
物語の大筋では「人間とモンスターの戦い」を描いているからこそ、脇道や小ネタの部分では、新規のプレイヤーにもモンスターハンターの世界観、すなわち人間もモンスターも自然の一部であり、かつ「人間とモンスターは普遍的に敵対関係ではない」という考え方が根底にあることを伝えられる要素を盛り込むことにこだわりを込めているように感じられました。
モンスターの生態とか設定ということに関しては、私もそこまでモンハンプレイ歴があるわけではない以上、旧作にも親しまれている方や裏設定などにも詳しい方とっては、本記事の考察は物足りないところや私の力不足なところ、「な~に知ったような口聞いてんだこいつ」と思うところも多々あるかとは思いますが、本記事はとにかく、私がライズで楽しめたところを書いていきたい! という一心で執筆いたしましたので、どうか温かい目で見て頂けると幸いです。
それでは、今回の記事はこの辺でおしまいと致します。いつもの記事の箸休めにするつもりだったはずが、またもや長い記事になってしまいましたが、ここまでお読み頂きまして、本当にありがとうございました。また別の記事でお会いいたしましょう!